VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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キャリー開始




勇者と魔王と蜻蛉が行くは、命煌めく樹海窟

「やぁやぁ、あーくん。そして秋津茜ちゃん。昨日振りだね」

「はい、ペンシルゴンさん!今日はペッパーさんと一緒にエイドルトまで、よろしくお願いします!」

 

シャンフロ第3の街・サードレマ、アイトゥイルの開いたゲートを越えて、裏路地からエンハンス商会・サードレマ露店通り支部近くにやって来たペッパーと秋津茜は、其処でペンシルゴンと合流し。

 

狐の面を掛けながらも、視線と眩しい雰囲気で頭を下げる秋津茜に、ペンシルゴンが悶える様子を見ながら、今日中にやる事をペッパーは確認する。

 

「ペンシルゴン、秋津茜。千紫万紅の樹海窟、そして奥古来魂の渓谷の2エリアを今夜中に越え、エイドルトまで向かう。あまり時間は無いし、早速移動を開始しよう」

「はい!」

「ん、じゃあ行こうか?あーくん♪」

「…………ツッコミはしないぞ、ペンシルゴン」

「ペッパーさん、もしかしてペンシルゴンさんと『お付き合い』しているんですか!」

「まぁ、色々……な」

「フフ……♪」

 

遠い目をするペッパーと、乙女の顔をしたペンシルゴンに、秋津茜は目を輝かせて爛漫な笑顔になり。三人と二羽は千紫万紅の樹海窟へ向けて、ひた走るのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーくんが旅人のマントを着けてると、昔の事を思い出すなぁ~………んふふ♪」

「まぁ、胴装備は隔て刃に旅人のマントは昔着ていた奴だからなぁ……マントに関してはグレートアップさせたいが」

「ペッパーさん、なんかスーパーヒーローみたいな感じがします!」

 

木々が生い茂り樹木が外界の空を隔絶し、薄暗く光灯る苔とキノコが灯り代わりとなるエリアを、ペッパー・ペンシルゴン・秋津茜と、旅人のマントの中に隠れたアイトゥイルに、箱へ擬態したシークルゥは突き進み続けていた。

 

レベルカンストに到達しているペンシルゴンも其れなりに敏捷も有るので速いが、何よりもペッパーの右手に刻まれたリュカオーンの呪い(マーキング)と、秋津茜の頭部に焼き付いたジークヴルムの呪い(マーキング)の二重に放つ気配によって、道中の(エネミー)は我先にと逃げ去り、秋津茜を狙おうとする昆虫達も自身よりレベルの高いペッパーによって、手が出せずに逃げて行く。

 

「まぁ、こうなるよな」

「あーくんの右手に着いた呪いの影響、此のエリアのモンスターじゃ逃げ出しちゃうか」

「でも、凄くスムーズですね!此のままエリ……えっと『エリザベス』に突貫しますか!?」

「其れ女王様だよ………『エリアボス』だね、秋津茜」

「あ、其れです!」

「フフフ……面白いね、秋津茜ちゃん」

 

樹海を駆け抜け、最短でエリアボスに辿り着く為のルートを知っているペッパーは、軽い身のこなしで走って行き。其の後をペンシルゴンと秋津茜が追い掛ける。

 

「其れにしても秋津茜ちゃんは、随分長く走ってるね。ステータスはどんな感じにしてるの?」

「私ですか?職業は『忍者』で、ステータスはマナとスタミナと敏捷に多めに振った、機動力重視です!元々は『盗賊』だったんですが、職業ギルドに行ったら忍者に成れるクエストを受けて、忍者に成れました!」

 

シャングリラ・フロンティアには特定の条件を満たす事で、上位職や隠し職業(ジョブ)に派生進化する職種が幾つか有る。其の中でも『忍者』は隠し職業としての認知度は高いものの、とある理由(・・・・・)からシャンフロ内では『ハズレ職業』なる不名誉な烙印を押されているのだとか。

 

「お、着いたよ。皆」

 

ペッパーの声、其の視線の先にはエリアボス・クラウンスパイダーが待つ、巨大な枯木が在った。そして暗闇の中、此方を見つめる赤い複眼が幾つも蠢き、自分達を見定めている。

 

「さて……此れは俺が空中走って、地上に落とすかな?」

「あの高さまで行けば良いんですね!シークルゥさん、行きますよ!」

「秋津茜殿!?蜘蛛の糸の対策は、一体どうするで御座るか!?」

「え、箱が喋った!?」

「取り敢えず秋津茜はストップ」

 

走り出さんとした秋津茜に、箱へ擬態していたシークルゥが声を上げ。其の声にペンシルゴンが反応して、ペッパーが秋津茜を止め。そして彼は此のゲームの先輩として、彼女にアドバイスを送る。

 

「策無しの突撃も良いが、少なくともフィールドをよく見て攻略するのは大事だ」

 

そして彼は今のフィールドの状態、夜の時間帯を含めた上での攻略指南を伝えた。

 

「エネミーやエリアボスとの戦いは、常に『自分が得意とする領域へ如何に相手を引き摺り込む』かが、鍵を握っているんだ。秋津茜、君の『持ち味』は何がある?」

「持ち味、ですか?」

「そう、持ち味だ。もっと言うなら『必殺技』………其れで敵を倒せると思う状態に、自分と相手を持っていく事。其れを意識するだけでも、見える物が沢山有る」

 

ペッパーからのアドバイスを受け、秋津茜は少し考え。そして何か閃いたのか「やってみます!」と言い。彼女が「シークルゥさん!」と叫べば、背中に背負った箱に擬態していたシークルゥが彼女の隣に立った。

 

「白毛のヴォーパルバニー!?」

「はい!パートナーのシークルゥさんです!」

「ウム、よろしくで御座る」

 

赤甲冑に身を包む白毛の兎に、ペンシルゴンも目を見開いて。そして秋津茜とシークルゥのコンビを連れて、一同はクラウンスパイダーの住まう枯木の中へと入る。

 

「行きます!」

 

秋津茜がフィールドを見ながら走り出し、上空からは落下物が地上に向けて飛来する音が聞こえる。

 

「あーくん!やっぱり暗闇で視認性が悪いね、明るくした方が良い?」

「だな。秋津茜!此のフィールドを明るくしてみるから、其の中で君の描く勝利の形を見出だしてみてくれ!」

「はい!やってみます!」

「アイトゥイル、酔息吹の準備を!」

「任されたのさ!」

 

インベントリから取り出し、握り締めるは投擲玉:炸油。強く握った事で油の匂いが、ペッパーの肩に乗るアイトゥイルの鼻に届き、彼女も瓢箪水筒から酒を口に含み。ペッパーが豪速球投擲スキル『アドヴェイン・スロー』で投げた瞬間、阿吽の呼吸で繰り出した酔息吹が炸油を直撃。

 

舞い上がり昇る炎の柱が、枯木の内側を灼熱と灯火で照らし出し、其の光の中で秋津茜は木の内縁に、人が通れるだけの足場を発見するに至り。

 

「シークルゥさん、登れる場所を見付けました!彼処を駆け上がって上まで行きます!」

「援護するで御座る!」

 

シークルゥを頭に乗せながら、一艘飛び起動と共に内縁へ跳躍し、秋津茜が最上部をクラウンスパイダー目掛けて突撃を敢行。ペッパーとペンシルゴン、アイトゥイルが下でヘイトを集めている隙に、秋津茜はシークルゥと共に自身の足音や走行音を消す『忍者職業(ジョブ)スキル』の『音無足(オトナシアシ)』で駆け上がり、途中の蜘蛛の糸はシークルゥが切り裂き、彼女の道を作り出す。

 

そして一人と一羽は、遂にクラウンスパイダーの近くまで辿り着いた。

 

「やりますよ……『刃隠心得(はがくれこころえ)奥義(おうぎ)』!」

 

狐の面を上げ、現実の素顔を其のまま(・・・・・・・・・・)アバターとした顔を露にしながらも、両手で『印』を結んだ彼女の目の前に、正四方形の紋章が現れる。

 

隠し職業・忍者は、クエストを終える事で複数種の奥義を記した巻物から『一つ』を、修行を課すネームドNPCからランダムで与えられるが、其の奥義は当たり外れが激しく、リセットマラソンこと通称『リセマラ』も不可避な一発勝負の中、秋津茜は見事に『大当たり』を引き当てた。

 

「すぅぅぅぅぅぅぅ………『竜威吹(リュウイブキ)』!!!ッ━━━━ワァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

『刃隠心得・奥義 竜威吹』━━━━━━━其れが秋津茜が修行クエストを終えて、与えられた巻物から習得した此の技は、プレイヤーの肺活量(スタミナ)・MPの総量に依存するものの、其の能力は『自身の記憶に残るドラゴンのブレスを模倣』するという、忍者の秘奥義である。

 

シャングリラ・フロンティアを初めて、秋津茜がプレイした時間は一ヶ月にも満たず、そして出逢ったドラゴンは『たった一匹しか居ない』。

 

其のたった一匹のドラゴンは、七つの最強種(ユニークモンスター)が一角に座する、天覇のジークヴルム。己の顔に強者たる呪い(マーキング)を刻み付けた、金色の龍皇。秋津茜の模倣した其のブレスは、本物の物とは天と地程の圧倒的に掛け離れた物に過ぎない。

 

だが、其のブレスは単純なドラゴンの火炎放射とは、一線を画す『極太のレーザー砲撃』。其れこそ『燃え易い蜘蛛の糸』・『炎属性弱点のエリアボス』・『ヘイトが自身に向いていない至近距離』で繰り出したなら。

 

『ギジャ!!?!??!』

「ワァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

弧を描きながら凪払われた一閃が、枯木に張った巣ごとクラウンスパイダーの頭胸部と腹部を、真っ二つに焼き斬り断ち。

 

「おわっ!?」

「わぁっ!?」

「ほやぁ!?」

 

焼き斬れた半身が地面に叩き落とされ、クラウンスパイダーが落下死によって、其の身を構築するポリゴンが爆発四散する。

 

「ペッパーさーーーーーーん!ペンシルゴンさーーーーーーん!やりましたよーーーーーー!」

 

そして上から、秋津茜の元気な声が木霊して来て。ペッパーとペンシルゴンは互いに顔を見合いながら、こう思わざるを得なかった。

 

 

もしかして自分達は、とんでもないプレイヤーを戦力に引き込んだのではないか?━━━━━と。

 

 

暫くして内縁を使い、秋津茜が下まで戻って来たので、よくやったなと褒めたりしながら、三人と二羽はフォスフォシエに到着したのだった………。

 

 

 

 






レーザーブッパ少女、秋津茜


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