VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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タイトル通りです




魔・王・降・臨 (前編)

金晶独蠍との戦闘から一夜、遂に此の日がやって来た。

 

(さて、いよいよ今日だな………。皆も此の時の為、時間を作ってくれた。今日中にエイドルトからイレベンタル経由で、フィフティシアまで行軍するぞ)

 

朝から台風接近に伴って前線から強い雨が降り頻る中、今日の大学での講義とコンビニバイトを終え、雨が降る外の様子を眺め、帰り道に在るハンバーガーショップでチーズバーガーを咀嚼しながら、梓は一人スマフォの時間とクラン:旅狼(ヴォルフガング)に所属していて、自身とメールやり取りが出来るメンバーの状況を確認する。

 

(エイドルトでの集合時間は午後八時、イレベンタルで午後九時にサイガ-0と合流し、三時間以内にフィフティシアに到着。そして翌日の午後六時に目的地の波止場の酒場で、ルスト&モルドとクターニッドに関わるユニークシナリオの取引………って事は七時半にはログインして、皆を待つ感じかな?)

 

夕食を食べ終え、合掌と御馳走様でしたと一言。席を立ち、ゴミを分別廃棄した梓はハンバーガーショップより出て、傘を差して自宅を目指し進んで行く。

 

(兎に角先ずは帰らなくちゃだな。晩御飯はハンバーガーショップで食べたし、シャンフロではスキルにステータスの調整も終えた。後は消費アイテムをエンハンス商会で揃えて、フィフティシアに向かう……!)

 

何処ぞの漫画の頑張るぞいのポーズを取りつつ、其の足取りは軽やかに。然れど強くなり始めた雨の中、彼は歩みを進め続けて己の住まいに帰り着き。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁやぁ、あーくん。君、けっこー年季の入ったアパートに住んでるんだね?悪いんだけど、此の状態でさぁ…………上がらせてくれないかな?」

 

 

 

 

 

 

 

自宅のドアの前に、衣服と髪含めた全身びしょ濡れの、世界に誇るトップオブカリスマモデルの天音 永遠が、旅行で使うキャリースーツケースを持って立っていた事で、全ての思考が木っ端微塵に吹き飛んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、何なんだ此れは。夢か何かか?

 

ドッキリ番組で取り上げられる題材の一つ『雨の日に自宅前に有名人が立っていたら、一体どんな反応をするのか?』ならば、まだ解る。

 

だが周りには誰も居ない、近くには怪しいワゴン車すらも一台たりとて無い。

 

「ドッキリ番組?何で居場所判ったの?」

「ンフフ………あーくんさぁ、最近のスマフォって『逆探知アプリ』が有るの知らないでしょ?」

「おいまさか………『電話で位置を把握』したのか?」

 

「ごめーさつー♪」とニンマリ笑う永遠に、梓は頭を抱えた。全ては自宅突撃を敢行する為の彼女が仕組んだ計画であり、最大の問題点だった居場所特定を電話番号入手による、通話逆探知という形で解消しに来ていて。

 

そして此方のログインと傾向から逆算する事により、大方の帰宅時間を割り出し、尚且つ雨が降る時間帯に被せる事によって、絶好とも呼べるシチュエーションを構築した━━━━━といった所だろうか。

 

「其れよりさぁ、私身体が冷えそうなんだよね。カリスマモデルの天音 永遠が風邪を引いたら、世界は大打撃で、さぁ大変!こんな時、あったかぁいシャワーを浴びれたらなぁ~???」

 

チラッチラッと此方を見る永遠、もう録な未来どころか首に死神の鎌が掛けられてる気分になりながら、梓は深い深い溜息の後、彼女の傍らにあるスーツケースを指差し言った。

 

「……………はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。解ったよ、シャワーくらい貸してやる。だが、キャリーケース引っ張って来たって事は、着替えは持ってきてるんだよな?」

「いや、中身はゲームプレイ用のVR機器」

「帰って。今すぐ帰って」

「待って待って、待ってって!?!流石に其れは冗談だから!?」

 

お前が言うと冗談に聞こえないだったり、此の先の自分の人生が思いやられそうだと心底思いながら、ペッパーはアパートの鍵を使って扉を開き、永遠を招き入れて。自分はリュックサックを置き、速攻で行動開始。床にタオルを敷いて水濡れを防ぎ、永遠にバスタオルを渡して水気を取るようにして貰う。

 

「兎に角。大事になる前に、シャワーを浴びたら帰宅してくれよ?」

「えー。でもさぁ、あーくん。そうなるとシャンフロでの待ち合わせに、私一人だけ遅れちゃうんだよねぇ?其れに今日、今夜台風で電車やらの交通機関が軒並み停まるって、今朝の予報聞いたしさ?」

「むっ」

「其れに、あーくんにだって悪い事ばっかりじゃないんだよ?何たって世界に誇るカリスマモデル・天音 永遠様が、こうして一つ屋根の下に居るんだから♪」

「むむむ………」

 

世界の乱数がまるで、此の瞬間は私の味方だと言わんばかりに、永遠がドヤ顔で笑っている。ゲームをしていれば乱数の女神に好かれたり、其の逆になったりと少なからず振り回されて来た。

 

「……兎に角シャワーを浴びてくれ、夕飯は食ったのか?」

「まだ食べてないんだ。シャンフロでの待ち合わせまで時間が有るし、あーくんに夕食を御馳走して貰いたいなぁ~?」

 

図々しいというか、図太いというか。昔から天上天下唯我独尊の女王様ムーヴを、自分と彼女の弟たる久遠相手に擦り散らかし続けただけの事はある。

 

「シャツは貸さんぞ」

「ん、解った」

 

そう言って永遠はキャリーケースの中から防水パックを取り出して、シャワー室に入っていき。梓は冷蔵庫と冷凍庫に有るもので、簡単かつ身体が暖まる夕食を作り始めた。

 

取り出したの冷凍のうどんパックに、人参・大根・玉葱の根菜と、豚バラ肉のパックから数枚。先に根菜は人参と玉葱は半分、大根は1/4だけ切り出して、残りは冷蔵庫に。人参以外を皮を剥き、一口サイズに切り分け、鍋とフライパンを用意。

 

各々に水を適量入れつつ火を着け、鍋には一口に切った根菜達を加え、冷凍のうどんはフライパンの中の水が沸騰してから加え、解して火が通ったタイミングを見計らい、湯から鉄笊で掬い上げ、湯切りの後に器の中へ。代わる形で豚バラ肉を投入、火を通して豚しゃぶを行う。

 

そして豚しゃぶにした豚バラ肉を一口に切り分け、煮込んでいる根菜達と合流させ、火の通り具合を確認。其処へ味噌を加えて味を調節した所で、うどんを入れた器に汁を注いで調理は完了した。

 

「よぉし、出来た」

「お、良い匂い~♪あーくんの作ってくれた夕食、楽しみだなぁ~」

「あぁ、永遠か。飯出来、た………」

 

彼女の声と共にシャワー室の扉が開き、梓の目に飛び込んできた光景は。

 

 

 

 

 

 

 

其の美貌を支える『完璧』と言っても過言ではない、均等に整った身体と透明なフリルが付いた赤い水着(ビキニ)を纏い、スラリと細い腕にはびしょびしょに濡れた自分の衣服を持つ、天音 永遠の姿。

 

 

 

 

 

 

 

 

思考がフリーズして再起動する最中、永遠は此方を見ながらニヤニヤニマニマしていて。得意気な顔でこう言って来る。

 

「どぉ?似合ってるかな、あーくん?此れ今度の撮影で使う物なんだけど?……あっ~れぇ~?もしかして私の美しさに、惚れ惚れしちゃったかなぁ?」

「……………先ずは飯を食ってからだ。梓特製『豚汁うどん』、お好みで七味唐辛子を掛けて、味を変えながら食べると良い。あと乾燥機使って良いから、服を乾かしなさい」

 

其の美貌を見せ付けるように、妖艶な視線と声と指で己を誇示する永遠を前に、梓は努めて冷静に、心を落ち着かせて、テーブルをサッと水拭きで拭き上げ。箸と七味唐辛子の瓶と豚汁うどんを運んで座る。

 

「どうした?うどんが延びるぞ?」

「………あーくんってさ、鈍感だって言われる事有るよね?」

「積もる話は色々有るが、食事をし終わってからな………」

 

とんでもない事になったと頭を抱える梓と、まだまだ作戦は終わらないゾ♪と言わんばかりに、笑顔と余裕を崩さない永遠。

 

乾燥機がグルグルと回り出すように、男女の攻防戦は始まったばかりなのだから………。

 






仕掛ける魔王、堪え忍ぶ勇者


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