タイトル通りです
「200枚って、マッドフロッグ絶滅させる気かよ……」
エンハンス商会で受注した依頼、特殊クエストに関わる内容にペッパーは頭を抱えていた。
ただでさえ呪われた身でありながら、レベルが低いマッドフロッグを最低200体狩り、皮が確定ドロップでない場合はもっと必要数と時間が掛かるため、あのレクスというNPCは此方に無理難題を吹っ掛ける鬼かと、彼は内心思い始める。
「…そう言えば、マーキングが付いた右手には『装備』が出来ないんだよな。じゃあ、アイテムの『使用』は可能なんだろうか?」
現実を直視しつつも、呪いの検証を行ってみる事に。呪いが蝕む右手に、アイテムインベントリから薬草を取り出し乗せ、口の中に放り込む。
「………うん。薬草の味に変化は無いし、普通に使えたから使用は可能か。じゃあ次は、右手に『アクセサリー』は付けられるかを確かめよう」
次なる疑問を解決するべく、ペッパーはセカンディルの武器屋へと赴いたのだった。
「こんにちわー」
「いらっしゃい…って、アンタァもしかしてファステイアの鍛冶師の言ってた、小鎚作りに協力した『あんちゃん』か?」
武器屋に入ったペッパーに、武器屋の鍛冶師で白髪と白髭の店主から、開口一番に問い掛けられた。
「えっ、あはい。そうですが…?あ、あと名前はペッパーです」
「やっぱりそうか。此の世界の鍛冶師の間じゃ、あんちゃん…じゃなくてペッパーだな。お前さんの名は広く知られてるんだぜ?」
「マジすか…」
初耳な情報と大事になっている事実に驚きながら、ペッパーは店主にアクセサリーの事を聞いてみる。
「すいません、この店に腕輪系のアクセサリーは置いてあったりしますか?」
「あん?アクセサリーだぁ?……ソイツはセカンディルじゃ売ってねぇぞ?」
予想外の回答に、ペッパーは「そうなの?」と店主に質問し返す。
「あぁ。指輪系統なら手に入らんでも無いが、あまり効果は期待出来ねぇ。『サードレマ』とか『エイドルト』やらの、此処よりもっと先に在るデカい街で売ってるヤツなら、相応の効果があるぜ?」
「成程…ありがとうございます」
口が少し悪くとも、先の街の情報を教えてくれたことに対し、礼を述べるペッパー。すると店主は、彼に質問を投げてきた。
「ところでよぉ、ペッパー。ファステイアの鍛冶師が作ったっう『武器』ってのは、どんな物なんだ?」
何かしらのフラグが建った気がしたペッパーは、アイテムインベントリからロックオンブレイカーを取り出し、カウンターの上に乗せる。
「ほぉ…コイツが」
「はい。ファステイアの鍛冶師のおっちゃんが、生涯最高傑作と言ってましたよ」
自慢気に、されど誇らしげに笑った顔を思い出すペッパー。
「そうか…『バカ弟子』が一人前の鍛冶師に成ったか」
「ん?バカ弟子?」
「おうよ、ファステイアの鍛冶師は俺の弟子でな。ソイツが新しい武器を作ったってんで、レシピと一緒に
静かに出で立ち笑いながら、ロックオンブレイカーの表面を撫でる店主は、ペッパーに提案をしてきた。
「おぅ、そうだ。オメェの小鎚を俺が更に育てる事も出来るが、どうだやるかい?」
「えっ。じゃあ、お願いしたいです!何か必要な素材は有りますか?」
「そうだな…コイツを成長させんなら、『
弟子が作って育てた武器だ、だったら師匠の俺も育ててやるのも、鍛冶師としての責務さ」
バカ弟子と言いながら、随分と褒めてるんだなと思い、ファステイアに寄ることが有ったなら、この事を鍛冶師のおっちゃんに伝えようと決心する。
そうしてペッパーは武器屋を後にし、道具屋にて巌喰らいの蚯蚓との戦いで消費したツルハシを購入。其の足で四苦八苦の沼荒野へと向かったのだった。
四駆八駆の沼荒野は、フィールドのエリアの一部に『泥沼』が適応されている。プレイヤーは泥沼に足を踏み入れると、強制的に『歩み状態』となってしまい、機動力が著しく落ちてしまう。
此れを解決するには『オフロード』という、足場が不安定な状態でも『平地』と同じ扱いとして移動可能な『
「よいっしょ!……出たのは石と、やっぱり初めて訪れたから、探索家の子の恩恵は出てないか」
以前より筋力とスタミナが成長した事により、ツルハシを振るってもスタミナが減少しなくなり、スムーズに採掘作業が出来ている。
だが、やはり沼地。足場が悪く、踏ん張りが効かない中での採掘は、想像以上に大変だ。
「うーん…ツルハシだと不意討ちに対抗出来ないし、ちょっと試してみるかな?」
ペッパーはツルハシをインベントリに戻し、代わりにロックオンブレイカーを取り出す。採掘場所をモンスターに、あの日戦った夜襲のリュカオーンに重ね合わせ、小鎚を振り抜く。
ガイィン!と音を鳴らして、採掘された地層のような石が転がり、ドロップ数の限界を向かえたのか、先程まで叩いていた採掘場所は、崩れて沼へと沈んでいった。
「えっと何々…コレが沼棺の化石なのか。化石ってより地層だな」
ロックオンブレイカーの強化素材たるドロップアイテムを手に入れたペッパーだったが、此処で更なる疑問を抱く。ユニーク武器・ロックオンブレイカーは鉱物系アイテムを叩く事で、其れを破壊し耐久値を回復する。ならば、沼棺の化石を叩き割った場合の回復量は、どのくらいなのか?
「………えいっ」
右手に乗せた沼棺の化石を叩き割れば、其れはポリゴンと化して消滅し、代わりにロックオンブレイカーの耐久値がモリモリ回復していく。
「おぅふ…すげぇ再生……」
ロックオンブレイカーの時点で恐ろしいまでの回復力だ。育成を重ね、最終極致に到達し、モンスターを叩いたら其のダメージ分耐久値を回復する等と言う、ブッ壊れ能力でも付くのではと心配になる。
此の時のペッパーは、ロックオンブレイカーの行く末に加え、特殊クエストのマッドフロッグの皮の納品で、頭が一杯の状態だった。
其れ故に背後から近付いてくる、1人の女性プレイヤーの存在に気付くことが無かったのだ。
「ほっ…!ほっ…!せいっ!うん、やっぱり此方の方が効率が良い。振り方を変えれば、ナイフや短剣を扱いの練習も出来るし、何より必要量の筋力が有ればスタミナの消費をグッと抑えて採掘出来るぞ。オマケにロックオンブレイカーの特性も相まって、ほぼ無限に採掘作業が出来るんじゃねぇか?」
「へ~。其の小鎚、ロックオンブレイカーって言うんだ。ユニーク武器なの?」
「そうそう。鉱物系アイテムを叩き割ると、武器耐久値が回…復……する………え?」
誰と話していたのかと、ペッパーが振り向いた先に1人の女性プレイヤー。おまけに名前の横には赤黒いドクロのマーク。
シャンフロでは『プレイヤーキラー』を行っているユーザーと、そうでないユーザーを見分けるため、1度でも其の行為を行い、他プレイヤーを死亡させたならば赤黒いドクロが名前の横に押され、他NPC等からの好感度が激減したり、一部施設の利用不可といった、様々な誓約を課される事になる。
そして何よりも、ペッパーにとって現時点の状況は『最悪』の一言。沼地で足を取られた強制歩み、ユニーク武器を知られてしまい、よりによって相手はプレイヤーキラー。
完全に『詰んだ』。
「へ~…フフフ、良いこと聞いちゃった♪」
ラベンダー色の長髪と見るからに高価なイヤリングを揺らし、肩と腰の一部が露出した装備は機動力を重視として、おそらくであるが対人戦を想定した軽量モデルと思われる。
「な、なんだよ…アンタ」
武器は持ってない。が、何時攻撃されてもおかしくない状況。沼に足を取られ、逃げるに逃げれない状態で、流石に捌き切れる自信は無い。
「お姉さんに向かってアンタ呼ばわりは、ちょっといただけないなぁ?其れにプレイヤーネームは『アーサー・ペンシルゴン』だよ」
何か『違和感』がある。此のプレイヤーの顔は、どう見ても現実のカリスマモデルと、瓜二つなレベルのキャラメイク。だが、何よりも━━━━
コイツの声を、昔に聞いた事がある。
「いやぁまさか、君もシャンフロやってるなんて意外だったよ」
━━━━━━━ねぇ?『あーくん』♪
其の一言、たった一言で俺は、目の前のプレイヤーキラーの正体に気付いた。いや、気付かない訳がない。
「お、ま…!?…まさか…『
「おやおや。ゲームとはいえ感動の再会なのに、随分冷たいね~。あーくんは」
ケラケラと笑う彼女を、俺はよく知っている……。昔の友達やクラスメイト、近所のおばちゃん達諸々含めて、俺を『アズサ』とか『あず君』とか、普通に『ごじょー』やら『五条君』等と呼ぶ其の中で、たった1人だけ『あーくん』と呼ぶ奴が居る。
正直言って、俺にとっての『コイツ』は。想い出の全てを今此処でひっくり返したとしても、『ロクな出来事』が一切無い。
アーサー・ペンシルゴン、本名を『
其の者はカリスマモデル、そして魔王なり