VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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会談ヒートアップ




インパクト・オブ・ザ・ワールド ~双狼の対談、そして彼女の決断~

シャンフロ第15の街・フィフティシア。

 

其の一角に建つクラン:黒狼(ヴォルフシュバルツ)が建築した屋敷『黒狼館』の一室では現在、クラン:旅狼(ヴォルフガング)のリーダーのペッパーと、サブリーダーのアーサー・ペンシルゴンが、黒狼のリーダー・サイガ-100と最大火力(アタックホルダー)保持者たるサイガ-0との対談を行っていた。

 

そしてペッパーが初手から繰り出したのは、自身のクランの切札を対価に、ライブラリとの取引で手に入れた未だ公にされていない七つの最強種(ユニークモンスター)の一角・『無尽のゴルドゥニーネ』の情報だった。

 

「………無尽のゴルドゥニーネ、だと?」

「はい。文字通り無尽蔵(・・・)に沸き出るという『全ての蛇の母たる存在』………そんなユニークモンスターが、無尽のゴルドゥニーネです」

 

ふと耳を澄ませば、部屋の外でざわめき声が聞こえてきた。やはりライブラリが言っていた通り、自分達とライブラリ以外知らないらしく、黒狼の団員が混乱しているように思われる。

 

そして当然ながら、対面しているサイガ-100も驚いた顔をしており、まさか旅狼が6体目のユニークモンスターの情報を、此の様な形でもたらしてきた等と予想だにしなかったらしい。

 

「すぅ…………ふぅ…………。すまない、続けてくれ。もたらされた情報が、私達からすれば予想外だったからね」

「解りました。………無尽のゴルドゥニーネは、蛇のユニークモンスター。賢者だろうと愚者であろうと、老いた者や幼い者に男女だろうとも、ありとあらゆる命を━━━━━『森羅万象をも憎悪する存在』です。一説によれば、他のユニークモンスター達も憎んでいる……とか」

 

ヴァイスアッシュとの会話、ライブラリから得た情報を混ぜ合わせ、黒狼の団長・サイガ-100にペッパーはただ真っ直ぐに彼女の目を見て話を続ける。

 

「俺が無尽のゴルドゥニーネの情報を手にしたのは、去栄(きょえい)残骸遺道(ざんがいいどう)のエリアボス、オーバードレス・ゴーレムをソロで討伐した時のドロップアイテムからでした。名前は『無尽の偶像』、此れを『あるNPC』に鑑定して貰った結果、七つの最強種の一角たる存在だと知ったのです」

「私も初めて其の話を聞いた時は、本当に驚いたからねぇ……。なぁんで私の知らない所で、私の知らないユニークモンスターの情報を、あーくんが得て来たの?ってさ」

 

呆れ顔を取り繕い、ペンシルゴンが演技を絡めて話をする。彼女自身、ペッパーが石造りのフィギュアから無尽のゴルドゥニーネの情報を得たのは初耳(・・)だった。

 

だが、ライブラリが『同盟を結んだ他のクランにも公にしていなかったから』こそ。ペッパーというプレイヤーが『5クラン会談時に誠意有る対応を見せたから』こそ。其の話は『信憑性』を帯びている。

 

「成程………クラン:旅狼は我々の予想そして想像を『遥かに越えている』様だな………」

「んふふふ………私達こう見えて『色々持ってる』からねぇ?で、どうする団長ちゃん?取引に応じるか………其れとも否か…………」

 

ニヤリと挑発的な視線を送るペンシルゴン、顎に手を当てながら思考を重ねているサイガ-100、ペッパーは此れでも足りないならば無尽のゴルドゥニーネに関する『ある情報』を切ると決意し。

 

三者三様の思惑が交錯する中、先に口を開いたのは。

 

「あの、ペッパー……さん。其のフィフティシアの行軍には『サンラク』さんも、参加されて……いる、でしょうか?」

「え?」

「お?」

「む?」

 

ペッパーでも、ペンシルゴンでも、サイガ-100でもなく。此所まで口を開かなかった、最大火力ことサイガ-0だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイガ-0からの質問、其れによって室内に沈黙が訪れ、空気を支配する。おそらく此所こそが分水嶺であり、そして此の話し合いを左右する戦いになると、ペッパーは予感したのだ。

 

「えぇ。サンラクが『明々後日までにフィフティシアに向かいたい。イレベンタルから先のエリアは未知のエリアだから、案内役を任せられて尚且つ道中の敵に詳しいプレイヤーが欲しい』と、凄まじい注文をしていたので」

「私とあーくんは一度、園長さんと武器狂いにマッダイさんと一緒に通った事は有るけど、大変だったからねぇ………」

 

此れは嘘でもあり、同時に事実だ。あの時は勇者武器関連も絡んでいたし、不世出の存在(エクゾーディナリー)との戦いも在った為に、相応の苦戦を強いられた。

 

だが、サイガ-0が………最大火力がフィフティシア行軍に加わってくれれば、本当に心強い。サンラクを始め、オイカッツォ・京極(キョウアルティメット)秋津茜(アキツアカネ)をキャリーする上で見ても、最大火力の助太刀は頼りになるだろう。

 

「………姉さ、じゃなくて………クランリーダー」

「何だ、0」

 

そして何よりも、此の話の決め手になったのは。

 

「私からも御願いします。今回の旅狼のフィフティシア行軍、私を参加させて下さい」

 

サイガ-0本人が深々と頭を下げ、サイガ-100に対して願い出た事であった。数秒の沈黙、そしてサイガ-100が答えを出す。

 

「…………解った。クラン:黒狼は盟約に従って、君達の援軍要請に応じ、サイガ-0を派遣する。ペッパー君、武運を祈る」

「ありがとうございます。サイガ-100さん」

 

握手を交わし、サイガ-0との集合場所及び時間を取り決めて。此所に双つの狼による会談は、幕を引いたのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ………緊張したぁ」

「お疲れ様、あーくん」

 

黒狼館を後にし、緊張で凝り固まった身体を解すペッパーは、ペンシルゴンと並んでフィフティシアの夜の街を歩く。無尽のゴルドゥニーネの情報を対価に当初の目的だったサイガ-0の援軍要請受理と、クラン同士の盟約でマッシブダイナマイトを援軍として送ってくれた礼を、キッチリ果たせたと見て良いだろう。

 

「あ、あの………ペッパーさん」

 

そんな二人の後ろで突如、声が聞こえて。振り向くと其処には白亜の鎧を纏う、サイガ-0が立っていた。

 

「うぉつ!?サイガ-0さん!?」

「おやおや、ゼロちゃん。どうしたの?」

 

片や驚き、片やニヤリと笑い。

 

「実は、折り入って『話』が有りまして………」

 

サイガ-0が口を開き、二人に話の内容を伝えていく。

 

 

 

 

 

 

 

其の内容はクラン:旅狼と黒狼にとって、延いてはシャングリラ・フロンティアに対し、大きな影響を与える事になるのだが。

 

其れはまだ、先の話である…………。

 

 

 

 






嵐の前の静寂


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