フィフティシアを目指して
シャングリラ・フロンティア第11の街・イレベンタルと現状最後に行ける街であるフィフティシアの間を繋ぐエリアであり、巨大な瓦礫と何もない草原が共に在る、大規模な戦場跡地とされる場所だ。
見渡せば
そして何よりも。ペッパーやレーザーカジキにアイトゥイルを含め、此のエリアを訪れた事がない面々の眼を一際引いたのが、巨大な
「何だあの腕……」
「ライブラリ曰く、昔此の辺りは大規模な戦闘の痕跡が在ったらしくてね。ペッパー君も其の辺りに興味が有るのかい?」
「まぁね。あのサイズのモンスターってシャンフロに居ないから、気になってさ」
SOHO-ZONEの説明と問い掛けに、聖盾イーディスを構えつつも周囲警戒を怠らず、ペッパーはそう答える。チラリと横目で見れば、アイトゥイルを抱っこしながらモフモフを堪能しているAnimaliaの姿と、ポポンガから授業か何かを受けるレーザーカジキの姿を見る。
「あ、そう言えばSOHO-ZONEさん。以前から気になってはいたのですが、主に戦闘で使ってる武器って何でしょうか?」
親友がどのようなバトルスタイルをしているのか気になったペッパーは、SOHO-ZONEに質問すると彼はこう答える。
「自分は主に『弓』や『ボウガン』を使ってますね。クランメンバーが武器の性能を十二分に試せるよう、ヘイトを集める高機動後衛……という奴でしょうか。因みにペッパー君は?」
「スタミナ敏捷筋力を中心に鍛える、高機動仕様ですね。武器は今使ってる盾や、小鎚に刀、短剣短刀、他にも籠脚。後はイーディスを外せるようになったら、鞭や手斧に片腕仕様の籠手とかも使いたいかなと」
「あらぁ~随分多彩なのねぇ、ペッパーさん」
そんな折、興味津々な様子で言葉を発したのはマッシブダイナマイト。やはり見た目と声のギャップが大き過ぎて、笑いそうになってしまう。
「ち、因みにマッシブダイナマイトさんは、どんな武器を使っています………か?」
「私は大剣や大斧を使ってますわ。ステータスは死なない事と、武器を振るう事が出来るだけの数値、後は全て筋力に『極振り』していますの」
極振りとは、ステータスポイントが絡むゲームで耳にする、プレイスタイルの一つでもある。ある一つのステータスだけに能力値を振り込み、最大到達点を突き詰めていく事を指す其れは、普段の戦いでは非常に『ピーキー』な立ち位置に居ながらも、得意とする戦いでは『無類の強さ』を誇る存在だ。
「マッシブダイナマイトさんの凄まじさは、私達SF-Zooを始めとして、他のプレイヤーにも届いているわ。一度私達の所のタンク達を彼女の護衛に付けた事が有るのだけど、アレは本当に凄かった……」
「其の時は僕も一緒でしたけど、あの……本当にすごかった……です!」
「マッシブダイナマイトさんに憧れて、其のプレイスタイルを模倣するファンも多いのだとか……」
改めて考えると、クラン:
「っと、また来た!」
「此れでざっと『20回目』の襲撃みたいね、ペッパー君…!」
「全員、気を付けなさい!」
そして襲い掛かるは、
ユニークシナリオ【勇ましの試練:聖盾之型】。其れは盾の
他プレイヤーやNPCと一定人数以上でパーティーを組み、危険度S以上のエリアを踏破する事が大まかなクリア条件なのだが、問題はイーディスを装備している為なのか或いは仕様なのかは知らないものの、モンスターの襲撃頻度が普段の三倍まで増えていた。
此のエリアのモンスターを、徹底的に調べ尽く上げたAnimaliaが断言し切った程なので、間違いでは無いだろう。何よりも四方八方縦横無尽に襲い掛かる、レベル99越えの終盤エリアのモンスター達。油断していれば一瞬でパーティー崩壊すらザラでは無い話である。
「ハードラック・ライノは直線的にしか来ないわ!ストーム・ワイバーンは羽ばたきを止めれば、突風攻撃は起こせない!」
「俺が盾で受けつつ止めますので、マッシブダイナマイトさんは其の間に攻撃を!Animaliaさん、SOHO-ZONEさん、レーザーカジキは空中からの敵を牽制、ペンシルゴンはちょっとデブッチョのリザードを頼む!各所の援護入ります!」
「任せて、ペッパー君!」
「はい、頑張ります!」
が、此処に居るのはシャンフロ屈指のプレイスキルとレベルカンストのプレイヤー達。聖槍のギラリ輝く煌めきが、分厚い脂肪と肉質を無視して心臓を穿ち。金と白の鏡面宿す盾が突撃をいなして、再び高速機動でカバーリングを行い、振るわれる大剣が突撃犀の胴体を真っ二つに切り裂き。
プレイヤー屈指の呪術師のデバフが四翼の翼竜の動きを鈍らせ、青の魔術師と今は弱体化している極星大賢者の雷属性魔法が走り、竜の翼を止め。打ち込まれる爆撃の矢が着弾して、落ちる竜の翼を黒兎の斬撃が切り飛ばす。
「決める!」
『
メタルフィストのスキルで拳を鋼鉄化し、デュアルリンクの強化に加え、自動発動したラセルクロスアップで補強、最後の〆としてトルクチャージを加えながら、先の戦闘に備えつつも全力でストーム・ワイバーンの横っ面に右ストレートを叩き付け、爆発の衝撃と共に殴り倒す。同時にレーザーカジキとペッパーに、レベルアップを告げるSEが鳴り響く。
「ふぅ……やっぱり、此処等辺のモンスター達は軒並みレベルが高いな」
パーティーメンバーの援護やアシスト有りとは言え、此処までレーザーカジキやAnimalia、SOHO-ZONEにポポンガが被弾0で進められているのは、前衛を張るペンシルゴンやアイトゥイル、高速インターセプトで防衛に入るペッパーと一撃仕留めるマッシブダイナマイトが、想像以上に噛み合った結果なのかも知れない。
「其れにしても………凄いわね、ペッパーさん」
レベルアップで変化したスキルを確認しつつ、敵の襲来に備えて周囲警戒を続けていると、アイトゥイルを抱っこしたAnimaliaが声を駆ける。
「どうしましたか?」
「いやね、ペッパーさんのスキルって見た所、かなり強力な物が多いなって思って。見た感じ、格闘や脚撃に打撃系スキルが特に印象的だったし」
「私も其れは思ったわ~。ペッパーさんって、結構な回数の『レベルダウンビルド』をこなしているのかしら?」
さて、どう答えた物かとペッパーは思考する。何せ此のゲームを始めてから、一度たりともレベルダウンビルドをした事が無い上に、自分のスキルは
下手に情報を開示したならば、サンラクとの関係に関して嗅ぎ付けられる可能性は非常に高くなるし、何なら既にペンシルゴンにはバレているかも知れない。そして此の手の廃人達が戦闘経験値を半減させて、レベルアップステータスポイント倍率変動アイテムの存在を知れば、また面倒な方向に話が傾く未来しか見えて来ないのだから。
「レベルダウンビルドは数回ですかね……。あとスキル育成のコツは、自分の場合『戦闘以外でもスキル』を使う事………と考えてます」
「戦闘以外で使う?其れとスキル育成って何の関係が有るの?」
「レベルアップ時にスキルを覚えるか否かは、レベルアップした『其の時点』でのスキルへの
移動一つにしても、ダッシュやステップによる移動方法は有りますし、崖を登るにしても武器やら三角跳びと、少し考えれば色々出て来るので、常に試行錯誤しながらプレイしていますから」
警戒を怠らず、周りを見渡しながら歩くペッパーに、Animaliaとマッシブダイナマイトは言葉が続かなかった。最強種の一体・夜襲のリュカオーンから
両手が使えないなら片手で使える武器や戦いを、腕が駄目なら脚による戦い方を。思考し、実行し、修練し、研究し、検証し、継続する。其の繰り返しの中で培われてきた物こそが、ペッパーの持つ強力なスキル達なのだろう。
(あーくんのスキルって、どうも『変』なんだよねぇ。エフェクトは派手だし、破壊力も凄い、でも再使用時間を気にしてた。………もしかして主力組が『神系統』に到達してたり?数回やったって言ったけど、だとしたらレベルダウンビルドを『何回』やった……?)
そしてペッパーが説明しながら周囲警戒を続ける後ろで、ペンシルゴンは彼の説明とサードレマでのリキャストタイム云々から、其等が神の名を関する領域に踏み込んでいると予想を立てる。
様々な思惑渦巻く中で、パーティーは戦場跡地を進んでいく……。
開拓者達は知る。黒い流星の強さを支える柱の一つを