ヒーロー対決、決着
シルヴィア・ゴールドバーグが操るミーティアスは『スピードキャラが相手の場合』、迎撃ではなくバックステップによる回避を選択する場合が、7割の確率で
そして『ミーティアス同士の対決の場合』に限り、彼女は『意識』しているのか、はたまた『無意識の癖』なのか、回避ではなく迎撃を選択する
だが此の戦法は、リアルミーティアスに『逃げられてしまっては』意味が無い。故にAZは戦いが始まった瞬間より。彼女を思考の沼に引き摺り込む為の策を、戦いの中で『仕掛けていた』。
最初のラウンド、自分が出せるトップスピードを『敢えて』相手に見せ、此れが自分の最高速と『認識』させ。
相手が回避ではなく迎撃を『選択する』ように、ラウンド2開始時点の全力スタートダッシュから、更にもう一段階『加速』する。
そして最後は、ミーティアス同士の戦いに於いての、彼女の思考を『信頼』したからこそ。
『だらしゃあああああい!』
『っぐぅ!?』
高速で過ぎ去る景色の中、振るわれる脚を此の一瞬の中、己の直感と共に手を伸ばして掴み取り。彼女の蹴りの攻撃時に発生した軸足の回転と、自身の放ったスピードによる相乗を、自爆覚悟のスイングスローで己諸ともコロシアムに叩き付ける。
体力の減少具合は、AZのミーティアスの方が大きい。だが、其れでも。此迄捉える事も、ダメージを与える事も叶わなかった、Silviのミーティアスの体力を削り、初めて『思考』による刃を届かせる事が出来たのだ。
『ヨッシャア!届い、たぁぁぁぁ!』
歓喜、雄叫び、しかし止まらない。勝機を決して逃さぬ為、再びフルスロットルで立ち上がり、超至近距離の格闘戦に持ち込む。
『ッ、
『まだまだ、こんなもんじゃない!』
至近距離の戦い、繰り出すは『拳』。
ブレイクダンスキックや、敵の体格を利用した蹴りにだけしか使わないなんて『あまりに勿体無い』と、AZは思っていた。
『せいっ!』
『其所だ!』
『ぐふ、っ!?』
拳がコンパクトに飛び、其れを躱わして蹴りを入れる。黒と青の流星は『初速及び直線』と言う、非常に限定的な条件下に限り、白と金の流星のスピードを『凌駕』する。故にこそ、彼女は『接近戦』から『スピード勝負』に持ち込みたい。
総合力では此方に圧倒的なアドバンテージが有り、リズムを変幻自在に変えて押し付けるのが、シルヴィア・ゴールドバーグのバトルスタイルだ。
AZのミーティアスの腹部に、Silviのミーティアスの蹴りが突き刺さる。距離が出来る、バックステップを踏め。そして『スターロードで加速する━━━ですか?』思考を読まれ、其の一瞬に右足が彼の左足に踏み付けられ。
『此れでも食らえッ!』
直後、踏み付けた脚で跳躍したAZのミーティアスが、右腕と右足を振り翳して来るのを見た、Silviのミーティアスが左サイドのガードを固め。
其れを更に読み切った彼の膝蹴りが、顔面に叩き込まれクリーンヒット。白と金の流星の身体が宙を舞って、空中一回転で地面に着地する。
AZは彼女を思考で捕まえんと、再び格闘戦の為に走り出し。観客は名も知らないプレイヤーが、まさかのジャイアントキリングをするのかと期待し。KはA-Zの思考深度が、自分だけでなく全米一位にも通用したと思っていた。
だが、彼等彼女等は。
シルヴィア・ゴールドバーグというプレイヤーが、『自身のテンションの変化によって、パフォーマンスが跳ね上がる』タイプのプレイヤーであるとは『知らなかった』。
其れは『自由』を奪われ、己の思考を『読み切り』、選択を『潰してくる』プレイヤーにより、ある種の『スイッチ』が入る。其れは
そして此の日、此の時、此の瞬間。ギャラクシー・ヒーローズ:バーストで、彼女とAZの対戦を観ていた者は知る事になる。Silviのスイッチを
『えぇ…………』
其れはもう本当に酷かった。能面に似た無表情と最適化された無駄の無い動きでAZのミーティアスから勝機を奪い返し、空中に蹴り上げてから、僅か10秒足らずで体力を1割にまで削り切って、
(まさか全米一位に『第二形態』が在って、其れがさっきのヤツ……だったり?所謂『覚醒』って感じ?いや………リアルミーティアスの、本当の『本気』ってか………!)
レトロゲームで時折体験した、強制敗北イベントへ実際に立ち会ったキャラの気分を体験する、良い機会になった。リアルミーティアスの強さも速さも体験出来たし、最強相手にダメージを与えると定めた目標も、何とか達成出来たので良しとしておこう。
『HEY、ブラックシューティングスター!』
と、Silviが声を掛けてきたので視線を向ける。彼女の声色は何と言えば良いのか、怒っている様にも喜んでいる様にも聞こえる。霊体の為に表情が解らないが、何となくそんな気がした。
『あ、えっと……』
『You are amazing!And deep reading!チェスかショウーギ、やってるの?』
どうやら彼女は、自分の読みの深さが何処から起因したのかを聞きたいらしい。
『強いて言うなら………レトロゲーム』
『Retro games?』
『そう、レトロゲーム。ガンシューティング・弾幕ゲーム・FPSにRPG、パズルゲームやボドゲ諸々含めて、兎に角色々プレイする。対人戦も一瞬一瞬のやり取りから、相手の行動を読む事………かな?後は反復と経験の蓄積、其れを繰り返せば
対戦相手のキャラクターの動かし方や使う技、多用するアクションの傾向等々、リプレイ映像の中にも学べる事は沢山在る。AZの持論を聞いたSilviは数秒後にこんな事を彼に言ってきた。
『I will surpass your reading and win with a shutout next time』
其の意味は『貴方の其の読みを越えて、次は完封して勝つわ』だ。シルヴィア・ゴールドバーグは完封勝利宣言と題した、宣戦布告を自分に叩き付けて来たのである。
ならば、此方も答えなくてはいけない。
『………!Let's take up the challenge』
其の意味は『其の挑戦、受けて立とう』。彼女が此処まで言ってきたのだ、ならば全身全霊全力全開で挑んでこそ、ゲーマーとしての礼儀と言うもの。
尚、ブシカッツォが作った部屋から退出した所、戦いを観戦していた他プレイヤーから色々と質問攻めに有ったので、魔法の言葉『フレに呼ばれたんで部屋抜けますね^^』で強制ログアウトをしたのだった。
だがしかし、AZは━━━━梓は知らない。
ギャラクシー・ヒーローズ:バーストの絶対王者にして、全米一位の無敗の格闘ゲーマーことシルヴィア・ゴールドバーグに関する『とある言葉』が、プロの格ゲーマーの間に存在している事を。
『シルヴィのミーティアスに一撃当てられたら、初めて一人前』なる言葉が在る。
ゲームを初めて『数日ながら』、シルヴィのミーティアスへ『一撃を叩き込み』。僅かな時間とは言え、彼女の行動を思考によって『縛り付け』。あまつさえ彼女に
其れによって、謎の新規プレイヤー『AZ』の名は、プロの格ゲーマーもプレイする此のゲームに、流星の如く拡散されていく事になるが………。当の本人はそんな事実を、知る由も無かったのだった。
リアルミーティアスからの挑戦状
※尚、試合観戦後に現実世界に戻った慧はシルヴィに色々問い詰められた模様。主にAZの思考深度のヤバさについて。あと電脳大戦からの電話も掛かってきて、スカウト諸々の対応もした。