vs 威風堂々
突然だが、筋肉を支える物とは何だろうか?上質なタンパク質の摂取か?日々のトレーニングによる研鑽か?
其れも『一理』有る。だが私は、其の答えに対して『骨』であると示す。骨とは生物の『歩走行』や生物『たらしめる』動きに必要不可欠である、と考えている。
しかし骨という物は意外な事に『脆い』のだ。例えば人体を形成する骨も『206本』と多いには多いが、転んで骨に皹が入ったり、下手をすれば骨折と常に危険と隣り合わせだ。
だが━━━━生物の持つ骨という物は『強い』。皹が入る事や骨折を経験しながら、彼等は其の環境に適応するように自らを鍛えて、より頑強で強固な骨とするのだ。
ストーム・ワイバーンの中には稀に、赤子の頃より『筋肉が異常発達する個体』が産まれてくる事が在る。殆どの個体が成熟し切る前に、成長・発達した筋肉に骨と内臓を押し潰され、早死にしていく。
しかし其の中で。極少数ながら、骨が発達する筋肉に屈する事無く、異常な成長速度に『適応』し。破壊と再生によって、己を支える骨を作り出す個体が現れる。骨の相次ぐ破壊に適応し、再生によって其の骨を強く太く硬くした其の個体は、通常種の倍の体躯を誇る存在として、
其の身を今尚襲い続ける『骨の破壊と再生による痛み』に耐え忍び、堂々たる『威光』を掲げる翼竜へ、此のエリアに住まう生物達は畏怖を、或いは恐怖を以て、其の者の名を叫ぶのだ。
「と言うか、あのストーム・ワイバーン何!?通常種の2倍の体格に、純粋な身体スペックは3倍強ってどんな化物よ!?」
「前に此のエリアでレベリングしてた黒狼のメンバーちゃん達が、ボロボロになって帰って来た事が有ったけど……もしかして『アレ』なのかしら?」
「Animaliaさん、マッシブダイナマイトさん!兎に角奴の『竜巻のブレスの射線上』に入らないようにしてください!此方で注意を惹き付けます!」
「ぼ、僕は速度強化の補助魔法を掛けます!」
「マッシブダイナマイトさん、カバー入ります!ペンシルゴンはポポンガさんを護りつつ、カレドヴルッフの攻撃タイミングを見据えてくれ!」
「任せなさーい!」
ストーム・ワイバーン"
先ずはストーム・ワイバーンが其の名を冠する、象徴たる技『竜巻のブレス』。通常種でも厄介な技だった其れは、威風堂々が放つと視界内の瓦礫の山を『一撃で薙ぎ払う』だけに止まらず、上空を飛ぶ彼の者の所へ届かせる為の手段を、確実に奪い去って来るように放つ。
次に厄介なのは威風堂々の『頑強な巨体』。竜巻ブレスを回避し、上空からの強襲攻撃を凌ぎ、数十秒間地上に居る時間は在るものの、其の翼竜の身体を攻撃した所物凄く『硬い』のだ。此れは予測では有るが、唯でさえ鍛えた『筋肉による硬さ』+剛強と化した骨によって筋肉と骨を支える『腱が引き伸ばされ』、其の結果として『剛力かつ強靭な筋肉の鎧』を常に纏っている。
そして最後にシンプルな『スペック』と言う、圧倒的で単純明快な要素が絡み、ストーム・ワイバーン"威風堂々"はパーティーを苦しめていた。
「竜巻ブレス、来ま━━━━?!」
「SOHO-ZONEさん!危ないッ!」
メンバーの中でも一番足の遅い、レーザーカジキとポポンガを援護するペッパーを狙わんとした威風堂々は、爆撃の矢を放って注意を惹こうとしたSOHO-ZONEに急遽狙いを変更。其れに逸早く気付いたペッパーがSOHO-ZONEを抱えて射線上から外した瞬間、ブレスが飛来。
彼を投げて安全圏へ飛ばした刹那、風の圧力によって揉みくちゃにされて、残骸の壁に叩き付けられ。同時に聖盾イーディスが眩くや『黄金の輝き』を放ちて、持ち主たるペッパーの全身を包む。
『ペッパー君(はん)(さん)!』
「ガッ………!?はっ…!よ、よし……『復活』出来た……!危ねぇ……!」
打ち付けられた瓦礫から其の身を起こし、聖盾の勇者は再び立ち上がる。
(ストーム・ワイバーン以上のスペックモンスター。さぁて、此の化物をどうやって攻略しようか………!)
ペッパーがユニークシナリオ時に対峙し、ストーム・ワイバーンを攻略した時のチャートをなぞり、思い出す。あの翼竜は四つ在る翼を折るか翼膜を破壊すれば、空中で飛べなくなる様になっていた。
しかし強靭な筋肉によって、翼の骨を折るのは困難を極める。故に狙う場所は、翼膜以外有り得ない。
「先ずはストーム・ワイバーンを此れ以上空中に飛ばせない事………!SOHO-ZONEさん、ポポンガさん、レーザーカジキは威風堂々の翼膜に集中攻撃を!」
「解った、ペッパー君!」
「ホッホッホ……任せんしゃい」
「や、やってみます!」
遠距離攻撃可能な職業持ちのプレイヤーに指示を出しつつ、ペッパーは盾を構えながらダッシュを開始。
ソニック・アサルトとデュアルリンクを加えながら、
平地を走り、シャープターンで方向転換。己のMPを全てを
フィールドでは現在、SOHO-ZONEがペッパーの復帰までの間を囮として、威風堂々のレーザーカジキ・ポポンガ・アイトゥイル・Animaliaに対するヘイトを集め。ペンシルゴンとマッシブダイナマイトは荒ぶる翼竜を止めんとし、各々の武器をスキルと共に振るっている。
そして当然ながら、敵は
「敵からしたら吹き飛ばした奴を無視するのは、当たり前っちゃ当たり前か……!」
だからこそ、其の思考を突く。
「覚悟しろ、威風堂々………!」
「よう、威風堂々!此れは俺からの大サービスだ、たっぷりと受け取りなッ!」
己を無視し、パーティーメンバーを食い殺さんとした不世出の存在にして、エリアの真の頂点捕食者たる翼竜の顔面に、聖盾イーディスの鏡面が煌めきを纏いて激突。
スキルを積み重ね、連ね紡いだペッパー渾身の打撃が、此処に炸裂したのだった。
其の背を押す者が居る限り、盾の勇者は決して折れない