ラビッツのトップとの会談
ノックが数回響き、執務室の扉が開かれる。室内は日本の極道物ゲームで見るトップの部屋の其れであり、額縁には『ヴォーパル魂』と達筆な書初め、人参の噛み持つ木彫りのヴォーパルバニーの置物等々、重厚と雰囲気が凄まじい品々が出迎えた。
「…………おや、誰かと思えば。エムルにアイトゥイル、そして初めましてになりますかな?ペッパー殿とサンラク殿」
部屋の奥の机に座り、資料に押印をしていた其の兎は此方に気付いてか微笑んだ。ビィラックが黒毛、シークルゥが白毛ならば、今自分達の目の前に居るヴォーパルバニーにして、ラビッツの
「初めまして、エードワード国王陛下。自分はペッパーと申す者です」
「サンラクだ、初めましてだな宰相閣下」
インテリヤクザのような見た目のエードワードに挨拶をし、ペッパー達は早速本題を切り出しにいく。
「兄貴………いや、此処では『ヴァイスアッシュ』と呼ぶが、アイツから『SF-Zooのラビッツ再訪問』の回答が出たと聞いてな。答えを受け取りに来た」
およそ二週間前、蛇の林檎・水晶街支店にて行われた、
ペッパーが息を飲み、サンラクが見守る中、ラビッツの国王たるエードワードは先に、二人と二羽を来客用の椅子に座らせて、答えを述べる。
「我々ラビッツの答えとしては━━━━━━━
ん?此のままでは?と、ペッパー・サンラク共に疑問を抱き。エードワードは理由を説明していく。
「彼等彼女等がラビッツを来訪し滞在していた期間中、同胞達から多くの『クレーム』が寄せられましてね。何でも『すくしょ』……なるものの騒音が、昼夜問わず響いたせいで寝られなかったや、問答無用で捕まえられて全身を撫でられた等々、挙げればキリがない程の『迷惑行為』を行っていた━━━━━と」
やっぱり手綱やら枷を掛けなくてはヤバい連中だと、二人はSF-Zooの評価を訂正していく。そしてペッパーはエードワードに問い掛ける。
「エードワード国王陛下」
「エードワードで良いですよ。ペッパー殿、サンラク殿。肩の力を抜いて話しましょう」
「………失礼します。では、エードワードさん。先程仰られた此のままではという意味を、御教えいただいてもよろしいですか?」
ペッパーの質問に、エードワードは一拍おいて答えた。
「彼等彼女等は『実力の断片を見せていない』━━━其れが理由です」
「実力の断片を………?」
「………見せてない?」
「はい。時に御二人は『
「はい。招待を受けたプレ………じゃなくて、開拓者が倒さなくてはならない、ラビッツを襲う大蛇だとか」
ユニークシナリオ【兎の国ツアー】の最終的な目標が、ネームドモンスターたる兎食の大蛇であり、其れを討伐する事によってプレイヤーは、報酬たるユニーク
「我々は兎食の大蛇と戦い、見事に討伐した開拓者達を『見ています』。戦い方を始めとした、様々な要素を。ですが彼等彼女等は、其れを見せていない」
「故に」と、エードワードはペッパーを、そしてサンラクを見てこう言った。
「十日後、エイドルトの街に此方からヴォーパルバニーを一羽派遣します。最近『無尽のゴルドゥニーネ』が活発化した影響からか、兎食の大蛇達が何時も以上に数を増して、抜け道から出てくるようになりました。彼等彼女等には、溢れ出た兎食の大蛇達を『全力』で。そして『一匹残さず』倒していただきたい」
ラビッツの国王からの直々のオーダーに、ペッパーとサンラクは耳を傾け、視線を彼に注ぎ。そしてエードワードは最終的な回答を、ラビッツの意向を伝えたのである。
「戦いの結果次第にはなりますが………其の実力相違無しと判断したならば。ラビッツの再来訪も前向きに『検討』する事を、我々は視野に入れても良い。そう考えております」
━━━━━━━と。
「十日後かぁ……六月の下旬辺りだなぁ………」
「そうだな。しっかしSF-Zoo……唯の動物狂いではなかったか」
エードワードとの会談を終えて、ラビッツ側からの回答を受け取ったペッパーとサンラクは、休憩室にて情報を整理していた。
「でだ、サンラクよ。今回の会談で得られた答えを伝える役目、サンラクが果たしてくれない?………って何だよ、其の『えっ何で俺がやるの?ヤダよ面倒臭い』みたいな顔は」
「いや実際面倒だし。其処はクランリーダーたるペッパーやってくれない?」
「俺とサンラクがユニークシナリオで繋がっているって、SF-ZooとAnimaliaさん、延いてはペンシルゴンに悟られたくない」
此れは事実だ。サンラクとユニークシナリオ秘匿同盟を結んでいる上、何らかの拍子でポロッと口走ってしまうかも知れないからである。
「…………なら、どうする?」
「じゃんけんで」
「よし、乗った」
互いに立ち上がり、拳を握り締める。だがサンラクは既に策を考えていた。
(掛かったな、ペッパー。じゃんけんとは言ったが、別に『スキルを使っちゃいけねぇ』なんて事は言ってねぇもんなぁ?つまり、サキガケルミゴコロと
覆面の下に隠した口元を弛ませ、クツクツと笑うサンラク。
(━━━━━って考えてるんだろうな、サンラクは。多分サキガケルミゴコロと真界観測眼でも使うつもりかな?まぁ、其処に関しちゃ『勝算』は有るんだけども)
冷静に努めて、便秘やシャンフロでの戦い方から確実に仕掛けてくると、ペッパーは予測を立て。
「最初はグー……!」
「じゃんけん………!」
『ポン!』の瞬間、互いに真界観測眼とサキガケルミゴコロを使用、スローモーションと思考加速の中で脳裏に浮かぶ、己の敗北の未来を見た果てに、二人が繰り出したのは━━━━━━━━━━
ペッパー:グー
サンラク:チョキ
「シッヤァァァァァ!勝ったァ!」
「ギャアアアアアア!?負けたァ!?」
勝敗を分けたのは同じ『サキガケルミゴコロ』、其れが『
「ってかペッパー、お前スキル使っただろ!?もう一回!」
「却下。サンラクの性格なら、絶対スキルを使うと予想してたし。勝てたのはサキガケルミゴコロが『改備』まで、ちゃんと到達してたのが大きかった」
「グヌヌヌ………ん?改備?ナニソレ」
種明かしをした所、サンラクが聞き慣れない単語に疑問符を浮かべたようなので、ペッパーは彼にレクチャーをする事にした。
「どうやら致命武技は、秘奥から一定以上の修練を重ねる事で、其の後ろに改備なる物が表示される様になる。因みにスキルも同様な物が有るんだが、此方の場合は神とかの領域の先に『
多分なんだが此の二つの表示は、スキル『其のもの』の熟練度がMAXに到達して、条件を達成する事で変化するっぽい」
「なぁ、ペッパー。まさかオマエのスキルって……既に昇華に至った奴が有ったり?」
「あぁ、八つ昇華まで至ってるぜ。俺は腕輪を此のまま装備し続けて、スキルの育成を続けるつもりだけど」
「ふぐぅ!?」
サンラクが膝から崩れ落ちた。一気にレベルを上げた弊害が、まさか此のような形で襲い掛かるとは、彼自身思いもしなかったのだろう。
「ウゴゴゴゴゴゴ……!まさかスキルに、更にもう一段階の変化が有ったとは………!」
「一気に上げるか、じっくり上げるか。永遠に続くレベリングの議題だな……」
「…………よし、決めた!レベル上限取っ払ったら、腕輪装備し直して、スキルを鍛えてやる……!!!!」
致命魂の腕輪がもたらす、凄まじい力を目の当たりにして、改めて装備すると誓ったサンラク。其れは其れとして、じゃんけんに勝利したペッパーはサンラクに、SF-ZooとAnimaliaへの回答を頼んで。
サンラクは嫌そうな顔をしながらも、ペンシルゴンを通じてAnimaliaを蛇の林檎に引っ張り出す様に連絡を入れるのを見届けた後、本日のシャンフロを終えたのだった………。
強くなるのに、道程は様々