世界を創った神は
同時刻、ユートピア社・地下十階。
原典閲覧室━━━━━━シャングリラ・フロンティアの最高機密と言える此の場所で、創世神たる
前世代的なアーティファクトたるPCの、其の画面に映るは『ユニーククエスト【インパクト・オブ・ザ・ワールド】』・第四段階の結末と。
影法師が、あるプレイヤーにもたらした『試練の果て』を黙読し、深く………そして深い溜息を付いた。
「はぁ…………今からワールドストーリーの第四段階を『始源眷属』から『デスゲーム』にでも変えようかしら?」
此れは普段ならば『冗談』として吐き捨てるものなのだが、今回に至っては彼女自身『大真面目』にそう考えている。彼女にとっての目の上の『たんこぶ』たる存在が、現在
其のプレイヤーは『ペッパー』。ユニーククエスト【インパクト・オブ・ザ・ワールド】を受注し、第三段階まで凄まじいスピードでクリア。条件を満たした事により、ユニーククエストEX【七星の皇鎧よ、我が元に集え】を解放。
七つの最強種を模倣もしくは由来する、神代の大いなる七つの遺産の内、『天覇のジークヴルム』を模倣した一式装備『
墓守のウェザエモンとの決戦で、初見ながら特殊エンディングへと辿り着き、シャングリラ・フロンティアという世界で初めての『ユニークモンスター撃破』の称号を、第四段階ではポポンガの最終試練の最中、一体どうやったのか【
そして今日、此の日、此の瞬間。彼は影法師の課した四度の試練を乗り越え、冥響のオルケストラに由来する一式装備を探し出す為のヒントを、其の手に掴んだのだから。
「………………『オルケストラ』。プレイヤー名『ペッパー』の過去ログを参照し、現時点をもって監視観測を開始。及び『オーケストラプログラム』の精度を、現在より
近辺の戦闘時点のデータを反映した状態の、影法師による再現すらも退けてみせたプレイヤーである以上、生半可な模倣では乗り越えられてしまう危険が高い。
「フフフフフ………ついでにペッパーが挑んでる、ユニーククエストの第五段階の難易度を『もう少し弄って』……最後の一体は確定で『
あぁ其れから、『
創世の神が筆を取る。
世界の情景が書き変わる。
ペッパーに対するメタが取られる。
オルケストラのプログラムが書き変わる。
「フフフフフ………!アハハハハハ………!」
創世の神が笑い、そして世界がゆっくりと動いていく………。
だが彼女は知らない。
ペンシルゴンが提案・ペッパーがリーダーとして就任した、クラン:
「俺達、クラン:旅狼が保有している『手札』。其の一つである『ロボットとSFスーツ』、其れを実際に見てみたいと言うプレイヤーと、ネフィリム・ホロウで出逢った。
プレイヤー名は『ルスト&モルド』。俺達が保有しているロボットの情報と実物を対価に、ユニークモンスター『深淵のクターニッド』に挑戦出来る『ユニークシナリオ』。其の情報を取引材料として提示してきた」
サードレマ裏路地に在る、NPC運営のカフェ・蛇の林檎の一室。其処では現在、サンラクがもたらした情報に全員の視線が向けられている。
「………………マジか、サンラク」
「大マジだ。俺が嘘言うタマか?」
「外道ではあるよね」
「半裸の変態でしょ?」
「煽る半裸の鳥人間の間違いじゃない?」
「よし決めたわ、其処の三外道。テメェ等にやぁ、ユニークシナリオ参加させてやんねーわ」
『『『すいませんでした、サンラクの兄貴ィッ!!』』』
「喧嘩!よくないと!思います!」
「…………でだ、サンラク。其のルストとモルドの二人は、元々シャンフロをプレイしていたプレイヤーなのか?」
「あぁ。シャンフロでプレイヤーが動かせるロボットを探してたらしいんだが、見付からなくて元々遊んでたネフホロに戻ったんだと。因みに其のゲームランキング一位が、ルスト&モルドな」
ランキング一位という単語に、ペッパーはあまり良い思い出が無い。シルヴィア・ゴールドバーグといい、レイドボスさんことユラといい、其のゲームで一番を取れる連中というのは『凄まじい強さ』と『頭のネジの外れ具合が半端』ではないのだから。
「そうか………。けど其の二人は、何で俺の持っている
「インベントリアに入ってる『ロボットの元祖』というか『大元』が天王なんだろ?交渉の中で『元になった試作機も在るぞ』って言ったら、ルストが『是非とも見たい!』との事でな」
サンラクの発言から、ペッパーはルストなる人物が無類のロボ好きであると考えて。そんなロボ好きなら試作機のロマンも、大好物なのだと察するに至る。
「OK、ルスト&モルドは何時頃にシャンフロに来る?時間や交渉の場所は何処でやる?」
「何時にも増してやる気入ってるね?あーくん」
「…………ツッコミしないぞ、ペンシルゴン。そして其処でニヤ付いてる外道三人、交渉とユニークシナリオ参加したいなら笑うんじゃないよ」
ニヤニヤニマニマ顔のサンラク・オイカッツォ・
「交渉場所は『シャンフロ第15の街・フィフティシア』、其の街の『波止場の酒場』。日時は『三日後の午後六時』に行うそうだ」
ペッパーは既にフィフティシアに到達しており、アイトゥイルのゲートを通れば簡単に到着出来る。問題はサンラクとオイカッツォ、そして秋津茜がフィフティシアに到着出来ていない事。彼等彼女等をキャリーするにしても、他のプレイヤーに見られて此方の情報が渡るのだけは避けたい所である。
「取り敢えず、全員の予定を聞いても良いか?俺は三日分の行動は取れる」
「俺は交渉までの三日、午前中はリアル関係だが大丈夫だ」
「私は明日はお仕事で、其れ以降の夜ならOKだよ」
「俺は明日は用事が入ってて無理、明後日なら何とか」
「私は三日共、午前中は学校や部活で駄目ですけど、夜なら!」
「僕も明日は予定があって駄目だけど、明後日以降ならやれるし良いよ」
クランメンバーの状況を確認、ペッパーは簡易的ながらも予定表を作り、秋津茜及び京極とメールアドレス交換をし、全員に圧縮ファイルとして送信しておいた。途中ペンシルゴンがジト目で睨んでいたものの、メンバーとのやり取りには必須だからと言って、何とか矛を納めて貰い。
「………よし。明後日の夜、フィフティシアへ行軍だ。カバーは俺とペンシルゴンで行うから、各々武器やアイテムを確り準備して行こう。集合場所はエイドルト。まだ到達出来てない人が居たら、俺が明日の夜にサードレマからフォスフォシエ経由でエイドルトまでキャリーするよ。じゃあ、頑張ろう!」
『おー!』
ペッパーが音頭を取り、旅狼は旅立ちへの準備を始める。狙うは
一時間後、シャンフロ第15の街・フィフティシア。
旅狼が同盟を結ぶクランの一つ、
サードレマから旅立つ前、ペッパーはペンシルゴンに『ある情報の開示』を黒狼相手にぶつける事にしており、彼女も話を合わせると言ってくれた。
「御久し振りです、サイガ-100さん」
「此れは此れは、ペッパー君にペンシルゴン君。此所に何用かな?」
出迎えたのは黒狼所属のプレイヤー達、彼等彼女等を後ろに従え、サイガ-100とサイガ-0が前に出る。最前線を走るクラン:黒狼のリーダーと、シャンフロの偉大な記録に其の名を刻んだ【
「クラン連盟を結んだ間柄なので、マッシブダイナマイトさんを援軍に送り出してくれた御礼と、黒狼に所属している最大火力のサイガ-0さんの御力添えを頂きたく、こうして此所を尋ねた次第です」
「そーだよー、団長ちゃん。
「ほぅ……?では聞かせて貰おうか、其の交渉材料と言うものを」
クラン連盟として結んだ『約束事』を果たす為、ペッパーはペンシルゴンと共に席に着き。サイガ-100とサイガ-0が席に着いた所で、交渉として『フルスイング』の一撃をぶつけてきたのだ。
「クラン:旅狼は最大火力保持者・サイガ-0さんの御力添えを頂きたいのです。言うなれば、フィフティシア行軍の為の『援軍要請』になります。其れに伴い『クラン連盟の盟約』により、此方からの報酬はマッシブダイナマイトさんの援軍の御礼も含め、俺達が手にしている『ユニークモンスターの情報の提示』…………『無尽のゴルドゥニーネに関する情報』を黒狼に御渡しします」
神の描く未来、ペッパーが見定む先