槍と盾の勇者はゆったりと休息す
フィフティシア行軍+
時刻は現在午後三時であり、此処フィフティシアの波の音と潮の香りに海風が吹き、日光の暖かさも相まって日向ぼっこに丁度良い気候である。
そんな中、ペッパーとペンシルゴンの二人はフィフティシア某所に在るカフェテラスにて、海が見える一番良い席を一区画貸切としつつ、紅茶とスコーンでティータイムと洒落込んでいた。
因みに各々のクランに関わる話でも、此の店のマスターは口外しないと約束してくれている。
「まさか此の店がクラン:
「まぁ彼処ってメンバーごちゃごちゃだけど、シャンフロじゃ最前線突っ走ってるクランだからねぇ。
「剣聖の固有魔法……かぁ。前にプレイしたレトロゲームの必殺技に、自前のエネルギーソードを生成・浮遊・ホーミングさせる技が有ったなぁ……」
ペンシルゴンの話を聞きつつ、ふと思い出すは兎御殿で遭遇した
「あと驚いたのは、此のカフェテラスが『テイムモンスターの立ち入り禁止じゃなかった事』だなぁ……」
ふと視線を移せば、モンスター専用の椅子とテーブルに着き、人参味のスコーンを噛るアイトゥイルと、フィフティシアに到着した事で自らを縛った制約から解き放たれ、元の力を取り戻したポポンガが優雅に紅茶を嗜んでいる姿が。
一応ペッパーも入店前、店員へ事情の説明を行った所、快く許可を貰ってホッとしている。もし駄目なら別の店を探すか、一羽と一匹を隠して入店するしか無かったので助かった。
と此処でペンシルゴンがテーブルに肘を置き、妖艶な目をしながらこんな事を言ってきた。
「そう言えばさ、ペッパー君。今の君ってレベル幾つなの?」
「ん?今のレベル?俺77だが?」
「フムフム……ぶっちゃけ聞くけど、ペッパー君のスキルって『神系統』に届いてるよね?」
「……………へ?」
本来は神の名を冠するスキルに魔法達は、習得に漕ぎ着けるまで膨大な戦闘経験を要する。だからこそ『おかしい』と彼女は感じた。
墓守のウェザエモン━━━━レベルを50に固定して戦うという、理不尽極まるユニークモンスターに備えてレベルを50まで上げていたが、戦いを終えて魔神の丸薬による副作用でレベル20に下がっていたオイカッツォは、戦いの後に得られた経験値でレベル48まで戻ったらしい。
であれば、だ。少なくともレベルが25上がっていなくては、其の計算が合わない。そして新しいスキルの習得や、スキルの進化には莫大な経験値が必要になる。なれば、考えられる答えは『唯一つ』。
「もっと詳しく言おうか、ペッパー君。君は『戦闘で得られる経験値を半減させる』━━━━そんなアイテムかアクセサリーを持ってるんじゃないかな?」
やっぱりペンシルゴンって、キョージュと同じで僅かに情報を漏らしたら、大体の当たりを付けてくるの怖いわ。其れがペッパーの抱いた、ペンシルゴンに対する評価である。
(何時からバレてたのかなぁ………)
オーバードレス・ゴーレム、ストームワイバーン"
「………根拠は?」
「ん~?勘かな?」
「そんなんで良いのかよ………」
「いーの。其れに女の勘って、大体当たるんだよ?ペッパー君」
ニンマリと微笑むペンシルゴン、ペッパーは腕輪の出自に関する重要情報を秘匿しつつ、此の状況を乗り切るべく、右手首に着いたままの腕輪を見せる。
「……大体当たりだな、ペンシルゴン。理由としてはコレ」
「腕輪?見た感じは何の変哲も無い、金色の腕輪のように見えるけど」
「此方の『ユニーク関係』で手に入れた代物でね。レベルアップする度に外すか否かを選択が出来、装備中は戦闘経験値を半分にする代わりに、レベルアップ時のステータスポイントを1,5倍+スキル及び魔法の進化と習得率に影響を与えてくれる、そんな効果を宿したブッ壊れの腕輪」
「…………マジ?」
「マジ」
シャングリラ・フロンティアというゲームは、高い自由度と現実世界の物理エンジンが働く、凄まじい完成度を誇る神ゲーなのだが、根本的なゲームカテゴリーは所謂スキル魔法ゲーに分類されている。武器や防具にアイテムは勿論、話術・反射神経・反応速度等のプレイヤースキルも立派な手札では有るが、其の戦略や戦術に直接影響を与える物がスキルと魔法なのだ。
如何に反射神経や反応速度が優れていたとしても、其れを容易く引っくり返し得る可能性を秘めているのが、何を隠そう『神の名を冠するスキルや魔法』であり、使い方によっては一手で戦局を変えられる。
「えぇ………っと、ペッパー君?君、其れ何時から着けてるの?」
「ウェザエモンさんとの戦いの前からだが?」
「…………つまり君は、既にレベル99に匹敵するステータスとスキルを保有してる………と?」
「まぁ、そうだな」
サラッと言っているが、普通に考えればとんでもない事だ。数時間前に此方を煽りに煽って走り去って行った
そしてペンシルゴンは知らないが、既にペッパーの主力級スキルの一部は、
「レベルダウンビルド勢が、血涙流して歯軋りしそうだねぇ………」
「魔神の丸薬使って行うんだっけ?」
「そうそう。積み上げてきた物を失う喪失感に苛まれながら、歯を食い縛って戦うのだよ……。別の手段が有れば、其れを用いるんだろうけど」
ぐいっと紅茶を飲み干して、一息着いたペンシルゴンはステータス画面を操作しながら、自身のスキルを確認するペッパーを見つめる。あの腕輪を此のまま装備し続けて、其の果てにレベル99まで登り詰めたなら、一体どうなるだろうかと興味が湧いてくる。
「あぁ、ペンシルゴン。俺此れから
「良いよー。ねぇ、あーくん。其れが終わったらフィフティシアの観光しようよ、とっておきの穴場スポットも知ってるからさ」
「穴場スポットかぁ……興味も有るし、付き合うよ」
ペッパーが一日フリーである事を利用し、ペンシルゴンは此のまま、夜までデートを続けんと画策し、思考を巡りに巡らせる。今日一日で彼との距離を更に詰めて、行く行くは『電話番号交換』に漕ぎ着けんと、此の先の事を考えていく。
フィフティシアに、シャンフロの世界に夕暮れ刻が迫っている…………。
ペッパーの力を支える逸品