VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

277 / 1074


双皇の拳 vs 孤高の蠍




月下に風雷、轟天に覇撃(前編)

水晶地帯に音が鳴る。

 

甲殻と甲殻がぶつかり合う音が響く。

 

「たぁぁぁぁぁ!」

 

拳撃が、脚撃が、金蠍に叩き付けられる。

 

「水晶群蠍よりかは柔らかいが、其れでも硬いのには変わら━━━━━ッお!?」

 

レーザー型の毒液が放たれ、間一髪回避に成功しながらもペッパーは再び至近距離に肉薄し。アガートラムを起動しながら、金晶独蠍(ゴールディ.スコーピオン)の頭部を殴り付けて、『三度目』となるヒビを入れることに成功する。

 

「ょしっ!さぁ、取るなら取れよ『回復行動』!其の回復が追い付かないくらいに、殴って蹴りまくってやる!」

 

戦闘開始からおよそ一時間半、ペッパーの挑発を受けながら、金晶独蠍は近辺の水晶柱に跳躍。月光の光を受けながら、頭部に入ったヒビを直しに掛かり。

 

「其の間に尻尾を抉りッ!追撃する!」

 

金龍皇装を纏ったペッパーが夜空を飛び、レディアント・ソルレイアに在るドリルバンテージと共に、連続膝蹴りスキル『グラッセル・ゼイリアス』を金蠍の尻尾の付け根に連続で叩き付けては、水晶と水晶の隙間を穿って穴を広げていく。

 

「お、直ぐに距離を取ってきた。やっぱり一筋縄じゃいかないよな………!」

 

金蠍が距離を取れば、ペッパーが再び肉薄する。そしてペッパーの脳内では、此の戦闘中に得られた情報を元にし、攻略チャートが高速で構築されていく。金晶独蠍と戦った中で、彼が此の金蠍を『戦闘及び継戦能力特化型の水晶群蠍の変異種』という位置付けに収めた要因は幾つか有る。

 

先ずは蠍の主力武器たる『巨大な両鋏』。蟹と同じ甲殻類に属する蠍の其れは、深海の水圧にも耐え抜く彼等とは違って頑強さこそ無いものの、獲物を捕らえる為の道具として用いるなら、十分な硬さと馬力を持ち合わせている。何より金蠍の両鋏(それ)は、水晶蠍達の物とは完全に異なり、切り裂き殺す事に重きを置いた進化を遂げて、下手に受けよう物なら真っ二つに断ち斬られるだけの鋭さを持つ。

 

次に金蠍の全身に纏う『金の甲殻』。実戦的訓練で戦った水晶群蠍とは違い、金晶独蠍の甲殻は若干だが『硬度』を削っており、其の巨体の各所には『僅かな隙間』が出来ている。其の隙間は金蠍を攻略する上で『付け入る隙』でもあるが、同時に金蠍本体の機動力を底上げしており、更には体内の熱を外に逃がす為の放出口としても機能し、熱が籠らない為に動きを阻害しないのだ。

 

そして最後に、蠍型モンスターやエネミーのシンボルたる『鋭利な毒針』。突き刺し・薙ぎ払い・叩き付けの一連のアクションの他にも、金晶独蠍は己の針先から毒液を『放出』してくる。単純な威力に優れた『単発型』、スピードと射程距離では随一の『レーザー型』、攻撃範囲の広さと至近距離はレーアドライヴ・アクセラレートか、裏技(・・)無しでは避けられない『散弾型』の三種類を、其の状況に応じて器用に使い分けてくる。

 

此れだけの文面を見れば、金晶独蠍に対して『コイツどうやって倒すの?』等の声が上がるだろうが、ペッパーは既に勝利へのルートを導き出しつつあった。幾度目かになる金晶独蠍の距離離し、其の尾が『縦横に揺れた』のを彼は見逃さない。

 

「其れ『単発型』の毒液でしょ?」

 

ボン!と飛び出す毒砲弾を回避し、走りながらグラビティゼロを起動。振るわれる鋏で真っ二つになった水晶を足場に、広げたエナジーウイングの加速飛翔で乗り越えて、己の左腕に装着された風雷皇の御手(サルダゲイル・アトゥヌ)が、金蠍に振るわれる。

 

指先を『アイスピックの様に束ね』、スタミナの消費量で突発的な加減速や急停止急発進を可能にする、神律燼風(しんりつじんふう)を起動。刹那を弾丸で撃ち抜く射手(ガンナー)が如く、カイゼリオンコーカサスの角を以て作られた指が風と雷を纏いながら、金晶独蠍の右目を『貫手(ぬきて)』の要領で貫き、光を奪う。

 

『ギッギィィィ!?』

「よっしゃ!自己再生は有っても、眼球の回復には時間が掛かるだろう!?」

 

戦いの中でペッパーが気付いたのは、金蠍が毒液を用いた遠距離攻撃をする時に、尻尾の動き方には『差違』が存在している事だった。縦横に揺れれば『単発』・尾が揺れれば『レーザー』・針の根元が揺れれば『散弾』と、一見ランダムに見える遠距離にも、繰り出す前の『予備動作』が在る事に気付き。

 

其の予備動作を軸にして、次に金蠍の至近距離下での攻撃方法を引き出させ、其れを思考に置きつつも敵の動きを『誘発』させながら、少しずつ確実にダメージを蓄積させていく。

 

『ギギギ………!ギィギギギ……!』

「勝利への道筋は、少しずつ。着実に整ってきた………!だが慢心はしない。最後まで気を抜かず、お前を倒すぞ金晶独蠍よ!」

 

戦闘を積み重ね蓄積した風雷エネルギーによって、風雷皇の御手がバチバチとスパークを帯びる。まるで自分の宿した能力を使ってみよと、此方に使用を催促しているかのようで。

 

「此処からギアを上げるぞ、金晶独蠍。付いてこれるなら、付いてきな━━━━━放出せよ(Discharging up)!!!」

 

双皇甲虫の籠手に、風が纏い、雷が迸る。戦いが更なる加速を始める………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

甦機装(リ.レガシーウェポン)━━━━其れは生産系(せいさんけい)職業(ジョブ)の一つたる『鍛冶師』の最上位職業:名匠(めいしょう)と、考古学者系統職業の最上位職業と『魔力運用ユニット』の組み合わせる事により、初めて転職が可能になる『隠し職業:古匠(こしょう)』が生産可能とする武器である。

 

通常の武器や防具が、人が獣や龍に『近付く為の物』であるならば、遺機装(レガシーウェポン)甦機装(リ.レガシーウェポン)は獣や龍の力を()が扱えるように、『より強く作り変えた』物なのだ。

 

甦機装(リ.レガシーウェポン)ビィラック・風雷皇の御手(サルダゲイル・アトゥヌ)』━━━━━若き古匠・ビィラックが蒼空(ソラ)を舞う勇者・ペッパーの為に作り上げた、双皇甲虫の籠手は彼等が得意とした『風雷の遠距離攻撃』及び『風雷を纏う物理攻撃』を、人の身で行使する器たる武器。

 

其の権能が一つ『放出せよ(Discharging up)』は、装備者が攻撃・防御・移動・パリィの何れかのアクションを行う度に、風雷エネルギーを蓄積。其のエネルギーを籠手全体に行き渡らせる事により、風属性と雷属性の両属性を纏った巨腕へ変わる。

 

「行くぞ!」

 

鳴り止まぬスパークが螺旋渦巻く風に反射して、まるで左腕だけが『雷雲』を従えているかの様に、金蠍には見えて。しかし、あの腕に『当たらなければ』どうとでもなると結論付けるや、己の尾を叩き付けて跳躍しながら、巨大なる左鋏を振り翳す。

 

左鋏を使ったのは、潰された右目と失った視野を補う為。尾を叩き付けて伸ばしたのは、小さな侵入者が己の死角に回り込んだとしても、速攻で感知出来るようにする為であり。

 

「━━━━━お前なら左目で死角を補うと………『信じていたよ』、金晶独蠍」

 

其れすらも『想定していた』ペッパーが、サキガケルミゴコロによる『未来予測』と幕末で習得した『死角と本命の攻撃視線』を加味した、レーアドライヴ・アクセラレートで瞬間移動し、金蠍の首筋近くに現れて。

 

彼は左拳を開いて掌に、金蠍の首裏を水平チョップを叩き付けた瞬間、金蠍の意識が数瞬ブツリと『断絶』させられた。

 

致命掌術(ヴォーパルしょうじゅつ)虧月(きげつ)(せん)】、其れがペッパーが金蠍に使ったスキルであり、所謂『首トン』に由来する技なのだが、此の技は攻撃時にクリティカルが出れば、大型モンスターであっても『数秒間の強制気絶状態が付与される』、とてつもない技である。

 

崩れ、前のめりに倒れていく金蠍。其の巨体の真下に再び現れたペッパーは、武装した己の巨大なる左手を拳と変えて、蠍の首に打撃を打ち込む。

 

重ねるは英雄王の威光(ギルガメッシュ・サイン)武頼闘気(ぶらいとうき)戦神の心構え(モンチュ・レ・プライド)の三種の強化(バフ)スキル。

 

衝撃によるダメージを一点に集中させる『コンパクト・イステル』、拳をより硬化させる『フルメタルフィスト』、クリティカル時に筋力を参照とした追加ダメージを加える『渾身衝撃(ストライク・アーデ)』を始め、タイフーンランペイジ・ドュヨンペイル・業魔崩(ごうまくず)し・虎崩擊(こほうげき)・アガートラム。

 

そしてイクス・トリクォスとマーシフルチャージャー、最後に致命闘術(ヴォーパルとうじゅつ)朗月正拳(ろうげつせいけん)】の超々至近距離で繰り出した、渾身窮まる寸勁(すんけい)が金蠍の首に突き刺さり。

 

拳を通じて伝わった、クリティカルの感触と共に其の巨体を殴り飛ばしたのだった。

 

 

 






不屈の意思が拳に宿る


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。