サードレマに着きまして
「おーい……ペンシルゴ~ン?」
「……………ウフフ」
「……駄目だコリャ」
此れで通算
クラン:
其の状態のペンシルゴンは、此方の声に全く反応しておらず、建造物の壁やNPCに激突し掛けてしまい、此れでは不味いと、ペッパーが彼女の手を引きながら歩く。そして当然だが其れなりに名が知られているペンシルゴンが、そんな顔をして歩こうものなら他のプレイヤーにNPCの注目を集めるのは当然で。
「おい、あれ……」
「わ、廃人狩りじゃん……ってか何だあの顔」
「手を引いてるのNPC…なのか?」
「真っ黒コート格好良いなぁ……」
「いや、名無しのコート着けて歩いてたのペッパーって情報有ったし……」
「廃人狩りと一緒って事は……いやまさかな?」
嵐を巻き起こすペッパーが、名前隠しのコートを装備している情報は出回っている様で、前回の事件からもしかすると、ペッパー本人が変装しているのでは?とも考える。が、やはりペンシルゴンが居るからか、話し掛ける事が出来ずに、通り過ぎるのを見ている事しか出来なかった。
此のままではペンシルゴンが使い物にならない為、ペッパーは上の空で幸せ笑顔の彼女を連れて、サードレマの裏路地へと入る。そして周りに誰も居ない事を確認しつつ、彼女を壁に寄り添わせ……━━━━━。
「トワ、おーいトワ~」
「ん~?あーくん、どうしたの~?」
「そろそろ戻ってこーい。お前の表情が他のプレイヤーに見られてたぞ~」
ぽわぽわの彼女の肩を軽く叩き、此処までの事を包み隠さず話すと、彼女は思いっきり真っ赤な顔をして、後ろ向きで建物の壁を殴り始める。
「うぐぐ……!ペンシルゴン………シャンフロ人生、一生の不覚……!」
「誰にだって、ミスや失敗の一つや二つ有るよ。同じ過ちを繰り返さなきゃ良いだけの話だ」
「うぅ~……!其れやったの、あーくんじゃん!」
「解った、解った。悪かったって」
恥ずかしさ故か、振り返るやペッパーの胴をポカポカと叩くペンシルゴンに、彼もまた謝る。
「む~……ちょっとあーくん、おねーさんに対する誠意が成って無いんじゃなぁい?」
「じゃあ………どうしろと?」
「其のコートのフード外しと、手を繋いで大通りを一緒に歩いて貰おうかなぁ?」
「ごめんなさいごめんなさい、其れしたら此方が死ぬので止めて下さい御願いします」
「ウフフ…ジョーダンだよ♪」と笑うペンシルゴンだが、其の目は冗談で言って居らず、寧ろやらせる気満々だっただろうといった表情。どうやら何時ものペンシルゴンのペースに戻ったようである。
「まぁ、私としてもあーくんの『意外な一面』が見れたから、貴重な経験が出来た感じではあるねぇ」
「今日一日で出来るだけ、フィフティシアに近付きたいからな。成るべく足を止めたく無いんだ」
時間は限られているからこそ、有効に扱わなくてはならない。特に今回は叶うならフィフティシアまで、そうでなければイレベンタルまで向かいたい所である。
「ん~まぁそうだねぇ。でも、あーくんって結構速く走れるんだね。色々スキルを使ってるの?」
「あぁ、
スキル名:トルクチャージ。ウェザエモン戦の後に新規習得のスキルとして加わった其れは、重ね掛けて使用したスキル達を、其の熟達具合に応じて再使用時間を短縮するという、有用なスキルである。
「再使用時間短縮スキル有るの?」
「多分『複数の同系統スキルを重ね掛けて使う』と、習得出来る可能性が高いね。実際使ってみたが、再使用時間が減ってた。レベルアップしていけば、もっと短縮可能になるとは思う」
でもなぁ……と、ペッパーは裏路地から見える空を見上げ呟く。
「出来る事なら其のスキル以外で、もう少し『スキルの再使用時間を減らしたい』とは考えてる。切札級のスキルともなると再使用時間が長くて、外せないプレッシャーの中で戦わないと行けないんだよね……」
致命魂の首輪と致命魂の腕輪によってもたらされた、スキル達の凄まじい成長は、強力な手札となってペッパーに恐るべき『力』をもたらした。しかし其の代償として、強力になったスキル達は再使用時間の長さという、相応の『対価』をペッパーに与えている。
「まぁ、シャンフロがスキルゲーである以上は、避けて通れないもんだと割り切るさ」
「そうだね、用いる手札を何処で何を切るか……。PKerしてた時は、其の『緊張感』が堪らなかったんだよねぇ……」
対人戦の醍醐味は
他のプレイヤーと力を比べたい、己の実力を格上の相手に試したい……そんな想いを宿すが故に、PKer達は消えないのだろう。だがPKによって積み上げたものを、全てを失う
「まぁ万が一にも、あーくんの所にPKerが来たら
「アハハ……頼りにしてるわ……」
やっぱり、ペンシルゴンだけは絶対敵にしたくない……そう改めて胸に刻んだペッパー。そして二人と一羽と一匹は、裏路地を上手く使いこなして神代の鐵遺跡へ続くゲートを潜り抜け、目的地を目指して走って行ったのだった………。
「あれって………ペッパーさん、かな?」
其の後を追い掛け始めたのは、青い魔術師の衣服を纏って
「………ほぉーん?
「サンラクさん、また悪い顔してますわ……」
「トモダチが
状況はペッパー達の予想とは思わぬ形に転じ始めたのだった………。
次なる場所は、鐵遺跡