逸品を作るために、ペッパーは戦う
雷が双皇樹のコロシアムに落ち、雷光は迸り、打撃音が響き渡る。
「うううぅおりゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
『見事、ナリ………強キ、者…。シカシ、我等ノ同胞……ハ、強イ……』
『我等ハ、此処デ………終ワル。ダガ……此ノ先、新タナ皇達……此処ヲ、守護スル………』
「はぁ…はぁ…!っ、ティラネードギラファ………!カイゼリオンコーカサス………!戦って下さり、本当に………ありがとうございました!」
そう言葉を遺し、ティラネードギラファ・カイゼリオンコーカサスがポリゴンと化して爆発四散。ペッパーは彼等に感謝の言葉を伝えると同時に、コロシアムを囲んでいた雷と風の檻は消え、ソロによる討伐+出身:探索家の子の恩恵による、大量のドロップアイテムが空中から地面に降りたペッパーの前に在った。
同時に彼の前には、クエストクリアによるリザルト画面が表示される。
『挑戦者は双皇甲虫との戦いに勝利した』
『クエスト【風雷の挑戦状:強者よ、双皇樹に来たれ】をクリアしました』
『双皇再臨まで、あと239:49………』
どうやら此のクエストは『自身よりレベルが高いティラネードギラファ・カイゼリオンコーカサスと戦え、倒した場合は四時間後に再び戦えるようになる』、所謂『周回可能クエスト』らしい。
そして双皇甲虫達は、空中地上共に『以心伝心』とも言うべき凄まじい連携攻撃と、空中であれば御互いの持つ属性攻撃を爆撃機の如く振り下ろし、地上に降りれば昆虫特有の超馬力を発揮して押し込んでくる。
何よりも厄介なのは、此の二体の内の片方が倒された瞬間に、残された方が『超強化』されて、攻略難易度が桁違いに『跳ね上がる』のだ。まるで『生き残った方の攻撃や速度の調整ミスしたのか!?』━━━━━と叫びたくなるように。
「致命魂の腕輪でスキルを強化してなかったら、本当にヤバかったな………」
今回ティラネードギラファを先に倒した結果、カイゼリオンコーカサスが猛スピードで飛び回りまくりながら、落雷を流星群めいて落としまくる光景は、かのウェザエモンの雷鐘を、落雷時間を無制限にしたかに等しい地獄絵図。生きた心地はしなかったし、もう一回ノーコンクリアしてくれと言われたなら、流石に無理だとペッパーは予感し。
「ニ時間掛かったとは。流石双皇甲虫達だ、一つ残さず持ち帰らなきゃ………」
時刻を確認すると既に深夜の十一時を過ぎており、あの二体が如何に強敵かを物語るには、充分過ぎる物だった。
其れでも手にした彼等の素材は凄まじい量で、本来周回クエストの報酬は少ない事が多いものの、双皇甲虫達自体がレアモンスターなのか、討伐にまで持っていけたからか、其のドロップアイテムも多い。
カイゼリオンコーカサスの剛雷角や発雷器官、ティラネードギラファの風斬鋏に起風器官を始め、彼等の甲殻や前羽殻に脚等々、選り取り見取りである。
「製作過程で結構使いそうだし、出来る限り集めないと………」
「決めた………!アイテムやアクセサリー、食事やらで幸運を高めて一気に揃えきる!此れで行こう………!」
翌日、午後四時。コンビニのバイトを終えて、住まいに戻ってログインしたペッパーは、アイトゥイルを連れてティークの元を訪ねていた。
「ティークさん!幸運を上げられる料理を食べさせて下さい!」
「うぉう!?ペッパー、いきなりどうした!?」
「簡単に言いますと、双皇甲虫達の素材が大量に必要なので、ドロップ率を滅茶苦茶上げたいのです!」
「お、おぅ!待っとれ、幸運を上げるなら……少し値ェ張るが、其れでも良いか!?」
「テイクアウト出来るヤツで!お願いします!」
「よっしゃ!任せィ!」
其の料理はテイクアウト可能だが、テイクアウト品の中では『最も高額』であり、一つ『1万マーニ』が掛かると言う。ペッパーは其れに『2万マーニ』を支払うや、調理補助のヴォーパルバニーが其れを受け取り。チャキチャキの江戸っ子が如く、早速ティークが調理に取り掛かり。そして十分後、笹の葉で包んだ『おにぎり』がカウンターに乗せられた。
「待たせたァ!ティーク特性の『幸有りおにぎり』じゃ!テイクアウト分、キッチリ作っといたぞ!!頑張りやァ!!」
「ありがとうございます!」
アイテムインベントリに収納し、アイトゥイルを頭に乗せて、休憩室からサードレマの裏路地に移動。彼女は二時間半後に此所に来るように伝え、千紫万紅の樹海窟にむかって走り出す。
「幸有りおにぎりの効果は……『食事後からの最初の戦闘終了まで、自身の幸運を1.3倍にする』か。一旦
樹海を走り抜け、双皇樹の有るコロシアムの近くに到着。幸有りおにぎりを食し、効果発動を確認したペッパーはコロシアムの前に立ち、表示されたクエストの受注画面でYesボタンをクリックし、入場する。
退路を塞ぐ風雷の檻、巨樹から響くは彼等の声。
『侵入者……メ!』
『此所、ニ……何ヲシニ、来タ!』
「双皇甲虫よ!俺は貴殿方に挑戦しに来た!俺は強くなりたい、命を懸けた果たし合いを所望する!」
降り立つティラネードギラファ、カイゼリオンコーカサス。レベルはやはり自分よりも高い、だが其れでもペッパーは怖じ気付く事は無い。
『!……夜ノ、帝王ヨリ、呪イ……受ケシ者…!』
『成程……!貴様ハ、強キ者デアルカ!!』
呪いを見、彼等は吠え猛る。そしてペッパーも、彼等の素材を求めて戦う。
『我ハ、颶風の申し子!ティラネードギラファ!』
『我ハ、雷嵐の申し子!カイゼリオンコーカサス!』
『『強キ者ヨ、我等ニ其ノ力ヲ……示セ!!』』
「勝負ッッッッ!!!!!」
兎月【暁天】を握り構えて、双皇甲虫に立ち向かう。見据えるは唯一つ……………ビィラックに甦機装を製作して貰う為。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!絶対にかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁつ!!!!!」
「ゼェ……ゼェ……!」
討伐所要時間、およそ二時間半弱。ティラネードギラファとカイゼリオンコーカサスの二体を、どちらか片方の撃破ではなく同時に撃破出来る様、ペッパーは意識しながら立ち向かい。
危うい場面は多々あったものの『裏技』を利用する事で、何とか事なきを得ながら双皇甲虫の三度目の討伐に成功した。
ポリゴンが爆発四散、ドロップアイテムが散乱する中、ペッパーは合掌と感謝の意を示しつつ、一つたりとも拾い溢しが無いよう、アイテムインベントリアへと収納していく。
「外付けで幸運を上げたからか、ドロップアイテムも沢山手に入って良かった……。其れに……『コレ』が双皇甲虫の『最高レア』のドロップアイテムだろう」
整理する中で彼が手に取ったのは、サッカーボールを一回り小さくした『翡翠色に輝く核』と『黒黄金色に輝く核』。各々『
手に持つだけで掌から雷と風の感触が、ズッシリと乗し掛かってくるのが解った。コレが持つ『価値』が重さとなり、彼に扱い方に気を付けよと警告を促しているようにも思えてくる。
「此れだけ有れば、良い武器が作れる筈だ。待っててください、ビィラックさん!」
インベントリアの中に収納し、ペッパーは
「アイトゥイル、居るか!?」
「はいさ、ペッパーはん!大体時間通りさね!」
サードレマの街並みを駆け抜け、所定の裏路地に戻ってきたペッパーは、アイトゥイルが開いたゲートに飛び込んで、兎御殿へ帰還。其の脚でビィラックの鍛冶場へと向かう。
「ビィラックさん、双皇甲虫の素材を持って戻りました!」
「ワリャ、相変わらず早いの……。んで、肝心の素材は有るかいな?」
「勿論!」
茶を飲んで一息付いていたビィラックが、ペッパーを見て驚いた表情をしている。ペッパーが何を作りたいかは数週間前に彼女に話し、其れから様々なクエストが次々と立て込んだが、無事に此所まで漕ぎ着けられた。
インベントリアから取り出される双皇甲虫の素材達が、山を形成するのを目の当たりにしたビィラックは、やはり目を丸くする。
「こんだけの量を数日で、よくもまぁ集めたのぉ……。しかも双皇甲虫達の核まで有るたぁ、こりゃ凄まじい……」
「人間の欲望って底無しだけど、己自身が気を強く持って其れを律せば、凄い力を発揮しますから」
「全くじゃ。素材は………うむ、此れなら行けるけぇ。ペッパーよ、ワリャの望んだ『
「よろしく御願い致します!」
古匠ビィラックに双皇甲虫の素材全てと皇樹琥珀を渡し、甦機装の出来上がりを楽しみにしつつ、ペッパーは此の日のシャンフロを終えたのだった……。
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