VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

232 / 1072


ポポンガの最終試練




示すは己の走破、風雲急は告げられる

「ふぅ……食べた食べたぁ~」

「VRゲームで取る食事も、悪く無いな……」

 

ペンシルゴンとのオハナシを終えて、食事代をペッパーが支払う形で蛇の林檎を出た一向は、建物の合間から見える星々が彩る空の下、他プレイヤーに見付からないように影に隠れ、フィフティシアの裏路地を歩いて、街から離れた場所に移動している。

 

「おぉ、そうじゃ……。ペッパーよ、忘れてまう所じゃったわい」

 

と、愉快合羽に隠れたポポンガが外に出て来て、ペッパーに話し掛けてくる。

 

「例の『最終試練』じゃが……場所はフィフティシア郊外に在る『栄光の廃船 グローリー・エリス号』の付近にて行うぞい。最終試練はペッパー……お前さんが持つ『最高のスピードと最大の高さが鍵を握る』。

全てをぶつけるつもりで、そして万全の準備をした上で、最終試練を乗り越えてみせい…………」

 

そう言い、上空に出現させた魔方陣にポポンガは、吸い込まれて消えて。其の場に残された者達に静寂が訪れ、しかし其れも数瞬の間を置き、ペンシルゴンが衝撃の事実を言い放つ。

 

「ねぇ、あーくん。さっきのポポンガちゃんが言ってた、グローリー・エリス号なんだけど………実は其所って『クラン:阿修羅会』が根城にして、活動していた場所なんだよねぇ」

「えっマジで?」

「案内して挙げても良いけど………どうする?」

 

ペンシルゴンのニヤリ顔、嗚呼此れは確実に『何かを要求している』顔だと、ペッパーは彼女の表情からおおよその、しかしながら大正解と言える答えを導き出し。

 

「………解った。次一緒にプレイ出来る日を、俺に教えてくれ。ポポンガさんの最終試練を受ける以上、トワの協力も必要不可欠だからさ」

「………!うん♪」

 

そうして朗らかに微笑んで、ペンシルゴンはカレンダー機能を使って、自身の空いている日を見せ。ペッパーもバイトや大学の講義日時と照らし合わせつつ、六日後にプレイが出来る事を伝えた。

 

「さて………本当はもうちょっと、君と一緒にフィフティシア観光をしたかったけど、そろそろ御開きとしようかな。あーくん、影法師ちゃんとの戦いで武器が結構消耗したでしょ?」

「まぁな。モンスターの連続襲来に影法師の試練で、イーディスの耐久値は半分以上削られたし、ちょっと洒落にならない」

 

他の勇者武器なら復活効果による再生を視野に入れるが、其所は聖なる盾の勇者武器だ。あれだけの戦いを経ても尚、半分近い耐久を残している。やはりとんでもない武器だと、改めて認識するには十分だった。

 

「じゃあな、トワ。また六日後に」

「うん、またね。あーくん」

 

手を振って六日後に逢うことを約束して、ペンシルゴンはフィフティシアの裏路地の闇へと消えて行き。ペッパーはランドマークを更新して、アイトゥイルが開いたゲートを越え、兎の国・ラビッツの兎御殿へと帰還するのであった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビィラックさーん、居ますかー?」

「ビィラック姉さーん、元気かいなー?」

 

兎御殿に帰還し、ビィラックに修理依頼をするべく彼女の鍛冶場へと向かったペッパーとアイトゥイル。其所で一人と一羽が眼にしたのは、加工された黄金で巨大な針を巨大な籠手の様な物に組み込んで、魔力運用ユニットを頭に着けて黙々と作業を続けている、ビィラックの姿が。

 

其の隣には水晶の柱が差し込まれた、同形状の籠手がもう一つ鎮座しており、此の二つは見るからにヤバい武器であるとペッパーには一目で解った。

 

「んぉ?あぁ、ペッパーとアイトゥイルか。すまんな、コイツを作るのに集中しとったけぇ」

 

と、此方に気付いたビィラックが魔力運用ユニットを外して、話し掛けてくる。

 

「ビィラックさん、此れは……?」

「おぉ、コイツか?コイツはサンラクが狩ってきた水晶群蠍(クリスタル.スコーピオン)金晶独蠍(ゴールディ.スコーピオン)、其の二つの蠍達の素材を使った『甦機装(リ.レガシーウェポン)』じゃけ。おそらく今のわちの『最高傑作』になる……そんな予感がするんじゃ」

 

へー……と言いながら、ペッパーはビィラックが現在進行形で製作している武器を見つめ、そして一つ引っ掛かる言葉に気付いたので、彼女に質問する。

 

「ん?甦機装(リ.レガシーウェポン)遺機装(レガシーウェポン)とは違うカテゴリーですか?」

「おぉ、其所に気付くとはのペッパー。そう、甦機装とは遺機装の『新規製造版』であり、わちや親父のように『古匠』………つまりは古の時代たる神代の技術を扱える物にしか造れん、特殊な武器じゃ。例えば━━━━」

 

あ、此れは長くなる奴だ。そう気付いた時にはもう遅く、其所からビィラックによる遺機装と甦機装の事に付いて、みっちり一時間にも及ぶレクチャーが開始。

 

そして長い話を聞き飽きたアイトゥイルは、瓢箪水筒に入れた酒を飲み始め、其れを見たビィラックに怒鳴り散らされ、正座させられながら聞く事となって。

 

逆にペッパーは甦機装が、素材としたモンスターの特性を活かす武器であると理解し、其の素材となるモンスターの相性や組み合わせによっても、新しい可能性が生まれるのでは?と、ビィラックに言った事で彼女も其れに反応。

 

其の説明と互いの議論によって、白熱していく事となった。

 

「ははは……ホンマ、ワリャは面白いの。成程成程……モンスターの特性の組み合わせか、少し賢く成れたわい」

「此方も勉強になりました」

 

甦機装の話を聞いた事で、ペッパーは益々ティラネードギラファとカイゼリオンコーカサスの甦機装に対する製作欲が沸き上がり、ビィラックへの武器修繕依頼はサードレマで行って、自分はペンシルゴンとの約束とは別に周回を開始しようと決意。

 

ビィラックの邪魔をしないように、鍛冶場から退出して休憩室に移動後、セーブを終えて此の日のシャンフロプレイを終えたのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んんん………楽しかったぁ」

 

頭に装着したVRヘッドギアを外して、大きく背伸びをして布団から起き上がった梓は、今日の夕食を何にしようかと思考しつつ、冷蔵庫の中身を見る。

 

「そうだな……今日は刺身定食にしようか」

 

取り出すのは、格安セールで買えたサーモン。炊飯器のご飯の総量の確認と、残った野菜を見ながら即興で献立を組み立てる。

 

鍋に少量の水を張り火を着け、皮を剥いたじゃがいも・玉葱半分ずつ用意し、一口大に切り分け。油揚げを湯に潜らせて油を抜く。そして湯を捨てて新たに水とだしの素を入れ、じゃがいもと玉葱に油抜きをした油揚げを加えながら、火を通していく。

 

チャック付きの袋を取り出して、胡瓜を半分使いつつ斜め切りに分け、浅漬けの元を投入。塩を一摘まみ加えてよく揉みこんでから少し置き、其の間にサーモンを一般的な刺身定食サイズに切り、チューブ山葵と共に皿へと盛り付ける。

 

そして鍋で煮た具材に味噌を加え、沸騰直前で火を止めて汁椀に。炊飯器の白米を茶碗に盛り付け、コップに牛乳を注ぎ。揉み浸けた胡瓜を取り出して、小皿に乗せれば━━━━━━

 

「完成………!梓流『サーモン刺身膳』!」

 

自分にしては上々な出来映えだと思いながら、スマフォで料理を撮影してアルバムに保存。さぁ夕食をと思った矢先、スマフォのEメールアプリに一通のメールが届き。其のメールがもたらした物が、新たな波乱を巻き起こす事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

件名:お前何やらかした?

from:ブシカッツォ

to:A-Z

 

俺のゲームする時に使ってるマンションに、全米一位のシルヴィア・ゴールドバーグが突撃してきたんだが?スマフォで何かスゲェスピードで走ってる、黒いプレイヤーの画像と一緒にやって来て、コイツに会いたいって言ってんだけど。

 

まさかコレ………お前じゃないよな???お前じゃないよなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ???????

 

 

【映像】

【スロー映像】

【スーパースロー映像】

 

 

 

 






カッツォからのSOS


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。