ラビッツの意向を示す時
ブラッドペッパーが幕末の修羅の地にてレイドボスと戦い、其の名が轟いていた頃。
シャングリラ・フロンティア内の第8の街たるエイドルトに在る、蛇の林檎水晶街支店の一室にて、クラン:
「サンラクさん、伝書鳥は見たわ。ラビッツからの回答をいただけたって」
「ん~まぁ、そうだな………」
チラリと横を見れば、此方のサブリーダーのペンシルゴンはニヤニヤと笑って、彼方のサブリーダーのヴェットは彼女に警戒色を示している。
そしてサンラクが対面しているAnimaliaはと言えば、ペンシルゴンの要請で彼と共に付いてきたヴォーパルバニーのエムルを抱っこ、撫で撫でしながらグヘヘ顔になっていた。
「コホン………。まぁ先に結論から言うが、ラビッツの国王陛下曰く『SF-Zooがラビッツを訪れた時にスクショの騒音や、国民を見境無く取っ捕まえたりしたせいで、信用が地に落っこちてる』って事だ。
そして彼女の笑顔はサンラクから伝えられた、ラビッツ国王『エードワード』からの回答で、一瞬の内に凍り付いた物へと変わる。
「えっ………?じゃ、じゃあ………もう、二度とラビッツには、行けない………って事………?」
「んーまぁそゆこと…………え、そんな死にそうな顔するの?」
ハイライトを失い、今すぐにでも身投げをしてしまうかのような、絶望に染まった顔色をするAnimaliaに、ペンシルゴンも驚いていたが、此処で一人冷静に話を聞いていたヴェットが『ある事』に気付き、サンラクへと質問する。
「………いや、待ってくれ。えっとサンラクさん、確か『此のままじゃ』と貴方は言ったが、其れは一体どういう意味なんだ?」
「…………そう。あくまで『此のままじゃ』なんだよ」
其の言葉をトリガーに、ニヤリと笑ったサンラクは答え。同じく不敵に笑うペンシルゴンが、ヴェットに問いを投げる。
「サブリーダーのヴェット君、だっけ?確かSF-Zooってさ。ユニークシナリオ【兎の国ツアー】のボスたる『兎食の大蛇』を倒してないんだよね?」
「あ、あぁ。あのユニークシナリオが時間切れだとは知らずに滞在し続けた結果、時間切れで強制退国となってしまって……」
未だに絶望表情のAnimaliaを見て、サンラクは一気に話を加速させに掛かる。
「近頃ラビッツでは、其の兎食の大蛇が『大量発生』していてな。開拓者を招いて退治させてるが、如何せん人手が足らないんだとさ」
「…………其処で、だ」とサンラクが一言、そしてクライマックスへの道筋を構築していく。
「来たるは十日後。エイドルトの街に、ラビッツからヴォーパルバニーの使者がやってくる。そしてSF-Zooには、大量に湧き出した兎食の大蛇を『全て』!『一匹残さず』!『クランの全力』を以て撃滅して欲しい!!!━━━━━と、ラビッツの国王陛下は仰られた!」
吟遊詩人の様に大々的に、大袈裟に、やり過ぎくらいの言葉を用いて、ラビッツからの意向をSF-Zooに叩き付ける。サンラクの台詞に、絶望の底に沈んでいたAnimaliaの目に光が再び灯り、彼を見詰めている。
「つまり、我々の本気を見せたなら………!」
「あぁ。其の働き次第では『ラビッツ再訪問の件も、前向きに検討させていただく』━━━━との事だとさ」
「本当に……?本当の本当の本当に………?」
「勿論。ラビッツの国王陛下は、其の誓いを守ると太鼓判を押して下さった」
絶望から希望へ、Animaliaの表情が歓喜を帯びる。
「だが!此処でSF-Zooには、ちょっとした『約束』を守って貰いたい」
「約束?」
ヴェットの言葉をトリガーとして、ペンシルゴンがバトンタッチ。話の流れを己の得意とする、舌戦へ持ち込みに行く。
「園長さんさァ。確か前の五クラン会議時に、私達に『言った事』…………覚えてる?」
「勿論よ、私達はそちらの要求を『可能な限り全て飲む』……………って、まさか!?」
「そう。其の『まさか』なのよねぇ~……?」
獰猛で、そして悪い笑顔で、ペンシルゴンはSF-Zooに『要求』もとい、サンラクが考えた『ラビッツに再訪問出来るようになった場合のルール』を提示したのだ。
一つ。ラビッツに再訪問出来るようになったら、現住しているヴォーパルバニーの許可無く『スクショ』及び『モフらない』事。
二つ。ラビッツに置ける『様々なルールを遵守する』事。『交通ルールや迷惑行為』も対象。
三つ。再びラビッツの国民から苦情が出た場合は、クラン:SF-Zooを兎の国・ラビッツから『永久追放』とする。
「とまぁ、此の三つを守ると約束出来ないなら、此の話は当然『無かった事』になるけど………どうする?園長さん」
「うぐっ………!」
「こ、此れは……厳しい………」
「此処は一応『ゲーム』だし、ネットモラルも『存在』している。アンタ等の『見境の無さ』は、俺達のリーダーたるペッパーや、アンタの弟さんも心配してるってェ話が有るそうじゃねーの」
末席とは言え、ラビッツ名誉国民の称号を持つ人間として、サンラクはSF-Zooの動物に対する狂い具合は、当然ながら無視する事が出来ない。
ただ、あの国に居るヴォーパルバニー達は、話をすれば普通に気さくで良い兎達も多い為、許可を貰えばスクショくらいなら撮らせてはくれるだろう。モフりは知らないが。
「ううう……!解ったわ、約束する……!他のクランメンバーにもラビッツ再訪問の条件を、キッチリ伝えるし守るようにするから………!御願いしますッ………!!!」
嬉しさと不自由さにグチャグチャになりながらも、Animaliaとヴェットは深々と頭を下げて。此処にクラン:旅狼とクラン:SF-Zooのクラン会談は終了となったのだった………。
「あー………疲れた」
シャンフロからログアウトして現実に戻った楽朗は、ライオットブラッドの缶を開け、中身の液体をグビグビと飲み干しながら、ふとインベントリアの中身に在る『ロボットとSFスーツ』の事を思い出す。
「ペッパーがまだレベルカンストじゃねぇんだよな………。あ~……御預けってのは、やっぱツレェモンがある………」
忌々しいリュカオーンに刻まれた
「……………あ、そうだ。ゲームでロボが『使えない』なら、ゲームでロボスーツを『纏えば』良いじゃねぇか……!そうだ、其の手が有った!」
カフェイン補充のお陰かナイスアイデアが降りてきた彼は、自身がプレイしてきたゲームソフトを収めた棚から、一つのソフトを取り出す。
「コイツをやるのも、フェアクソをプレイする前だったな………久し振りにやる以上、腕は鈍ってそうだが………何とかなるだろ」
彼が手にしたソフト、其のタイトルには『ネフィリム・ホロウ』と掲げられている。
そして楽郎は此のゲームにて、旅狼全員が『度胆を抜かれる情報』を手にする事になるが……。其れは二日後、彼が再びシャンフロにログインした時、明かされる事になる………。
クソゲーマー、ネフホロに行く