VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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衝撃が穿ち、戦局を動かす




月下に風雷、轟天に覇撃(後編)

致命闘術(ヴォーパルとうじゅつ)朗月正拳(ろうげつせいけん)】による寸勁(すんけい)の直撃。金晶独蠍(ゴールディ.スコーピオン)の首部を覆う水晶甲殻が、一点に凝縮・集束された衝撃によって砕け散り。

 

蠍生史上一番の甚大極まるダメージと、強化(バフ)で高められた腕力で振り抜いた、巨大な左腕を持つ小さな侵入者によって巨体が宙を舞い。其の身には風と雷が纏わり付き、其の黄金の威光は倒れ伏す━━━━━━事は無かった。

 

「マジか!会心の一撃だと思ったんだがな……」

 

どうやら攻撃を受けて強制気絶状態が解除された瞬間(・・)、金晶独蠍は防衛本能か、はたまた強者の直感か、自ら後ろに跳ぶ事によってダメージを軽減、即ち『ダメージコントロール』をしたらしい。

 

格闘漫画でもよく描写として用いられる戦法だが、打撃による衝撃とダメージによる致命傷を避ける上で、簡単に出来る+緊急回避方法として効果的なのでオススメだ。

 

だがどうやら今の一撃は、金晶独蠍の『怒り』を買ったようで。潰された右目から、全身の甲殻という甲殻の隙間から、水晶地帯に陽炎を誤認させる程の蒸気を。月光から得て、其の身に蓄えた魔力の息吹きを業火の如く滾らせ、戦場に放出する金蠍が其処に居た。

 

(おそらく一定以上のダメージを与えるor特定の部位破壊で『怒り状態』へ突入かな?)

 

金晶独蠍の『怒り状態』移行の条件には、金蠍のシンボルたる『針の部位破壊』もしくは『体力が一定以下になった瞬間』より突入する。遠からず正解に辿り着いたペッパーは警戒を続けつつも、此の状態時で如何に格闘戦によるダメージを与えるか、脳内で思考を張り巡らせる。

 

(あの蒸気みたいな魔力……。生半可な威力の打撃や格闘攻撃は届かないだろう。フッ、上等だよ……!其の蒸気をブチ抜いて、拳を届かせてやろうじゃないの!)

 

ゲームの中盤以降のボスが持っていたりする『形態変化』に等しい状態を前にしながらも、ペッパーの意志と闘志は業々と燃え盛り、金蠍の纏う魔力にも負けぬ出力を産み出す。

 

ペッパーは今の己が持つ、強化(バフ)スキルを一部残して点火し、隻眼となった金晶独蠍と相対する。戦いは更なるヒートアップを迎えて、最高潮へと昇っていくのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイスピック貫手によって片目を失い、両目が無事だった時よりも、遠距離攻撃の精度が落ちた事で、金晶独蠍は散弾型の毒液『のみ』を使うようになった。

 

其れだけならまだ良い(・・・・)、問題なのは身体から放出される魔力の蒸気が、近接攻撃を仕掛けようとする此方を『押し出して』邪魔をする。

 

そして打撃・格闘縛りという、トチ狂った戦いをしに行った結果、遠距離攻撃を可能とする『針』の破壊が出来ていない為、常に散弾型の驚異に晒され続ける事が確定。

 

何よりも━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

「だぁぁっ!?くっそ、また『使わされた』!やっぱり先に針を破壊しとくべきだったわ!」

 

溢れる魔力蒸気によって散弾型毒液の軌道が『不規則化』する。雨のように降り注ぎ、何処に落ちるかもランダムになった事で、レーアドライヴ・アクセラレート以外の裏技を使わざるを得なくなった。

 

其の名も『インベントリアエスケープ』。MPを対価として安全圏たる格納空間に逃げ込み、散弾型毒液を遣り過ごす方法で、此れを用いた事で双皇甲虫の遠距離攻撃も対処出来た凄まじい技である。

 

当然ながらMPの消費=マナポーション必須の摂理は変わらず、マナポーションの総量=インベントリアエスケープの残存使用回数に直結しており、トワのバースデーケーキを準備する中で、武器の強化に真化・消費アイテムの補充もやって来たが、現在マナポーションがじわじわと減らされていた。

 

「負けらんねぇ………!」

 

マナポーションを一気飲み、掛け声と共に格納空間から現実空間に其の身を戻した勇者は、金晶独蠍と何度目かの対峙。

 

「やぁ━━━━ってやるぜぇ!」

 

金龍王装が唸りを上げる。左手に乗せた鉄拳を、神代の技術者が造り出した遺産の出力で、機動力を無理矢理補いながら、ペッパーは蒼空を舞い上がり。

 

金蠍が放った散弾型毒液の雨を前に、空中で足を踏み出しながら、摩天来蓬(まてんらいほう)頂天律驚歩(ヌフールァウォーク)咆進快速(フルスレイドル)の三種点火と、星天秘技(スターアーツ)・ミルキーウェイで高速空中疾走から、金蠍の決殺距離目掛けて下り落ちる。

 

そして使用するは真界観測眼(クォンタムゲイズ)。加速する思考と景色の中、振り翳される金蠍の両鋏の位置を認識しながら、飛来。

 

魔力の蒸気で出来た凄まじい壁を、レディアント・ソルレイアの加速と自らの回転によって砲弾となりながら、其れらを吹き飛ばした事で、風雷の拳が金蠍の頭部を直撃。

 

「だらっ………しゃああああああああああああああ!!!!!」

 

クリティカルの感触。頭部へのダメージによって昏倒状態になる刹那、振るわれた金の尾を寸での所で回避し、急速上昇からの空中一回転、ペッパーが金晶独蠍に再度肉薄。

 

フルフェイスヘルメットで頭部を守られながら、敵やモンスターの身体を『レントゲンの様に透視化』して、自身の視覚として認識可能とするスキル『刻痕栓認視界(リュトラスメル・ウラタナ)』。

 

敵の身体に存在する点穴(てんけつ)を可視化し、最も衝撃が炸裂した瞬間に威力が発揮される場所を知る事が出来る『破魔を示す視覚(テトラミュオン・ナルクト)』の視覚の二重スキル点火。

 

透視化された金晶独蠍の身体の中、胴体に存在する点穴が最も輝いたのを見定めるや、一気に加速を開始する。

 

頭部を殴られた事で昏倒する金蠍の身体目掛けて、金龍王装のエナジーウイングとレディアント・ソルレイアの全力加速を乗せたペッパーは、駄目押しとばかりに巨人兵の大厳撃覇(ジャイアント・インパクト)を起動し。

 

ガード出来ずに無防備になった胴体に、渾身の拳が突き刺さる。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

バキバキバキバキ!と金色の水晶が軋み、皹割れ、砕けていく。風雷皇の御手(サルダゲイル・アトゥヌ)の音声認証機能の一つ『放出せよ(Discharging up)』によって、籠手全体に行き渡った風雷エネルギーが、致命闘術(ヴォーパルとうじゅつ)朗月正拳(ろうげつせいけん)】時のクリティカルヒットを受け、金晶独蠍(ゴールディ.スコーピオン)の身体に状態異常:帯雷状態が付与されていた。

 

此の状態異常時に打撃(・・)による攻撃が入った場合、其のダメージは対象の肉質及び性質を『無視する』という特性を持ち、致命魂(ヴォーパルだましい)腕輪(うでわ)によって鍛えられて、昇華(スタンバイ)の領域に足を踏み入れた巨人兵の大厳撃覇(ジャイアント・インパクト)の一撃が、金色の水晶の性質を無視して衝撃を。

 

刻痕栓認視界(リュトラスメル・ウラタナ)&破魔を示す視覚(テトラミュオン・ナルクト)で見定められた、最もダメージを徹せる点穴(・・・・・・・・・・・・)をクリティカルで打ち抜き、甲殻を破壊して遂に胴体へ風穴を穿つ。

 

其の一撃と身体を貫かれた衝撃に、金晶独蠍はビクン!一際大きく痙攣して。然れど其の針は最期の命が尽きる刹那まで、小さな侵入者を刺し殺さんとして針先を迫らせるも、後数cmの所で其れは力無く崩れ落ち、金色の身体を構成するポリゴンが崩壊を始めた。

 

「金晶独蠍。水晶群蠍を超えた殺戮能力と遠距離攻撃の種類を器用に分ける知性、そして月光を帯びる事で傷付いた身体を修復する再生能力を宿した、完全無欠の孤高なる蠍よ。今回は俺の勝ちだが、俺は金龍王装を纏っていた。次は此の装備無しで殺り合おう」

 

ペコリと一礼した其の瞬間、金蠍を構成したポリゴンが弾け飛び、爆発四散を遂げて。同時にペッパーの前には、金蠍のドロップアイテムが湯水の如く水晶地帯に放出され、レベルアップを告げるSEが鳴り響き。

 

そして最後に二つのリザルト画面が表示される。

 

 

 

 

『月下の水晶を闊歩する孤高なる金蠍は、強き者により討ち鎮められた』

『ユニーククエスト【覇道を刻みて、武は形を成す】が進行しました』

『残された強者は……………一体』

『修練は此処に結実す!』

致命極技(ヴォーパルヴァーツ):闘撃型(とうげきがた)那由多轍(ナユタワダチ)】を習得しました』

 

 

 

 

 






想いを乗せた一撃が、金色の王を討つ


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