VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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vs FM'sクリサリス




力は示すもの、威光は掲げるもの

問題です。ほぼ密封された空間に、暴れ狂う巨大スーパーボール。これなーんだ?

 

正解は━━━━━━━━━━

 

「地獄絵図じゃねぇーか!!??!何だよあのヘラクレスオオカブト!?どったんばったん大騒ぎじゃないんだわ!どうぇいいい!!!???」

「ペッパーはん!ペッパーはん!アレ、アレはホンマにヤバいのさ!わぁぁぁぁぁ!!!??」

 

ドーム状の空間を飛び回っては激突し、フィールド全体が崩壊の危機を迎えている危険の中、ペッパーとアイトゥイルの悲鳴が木霊す。

 

ヘラクレスリッキーもとい『FM'sクリサリス』━━━━━━━クアッドビートルを始め、ティラネードギラファやカイゼリオンコーカサスと同じ『甲虫型のモンスター』であり、分類は昆虫の王様たるヘラクレスオオカブトに近しい存在。

 

しかし其の甲殻の『硬度』は、此迄戦ってきた彼等とは一線を画す程に『硬く』。其の『馬力』は彼等以上に『高く』、其の『スピード』は彼等よりもずっと『速い』。何より5m近い巨体が、ある程度の広さを持つ空間内で飛び回って、暴れ狂う光景は生きた心地がしない。

 

「くっ……!アイトゥイル、此処を出よう!下に吹き込む風を使って、アイツを此の穴の底まで引き摺り落とす!」

「了解なのさ………!」

 

ドッゴン!ズッゴン!と壁にぶつかり、崩壊までのタイムリミットが迫る中、ペッパーとアイトゥイルは自分達が入ってきた通路へと全力ダッシュを敢行。其れを見たFM'sクリサリスもまた、お前達を絶対に逃がさないと叫ぶように、前羽を広げて後羽を展開。

 

高速で羽ばたかせながら巨体を浮かせて、ヘラクレスオオカブト特有の発達した胸角を突撃槍の如く振り翳して、一人と一匹を追尾。人間と兎が飛び込んだ小さな穴に頭角が刺さるも、仕留められた感触が無かった。

 

だが其れが何だと言わんばかりに、FM'sクリサリスは自らの馬力と共に穴を掘り上げ、自らの通れるスペースをゴリ押しで作りながら、前へ前へと前進し。

 

其の最中に目の前に転がってきた、小さな玉達から放たれる『強烈な臭いと光』によって、己の視界が染め上げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カブトムシ型のモンスターは『夜行性』であり、樹液を嗅ぎ分ける為の『嗅覚』が発達している。言うなれば此のほぼ密閉のドーム状のフィールドに、ペッパーとアイトゥイル以外の臭い『以外』存在していない事で、彼方は殆ど狙い済まして攻撃が出来る。

 

「つまり彼方さんの『嗅覚』と、此方を捕捉可能な『視界』を潰すだけの、強烈な臭いと光をぶつけてやれば良い」

 

窪みに避難してアイトゥイルと共に移動を続けるペッパーは、あの大暴れヘラクレスリッキーを地の底に引き摺り落とし、其処で決着を着ける為の準備を進めていた。

 

投擲玉(とうてきだま)炸臭(さくしゅう)】と投擲玉(とうてきだま)炸光(さくこう)】によって、FM'sクリサリスを擬似的な盲目盲鼻状態に追い込み。

 

「さぁて、彼を外に出してやろう……!」

 

取り出すは、アイテムインベントリの奥底に仕舞っていた『爆土の偶像』、ゴーレムハンティングで手にして以降、万が一に備えて一つだけ持っていた其れを手に取り、出入口目掛けて転がし放つ。

 

離れつつも偶像が転がった方向を見れば、立ち上がってニョキニョキと腕を伸ばして、珍妙なダンスを踊り始め。直後に其の音に引き寄せられてか、FM'sクリサリスが入口を胸角と頭角で突き破り、爆土の偶像諸とも通路を押し潰した。

 

「アイトゥイル、確り掴まってろ……!」

「解ったのさ………!」

 

爆発・衝撃・崩壊。己の顎に爆撃がクリーンヒットしてアッパーカットを食らい、其の時の仰け反りにより後頭部を机にぶつけたかのように、FM'sクリサリスの上半身が跳ねる。

 

同時に窪みに皹が迸って道が崩壊し、ペッパーはダッシュで走り出して跳躍、FM'sクリサリスの身体に飛び乗る。神ゲーが誇る物理エンジン、現実世界さながらの重力+凄まじい吸引力を持つエリアの風力で、バランスを崩した甲虫は翼を広げて抗おうとする。

 

「ちょっと大人しくしとこうか!」

 

だが其れを見越したペッパーが自身のスキル、エトラウンズパウンドを使用。高潔度を参照した一定量の固定ダメージを与える其れが、フォートレスブレイカー及び巨人兵の大厳撃覇(ジャイアント・インパクト)、そしてセルタレイト・ミュルティムスと共に、兎月(とつき)暁天(ぎょうてん)】の一振で振るわれ、其の一撃がFM'sクリサリスの頭部に着弾し、衝撃が爆ぜた。

 

フォートレスブレイカー・巨人兵の大厳撃覇で甲殻を貫き、エトラウンズパウンドの固定ダメージを脳髄に叩き込まれた結果、FM'sクリサリスは平衡感覚に重大なダメージを負い、致命兎の王が打った武器たる暁天は其の身に携えた王撃ゲージを49%に高めていく。

 

「此のまま地面に落ちていこうぜ……!」

 

兎月【暁天】をインベントリに収納しながら、ペッパーは胸角にしがみ付き。FM'sクリサリスは風と重力に引き摺り込まれ、其の巨体を地面に墜落させていく。

 

が、其れでも。自分の身体に引っ付いた、小さな存在達を何とかせんとして、己の身を顧みない自爆覚悟の急転直下錐揉み回転をしながら、大穴の底を目掛けて落ち始めたのだ。

 

「うおわあああああああああああああ?!」

「ひぎゅうううううううううううう!!?」

 

FM'sクリサリスの決死の覚悟を秘めた行動に、ペッパーは己の身体に渾身の力で組み付いて、遠心力でも離れんとするアイトゥイルを支えながら、自らの腹部に来るように脇を締め、戦帝王の煌炉心(オライオン・スピリッツ)起動で筋力向上、其処にイクス・トリクォスとマーシフルチャージャーで補強を加えて振り落とされぬ様に胸角に食らい付く。

 

(チャンスは一回!タイミングとスキルを使用して、此の状況を切り抜けるんだ!俺なら…………絶対に出来るッッッッ!)

 

風が一人と一羽と一匹を押し込み、落下速度は加速の一途を辿り続け。ペッパーは先にサキガケルミゴゴロを使用し、数秒後に振り掛かる己とアイトゥイルが死する瞬間を予見。FM'sクリサリスが地面に激突する、ギリギリのタイミングでの離脱を行う為、真界観測眼(クォンタムゲイズ)及び神律燼風(しんりつじんふう)を発動する。

 

落ちる巨体は隕石の如く、吸い込むように続いた強風の道を貫き。大穴の底が見えた其の瞬間に、ペッパーはアイトゥイルを腹部に抱えて、起動したスキルによって得られた動体視力と共に、手を離した瞬間発生した運動エネルギーを、己のスタミナを引き換えに相殺。直ぐ様身体を神律燼風によって反転させ、地面に着地した━━━━━其の直後。

 

一際大きな衝撃と音が大穴全体に木霊して、FM'sクリサリスが底の大地へと墜落したのだった………。

 

 

 






知恵と道具と武器と勇気で、困難を乗り越えろ


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