ペッパー、アクセサリーの性能チェック
ヴォーパルコロッセオ。兎の国・ラビッツにて御世話になっているペッパーとサンラクが、ユニークシナリオでの戦い以降もスキルや武器性能の確認で世話になっている場所である。
「さて、到着…………っと」
此所へ来た目的は一つ。ユニーククエストにて七つの街を踏破、
「先ずはコイツの発動条件……つまり心拍数がどのくらい迄上がっていれば、発動可能なのかを確かめなきゃいけない。アイトゥイル、万が一の事が有るかもなので観客席で待機していて欲しい」
「はいさ!」
アイトゥイルを安全圏に避難させ、ペッパーは深呼吸で精神を落ち着かせる。先ずはジョギングの様に三分間ダッシュし、心拍数を上げてみる。そして三分間ジョギングから「せーのっ!」で、パシン!と両手を合掌するも、アクセサリーに変化無し。
「ジョギング程度じゃ駄目か……なら、全力ダッシュで一分ならどうだ?」
思い付いたなら即実行、再びヴォーパルコロッセオを駆けて、一分スキル無しの全力疾走で心拍数を高める。
「さぁ………どうだ!?」
両手を広げ、いざ合掌。コロッセオに響くは高らかな掌音、同時に超星煌耀宝珠が光を解き放ち、一瞬の強い光の後にペッパーの全身が『真っ白』に染め上がる。
「お、おおおお………!?」
「ペ、ペッパーはんが……太陽みたいに光り始めたのさ……!?」
ブラックトレンチロングコートさえ染める、白く暖かな輝きにペッパーも驚きを隠せない。午後だが昼間でありながら、此れだけの光量を放っている事実。夜に使おう物なら、悪目立ち此所に極まれりな状態は不可避、おまけに他のプレイヤー達が、此の光に引き寄せられる未来しか見えてこないのだ。
ステータスを確認すると、敏捷数値が現在の1.5倍+特殊状態:
「とと、じゃあスキルの
セルタレイト・ケルネイアーとリコシエット・ステップ起動。地面を蹴り上げて跳躍し、壁を踏み込み蹴って再び元の位置に着地。そして使用したスキルを見れば、確かに再使用時間が此迄の1/4に短縮されていた。
「おお、ちゃんとスキルの短縮が出来てる!けどやっぱり光ってると、敵や他のプレイヤーに見付かる危険は高いからなぁ」
総じて『使うシチュエーションを要求される代わりに、特にデメリットを受ける事なく、特定系統スキルの再使用時間短縮可能な強力なアクセサリー』といった形で、超星煌耀宝珠の評価は落ち着いた。
因みにもう一度合掌を行った所、白刻閃の状態は解除されて、元の真っ黒なトレンチロングコートを纏ったペッパーに戻った。
「よし、もう一回試すか!」
其れから一時間程、ペッパーはヴォーパルコロッセオにて白色発光しながら、自身の身体の動かし方を頭に入れていく。光っては消えて、また光って。此の日のヴォーパルコロッセオは、光り輝いていたと言う………。
「ふぅ………思った以上にヤバいな、此のアクセサリー………」
スキルによる再使用時間減少は出来るが、別枠効果として短縮可能と言う、凄まじい能力を秘めたアクセサリーに、ペッパーは震え上がっていた。
イクス・トリクォスによる再使用時間短縮は有るが、其れと組み合わせての機動・跳躍・強化系統スキルの回転率が上がって、今まで以上の機動力を生かした戦い方が出来るように成るだろう。
「ペッパーはん、お疲れ様なのさ。水をどうぞなのさ」
「ありがとう、アイトゥイル」
普段彼女が飲んでいる瓢箪水筒とは違う、別の瓢箪水筒を手渡され、ペッパーは其れを飲む。
「ふぃ~……美味い。やっぱり動いた後には、水分補給だな」
「ふふふ……ペッパーはん、お星様みたいにキラキラ輝いてたのさね」
渡された瓢箪水筒を返して、ペッパーはビィラックが言っていた
(水晶を闊歩する金蠍……此れって間違いなく『
『月下の水晶を闊歩する孤独なる金蠍』。
『暗き深穴にて眠る揺り篭の中の赤子』。
『天貫く大山に居着く無限掘削の女王』。
大盾以上の耐久値を出す為に必要な、
「明日はライブラリとの話し合いがあるし、ペンシルゴンと一緒にトワセツナの花を得るクエストは、少し先だな。其の間に双皇甲虫の素材集め、頑張るとしようか!」
予定は組み立てられ、ペッパーはペンシルゴンに明日のライブラリとの会談に関する、メールのやり取りをすると共に、万が一にライブラリ以外の他のクランが居た場合の打開策等を話し合い。
そしてライブラリのクランリーダー・キョージュに
彼は此の日のシャンフロを終えたのであった………。
「ふぃ~………」
シャンフロからログアウトし、一息付くと共に起き上がった梓は、そう言えば今日は朝昼と何にも食べていなかったと気付き、最終手段として保管していたカップ焼きそばを取り出して、其れを作り始めた。
「こういう時のカップ焼きそばが本当に助かる………。時々食べるからこそ、美味しく感じるんだよな」
湯を沸かして具を投入から待つ事二分半、湯を切ってソースとマヨネーズを適量掛けて完成。日本が世界に誇るカップヌードルやカップ焼きそば、其れを開発した偉大なる先人達に、心と動作で感謝の意を示しながら梓は合掌。
さぁ食べようと思った矢先に、『ピロピロピロン♪ピロピロピロン♪』と、スマフォの着電が鳴り響く。一体誰かと覗いてみれば、其所には『永遠』の二文字が。
「もしもし?」
『お。やぁやぁ初電話だねぇ、あーくん』
「永遠か、どうした?」
『ん~?君の声が聞きたくてさ』
電話越しに聴こえる彼女の声は、何処か『しんみり』していて。
『ねぇ、あーくん。毎週火曜日の午後10:30にさ、君に電話を掛けて良いかな?』
突然そんな事を言ってきた。
「……………いや、何で?」
『別にいーじゃん、減るもんじゃないんだしぃ?』
「此の御時世、パパラッチもヤバいんだぞ?世界に名を刻む超一流カリスマモデル様が、一般市民の一般男性と電話してるなんて、其れだけでもネタにしてくるようになったんだからな」
実際超有名人とも成れば不祥事一つで、其の名前が持つ
『へぇ~~~?あーくん、私の事をそんな風に思ってたんだぁ~~~?へぇ~~~~?』
声色からしか予想出来ないものの、ニヤケ顔をしているのは間違いない。
「………俺は、世間一般の皆々様が考えてる『天音 永遠』の肩書きってヤツを、其のまま言葉にしただけだが?」
『知ってる、君は何時だって其の姿勢だからね』
『だけど━━━━』そう言って彼女は言葉を繋いできた。
『君は君が思う以上に、色んな人を変えている。其の姿勢や心構えが、沢山の人を動かしてる。其れを絶対に忘れないでね?』
私も影響を受けた人間の一人なんだから、と心の内で呟いて。彼女の言葉に梓は。
「………まぁ、よく解らないけど………ありがとうな永遠」
相変わらずの言葉を以て、しかし其の言葉からは相手に対する感謝が籠った声であった。
『………どーいたしまして。取り敢えず明日、ライブラリとの会談を頑張ろう』
「あぁ、交渉方面は永遠に任せる。事情説明は俺が、相手側が納得出来るようにやってみるから」
『うん、また明日。シャンフロでね』
そう言って、電話は切れて。梓は『永遠があんな風に喋るなんて、明日は土砂降りの雨が降るか?』と思いながらも、カレー皿を持ってきて。冷めてしまったカップ焼きそばの中身を移し、電子レンジにて再加熱するのだった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!緊張したぁ~~~~…!でもお陰で、あーくんの
そして梓の知らない所で、永遠は少しずつ。そして着実に、己の計画を進めていく。彼女の握る最新型のスマートフォンには、ストーカーや粘着してくる相手に備えた『逆探知機能』が搭載されている。
「覚悟しててね?あーくん…………」
彼女のスマフォに映る地図アプリ、其所には梓の居るアパートの位置が鮮明に表示されて居たのであった……。
夜の中で声を聞き、計画は進む