勇者達は進む
「ペッパー君、マジで言ってるの?」
「あぁ、大マジだ。ボスとの戦闘エリアの構造上、地面に叩き落とすには、高い機動力持ちのプレイヤーが登って奴とこさんを巣から落としてから、全員で叩いた方が効率的に良い」
「一気呵成……怒濤の津波が如く、なのさ」
屈伸とジャンプの軽い運動にて全身をほぐすペッパーと、其の心を表すアイトゥイル。そして彼は徐に、愉快合羽を上げて「ポポンガさん」と声を出す。
「よっこいしょい……ふぅ、あの若者め。いきなり殴り掛かるとは何事か」
「えっ、ゴブリン!?ペッパー君、此のゴブリン何者?」
「じ、人語……話してる……?あ、でも、アイトゥイルさんも話せてる……し、ラビッツのヴォーパルバニーさん、達も話せるから……良いの、かな……?」
今まで隠れていた喋るゴブリンのポポンガに、ペンシルゴンとレーザーカジキは驚きの表情をしていた。
「実は此方関係のユニークで、今回は『護衛系ミッション』でね。此方にいらっしゃるポポンガさんを、現状シャンフロ最後の街・フィフティシアまで護衛しないといけなくて。空中で事故したら、ポポンガさんも危険に晒す可能性が極めて高いので、ペンシルゴンに護衛を頼みたい。お願いします」
「……ペッパー君が、其所まで言うなら引き受けたげる」
「……すまん、助かる。内側に入ったら、壁際に一気に移動して。落とした所で一気に攻める」
ペンシルゴンにポポンガを、レーザーカジキの護衛にアイトゥイルを付け、三人と一匹と一羽はクラウンスパイダーが根城としている、巨木の内側に足を踏み入れた。同時にペッパーは、
今回使うは
セルタレイト・ケルネイアーによる最初の強烈なジャンプで飛び上がり、同時にウツロウミカガミを飛翔途中に置き去りとし、空中を蹴り跳ねて空を駆けてはまた跳ね、落下物による攻撃を避けて、以前は数分掛かっていた頂上付近到達まで、10秒と掛からなかった。
クラウンスパイダーは
そして
自身の高潔度・歴戦値を参照に、装備している剣系統武器に強力な『炎属性攻撃効果を
「落ちろ、クラウンスパイダー」
ウツロウミカガミの効果終了。クラウンスパイダーは自身の身体が、重力によって落下している事に気付いた時には既に手遅れで、巨木の縁部分に着地したペッパーを道連れにせんと糸を繰り出すも、
そして、地上に落ちた蜘蛛を待つ運命は唯一つ。
『全員ッ掛かれーーーーー!』
自分の持つ最大攻撃魔法の全文詠唱を唱え終えたレーザーカジキと、自らを縛って弱体化して尚も凄まじい魔力を帯びたポポンガ。各々の得物を握り締めながら襲い掛かる、ペンシルゴンとアイトゥイルで。
墜落からの衝撃でスタン状態から動けない、クラウンスパイダーは抵抗する間も無く、肉質無視の刺突に魔の人を切り裂く斬撃、毛の一つすら残さず焼き尽くす炎魔法に焼かれ、確定ドロップを残してポリゴンを崩壊させたのだった………。
「やぁやぁペッパー君。1分は愚か30秒も掛からず、陰湿蜘蛛を叩き落とすとはねぇ。中々やるじゃないの、流石はクランリーダー」
巨木の縁を伝って、一向が待つ地上まで降りてきたペッパーは、早々にペンシルゴンを始めとして、他メンバーからも声を掛けられた。
「ペッパーさん、凄く速くて……カッコ良かった、です……!」
「スキルの使い方が確りしとるからのぉ……。何にせよ、此れで先に進めるの」
「いよいよフォスフォシエ、なのさ」
時間的に御昼にするには速いのだが、そろそろ一度休憩を入れるべきかと考えたペッパーは、全員に休息の提案をしてみた。
「なぁ、皆。フォスフォシエに着いたら、一回水分補給とかを踏まえた休憩にしないか?流石に3エリアをぶっ通しで攻略してきたから、此処等で一休みを挟んでエイドルトを目指すって感じにしたいんだけど………」
「うーん……まぁ、そうだね。何処等辺かで一回休んで起きたかったし、丁度良いタイミングかもね」
「僕も、賛成……します」
「わいも、ペッパーはんの意見に従うのさ」
「状況判断も大事じゃな」
話は纏まり、アイトゥイルとポポンガはペッパーの纏う愉快合羽の中へ入って、ペンシルゴン・レーザーカジキと共に其の歩みを進め、フォスフォシエに到着。裏路地に入った一向は、三十分後に再び此処に集合する事にし。
レーザーカジキが先のエリアに備えて、聖水やマナポーションの購入がしたいと言ったので、一路道具屋に移動。ペンシルゴンはフォスフォシエの宿屋を目指し、ペッパーは二人が離れた事を確認した後、周囲警戒を終えてアイトゥイルが出したゲートでラビッツに帰還。
兎御殿内の休憩室にてセーブ&ログアウト、水分補給とトイレ休憩を行った梓は、寝転がっていた事で硬くなった体を適度に伸ばしてほぐし、再ログイン。ラビッツの道具屋にて消費アイテムの補充を行って時間を潰し、フォスフォシエの裏路地にゲートを繋いで到着。
影に擬態してペンシルゴンとレーザーカジキの到着を待つも、二人がペッパーに気付け無かったのでツッコミを入れながら正体を表すハプニングが有りつつも、一向はフォスフォシエを旅立ち。
同時にペッパーにはリザルト画面が表示された。
『ユニーククエスト【想いの御手は、境界線を超えて】が進行しました』
『条件達成まで、残り━━━二つ』
フォスフォシエより
一方のペッパーは、自身に刻まれたリュカオーンの
「あ、れ?ペッパー……さん、何か……ペッパーさんの、周りだけ……其の、空気が『綺麗』……ですね」
「ホントだ、ペッパー君どゆこと?」
此処でレーザーカジキが気付き、ペンシルゴンが反応。ずずずいっと秘密を暴かんとして、顔を近付けてくる。
「空気が新鮮な理由?此れは右手にあるリュカオーンの呪いのお陰さ。リュカオーンより弱い呪術や瘴気とか、バフデバフ諸々含めて弾く特性が、こうして働いてる」
「ペッパーはんの周りだから、わいやポポンガはんも其の恩恵を受けているのさ」
「聖水を使わんで良いのは、助かるわい」
呪いの効力を説明していると、アイトゥイルとポポンガはコートの中から出て来て、各々ペッパーの両肩に乗っかる。そして其れを見たペンシルゴンは、良い事考えたと言わんばかりの獰猛で悪い笑みを浮かべながら、ペッパーの右腕に両腕を絡ませ、くっ付いてきたのだ。
「ペンシルゴン、急にどうした?」
「ん~?こうして君にくっ付いてたら、聖水の消費も押さえられるって思った訳なのだよ」
「あ、じゃあ僕も!」
「俺はエアクリーナーや、ストーブじゃないんだけど!?」
渾身のツッコミが響くも、引っ付いたペンシルゴンとレーザーカジキは離れる気配が無く、此のエリアを出るまでだからなとペッパーは二人に言った。
途中、ワイバーンゾンビの群れに遭遇するも、ペッパーの右手から放たれるリュカオーンの呪いの気配が、ワイバーンゾンビ達を退けていき、真っ直ぐに谷底を歩み続けた一向は、エリアボス・
「さぁ、一気にブッ飛ばすよ皆!」
『おー!』
ペンシルゴンが音頭を取り、聖水で武器を濡らし突入していったのだった………。
尚、歌う瘴骨魔は聖槍に貫かれ、首を斬られ、魔法攻撃に押し流されました━━━━━とさ