パーティープレイは続く
「はああああああッ!」
拳に無数のエフェクトが交じり、迸る稲妻の様にリザード型の敵に叩き付けられる。
「気絶付与しました!!」
「ナイスだ、ペッパー君!」
ステップ回避と同時に後方で待機していたSOHO-ZONEが、己が獲物たる弓を片手にギリギリと弦を引き、風を貫き穿つ一本の矢が放たれ、脳天を寸分の狂い無く撃ち抜くや、敵を討ち取ってみせた。
「ペッパーさん、本ッ当によく動くわね……」
「体がピカーって光って、ずぎゅーんって走って、ドドドドドって感じでした!」
「レーザーカジキ君の言うことも、あながち間違っていないな………。しかし本当に凄まじい……」
後ろでAnimaliaとレーザーカジキ、SOHO-ZONEがペッパーの事を話し合っているが、聞いたら聞いたで面倒な事になりかねないので、見えていない今の内に拾ったアイテムをインベントリアの方へ収納していく。
「ストーム・ワイバーンの牙に翼膜、鱗に爪……ハードラック・ライノの足爪や表皮、そして角………他にも色々手に入ってるな。売ったらマーニも相当手に入りそうだ」
「イレベンタルからフィフティシアに着けば、此のルートを通ってきたプレイヤーのレベリング場所に、うってつけだからねぇ」
同じようにドロップアイテムをインベントリアに収納し、ペンシルゴンが地図を見せながら、ペッパーの隣に近付いてくる。
「距離としては半分以上を切った感じか。皆さんの武器の耐久値や矢、マナポーション等の残量は大丈夫ですか?」
「此方は矢の数が少し心配ですが、一応魔法弓も持っています」
「私とレーザーカジキさんは、MPに余裕は有るわ。マッシブダイナマイトさんやペンシルゴンさん、ペッパーさんにアイトゥイルちゃんが、前衛張ってくれているお陰で当てやすくて助かってる」
「私の武器も大丈夫よ~」
「ペッパー君と私の勇者武器は、まだまだ余裕だよん?」
かなり大変な道程だが、順調にフィフティシアへ進めている。此のまま行ければ良いが……とペッパーは思うが、盾の
「………………ん?何か聞こえるのさ」
「え、どうしたのアイトゥイルちゃん?」
兎の耳に轟くは大地を蹴り、驀進する大質量の足音。40回目ともなれば、此の辺りのモンスター達がどんな足音や翼音、鳴き声を鳴らすかは嫌と言う程、記憶に刻まれる物だ。
「皆はん、高い所へ!サイが来てるのさ!」
足音の主は『ハードラック・ライノ』。突進能力に秀でた爆走犀であり、真正面から受けた場合は一定以上の筋力が無ければ、吹き飛ばされてしまう程の威力を誇る。しかし秀でた突進能力の代償に、横に回り込めば無防備なので攻略方法が解れば、其所まで驚異ではない。
そして何よりも、ハードラック・ライノの最重要危険攻撃が突進である為に、背丈より高い場所に登ってしまえば、其れを受けずに済むのである。
「よいっしょっと………全員無事ですか?」
「私達は大丈夫よ。近くに高台が在って助かったわ」
「しかしアイトゥイルさんの耳は、物音をよく捉えてくれますね………」
巨大な瓦礫の山の上に避難し、下の様子を見るとハードラック・ライノが群れを成しながら、先程までパーティーが居た場所に殺到して来た。後少しアイトゥイルの耳が音のキャッチに遅れていたなら、勇者武器を持っているペッパーとペンシルゴンは何とか耐えられたかも知れないが、他のメンバーはタダでは済まなかっただろう。
「パーティーを護る事も、護り手の大事な仕事だからな……」
幾ら勇者武器が凄まじい耐久値を誇っていても、再生する事は出来れども、使い続ければ何れは壊れる運命は変えられない。ハードラック・ライノ達の移動先を見定めつつ、フィフティシア方面に向かうルートと爆走犀の群れが重ならないルートを割り出さんとし。
そして此のエリアの動物系モンスターの生態を、徹底的に隅々に渡って調べ上げてきたAnimaliaは、アイトゥイルを抱っこ&撫で撫でしつつも、ハードラック・ライノ達の動きに『違和感』を感じ取っていた。
「ねぇ、皆。あのハードラック・ライノ達の群れの動き、何か
「えっ、何か変なの?園長さん」
「そう。まるで何かに
其の刹那。パーティーの目の前を『何か』が勢い良く通り過ぎ、同時にハリケーンに似た突風に襲われ。次の瞬間、自分達が見送り過ぎ去ったハードラック・ライノの群れが行った方角から、犀特有の鳴き声が上がる。
「ッ!?今の何!?何か通り過ぎなかった!?」
「いや、滅茶苦茶速かったぞ!?」
「あらあら……何か凄い事になりそうねぇ……」
何だ何だとパーティーメンバーがざわつく中、アイトゥイルは自身の宝物である単眼望遠鏡を取り出して、其の方角を凝視し………言葉を失う。
其れは四翼を背に携える翼竜であり、ペッパーがラビッツで30に近い死闘を経て倒し、今ではあの頃よりもずっと倒すのに時間が掛からなくなった、此のエリアの頂点捕食者たる『ストーム・ワイバーン』で間違いない。
しかし、其の翼竜は従来種の『およそ2~3倍』の巨体を持っており、翼も通常より大きく、全身の筋肉もバキバキのボディービルダー顔負けに等しい肥大化と仕上がり具合。
何よりもハードラック・ライノの群れを襲い、獲物を喰らい食している姿は獰猛で荒々しく、成熟体だろうが幼少体だろうが、一切『見境無く』食い荒らしている。そんな凶悪で残忍な翼竜と、単眼望遠鏡越しに見ていたアイトゥイルの視線が『合った』。
「ペッパーはん!皆はん!あのストーム・ワイバーンに気付かれたのさ!?」
「な、全員戦闘準備ーーーーーーー!!?」
アイトゥイルの声を受け、全員が即座に散開したと同時に、其のストーム・ワイバーンは翼を羽ばたかせ空を舞い踊るや、先程まで一同の居た場所に凄まじいスピードで飛来・砲弾が着弾するかのような爆音を轟かせ、己の存在を誇示する。
名を『ストーム・ワイバーン"
ペッパーの持つリュカオーンの呪いに屈する事無く、己の腹を満たせる者達の存在に引き寄せられた、不世出たる翼竜は雄叫びを上げ、開拓者の一団に襲い掛かったのである。
襲来、エクゾーディナリーモンスター