VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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エイドルトにて、戦力増強




勇者は水晶街にて、新しき武器と危機を手にす

エリアボス・歌う瘴骨魔(ハミング・リッチ)を倒して、ペッパーはアイトゥイルとポポンガをコートの中に隠し、瘴気の谷間を越えた一向はシャンフロ第8の街・エイドルトに辿り着く。

 

奥古来魂(おうこらいこん)渓谷(けいこく)の上部に存在する、水晶巣崖(すいしょうそうがい)より侵食する水晶達から街を守るべく、定期的に水晶の採掘が行われ、其れと共に水晶の加工技術や研磨技術により発展。

 

今では此の大陸内の街で、中盤かつ格安で入手可能な水晶装備や武器が在る場所として、其の名が知れ渡っている程だ。無論、武器屋と防具屋も例外ではない。

 

「おおお~……、すげぇな此の『クリスタルナイフ』って。武器耐久方面も優れてるし、おまけに軽くて扱い易い」

「クリスタルロッド……クリスタルディアラー……。手数か威力か……どっちにしよう……」

「エイドルトは水晶系統の武器に関しては、フィフティシア以上の最高品質だからねぇ。武器は扱いやすさを重視してみては如何かな、レーザーカジキ君?」

「金銭面で余裕が有るなら両方を、もしくは自分が持っている武器種を踏まえて、決めてみるのも有りだと思うよ」

 

エイドルトの武器屋にて、水晶の刀身で出来た短剣こと『クリスタルナイフ(28,000マーニ)』を手にしたペッパーは、店内の灯りに写しながら言い。短杖と長杖のカテゴリーに分かれた武器の、どちらを取るかで悩むレーザーカジキに、ペンシルゴンとペッパーはアドバイスを送る。

 

(水晶装備は防具屋で見たが、装備耐久上昇値は高いけども打撃耐性が低いって言う、無視出来ない弱点が有るからなぁ……。防具の更新はイレベンタルでやる事にしよう)

 

購入したクリスタルナイフをインベントリに収納し、レーザーカジキは悩んだ末に、短杖のクリスタルロッドを選択・購入。一向は武器屋を後にして裏路地に入る。

 

「次のエリアは去栄(きょえい)残骸遺道(ざんがいいどう)。ゴーレム系統が相手なので呪い(マーキング)が効かないから、出来る限り戦闘を避けて行きましょう」

 

イレベンタルに到達出来れば、其の先エリアや手前のエリアでも、レベリングが可能になる。何よりフィフティシア手前に在る街なので、防具や武器も高性能な物が多く、確りと備えれば先々まで活躍が見込めるのだ。

 

(兎に角先ずはイレベンタルまで行軍。防具と武器をチェックしつつ、ランドマークを更新した後は一度兎御殿に帰還して、ビィラックさんの所で武器の耐久値の回復。そしたらペンシルゴンとアイトゥイル、ポポンガさんと一緒にフィフティシアへ到達する。………よし、此れだな)

 

裏路地を駆使して、人目の付かぬ闇の中を進む。いざエイドルトを旅立ち、イレベンタルへ。ペッパーはそう思っていた。

 

「やはり君ならば、此のルートを通ると思っていたよ。ペッパー君」

 

耳に飛来する、聞き覚えた激渋の知性的な声(シルバーインテリジェンスボイス)。路地角から姿を見せたのは、考察クラン:ライブラリのクランオーナー・キョージュだったのだ。

 

「おやおや、おじーちゃん。こんな所にやって来てどうしたの?」

「やぁやぁ、ペンシルゴン君。クラン:旅狼(ヴォルフガング)のリーダーとサブリーダーが、此方(エイドルト)に向かってきていると、我々(ライブラリ)の調査班から報せを受けてね。単刀直入に言うが、私は………いや『クラン:ライブラリ』は君達と少し()をしたいのだが……良いかね?」

 

キョージュの視線はペッパーとペンシルゴンに注がれており、ペッパーはウェザエモンの事だろうかと疑問を抱く中、ペンシルゴンはキョージュの思惑(・・)に気付いていた。

 

(此の狸爺が求めてるのは十中八九、いや断言しても良い━━━━『悠久を誓う天将王装(フォーエヴァー・ウェザリオ)』だね。おそらく旅狼(私達)の誰かが所持している可能性が高いと睨んで、当たりを付けに来た……そんな所かな?)

 

ペンシルゴンの予想は当たっている。キョージュがこうして裏路地まで足を運んで来たのは、数日前にクラン会議でペンシルゴンから5億マーニの大金を払い、見せて貰った『世界の真理書【墓守編】』。其の中に記載されていた、超極秘情報にして『ユニークモンスター・墓守(はかもり)のウェザエモン』に由来する一式装備の事。

 

此の電子の世界(シャングリラ・フロンティア)を考察・解明を活動方針としているライブラリにとって、七つの最強種(ユニークモンスター)に関する装備が有ると言う情報は、ペンシルゴンが言っていた通り超に超が付く超極秘情報であった。故にライブラリの本部に戻ったキョージュは、クランメンバーに情報を開示した後も、全員に外部に流出させずに秘匿しておくようにと、注意喚起を促した程。

 

であればキョージュが此処に来た理由も、ペンシルゴンは自ずと答えに辿り着くには充分だった。

 

(おそらくライブラリは『悠久を誓う天将王装の実物が見たい』って、そんな風に考えてるんだろうねぇ。そうなると『クラン:ウェポニア』が話に噛んでた場合は、更に拗れる予感しかない)

 

クラン:旅狼の保有する『八枚の手札』は、何れも並大抵のレベルでは収まらない、一枚一枚が凄まじく恐るべき破壊力を秘めた物ばかり。扱い方一つで、クランの今後にも影響を与えかねない劇物(・・)でもある。

 

そしてペンシルゴンの思考の中、ペッパーはキョージュにこう言った。

 

「実は今日、自分達はフィフティシアに向かわなくてはいけなくて………。今すぐという事は出来ませんが、空いている日時を御連絡頂ければ、予定が合う日を連絡致します」

 

先ずは自分達の状況を示し、相手に今は手が放せない状態に有る事。そして日時を報せてくれれば、連絡をする事を伝えた。

 

「成程……解った。日時を確認次第、伝書鳥で連絡を送らせて貰うよ。良い返事を期待している」

 

其れではと、スパムメールならぬスパムハヤブサを叩き付けてきたプレイヤーにしては、あっさりと退いた事に警戒心を抱きつつも、一向はエイドルトのゲートを越えて先のエリアへ入って。

 

同時にペッパーの目の前に、リザルト画面が表示されたのだった。

 

 

 

 

 

 

『ユニーククエスト【想いの御手は、境界線を超えて】が進行しました』

『条件達成まで、残り━━━一つ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ペッパー君。さっきのおじーちゃん(キョージュさん)の発言、君はどう受け取った?」

 

去栄(きょえい)残骸遺道(ざんがいいどう)に入り、巨大な生物の背骨と肋骨に見える人工物を遠くから見ていた時、ペンシルゴンがペッパーに問い掛けてきた。

 

やはり話の内容が気になる様子だろう。

 

「もしかしたら………『アレ』かも知れない」

「まぁペッパー君も予想してる通り、おそらく『アレ』な可能性が濃厚だね。上手く日時を伸ばしつつ、相手にペースを握らせない方が良い」

 

クラン:旅狼のメンバー全員が知っている手札であるからこそ、慎重に取り扱わなくてはならない。

 

「ペッパーさん、アレって……何ですか?」

「ん?あー……俺とペンシルゴンの間で扱ってる、暗号みたいな奴かな」

「そーそー。私とペッパー君の間で使ってる、大事な大事な秘密の会話なんだよ、レーザーカジキ君?」

 

優越でニッコリと笑い、ペッパーの右腕に己の両手を絡ませ、ペンシルゴンは宣う。まるで『自分の物だから気安く触るな』とでも言わんばかりの、魔王じみた台詞である。

 

「……ペンシルゴン。取り敢えず、他のプレイヤーを恐喝したりすると、清歯のネックレスが穢れて黒くなるから、あんまりやんない方が良いと思うぞ」

「はぁい、気を付けまーす♪」

 

ペンシルゴンを落ち着かせつつ、ペッパーは此のエリアに存在する、ゴーレム達の特性を踏まえて、エリアボスに辿り着く為の方法を思考。其の果てに、彼は二人に言った。

 

「ペンシルゴン、レーザーカジキ」

「ん?なぁに、ペッパー君?もしかしてまたお姫様抱っこ?」

「何ですか、ペッパーさん?」

「お米様抱っこで、エリアボスの所まで一気に運びたい。協力してくれないか?」

 

両手を広げ、運搬態勢を整えているペッパー。ペンシルゴンは自分がお姫様抱っこに成らなかった事に、少し不満を覚えながらも、逆にイレベンタル以降はNPCを除けば実質デートになると考え、右腕に己の身を任せ。

 

レーザーカジキは「お、お願い……します」と恐る恐る、彼の左腕に寄り添い凭れて。二人が両腕に収まったのをトリガーとしてか、ペッパーは足腰に力を入れて、持ち上げ。

 

「確り掴まってて」と一言、踏み出す足は力強く大地を蹴り上げ、ペッパーが走り出す。道中で複数のゴーレムと出逢うも、持ち前の機動力(スピード)持久力(スタミナ)、そして育てたスキルを点火しながら駆け抜けていく。

 

(あぁ……やっぱり格好良いなぁ。あーくん)

 

真っ直ぐに目的地を見据え、右腕の緊張具合と真剣な表情で走り続けるペッパーを見ながら、ペンシルゴンはそう思い。

 

(ペッパーさん、凄いや……。ゴーレム達を、置き去りにして………何れくらい努力したら、此処まで辿り着けるんだろう……?)

 

自分が見ている景色の移ろいに対する驚きと、見知り憧れたプレイヤーの持つ力の一端を知って、改めて彼をもっと知りたいと、レーザーカジキは心に抱き。

 

二人を抱えながら走るペッパーは、瓦礫の小山を駆け登り、立ち塞ぐゴーレムを踏み越えて、其の脚でエリアボスのオーバードレス・ゴーレムが待つ、フィールドへと辿り着いた。

 

「!着いたよ、皆!」

 

お米様抱っこ状態だったペンシルゴンとレーザーカジキを下ろし、愉快合羽からアイトゥイルとポポンガを出す。

 

三人と一羽と一匹が見つめる先には、残骸遺道に点在する瓦礫の山の中でも一際巨大な山であり、侵入者達を感知して動き始めて、其の巨体を彼等彼女等の前に見せ付ける。

 

「お、大きい…!」

「直線で行けるとは言っても、後半エリアのボスだ。裏技(・・)を使えば簡単に倒せそうだけど……ペッパー君、やれる?」

「任せとけ、ペンシルゴンはポポンガさんを。アイトゥイルはレーザーカジキの護衛に入って」

 

パーティーメンバーに指示を出しつつ、ペッパーは手に入れたばかりのクリスタルナイフを逆手持ちで装備し、単騎で巨大ボスの前に躍り出た。脳内で精査し、組み上げるはオーバードレス・ゴーレムの攻略チャート。使えるスキルを洗い出して、走り始める。

 

レーザーカジキのエリア攻略を助ける為、イレベンタルで装備を更新する為、速攻による攻略が開始された。

 

 

 

 






エリアボスを越えていけ


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