VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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攻防戦の続き




魔・王・降・臨 (後編)

さて、此の状況を如何に乗り越えるべきか。

 

自分の住まいとしているアパートに、雨に打たれてびしょ濡れのカリスマモデル・天音 永遠がやって来て。シャワーを借りたと思ったら、本邦初公開の水着を着けていました。

 

しかも今、対面で自分の作った食事を食べている光景を、自分の部屋と言う隔絶空間&己以外の誰にも見られない状況という、圧倒的にヤバい状況に見舞われています。

 

いや、イヤイヤイヤイヤ。コレはどうやってもどう足掻いても、確実に『詰んだ』臭いしかしないな?

 

「あーくん、今の君は『詰んでね?』って考えてるでしょ?」

 

何故バレたし。

 

「何故バレたし」

「フッフッフ~……君が状況打破を考えてる時(・・・・・・・・・・)って、両耳が微弱だけど『ピクピク』動くんだよね。無意識の身体の反応?みたいな奴かな。シャンフロで私を壁ドンした時も、同じ様な反応が見えたからさ」

 

うっそだぁと思って思考を止めずに触ってみると、確かにピクピクと微弱ながら耳が動いていた。いやマジか、初めて知ったわ、そんな反応。

 

「でも、ざぁ~んねん。君は私を家に上げてしまった以上、既に『詰んでるんだよね』?此所で私が警察に通報するって事も出来る。何なら此の状況、私が写真を撮って色々虚言を踏まえたコメントをネットに挙げれば、瞬く間に拡散・君の特定が始まっちゃう。そうなったら、君は人生が終わる」

 

どっち道チェックメイトなのだよ♪と、魔王ムーヴ全開状態の永遠が豚汁うどんの麺を啜り終え、七味唐辛子を汁に掛けながらドヤ顔で宣った。

 

「だがお前は……『其れをする事は』決してしない」

「おや、何故そう言いきれるのかな?あーくんは。こう見えて私の影響力って、結構凄まじいんだよぉ~?」

「………じゃあ、何で━━━━━━」

 

 

 

 

そんな苦しそうな顔してるんだよ、お前は。

 

 

 

 

溜息と共に見た永遠(アイツ)の表情は、今にも泣き出してしまいそうで。本当はこんな事をしたくないと、無言で訴えてる視線を送っていて。

 

「お前は此迄、俺のプレイしたゲームの『完全クリア済のセーブデータ』は削除したりしたが、一度たりとも『進行中のセーブデータ』は消す事はしなかった。

つまりお前はこう考えてる━━━━━『自分に縛り付けるのは簡単だ。だが其れで俺が自由じゃなくなるのが嫌だ。でもこんな方法を使わない限り、もうどうしようもないんだ』………違うか?」

 

梓の指摘に永遠の目が見開かれる。完全に当たりだったらしい。レトロゲームと永遠の悪戯で身に付いた洞察力が、こうも機能してると考えると、やはり全て天音 永遠の掌の上だったのではと、疑いたくなってしまう。

 

「………セツナから『お前の事を大事にして』って、最後の約束をしたからな。ゲームのデータとは言え、無下にする訳にはいかないし」

 

消えたデータとは云えど、其の約束は今も記憶に焼き付き、離れないでいる。だが、自分はまだ就職もしてなければ、学生の身分で在るし、おまけに二十歳すら越えて無い。

 

そして相手は世界に名を刻む、トップオブカリスマモデル━━━━━パパラッチに絡まれたならば、自分や彼女への影響は計り知れない。だが此処で自分の言葉で言わなければ。気持ちを伝えなければ。きっと何も変わらない。

 

だからこそ、梓は。呼吸を調え、自らの意思で彼女の隣に座る。

 

「あーくん………?」

「………俺は今はまだ。『責任』を取れるだけの、『力』も『地位』も持っていない。だけど、責任を取れるだけの力と地位を手にして………いや、違うな………」

 

必死に己の想いを言葉にして引っ張り出そうと、思考を巡らせている梓の耳はピクピクと、微弱に動き続けていている。

 

心臓の鼓動が加速していくのが解る………此の『気持ち』を伝えたら、きっと自分達は『今までの関係』じゃ居られないだろう。だが、其れこそが。人を人足らしめる『感情(モノ)』なのだろう。

 

清歯のネックレスを渡した後に、口走った言葉を。

 

あの日以降も、胸に根付いた感触を。

 

一緒に居た日々で、己が感じた想いを。

 

十年を越えて芽吹いた、感情を。

 

一つの答えにして、梓は永遠に示す。

 

「永遠」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━━━━━好きだ。俺の恋人になって欲しい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして梓が出したのは、シンプルで。だが、彼女にとって『一番聞きたかった答え』だった。

 

「………………私も

「永遠?何か言っ━━━━━━」

 

彼女の呟きが聴こえた刹那。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………!?!」

「んっ━━━━━━━」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女と自分の唇が重なって、艶と熱の両方を含んだ数秒とも刹那とも、はたまた永劫とも言える、そんな長い永い唇同士の触れ合いが続き。

 

「っ………好きだよ、あーくん。ずっと、ずっと……!君が私を犬から助けてくれた、あの時から………私は君を好きになったの……!」

 

唇が離れ喋れるようになった所で、顔と耳を真っ赤な林檎の様に染めた、水着姿の永遠が其処には居て。ファーストキスを取られたやら、いきなり告白された事に頭を混乱させながらも、何とか彼女に話をする。

 

「━━━━━永遠、お前………」

「……………私。此れでも、すっっっっっごく緊張してるんだから………」

 

ジッッッ………と、此方を見つめる永遠の双眸から、暖かな雫が頬を伝い、零れ落ちていく。梓は其れを指で拭い取ると、彼女が再びキスを迫って来たので、彼は後頭部を数回掻いてから、彼女の顔を見つめて。

 

「………永遠。ありがとう」

「っ━━━━━うん♪嬉しい…!」

 

こうなっては、もうどうする事も出来ないと諦めの境地の中で、せめて男として果たすべき責務を果たさねばと、其の心に決意を固めて。彼は彼女の唇に、己の唇を重ね合わる。

 

一組の男女のキスは暫く続き……。

 

「…………やっぱり、ガマン出来ないよ」

「えっ?うわっ!?」

 

此処で永遠の声色が変わる。梓の体が、永遠によって押し倒される。

 

「あーくん、大好きだよ。愛してる………!だから、もう此の気持ちを抑えられない……!」

「いや、あの………永遠?永遠さん……?」

 

彼女の目には光が無く。そして其の瞳はハートのマークが浮かんでいる。

 

「あーくん……私を、貴方のモノにして?」

「ちょ、ちょっと待って!待て待て待て!?おま、何やって!?いや待て!?待ってって!?ちょ━━━━━」

 

そうして一匹の獣となった女が、一人の男を『喰らう』までに━━━━時間は掛からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、あーくん。君とこうして現実世界で手を繋いだのは、十数年振りだったかな?」

 

キスというイベント、そして約二時間の重ね合いを終えて、水着の紐を結び直し、すっかり冷めた豚汁うどんの残り汁を飲み干した永遠が、真っ白になりながら服を着直した梓の隣に座り、彼の左手に自身の右手で触れる。

 

「あ"~…………確かに其のくらい前に、手を繋いだっけか………」

 

彼女の指に己の指を絡めて、御互いの温もりを感じる梓は。

 

「あ………そうだ、永遠よ」

「なぁに、あーくん?」

 

彼女の正面に移動し、梓は正座と両手を床に着け。永遠に向かって、深々と頭を下げて言う。

 

「……此れから、よろしくお願い致します」

「………此方こそ不束者ですが、よろしくお願いします」

 

彼の示した態度に、永遠もまた頭を下げて言い。彼が時計を見ると、時刻は午後七時四十五分を指していて。

 

「やっべ!?シャンフロの集合時間まで、後十五分しか無い!?」

「あ、ホントだ!?あーくん、布団在る!?」

「在るぞ!俺が敷いておくから永遠は先に、花を摘んできて!」

「!うん、解った!」

 

差し迫る時間に追われながら、慌てて二人は行動を開始して。梓と永遠は水分補給とトイレを入れ替わり、立ち替わる形で済ませた後、一つの布団を二人で相合する形にしながら、シャンフロへとログインする事に成ったのであった………。

 

 

 

 






彼と彼女の答え、そしてシャンフロへ


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