VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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鐵遺跡攻略




人は其れを切るべき縁と呼ぶが、当事者からは切ってはならぬ縁と呼ばれていたりする

神代(しんだい)鐵遺跡(くろがねいせき)

 

超古代の気配漂い、考察クラン:ライブラリによると、昔は何らかの研究所の跡地であった……とも言われている、サードレマから行ける三つのエリアの一つでもある。

 

「トワ!道中のドローンは出来る限り無視で!一体出て来たら、わらわらと襲い掛かってくる!アイトゥイルも攻撃は牽制程度で良い!」

「OK、ちゃちゃっと抜けて地下に降りちゃおう!」

「了解なのさ…!」

 

遺跡内に浮遊・襲来してくるサプレスドローン達を、左手に盾の勇者武器(ウィッシュド.ウェポン)たる聖盾(せいじゅん)イーディスを装備。真正面に構えつつ、ペッパーはドローンの突撃を受け流したり、タイミングを合わせての押し当て(バッシュ)に、盾面を使って殴り付けてみたりする等、盾を用いた新しい戦い方を、思い付く限り試していく。

 

「トワはアイトゥイルを乗せて先に階段へ!殿は俺がやる!」

「任せなさーい、あーくん!アイトゥイルちゃん、カマーン♪」

「ペッパーはん、油断しないでなのさ!」

 

御互いに右腕を利用、アイトゥイルを橋渡し、ペンシルゴンは和装黒兎を肩に載せ、階段を駆け降りて先を往く。そしてペッパーもまた、便秘で多少ながら鍛えられた動体視力で飛来するドローンを、瞬刻視界(モーメントサイト)を併用しながら、弾き飛ば(パリィ)して地下に向かう。

 

「ペッパーよ。お前さん、イーディスの使い方が様になっているじゃあないか」

 

そんな時、影法師の愉快合羽(グルナー・ト・シェミンコート)から聞こえたのは、ユニーククエストで護衛対象となっているポポンガの声。どうやらイーディスを用いてのサプレスドローン迎撃を、先程からコートの中でジッと観察していたらしい。

 

「盾系の武器も頑丈では有りますけど、耐久力に『限界』は在りますから。如何にして攻撃を凌ぐか、どうすれば耐久減少を抑えられるか……。其れを考えるのも、武器を扱う者の成す事だと思います」

「ホホホ……良い心掛けじゃの」

 

武器種の中では耐久力が凄まじい盾、其れも勇者武器ともなれば其の数値は桁違いとも言える頑強さを持つ。普通ならば(・・・・・)レベルアップにより、盾系統やタンク関係のスキルを習得出来る可能性が有る。

 

しかしペッパーの職業:バックパッカーは移動やダッシュ系統スキルを習得しやすい反面、盾やタンク系統スキルを習得し難い。物資を迅速に運ぶ職業持ちが、他者を守る必要なくない?等と言う声が聞こえてきそうだ。実際、職業の設定上ではそうなのだが。

 

だが人間と言う生き物は、新しい武器は使いたいし、新しい戦法を試したい……そんな『欲望』を持っている。現実では出来ない事もゲームの中なら出来る、シャンフロのスキル達は運が絡みはするものの、理論上(・・・)全てのスキルを覚えられる様に出来ている。

 

バックパッカーは盾を用いたスキルに、タンク職のスキルは習得し難い。しかし逆に『し難い』━━━━其れだけ(・・・・)なのだ。習得するのに通常以上の時間と修練の必要が有るだけで、レベルアップ時に条件を満たせば、習得のチャンスは等しく訪れる。

 

要するに━━━━だ。

 

(致命魂(ヴォーパルだましい)腕輪(うでわ)を信じる事。習得に漕ぎ着ける為には、俺が確りと立ち回る事が必要…!)

 

右手首で今も淡く輝き、ヴァイスアッシュから託された腕輪を見て。然れども、先に行かせたペンシルゴンの後を追い掛け、ペッパーもまた階段を駆け降りたのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地下二階もウェザエモン戦で鍛えられたステータスで、地下三階の落下床ギミックも破天爽駆(はてんそうく)で駆け抜けて突破し。地下四階も特に問題も無ければ、つまづく事も無く駆け抜けて、ペッパー達一向は地下五階に続く階段に辿り着いた。

 

「此処を下れば地下五階……。ペッパー君、アイトゥイルちゃん、一気に駆け抜けてエリアボスをブッ飛ばすよ!」

「おう、ちゃちゃっと決めちゃおう」

「そやなのさね」

 

黒い闇が染まる階段をペッパーが先頭に立ってイーディスを構えつつ、アイトゥイルが桃燈をライト代わりとして一段ずつ降りていく。

 

「………なぁ、アイトゥイル」

「ペッパーはんも気付いたのさ」

居るよね(・・・・)、俺達の跡を付けてる連中が」

「此の感じ……『三人』居るのさ」

 

階段を降りる最中、ペッパーとアイトゥイルはペンシルゴン以外に『複数人』が足音を立てず、此方の跡を付けているのを、直感的に関知する。しかし敢えて気付かないフリをして階段を下り降り、ペンシルゴンが数歩先を歩いた瞬間にペッパーは、振り向き様に声を放つ。

 

「其処に居るのは誰だ?足音に合わせて、歩いてきたようだけど?争うなら、此方もやるけど」

「えっ、誰か居るの?」

 

イーディスを真正面に構え、既に臨戦態勢状態に有る中、アイトゥイルの持つ桃燈が照らしたのは━━━。

 

「おいおい待て待て、ペッパー俺達だ」

「アイトゥイルおねーちゃん!」

「敵じゃねぇよ、ペッパー」

「あ、あの…ごめんなさい!」

 

祭衣・打倒者の長頭巾(フェスタ・メジェ・カフィエ)を装着したサンラクと、其の白頭巾から出て来たエムル。其の後ろからヒョコっと顔を出すオイカッツォに、其の脇に抱えられたレーザーカジキの姿が有った。

 

「あれ、サンラク君にカッツォ君。其れにレーザーカジキ君じゃん、三人共遺跡攻略に来たの?」

「まぁな。俺はシクセンベルトの先のエリアの偵察と、活動範囲拡大に」

「此方もテンバートに在るって言う、現状最強クラスの縄を手に入れようかと。そんで、ペッパーの後をレーザーカジキが追っ掛けてたから、キャリーして来た訳」

「えっ、えと……其の…。アハハ………」

 

笑顔がどうにも固いレーザーカジキ。そしてサンラクとオイカッツォが『何か企んでいる時』の目の色を、長い付き合いの中で知っているペンシルゴンは、数瞬の思考の果てに『質問』をぶつけた。

 

「……サンラク君。君は確か『シクセンベルトに向かう』……だったよね?」

「あぁ、そうだな」

「オイカッツォ君は『神代の鐵遺跡』で何してたの?」

「鮭と海蛇釣ってレベリングしてたけど……」

「………OK、成程。じゃあ、レーザーカジキ君。ペッパー君を『何処から』追い掛けて来たのかな?」

「えと……『サードレマ』の裏路地から、ペッパーさんが出て来て。其れを追い掛けて、来ました………」

『………???』

 

ペンシルゴンの質問にペッパーとアイトゥイル、エムルが疑問符を浮かべる中、ペンシルゴンの視線はサンラクとオイカッツォの方に向けられ。

 

「ねぇ…サンラク君、カッツォ君。………『私達の話を聴いていたんだよね』?」

「「相変わらず、勘の良いペンシルゴンだなぁ」」

 

三人は獰猛な笑顔を浮かべ。そしてサンラクとオイカッツォは、其れは其れは素晴らしい笑顔と共に、ペンシルゴンとペッパーに向けた爆弾をぶん投げる。

 

「『む~……ちょっとあーくん、おねーさんに対する誠意が成って無いんじゃなぁい?』(裏声&声真似、但し似てない。発声者:サンラク)」

「『トワはアイトゥイルを乗せて先に階段へ!殿は俺がやる!キリッ』(滅茶苦茶似ている。発声者:オイカッツォ)」

 

渾身のドヤ顔と共に炸裂したネタバラシに、ペッパーとペンシルゴンの双方の顔が真っ赤に染まって、水蒸気爆発が起きたような音が鳴った。何せサードレマの時点から、此方のやり取りはサンラクに聞かれており、おそらくオイカッツォも遺跡の何処かで潜んで、見聞きしていた事になる訳だ。

 

「へっへっへ~……。御二人さん此れはもう『そういう関係』って事でヨゴザンスかぁ~????」

「ヒューヒュー♪『あーくん』とか『トワ』呼びとは、随分熱々ですねぇ!御二人さぁん!!!!」

「えっと……其の、あの……!『おめでとうございます』……?」

 

唯でさえ外道二人に対し、弄られ擦られるネタを与えただけに止まらず、レーザーカジキの一際純粋な御祝いの台詞によって、恥ずかしさが限界を突破。

 

「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!????」

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!????」

 

ペッパーとペンシルゴンは顔を真っ赤にしながら、鐵遺跡のエリアボスたる『ルイン・キーパー』を一分で瞬殺するも、追い付いてきたサンラク・オイカッツォに弄り倒され、悶絶する羽目になったのだった………。

 

 

 

 

 






外道は嗤う


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