試練を越えていけ
「ポポンガさん、御待たせ致しました」
「ホホホ……良い眼じゃ、ペッパー。覚悟と気合に満ち充ちておるわい」
ペンシルゴン・アイトゥイルからのエールを受けて、ペッパーは涅槃のポーズで精神統一をしていたポポンガに声を掛ける。対するポポンガも、ペッパーの眼を見て其の意気や良しと笑う。
「では、始めるかの」
「よろしくお願い致します」
交える言葉は、其れだけで充分で。ポポンガが左手で光球を作り出し、真上の蒼空へと放り投げ。其れはまるで風船の様に、しかし凄まじい勢いで高く高く昇っていく。そしてポポンガは眼を閉じて何か感じ取り、再び眼を見開いて言った。
「最終試練。制限時間一分で、ワシの作った光球を破壊して見せよ」
目の前に表示されるカウンター、60秒間の勝負。スキルの使う順番は、既に脳内チャートで決めてある……!
星皇剣グランシャリオを取り出し、右手に鞘を当てつつ
グランシャリオ抜剣、
「残り50秒ッ━━━往く!!」
セルタレイト・ケルネイアー、
最後に
疾走と黒閃が余りにも出鱈目で、しかし幼児が白いキャンバスに様々な色のクレヨンで自由に色を付ける様に。軌跡と残影を青空に刻み付けて、縦横無尽に駆け上がって行く。
「うおおおおおおおおおお!!!」
空中を無限ジャンプで跳ね飛び、レーアドライヴ・アクセラレートで位置を調整しては、
「
グランシャリオから放たれる高出力竜巻の力も受けながら、強化された動体視力と共に天空へと昇る。と、まだスキルの効果時間が切れ始めていないにも関わらず、其の効力が弱くなり始めた。
「もしかして超上空に来たから……!」
ふと見上げると、其所にはポポンガの作った光球がキラキラと輝き。後一歩の所だが此のままでは届かないと、ペッパーはゲーマーとしての直感を抱いた。
(なら……『最後の手段』!)
残り時間30秒、一か八かの大博打。グランシャリオをインベントリに収納、其の身を反転し一定の速度からの落下による攻撃時、速度と威力に補正が掛かると同時に、『垂直落下攻撃』を可能とするスキル『
しかし其れは唯の『ジャンプ』ではない。プレジデントホッパーと呼ばれる、落下死によるダメージを受ける時に、其のダメージを次の跳躍力に変換するスキルが、ペッパーの手札には有る。
無限ジャンプや空中歩行にダッシュ、レディアント・ソルレイアによって存在意義を失い掛けていたが、此のスキルは正に此の時を、此の瞬間を待っていたんだとばかりに叫び、彼は其れを使った。
圧倒的な速度による垂直落下と、主力級にして切札の二つのスキルによる威力増大、そして落下死に至らんとする其れを跳躍力に書き換えた、たった一回のジャンプ。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」
真上へ昇った黒い流星は、此れまでの自身の繰り出した最高速度を更新。垂直跳躍によって射線上に存在していた光球は、再び取り出されたグランシャリオの居合一閃と共に砕け散り、ペッパーは其のまま蒼空の彼方まで飛んで行った。
そして━━━━━━━━━
『規定高度観測、条件達成』
『達成者プレイヤー名:ペッパー』
『称号【
前人未到の偉業と共に、一つの空席が此の瞬間に埋められた。
「やぁやぁ、ペッパー君。最大高度獲得おめでとう。シャンフロ中にアナウンスされてたよ~?」
「ペッパーはん、凄かったのさ………」
「えっ、マジで?」
光球を破壊したあの後、天空を越えた所で酸欠によって死亡し、セーブテントからリスポーンした所で、ペンシルゴンから事の顛末を聞かされた。
「えっ………え?いや、え?マジ?」
「マジもマジだよ。多分だけど、ライブラリのおじいちゃんとか辺りから
無我夢中に蒼空を駆けて決死の覚悟で跳躍したら、シャンフロプレイヤーの中で一番高い場所に到達したという。そして其れを達成した瞬間、シャンフロ全域にアナウンスとして自分の名前が響き渡った………との事。
ふとEメールアプリに着信が入ったので見てみると、サンラクとカッツォからのメールが届き、立て続けにハヤブサがやって来ては、自分の頭や肩に腕へと止まって。
送り主はペンシルゴンの予想通り、考察クランのライブラリを初め、
「なぁ、ペンシルゴン。色々と疲れ過ぎたから、クランリーダーの皆様との話し合いに関しては、後日でも良いか?」
「良いんじゃないかな?流石に影法師の試練も立て続けにやろうとしたら、間違いなく詰む未来しか無いだろうし」
実際、最大高度獲得と最終試練クリアの代償は大きく、主力級及び機動系と強化系スキルの消費という、無視出来ない現状を抱えていた。
「ペッパーよ、見事に最後の試練を越えたようじゃな」
そんな時、ポポンガがシャボン玉に乗った状態で此方にやって来た。
「ポポンガさん……」
「己の持つ全てを懸け、蒼空を走って宙を舞う……実に見事じゃ」
そうして彼は杖を翳して、試練を越えた勇者を手招き。其れに導かれて、ペッパーは何か起きると直感し、ロールプレイでポポンガの前にて片膝を着く。
「ペッパー。ワシの試練を越えし者よ。其の覚悟に敬意を表し、力を授けよう。そして………御主の曇り無き眼と困難を駆け越える姿勢に、其の疾走を支える加護を与えん………」
其の言葉と共に、ポポンガは自身のインベントリから『ネックレス』をペッパーに与える。其れは白い半透明な結晶の中に『幾つもの円型の羅針盤と、小さな針が混在した』不可思議な物であり。
同時に彼の目の前に『ユニーククエスト』クリアによる、リザルト画面が表示された。
『勇者は極星大賢者の最終試練を越えた』
『空を走る秘技は勇者に受け継がれる……』
『称号【天走者】を獲得しました』
『アクセサリー【
『クラスチェンジ!メイン
『ユニーククエスト【想いの御手は、境界線を超えて】をクリアしました』
『一定条件を満たす事で、一部職業が【
『ユニーククエスト【覇道を刻みて、武は形を成す】を受注しますか?【Yes】or【No】』
極星大賢者の試練を乗り越えた者にのみ与えられる、
譲渡及び破棄不可、PKされても自身の手元を離れない。
此のアクセサリーを装備中、自身の心拍数が一定値以上の状態で両手を合掌する事により、一定時間【特殊状態:
※特殊状態:白刻閃………対象者は煌星の如き、暖かく強い
(バックパッカーが変化したけど、星化って何?特殊な方法による職業転換有るのか?そしてアクセサリーがヤバいわ、一定値以上の心拍数の状態で両手を全力で叩くと、光を纏ってスピードアップに機動跳躍強化系列スキル限定だが、再使用時間の短縮が入るのか………。いざって時には目眩ましにも使えそうだし、試してみたいな………。
そしてクエストが終わらない………次は武器なのかアイテムなのか、一体何になるんだ………。あぁ……俺に平和は何時になったら訪れるんだよ………)
ユニーククエストのクリアにより、新しいアクセサリーの入手と職業の変化で新しい可能性を手にした一方、最大高度なる称号と新しいユニーククエストの出現で、自身の平穏は既に遠くの物になってしまったと嘆くのだった…………。
勇者は次なる戦いへ
シャングリラ・フロンティアという世界に満ちるマナ。其のマナを可視化・集束させ、其の両足で空を駆け上がり登り、滑り降り落ちる等の三次元行動をも可能にする御業を扱う者を指す。
空は等しく自由だ、其の自由な空を縦横無尽に駆けられたなら、何れ程素敵な事だろう。
※実は最大高度自体は、レコードの中では更新されやすい部類の称号。理由としては、単純に高い場所まで到達する、スキル・魔法・装備品にアクセサリー次第で獲得のチャンスが有る、やり方は多種多様に有るから。
問題なのは、ペッパー君は此れを『スキルのみ』で獲得するに至った事なのです。もし仮に
金龍王装全種装着
+
機動系&バフスキル全力点火
+
封雷の撃鉄みたいなアクセサリー
のキメラみたいな事をしたら………ねぇ?
余談だけど白刻閃を発動したプレイヤーは、白色発光のプリズンブレイカーみたいな姿になる。