VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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走れ、走れ、走れ




駆け走る者達は瘴気満ちる谷を越える

「いやぁ、まさか極太レーザー砲撃が切札だったとはねぇ………。因みに何で顔を狐のお面で隠してるの?」

「はい!『ジークヴルムさんのブレス攻撃』を模倣した、私の切札なんです!ペッパーさんのお陰で、何か『掴めた』気がします!あ、実はジークヴルムさんと戦って逆鱗に攻撃したら焼き払われて、頭に『呪い』が付いてたんです!」

「そ、そうなんだ………」

 

フォスフォシエを越えて、此処は奥古来魂(おうこらいこん)渓谷(けいこく)。ペッパーと秋津茜の二人が放つ、最強種の刻んだ呪い(マーキング)によって瘴気とワイバーンゾンビを退けながら、前へ前へと進んでいく一向は秋津茜の持つ切札の竜息吹の威力に、遠い目をしていた。

 

(模倣したとはいえ、アレは火焔放射じゃなくて極太のレーザー砲撃じゃん………ジークヴルムさんのブレスって、アレよりも威力有るの?マジかよ………。じゃあ、光輝へと昇る金龍王装(レディアント・ドラゴニウス)のFCBの中にあるレーザー砲撃は、アレより威力有るのか……?えぇ…………???)

 

ペッパーは自身の持ち物にして、天覇のジークヴルムを模倣した一式装備の全種装備時限定能力に有る、レーザー砲撃の項目を思い出して益々遠い目をし。

 

(秋津茜ちゃんのパートナー、白毛のヴォーパルバニーのシークルゥ……。あーくんと一緒に居るヴォーパルバニーのアイトゥイルちゃん……。サンラク君と行動を共にするヴォーパルバニーのエムルちゃん………。もしかして『そういう事』なのかな?)

 

ペッパーの右手に付き、今は自分がオススメしたフィンガーレスグローブを付けた事で隠れている、リュカオーンの呪いを。

 

秋津茜が狐面の下に隠している、ジークヴルムの呪いを。

 

そしてペッパーと同じく、しかし胴体と脚の両方にリュカオーンの呪いを受けた事で、鳥頭半裸の変態スタイルになったサンラクを思い浮かべ、ペンシルゴンは散らばったヒントから、一つの『当たり』を付け始めた。

 

(サンラク君の言ってた、ユニークシナリオの発生条件……致命(ヴォーパル)の名を冠する武器……。確か何処かのヴォーパルバニーが、武器として『槍』を持ってた筈………。エイドルトで解散して、探してみるかな?)

 

誰にも気付かれず、小さく微笑んだペンシルゴンは、念密に作戦を頭の中で練り込み始め。其の道中で現れた喪失骸将(ジェネラルデュラハン)を、ペッパーがアドバイスする中、秋津茜とシークルゥのコンビが十五分の時間を費やすも、何とか討伐するに至り。

 

致命魂(ヴォーパルだましい)首輪(くびわ)を装備中の身で在りながらレベルアップを果たすと同時に、喪失骸将の持ち物であった『喪失骸将(ジェネラルデュラハン)の斬首剣』を獲得するという、幸運を発揮して。

 

そして三人と二羽は此のエリアで瘴気が最も濃い場所、即ち瘴気のドームと其の中に居座るエリアボス・歌う瘴骨魔(ハミング・リッチ)が居る場所まで辿り着いた。

 

「さて……アイトゥイル、前回やった『アレ』をもう一回頼めるか?」

「任されたのさ、直ぐ準備するさね」

「前回やった………」

「…………アレ?」

 

取り出しますは焰将軍(ほむらしょうぐん)両刃長剣(ロングソード)・投擲玉:炸油・聖水、ペッパーが炸油を両刃長剣に塗り着けている間に、アイトゥイルが酒の入った瓢箪水筒に聖水を投入してシェイクし。

 

「さぁ皆、討伐に行こう!」

 

そんな奇妙な行動を取る中、一人と一羽は準備万端と言わんばかりに、二人と一羽を連れてドームに突入。其処にはドス黒い瘴気を黒いドレスの如く、其の身に纏った髑髏のエリアボスが居た。

 

「アイトゥイル!」

「はいさ!」

 

戦闘開始と同時、油を縫った両刃長剣に黒兎の吹き放った酔伊吹が直撃。炎熱耐性を持つ赤い刀芯が燃え上がり、暗闇という名の瘴気の中で輝々と燃え盛り、松明の如く此の場所を照らし出す。

 

「出来た……『聖妖炎両刃長剣(カオスバーン・ロングソード)!』

 

剣人闘魂(サムライ・ハート)仙水開蓮(せんすいかいれん)三天無双(さんてんむそう)天壱夢鳳(てんいむほう)の点火。瘴骨魔がドス黒の瘴気を放つも、ペッパーが他のメンバーの前に立ちながら、右手を翳して呪いによって瘴気を退け弾き、守り抜いて。

 

「駆けて、切り裂き、一撃で………倒す!」

 

神謳万雷(しんおうばんらい)による雷の如く爆ぜる速度と共に、歌う瘴骨魔との距離を一瞬で詰め切り。聖水・妖炎・首に対する特効武器、そして繰り出す絶技(ぜつぎ)太陽両断(たいようりょうだん)】と速刃(そくじん)塵晴(ちりはらし)】で迷う事も無く、幕末で研鑽し積み重ねた斬首一閃によって、髑髏の首を一撃必殺で切り落とした。

 

「戦ってくださり、ありがとうございました」

 

剣に付いた炎を薙ぎ払って鎮火した刹那、瘴骨魔を構成するポリゴンば爆発四散。同時に瘴気のドームも消え去って戦闘が終了し、瘴骨魔の居た場所には確定ドロップアイテムが一つ転がった。

 

「ペッパーさーん!凄いですー!」

「一刀必殺、御見事で御座る。ペッパー殿」

「いやぁ、あーくん。君も秋津茜ちゃんに劣らず凄いね………エリアボスを一撃必殺とは」

 

アイテムを拾って駆け足合流してきた秋津茜とシークルゥ。そんな秋津茜を見ながら、君も人の事言えない火力持ちじゃんと言わんばかりに、ペンシルゴンがアイテムを拾いながら言う。

 

「瘴骨魔自身、体力が他のエリアボスより低く設定されてるのと、対アンデット+部位特効武器+武器スキルを組み合わせれば、手数は其処まで掛からないからな」

 

エリアボスのドロップアイテムをどうするか話し合った結果、秋津茜に渡す事になったのだが、彼女から「一撃必殺で撃滅に持っていった、ペッパーさんに受け取って欲しいです!」と言われ、ペンシルゴンが秋津茜をジッ………と見つめるも、ペッパーが宥める形で落ち着き。

 

ペッパーはアイトゥイルをマントの中に隠し、秋津茜はシークルゥを箱に擬態させて背中に背負い、三人と二羽は目的地のエイドルトへ到着したのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャンフロ第8の街、エイドルト。

 

奥古来魂の渓谷の真上に在る、水晶巣崖(すいしょうそうがい)から溢れた水晶達によって、研磨・加工・研究によって発達した此の街は、ペッパーが御世話になっている『エンハンス商会』の本社が在る街でもある。

 

「ペッパーさん!ペンシルゴンさん!今日はありがとうございました!」

「裏路地だし、他のプレイヤーにも聞こえる可能性が有るから、静かにしようね秋津茜ちゃん」

「ユニーク狙いの連中も居るからな……出来るだけ隠密にな」

「あ、はい……!今日は本当にありがとうございました!お疲れ様でした!」

 

ペコリと御辞儀し、秋津茜と箱に擬態するシークルゥは裏路地の闇の中へ消えていく。おそらくラビッツとエイドルトの間を繋ぐ為、ランドマークを更新する為だろう。

 

「さてと……あーくん、私も此れから『やらないといけない事』が出来たから、行くね?」

「やらないといけない事?」

「うん、ちょっと時間が掛かる感じ。其れと電話だけど、此の間のフライングもあるから『来週』に回す事にするから。ちゃんと出てね?約束だよ?」

「解った解った、ちゃんと出るよトワ」

「ん、よろしい」

 

そう言ってペンシルゴンはペッパーと別れて別行動を開始し、周囲に誰も居ない事を確認したペッパーは、アイトゥイルを連れて別の場所にゲートを開いて貰う。

 

「アイトゥイル、此れから俺はビィラックさんのクエストを済ませる為に、水晶巣崖に居る金晶独蠍(ゴールディ.スコーピオン)を討伐しに行ってくる」

「金晶独蠍さね……とっても強力な相手なのさ、十分に注意して頑張ってなのさ」

「あぁ。五時間以内に金蠍を仕留めて、此処に戻ってこれるように挑戦してみるよ」

 

アイトゥイルとパーティーを解消し、ペッパーは単身で水晶巣崖に向かうべく、準備に入る。其の地に住まう孤高なる金蠍を、己の力で攻略する為に………。

 

 

 

 

 






金晶独蠍(ゴールディ.スコーピオン)の討伐へ



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