クエストを進めるために、己の全てを懸けよ
得られた物は辻斬・狂騒曲:オンラインでの戦いが楽しかったという感触。
其の楽しさの代償に、ほぼ徹夜で遊んで目が覚めたのは昼間の午後二時、就寝時間十時間越えの大寝坊という始末。
「さてさて、あーくん。おねーさん朝からずぅぅぅぅぅ…………と、フィフティシアで待ってたのにシャンフロへはログインしないしぃ?昼過ぎになっても、一切メールには返信しなかったしぃ?一体 ど ん な 言い訳をするのかなぁ?」
そして梓が起きた時には、Eメールアプリに永遠からのメールが百にも渡って届いた事で、急いでシャンフロにログインして、アイトゥイルと共に兎御殿からゲートを越えて、フィフティシアに向かい。
待ち受けていたのは、ニッコリ笑顔と青筋をビキビキに浮かべたペンシルゴン、腕を引かれて街中を歩き、裏路地に引き摺り込まれて壁ドンを食らったのだ。其の圧たるや凄まじく、愉快合羽に隠れたアイトゥイルも震えている程ヤバい。
「…………オイカッツォからの要請で、ギャラクシー・ヒーローズ:バーストで全米一位ことシルヴィア・ゴールドバーグと戦いました。其の時は
ありのまま、包み隠さずに真実を伝える。其れを聴いたペンシルゴンの表情は、此れまでの物とは『何れにも当て嵌まらない』、喜怒哀楽の色々な感情でグチャグチャの、何を考えてるのか全く解らない物になっていて。
「此れはカッツォ君とサンラク君にも『オハナシ』をしないとだねぇ………?ゲームとは言え、
其れも一瞬で元の不敵な笑顔に戻り、されど青筋は浮かべたままでブシカッツォとサンラクに、一体どんなオハナシをしてやろうかと企んでいる。
「ふぅ………君の予想超えは今に始まった事じゃないしね。隠し事をしている感じもなかったから、許してあげる。あ、其れからさ。あーくんの電話番号教えてくれない?」
「………ハイ、本当にすいません………。で、何で電話番号?」
「大遅刻したんだから、文句言わなーい」
「解った、解ったから……」
正直生きた心地がしない。其れは其れとして、カッツォは何時か便秘でボコり、サンラクには辻斬りのプレイヤー達が何故天誅と叫んでいるのか聞く事を決め、電話番号をEメールアプリを使って送り、そうして彼女に本題を切り出す。
「ペンシルゴン、例の廃船の場所まで案内し……て下さいお願いします」
「ん、良いよー♪でもぉ……あーくんに『お姫様抱っこ』、して欲しいなぁ?」
「………仰せのままに」
寝坊による大遅刻をしたのだ、此れくらいの要求は呑むに限る。彼女をお姫様抱っこし、其の案内の元、二人と一羽はポポンガが待つ『栄光の廃船 グローリー・エリス号』の在る場所へと向かったのだった………。
フィフティシアの門を出て、海が一望出来る細道を歩き。入り組んだ洞窟を抜けた先に、其の隠しエリアは存在している。
天井が開けて空が見え、真正面には直線ながら海が一望出来る、秘密の隠れ家。海船の墓場もしくは過去の残り香と言うべき、損壊した木造の船達。
まるで怪物の口の中に飲み込まれたかのような場所で、破棄された船の中でも一際大きく、外側から見たなら限り無く損傷が少ない船が一隻だけ存在していた。
「着いたよ、あーくん。此処が私や
「おぉ、秘密基地感満載のエリアじゃん……!」
「大きな船、なのさ……!」
昔に永遠と一緒に秘密基地を作らんと、段ボールで工作した事を思い出しながら、ペッパーとコートから出て来たアイトゥイルは眼を輝かせる。
「ペッパーよ、来たようじゃな」
と、グローリー・エリス号の船首部に現れたのは魔方陣が一つ。そして其の中から登場したのは、ローブを纏った装いの老ゴブリンが一匹。
「ポポンガさん!はい、試練を受けに来ました!」
「ほっほっほ、良い返事じゃの。では、最終試練の内容を発表しようかの」
言うが早いかポポンガは、右手に杖を握り振るい翳してシャボン玉を作り出し。其れに乗りながら、二人と一羽の前までやって来た。そして空いた左手で、淡い光を放つ球を作り出して説明を始めた。
「ペッパー、お前さんの最終試練は此の光球を『一分以内に破壊する事』じゃ。そして此の光球は、此の世界を構成する『マナ』が薄くなる場所………遥かに高い『天空』に置く。
マナが少なくなると、スキルの影響力も薄まり効果も激減する。だがそんな状況下でも尚、其の脚で空を駆け上がる『覚悟』………其れを見せてくれ。因みにレディアント・ソルレイアは『使用禁止』じゃ。アレは色々と『規格外』過ぎるからの」
一通りの説明を終えて、ふぅ……と息を吐いたポポンガ。そしてペッパーは彼の説明を聴き終えた瞬間から、既に思考を開始していた。
(此の光球が一体何れくらいの『高さ』に在るかは解らない。けど、上空に往く程にマナが薄くなるって事は『生半可なスキル点火』じゃ、効果切れによって上空から海へのダイビング=落下死が待っているだけ。重要になるのはスキルの『点火の順番』。そして超高度の中でも自分を『信じられるか』の戦いになる………)
「解りました、ありがとうございます!」
「うむ、準備が出来たなら声を掛けとくれ」
「はい!」と返事をして、ペッパーは自身の持っているスキル達を確認。どの順番で切れば、其の能力を一番強く発揮出来るかを計算していく。
「あーくん、ちょっと来て」
そんな折、ペンシルゴンが声を掛けてきて。其所には簡易的で、質素なテントが一つ立っていた。
「コレは?」
「ふっふっふ……コレは『セーブテント』。回数制限在るし、オブジェクトだから壊される危険性も有り。使用回数を超過したら壊れるし、高額のマーニを払わないと手に入らない畜生アイテムだけど、擬似的な『セーブポイント』を作れるんだ。万が一も在るし、フィフティシアから此処まで戻って来るのも大変でしょ?」
確かにリスポーンを誰かに見られて、ストーキングされるのは非常に面倒な事に成りかねない。此処は彼女の厚意に甘えて、テントに入ってセーブとリスポーン地点を更新。
そしてスキルの最終確認とスタミナ、及び自身の空腹具合を意識しながら、点火の順番を考えていた時である。突如ペンシルゴンとアイトゥイルに、ペッパーはぎゅ~……っとハグをされた。
「お、おいどうしたんだ………?」
理由を聞くも、ハグを続ける彼女達に益々疑問を抱く中、不意に耳元で声が囁かれた。
「頑張って……、あーくん」
「ペッパーはん、武運を祈るのさ………」
「!」
まるで戦地に赴く
「………ありがとう、二人共。往ってきます」
そう言い、ペッパーは彼女達をぎゅっと抱き締めて。セーブテントから外へ出、ポポンガの課した最期の試練へと挑むのだった………。
エールを受けて、いざ往かん