VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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此れはお前が決めた道




歌は高らかに、誰かに届くように

ペッパーが影法師が課した試練により、裏路地から劇場へ案内された頃。ユートピア社内地下10階の原典閲覧室にて、シャングリラ・フロンティアの創世神たる継久理(つくり) 創世(つくよ)は年代のPCに向き合っていた。

 

「ペッパー、オルケストラのユニーク遺機装(レガシーウェポン)に至る為の試練に入ったか」

 

黒闇の中に吸い込まれ、劇場へと案内されていく姿を神の視点から見つつ、彼女は『プログラム』を起動する。

 

「三回目の試練。だけど、此れ以上進ませる訳には行かない」

 

ペッパーの今に至る(・・・・・・・・・)戦闘の記憶を、今回の影法師に反映したデータが、七つ在るサーバービルの一つ『オルケストラ』に送信され、同時にアップデートを行っていく。

 

「さぁ………オルケストラの課した試練。越えられるなら越えてみなさい、ペッパー」

 

創世の神が記したデータから、オルケストラ━━━━『冥響(めいきょう)のオルケストラ』は影法師を強化する。そして同時に挑戦者へ叫ぶ。

 

彼女の歌を聴いて(・・・・・・・・)………と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ……来た来たァッ!」

 

浮遊感、後に足裏に痺れ。落下ダメージは発生しておらず、辺りを見渡せば薄暗いながらも、三度目の風景たる中世ヨーロッパ風劇場と観客席が在った。

 

「無事に入場出来た訳だが……他のプレイヤーが入っても大丈夫な訳か」

 

フィールドに入る事自体は出来るらしいが、戦闘が始まれば一対一がデフォルトになる事から、おそらく此の影法師を操るユニークモンスターの攻略推奨人数は、『一人』である可能性が極めて高いと見て良いだろう。

 

「ペッパーはん、また此処なのさね」

「来おったか……劇場の中に」

「だな。おーい、おーいペンシルゴーン。目を覚ませー」

「ウフフ………♪」

「駄目だコリャ……」

 

使い物にならなくなったペンシルゴンを下ろし、肩を揺さぶらんとした其の瞬間、伸びてきた黒い影の手がコートから出て来たアイトゥイルとポポンガ、そしてポワポワ状態のペンシルゴンを掴んで、ステージから退場させていく。

 

「ペッパーはん、頑張ってなのさ!」

「ペッパーよ、気張れよ……!」

「あぁ、確り攻略してやるぜ!」

 

ステージに唯一人残されたペッパー、彼の耳に聞こえ響くは、三度目となる歌声。しかし其の歌声のリズムが今までとは違う(・・・・・・・)

 

『ラララ………ラララ、ラララ~♪ラララララ~~~ラーーーーーー…………♪』

 

同時に注がれるは、スポットライトの光達。白く、白く、白く。視界が、ステージが塗りつぶされ、観客席はオレンジのライトが点り、場内が明るくなっていく。

 

『ララ、ラララー♪ラララララ~、ラララ………ラララ~~…………♪』

 

歌声が響く。自分だけに捧げられる様に。

 

『私は………貴方の強さを知った。貴方の奏でる………歌を聴いた。私は歌い、貴方も歌う…………』

 

其の声はやはり『悲しそう』に聞こえ。足元を見れば影が蠢き、離れて黒いペッパーの形を作り出す。

 

『影は何時も貴方を見る………』

 

飛来する影法師の愉快合羽(グルナー・ト・シェミンコート)を掴み、黒ペッパーが袖を通して静かに立ち上がる。

 

『さぁ、三度示して……貴方の光を。影が見つめる、貴方の輝きを。揺らぐ事無い、貴方の強さを……』

「今回は何時の自分が来…………!?」

 

ペッパーが甲皇帝戦脚(エクスパイド.ウォーレッグ)とイレベンタルで入手した新武器・風竜骨の筋鞭(ストーム・ウィッパー)を装備したのに対し、黒ペッパーが装備したのは何と両脚に『レディアント・ソルレイア』、左手には『聖盾(せいじゅん)イーディス』が。

 

「おい、嘘だろ………?『今日討伐したオーバードレス・ゴーレムの時の自分』………!?」

『影は時間を問わず、場所を問わず……。見定むは……過去と、今……。乗り越えるは未来の己━━━━━!』

 

 

 

 

 

ペッパーを示す物語。幻想曲(ファンタジア):尽きる事無き英雄譚(インフィニティ・ヒストリア)

 

 

 

 

 

創世の神が施した強化(アップデート)により、本来なら定められたペッパーの試練が、此の瞬間より書き変わる。

 

題名は言い放たれ(タイトルコール)、そして黒ペッパーはペッパーへと、容赦無く襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………………』

「だぁい!?」

 

戦闘開始から一分。黒ペッパーとペッパーの戦いは、現時点で黒ペッパーが優勢である。

 

理由は三つ。一つ目が、勇者武器(ウイッシュド.ウェポン)とユニーク遺機装(レガシーウェポン)同時装備という、黒ペッパーとペッパーの間に在る、圧倒的な戦力差を埋めに来ている事。

 

二つ目が、使うスキルと使える武器が最新のペッパーとほぼ同じであり、イレベンタルで入手した鞭と手斧を除けば、自分に近しい状態だという事。

 

そして三つ目…………其の三つ目こそが、ペッパーが黒ペッパーに勝つ上では、絶対に乗り越えなくてはならない確定事項。相手に『窮速走覇(トップガン)』を使わせなくては、スピード勝負で土俵に立てない事。

 

(盲点だった………!そりゃそうだ!影は『何時も』自分を見てるなら、過去の自分だけじゃなくて今に近い自分も、彼方は出してくる『可能性が在った』筈……!二度に渡って昔の自分を出された事で、其処に対する警戒が疎かになってた!)

 

自分の影法師に対する思考の甘さを改め、当時の自分が持つスキルや使用武器の種類を、脳内記憶から引き摺り出しては、繰り出される攻撃を何とか凌いでいく。

 

((ペッパー)に有って、彼方(黒ペッパー)に無い物をぶつけろ!其れが勝利に繋がる道になる……!)

 

風竜骨の筋鞭をクリスタルナイフに切り替え、ウツロウミカガミ起動で距離を離し、其所から聖盾イーディスへ装備変更。サブ職業(ジョブ)に勇者がセットされ、シャイニングムーヴとソニック・アサルトの合成スキル『シャイニングアサルト』で一気に加速。

 

同じくイーディスを構え、残された残像(ヘイト)を蹴り続ける黒ペッパーに突貫、盾を使って殴るというシンプルながらも、盾の耐久値によりダメージが伸びる攻撃スキル『プロテクト・スマッシュ』、自身の『幸運値を参照するスキル』で、サンラクもウェザエモン戦で使用した格闘スキル『ハンド・オブ・フォーチュン』を点火。

 

黒の閃光がステージを駆け抜け、黄金の盾に金色のエフェクトが纏わり、呪いの影響で装備が無い右側から思いっきりぶん殴って、後方に大きく吹き飛ばす。だが黒ペッパーは其の両脚に、レディアント・ソルレイアを装備している。吹き飛ぶ方向と逆にブーストを掛ける事で、彼方との距離を取らせず、即座に距離を詰めに来た。

 

「だぁ、もう!復帰するのが速いっての!?」

 

四の五の言って入られず、ペッパーも甲皇帝戦脚からレディアント・ソルレイアに装備をチェンジ。対する黒ペッパーは装備をイーディスから、風神刀(ふうじんとう)碧千風(そうせんふう)】に切り替え、抜刀。

 

同時に刀身から巻き起こす風と雷を食らい、黒ペッパーのレディアント・ソルレイアが『エネルギー、フルチャージ!』の音声を鳴らし、劇場に響かせた。

 

戦いは、第二ラウンドに突入する━━━━━━。

 

 

 

 






強くなったのは、お前だけではない


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