VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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戦いを観る者




黒の流星よ、一等星を喰らえ

「まぁ、AZが最初のラウンド落とす事は解ってたし。寧ろ30秒ギアを上げたシルヴィ相手に、よく食らい付いた方だとは思うけど」

 

Silviのミーティアスが、AZのミーティアスをサッカーボールキックで仕留め、ラウンドを奪い取った頃。今回の黒幕である魚臣(うおみ) (けい)こと『K』が、ギャラクシー・ヒーローズ:バースト内の専用フロアから、二人の対戦を眺めていた。

 

(てかAZ(アイツ)、よくよく考えたらシャンフロでレディアント・ソルレイアや、空中ダッシュスキルを使いまくってるからか、空中戦もかなり『出来て』たな)

 

Kは知っている。二年の年月で数百に渡るゲーム対決で経験した、AZの持つ『恐ろしさ』を。格ゲーに置けるラウンド制、彼の本領は強敵を相手にして、1ラウンド目を落とした瞬間(・・)から始まるのを。

 

(さぁ、シルヴィ。AZの強さを知ると良いよ)

 

プロゲーマー(ブシカッツォ)相手に思考で読み勝ち、レトロゲームとは言え勝ち越しているレトロゲーマー(AZ)の力が、リアルミーティアス(Silvi)に牙を剥こうとしている………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『百聞は一見にしかず』と言う諺がある。

 

聞いただけの話で納得せず、実際に見て確かめよと言う意味である。また現代風に言うならば『動画やネットの情報を見聞きして解ったつもりに成らず、実際に経験してみよう』といった意味が込められているのだ。

 

つまり、今のAZがSilviのミーティアスを相手にして、経験した事に恐ろしい程合致していた。

 

(いやはや。とんっっっっっでもねーな、リアルミーティアス。見ると体験するとじゃ、全然違うわ)

 

バトルフィールドにして、蹴り砕かれたコロシアムの外壁や石畳が再生する中、AZは口元に手を当てながらも、ほんの数十秒間の戦いで得られた情報を脳に入れて、勝利の道筋を構築するべく思考を重ねた。

 

(一応、一撃叩き込める『算段』は整ったが……問題はあの『スピード』。加速されたら(・・・・・・)、正直追い付く事は同じキャラを使ってても難しい)

 

ミーティアスの強さは、何と言っても『ゲーム内最速のスピード』と『空中戦に置けるビックアドバンテージ』だ。動き出したら止まらない、空中に飛ばされたなら十八番の戦場。其れをリアルミーティアス(Silvi)がやったのならば、一瞬で攻めきられて、重量級キャラ以外等しく纏めて御陀仏不可避。

 

(フィールドの状況、相手との距離、俺が地上で出せるトップスピード…………『条件』は揃ってる。後は彼女が俺の、考え得る行動を『取ってくれるか』………だな)

 

自由奔放に走り回って飛び回る、超速高機動の敵キャラを倒す方法は、古今東西あらゆるゲームで決まっている。ソイツを鳥籠の中に閉じ込めて、高機動の武器たる『自由』を封じるように。リズムを生み出し、変幻自在に変えるなら。其の波長すらも『飲み込んで』、全て思考の『範疇に置いて対処する』。

 

スタートダッシュでリアルミーティアスから初手を奪い取り、思考で行動を読みきって沼に沈め、流れを渡さずに倒しきる。もし失敗したなら、最後まで一撃当てる事のみに思考を切り替えて、絶対王者に自分を刻み付けてやる。

 

(やってやろうじゃん……!)

 

瞳に闘志が灯る、心も折れてはいない。視界がクリアになり、思考も冴えている。

 

『ラウンド2、3………』

 

 

カウントダウン開始、リアルミーティアスがストレートか。其れとも無謀なチャレンジャーが五分に戻すか。

 

 

『2……』

 

 

AZのミーティアスが、Silviのミーティアスよりも低く、更に低く構えを取る。其れは絶対王者の彼女の目には、黒と青のミーティアスの構えが、日本の伝統競技『SUMOU wrestling』の様にも見えて。

 

 

『1……』

 

 

だが、AZのミーティアスの左足が伸びて、伸びて、伸びて。此処まで見て其れが『変形したクラウチングスタート体勢』を取っていたと気付き、彼女は僅かに警戒。

 

 

『Fight!』

 

 

先に動いたのはSilviのミーティアス、ではなく。全神経の集束による集中と、後が無い中で己の全てを懸けたAZのミーティアスが、リアルミーティアスの『初速』を上回る疾走を発揮。ラウンド1の仕返しとばかりに、全速力で真っ直ぐに突っ込んできた。

 

『Wow!フルスロットル!そうこなくっちゃ!』

 

Silviのミーティアスが加速し始める。此のままじゃ駄目だ、逃げられる。相手に逃げられたら、もうチャンスはやって来ない。此れじゃ駄目だ、届かない。

 

ならば、どうする?届かせるには、流星を捉えるには。お前に出来る事は━━━━━━━何だ?

 

『ッ!アアアアア!!!!』

 

加速しろ!ぶつかることを怖れるな!此処は『ゲーム』だ!現実じゃない!此の瞬間にしか勝利を掴むチャンスが無いなら、前へ出ろ!

 

魂が吠える様に直線を駆けた黒と青の流星が、白と金の流星の予測を越えた速度を繰り出した。

 

『What's!?』

 

ラウンド1時点で見ていたAZのトップスピード、其れを更に上回る彼の速さに、かの絶対王者もどうやら予測出来なかったらしい。だが、其れでも彼女は揺るがない……………誰よりも(・・・・)ミーティアスと言うキャラクターを、人一倍『深く理解している』からこそ、あの爆発的な加速は『自分以外』で曲がる事は出来ないと。

 

だからこそ、彼女は『カウンター』を狙う。AZの操るミーティアスは確かに『速く』、そして『空中戦』も強い。しかし其の能力を充全(・・)に発揮する為の『動体視力』が圧倒的に足らない事が、Silviには解った。

 

全力で突っ込んでくる黒の流星、其の顔面を全力で蹴り砕く。自分を相手に、全力と本気でぶつかって来た彼に対する、プロゲーマーとしての矜持を以て答える為に。

 

流星との距離が詰まり、世界と景色がスローに成る。タイミングを合わせて、彼女の左足が繰り出され━━━━

 

『待っていたよ、此の瞬間を』

 

 

 

 

白と金の流星の繰り出した左足が、黒と青の流星に掴まれた。

 

 

 

 

『貴方なら、真正面から突っ込んできた俺を『バックステップの回避』ではなく『蹴り技による迎撃』を選択すると━━━━━━読んでました(・・・・・・)

 

 

 

 

AZが笑い、Silviが驚愕で目を見開き。

 

Kが獰猛な笑みを浮かべ、観戦するプレイヤーが彼の読みの深さの一端を目の当たりにし。

 

加速と回転によって、体勢が崩された両者の身体が、互いにコロシアムの石畳へ、凄まじい勢いで叩き付けられたのだった。

 

 

 

 

 






反撃への狼煙を上げろ


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