VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

213 / 1074


勇者達は進む




樹海を経てフォスフォシエより渓谷に

「ペッパー君、マジで言ってるの?」

 

千紫万紅(せんしばんこう)樹海窟(じゅかいくつ)に生息し、エリアボスとして君臨する道化蜘蛛ことクラウンスパイダー。

 

「あぁ、大マジだ。ボスとの戦闘エリアの構造上、地面に叩き落とすには、高い機動力持ちのプレイヤーが登って奴とこさんを巣から落としてから、全員で叩いた方が効率的に良い」

「一気呵成……怒濤の津波が如く、なのさ」

 

屈伸とジャンプの軽い運動にて全身をほぐすペッパーと、其の心を表すアイトゥイル。そして彼は徐に、愉快合羽を上げて「ポポンガさん」と声を出す。

 

「よっこいしょい……ふぅ、あの若者め。いきなり殴り掛かるとは何事か」

「えっ、ゴブリン!?ペッパー君、此のゴブリン何者?」

「じ、人語……話してる……?あ、でも、アイトゥイルさんも話せてる……し、ラビッツのヴォーパルバニーさん、達も話せるから……良いの、かな……?」

 

今まで隠れていた喋るゴブリンのポポンガに、ペンシルゴンとレーザーカジキは驚きの表情をしていた。

 

「実は此方関係のユニークで、今回は『護衛系ミッション』でね。此方にいらっしゃるポポンガさんを、現状シャンフロ最後の街・フィフティシアまで護衛しないといけなくて。空中で事故したら、ポポンガさんも危険に晒す可能性が極めて高いので、ペンシルゴンに護衛を頼みたい。お願いします」

「……ペッパー君が、其所まで言うなら引き受けたげる」

「……すまん、助かる。内側に入ったら、壁際に一気に移動して。落とした所で一気に攻める」

 

ペンシルゴンにポポンガを、レーザーカジキの護衛にアイトゥイルを付け、三人と一匹と一羽はクラウンスパイダーが根城としている、巨木の内側に足を踏み入れた。同時にペッパーは、白磁(はくじ)短刀(たんとう)改五を取り出し装備、機動系スキルを次々と点火していく。

 

今回使うは鞍馬天秘伝(くらまてんひでん)全身全霊(フルドレイズ)天翔歩奏(てんしょうほそう)天空神の加護(レプライ・ウーラノス)、ヴィールシャーレ、デュアルリンク、トルクチャージの7種類。MP全消費と全身に施される、鍛えられたスキル達による加護を纏い。

 

セルタレイト・ケルネイアーによる最初の強烈なジャンプで飛び上がり、同時にウツロウミカガミを飛翔途中に置き去りとし、空中を蹴り跳ねて空を駆けてはまた跳ね、落下物による攻撃を避けて、以前は数分掛かっていた頂上付近到達まで、10秒と掛からなかった。

 

クラウンスパイダーは置き去りのヘイト(ウツロウミカガミ)を倒す事に注目しており、此方に気付いてはいない。当然ペッパーは此の機を逃さず、白磁の短刀から焔将軍(ほむらしょうぐん)両刃長剣(ロングソード)に切り替える。

 

そして王斬技能(おうざんぎのう)修羅破断(しゅらはだん)】と共に、斬撃系統武器によるアクションでのダメージ補正を伸ばす『スラッシュハイド』に加えて、剣や刀系統武器装備時に強化を与えるスキルの剣人闘魂(サムライ・ハート)、ランダムに自身のステータス1つを割合強化を加える『一天無双(いってんむそう)』と共に繰り出す。

 

自身の高潔度・歴戦値を参照に、装備している剣系統武器に強力な『炎属性攻撃効果を付与(エンチャント)する』と言う、強力な合成スキル『絶技(ぜつぎ)太陽両断(たいようりょうだん)】』を起動。空中を跳ねて飛びながら、クラウンスパイダーの巨体を支える蜘蛛の巣の支糸を、全て焼き斬った。

 

「落ちろ、クラウンスパイダー」

 

ウツロウミカガミの効果終了。クラウンスパイダーは自身の身体が、重力によって落下している事に気付いた時には既に手遅れで、巨木の縁部分に着地したペッパーを道連れにせんと糸を繰り出すも、適正眼下(ノリティア・アイザック)の自動回避によって躱わされ。壁に引っ付いた糸も、炎属性付与効果が持続していた両刃長剣に断ち斬られ、其の巨体は地面に叩き落とされた。

 

そして、地上に落ちた蜘蛛を待つ運命は唯一つ。

 

『全員ッ掛かれーーーーー!』

 

自分の持つ最大攻撃魔法の全文詠唱を唱え終えたレーザーカジキと、自らを縛って弱体化して尚も凄まじい魔力を帯びたポポンガ。各々の得物を握り締めながら襲い掛かる、ペンシルゴンとアイトゥイルで。

 

墜落からの衝撃でスタン状態から動けない、クラウンスパイダーは抵抗する間も無く、肉質無視の刺突に魔の人を切り裂く斬撃、毛の一つすら残さず焼き尽くす炎魔法に焼かれ、確定ドロップを残してポリゴンを崩壊させたのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁやぁペッパー君。1分は愚か30秒も掛からず、陰湿蜘蛛を叩き落とすとはねぇ。中々やるじゃないの、流石はクランリーダー」

 

巨木の縁を伝って、一向が待つ地上まで降りてきたペッパーは、早々にペンシルゴンを始めとして、他メンバーからも声を掛けられた。

 

「ペッパーさん、凄く速くて……カッコ良かった、です……!」

「スキルの使い方が確りしとるからのぉ……。何にせよ、此れで先に進めるの」

「いよいよフォスフォシエ、なのさ」

 

時間的に御昼にするには速いのだが、そろそろ一度休憩を入れるべきかと考えたペッパーは、全員に休息の提案をしてみた。

 

「なぁ、皆。フォスフォシエに着いたら、一回水分補給とかを踏まえた休憩にしないか?流石に3エリアをぶっ通しで攻略してきたから、此処等で一休みを挟んでエイドルトを目指すって感じにしたいんだけど………」

「うーん……まぁ、そうだね。何処等辺かで一回休んで起きたかったし、丁度良いタイミングかもね」

「僕も、賛成……します」

「わいも、ペッパーはんの意見に従うのさ」

「状況判断も大事じゃな」

 

話は纏まり、アイトゥイルとポポンガはペッパーの纏う愉快合羽の中へ入って、ペンシルゴン・レーザーカジキと共に其の歩みを進め、フォスフォシエに到着。裏路地に入った一向は、三十分後に再び此処に集合する事にし。

 

レーザーカジキが先のエリアに備えて、聖水やマナポーションの購入がしたいと言ったので、一路道具屋に移動。ペンシルゴンはフォスフォシエの宿屋を目指し、ペッパーは二人が離れた事を確認した後、周囲警戒を終えてアイトゥイルが出したゲートでラビッツに帰還。

 

兎御殿内の休憩室にてセーブ&ログアウト、水分補給とトイレ休憩を行った梓は、寝転がっていた事で硬くなった体を適度に伸ばしてほぐし、再ログイン。ラビッツの道具屋にて消費アイテムの補充を行って時間を潰し、フォスフォシエの裏路地にゲートを繋いで到着。

 

影に擬態してペンシルゴンとレーザーカジキの到着を待つも、二人がペッパーに気付け無かったのでツッコミを入れながら正体を表すハプニングが有りつつも、一向はフォスフォシエを旅立ち。

 

同時にペッパーにはリザルト画面が表示された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ユニーククエスト【想いの御手は、境界線を超えて】が進行しました』

『条件達成まで、残り━━━二つ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フォスフォシエより奥古来魂(おうこらいこん)渓谷(けいこく)にやって来たペッパー達一向は、蔓延した瘴気で満ちる渓谷を歩いて行く。レーザーカジキとペンシルゴンは瘴気によるデバフを阻止する為、聖水を飲んだりして対策を取った。

 

一方のペッパーは、自身に刻まれたリュカオーンの呪い(マーキング)がもたらした力によって、瘴気を弾き返して出来た安全かつ清潔な空気を堪能している。

 

「あ、れ?ペッパー……さん、何か……ペッパーさんの、周りだけ……其の、空気が『綺麗』……ですね」

「ホントだ、ペッパー君どゆこと?」

 

此処でレーザーカジキが気付き、ペンシルゴンが反応。ずずずいっと秘密を暴かんとして、顔を近付けてくる。

 

「空気が新鮮な理由?此れは右手にあるリュカオーンの呪いのお陰さ。リュカオーンより弱い呪術や瘴気とか、バフデバフ諸々含めて弾く特性が、こうして働いてる」

「ペッパーはんの周りだから、わいやポポンガはんも其の恩恵を受けているのさ」

「聖水を使わんで良いのは、助かるわい」

 

呪いの効力を説明していると、アイトゥイルとポポンガはコートの中から出て来て、各々ペッパーの両肩に乗っかる。そして其れを見たペンシルゴンは、良い事考えたと言わんばかりの獰猛で悪い笑みを浮かべながら、ペッパーの右腕に両腕を絡ませ、くっ付いてきたのだ。

 

「ペンシルゴン、急にどうした?」

「ん~?こうして君にくっ付いてたら、聖水の消費も押さえられるって思った訳なのだよ」

「あ、じゃあ僕も!」

「俺はエアクリーナーや、ストーブじゃないんだけど!?」

 

渾身のツッコミが響くも、引っ付いたペンシルゴンとレーザーカジキは離れる気配が無く、此のエリアを出るまでだからなとペッパーは二人に言った。

 

途中、ワイバーンゾンビの群れに遭遇するも、ペッパーの右手から放たれるリュカオーンの呪いの気配が、ワイバーンゾンビ達を退けていき、真っ直ぐに谷底を歩み続けた一向は、エリアボス・歌う瘴骨魔(ハミング・リッチ)が待つ、一際濃度が濃い瘴気のドームに辿り着く。

 

「さぁ、一気にブッ飛ばすよ皆!」

『おー!』

 

ペンシルゴンが音頭を取り、聖水で武器を濡らし突入していったのだった………。

 

 

 

 






尚、歌う瘴骨魔は聖槍に貫かれ、首を斬られ、魔法攻撃に押し流されました━━━━━とさ


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。