前へ前へと、我が身が叫ぶ
結論から言うならば、神代の鐵遺跡では何も起こらなかったし、サードレマに戻るだけの道中も平和だった。
レーザーカジキの頭にアイトゥイルを乗せて、ペンシルゴンと自分がサンドイッチする
「まぁ、サプレスドローンを一々落としてたら、何時まで経っても先に進めないからねぇ」
「其れはそう」
「御二人共、凄いです……!」
「レーザーカジキはんも、周りをよく見ていたのさ」
サードレマのゲートが近いので、アイトゥイルを再び愉快合羽の中へ戻し、ペッパー・ペンシルゴン・レーザーカジキは街の中へ入る。ゲートを潜り抜けながら、裏路地を駆使して、
「あ、あの……ペッパーさん」
そんな時、レーザーカジキが歩みを進めつつも、ペッパーに声を掛ける。
「レーザーカジキ、どうした?」
「えと……其の、ペッパーさんの装備してるコートって、確か『
現状呪いの装備と化している
「あぁ、強かったよ。あの影法師はどうやら、相対者と『遊びたい』らしくてね。持ってるスキルをほぼ全て出し切ったら、満足したのか消える前に此の合羽をくれたんだ」
本当はユニークシナリオの実戦的訓練中の相手で、ギミックを確かめる為に数回死亡したのだが、実際自分vs自分を体験する上で、影法師程の適任は居なかった。
「名前隠してプレイ出来るって、唯一無二の性能してるからねぇ……。さて御二人共、サードレマの裏路地に居るからと言っても、完全に安全って訳じゃない。早い所、
「応ッ」
「は、はい!」
其の歩みは止まらず、ペッパー達一向は入り組んだ裏路地を走り、千紫万紅の樹海窟へ続くゲートを目指して駆けて行く。
「アレは………ッ!」
そして一向の姿を双眼にて捉え、街角の影より見つめる、一式装備・麻の衣服で身を包むプレイヤーが居た。
「アーサー・ペンシルゴン………!やっと見付けたぞッ………
嘗て彼女と京極の手により阿修羅会を滅ぼされ、一夜にしてウェザエモンと言う情報アドバンテージを失った、PKクラン:阿修羅会の元オーナー『オルスロット』が一向の後を一人、静かに追い掛ける。
其の目に復讐の焔を燃やしながら……。
千紫万紅の樹海窟に到着した一向は、万が一に備えて各々が得物を装備し。然して其の脚を止める事もせず、フォスフォシエに続く
昆虫型のモンスターは、自分から手を出さなければ基本的に襲う事はしないと、ペンシルゴンとレーザーカジキに豆知識として伝えたり、蜜袋をたゆませながら舞うストレージパピオンの群れを見上げたりしつつ、一向はフォスフォシエまで残り半分と言った所までやって来た。
「ペッパーはん、ペッパーはん。また『双皇甲虫』達に会ってみたいさね」
そんな時、コートの中から出て来たアイトゥイルが、ペッパーの頭に乗っかり、そう言ってきた。
「確かにね、次世代の子達に会ってみたいな」
『颶風の申し子・ティラネードギラファ、雷嵐の申し子・カイゼリオンコーカサス。二体の双皇甲虫の素材を使った、
各々の素材は風属性と雷属性をデフォルトで搭載するに止まらず、武器種の性質上は耐久性に優れていない太刀武器でも相応の耐久力を獲得している。ならば其の二つの皇の素材を用いて、以前見せたイラストを参照とし、リソースを惜しむこと無く注ぎ込んで造ったなら、一体どんな逸品に仕上がるのだろうか?
(水晶群蠍にも匹敵する遺機装ねぇ……。耐久性じゃ彼方に劣るが、属性方面なら優位に立ってるって意味なのかな?)
水晶群蠍を構成する水晶の甲殻だけでも、相当な硬度を持っていた。アレは斬撃属性ではマトモなダメージが入らず、打撃属性でなくては倒せなかった。
「へぇ……此の樹海に居るんだ、其の双皇甲虫ってモンスター」
「ティラネードギラファとカイゼリオンコーカサスな。出逢った場所は知ってるし、テリトリーに入らなければ戦闘には入らないから。行ってみるか、ペンシルゴン?」
「じゃあ、御言葉に甘えて案内して貰おうかなぁ?」
時間はまだ十分に有るので、寄り道も旅の一興と考えたペッパーは、一度自分の後を追い掛け、其の場所まで辿り着いていたレーザーカジキと共に、ペンシルゴンを目的地たる『双皇樹』へと続く道を教える。
そうして徒歩による移動と案内を開始して十数分、ペッパーとアイトゥイル、レーザーカジキの二人と一羽は、淡い光を放つ蛍達が此方に向かって、飛んできているのを見付けた。
「アレだね」
「アレなのさ」
「アレですね」
まるで此方を導くように、蛍達は光の道を作って案内して。軈て一向が辿り着くは、大地に根を張り巡らせながら樹海の天井を突き破り、天高く聳え立つ巨大な二本の巨樹と、其の周りが不自然に整備されたドーム状のフィールド。
そして双皇樹の奥には、黄金色の中に翡翠の輝きが光る巨大な宝石が、太陽の光に照され輝きを放ちながら御神体の様に鎮座していた。
「此処が双皇甲虫の住家なの、ペッパー君?」
「あぁ。此処でティラネードギラファとカイゼリオンコーカサスと戦ってね。どちらも本当に強かっ━━━!」
刹那、背筋を撫でる悪寒と殺気。レーザーカジキを庇うように
「えっ、えっ何ですか!?」
状況が呑み込めず、慌てるレーザーカジキ。ペッパーとアイトゥイル、ペンシルゴンが見たのは麻の衣服一式装備と、ゴブリンの手斧を二本装備したプレイヤーの姿。
「やっと見付けたぞ、姉御ォ……!あん時はよくも、よくも裏切ってくれやがったなぁ……!」
プレイヤーネーム、オルスロット。ペンシルゴンが嘗て所属していたPKクラン:阿修羅会のクランオーナー
そしてペッパーはオルスロットの顔を見ながら、彼と向き合うペンシルゴンを見つつも、レーザーカジキを庇いながら、他の襲撃者が居ないかどうか警戒する。
「なぁに言ってんだか。私は何時まで経ってもアンタがウェザエモンを倒さないから、先んじて倒しただけなんだよねぇ~?
其れにアンタ達がブクブク肥やして、貯めてきたマーニやアイテムは、アイツとの戦いの資金にしたし無駄じゃ無かった。間接的だけど、ウェザエモン討伐には『一枚』噛んでたんだよねぇ。アンタ達もさ」
ペンシルゴンが言ってる事は一見すれば『正しい』。阿修羅会の資金が、ウェザエモンの討伐に役立った。言い分は確かにそうなのだが、彼女が言うと言葉巧みに『言いくるめている』様にしか聞こえないのもまた事実。
其の行動に反応したペッパーが、アイトゥイルをレーザーカジキの護衛に回し、イーディスを構えて振り下ろされる手斧を、盾の鏡面で受け流すようにして防ぐ。
「ッ!退きやがれ!」
「其れは出来ない相談だ、オルスロット。ペンシルゴンは此れでも、
もう一方の手斧も、新たに両脚へ
「チィッ……!」
黒いコートを纏うプレイヤーが持つ、其の見た目に似つかわしくない白と金の大盾と、刺々しい見た目の
「………『攻撃の時は相手を常に俯瞰の視点で見るべし』。目の前の敵と集中して戦えるのは強みであり、同時に其れを意識しないと、坩堝に嵌まって抜け出せなくなる弱点だ」
「…………は、あ……!!?」
フードを取り、隠した顔を露にすれば、オルスロットの表情は驚愕の色を帯びる。頭上にプレイヤーネームは無いものの、現実の己をベースとして目の色を弄っただけの物だが、久遠にとって見知った顔たる其れは、正体に辿り着くには十分過ぎて。
「あ………『アズサ兄』……!?ペッパーって、アズサ兄だったのかよッ!?」
「やぁ、久し振りだな『クオン』。元気にしてたかい?」
およそ十年振りに、天音 永遠の弟である天音 久遠。そして五条 梓は、シャングリラ・フロンティアという電子の世界で再会したのだった。
再会