VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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狼達は進む




夜天に星を、勇気に灯火を 其の一

「よいしょぉ!」

 

聖盾(せいじゅん)イーディスの金と白の鏡面が、ハードラック・ライノの突進を往なして、速度を殺す。

 

「今だ!攻撃!!!」

「ヨッシャア、ぶちかませ!」

 

オイカッツォの拳が、秋津茜と京極(キョウアルティメット)の斬撃が、サンラクの斬打が、爆走突撃サイの身体に次々とクリーンヒットして。

 

「行きます……!剣神断覇(けんしんだんぱ)!」

 

体力を粗方削り切った所に、サイガ-0の攻撃が其の巨躯を断ち斬り倒す。シャンフロで今も揺るがぬ、最大火力(アタックホルダー)の地位を維持し続ける其の実力は、やはり目を見張る物がある。

 

「わぁ、レベルが上がりました!」

「俺も上がったよ。やっぱり、此の辺りのモンスターは軒並み強い事も有ってか、レベリングが捗る」

「といっても殆どがレベル99超えのモンスターばかりだからな……ハードラック・ライノやストーム・ワイバーンは良い例だし」

「オマケに呪い(マーキング)の影響も効かないときた……」

 

レベルアップで獲られたスキルの確認と、ポイントの振り分けを秋津茜とオイカッツォは行いつつ、モンスターが落とした素材をペッパーとペンシルゴンが一同に分配しながら、フィフティシアへと歩みを進める。

 

「其れに、しても……皆さん凄い、ですね」

 

そんな時、旅狼(ヴォルフガング)の面々を見ていたサイガ-0が彼等彼女等を見ながら言った。

 

「各々がやりたいように、やりつつも……。其の状況に応じて、役割を遂行してる……と言いますか。特にサンラクさん、は………前衛を張っているのに、一度も被弾していないのは……凄い、です」

「まぁ、直撃=死なんで……リュカオーンにマーキングされてから、胴と脚に装備出来なくなりましたし」

 

ユニークモンスター・夜襲のリュカオーンと善戦し、其の身に二ヶ所の呪いを受けたサンラクは、必然的に耐久無振りの機動力特化に成らざるを得なかった。

 

「で、では…早い所……呪いを解呪して貰って、装備出来るように、ならなくては……ですね!」

「あ~……其れなんですが、レイ氏。実は解呪するか否かで、ちょっと悩んでるんですよ」

「え?」

「紙装甲だったり他プレイヤーのバフを受けられなかったり、色々とデメリットは有るんですが………呪い(コイツ)には色々と助けられた場面が有りまして」

 

実際ペッパーも秋津茜も、ユニークモンスターの呪い(マーキング)を受けた身で在る為に、サンラクの言わんとしている事はよく解る。デバフの谷も呪いの力が在ったからこそ、スムーズな攻略が出来たと言っても過言では無い。

 

「まぁ、出来ることなら脚の呪いは解きたい……とは考えてますね。最近は籠脚(ガンドレッグ)なる、脚用の武器がシャンフロに追加された……とか言う話なので」

 

此れはサンラク自身の本音であり、ペッパーが使っているレディアント・ソルレイアを含めた、籠脚による攻撃スキルも獲得してみたいと考えている。ただ今の自分には、呪いを『一時的に相殺する手段』への糸口を手にしているので、今すぐに解呪したいかと言われたなら、悩みに悩んだ果てに『Yes』と答えるが。

 

「そう言えばレイ氏、聖女ちゃんに会えればリュカオーンの呪いを解く事が出来ると、家のクランリーダーが言ってたみたいですが……」

「は、はい……。此のゲームの、世界観における宗教【三神教(さんしんきょう)】の聖女……『慈愛の聖女イリステラ』、ですね。シャンフロでは唯一『全ての呪いを解呪可能なユニークNPC』です。彼女に頼めば、リュカオーンの呪いを解く事も不可能では無いのですが………」

 

口ごもるサイガ-0に、ペッパーが助け船を出す。

 

「彼女を護っている、ジョゼットさん率いる『聖盾輝士団(せいじゅんきしだん)』。通称『聖女ちゃん親衛隊』を含めたプレイヤーやNPC達が立ち塞がっている……と」

「あ、はい。そうです……ペッパーさんは、イリステラさんに会った事が?」

「えぇ、王都・ニーネスヒルで。ジョゼットさんとも其所で出逢いました」

 

詳細は明らかにしない。彼女との約束を含めて、クランメンバー以外にレディアント・ソルレイアの━━━延いては身内にも光輝へと昇る金龍王装(レディアント・ドラゴニウス)の情報は、来るべき時まで公開したく無いのだから。

 

「あーくんやサンラク君は目を離すと、すぐ色んな隠し事を溜め込むからねぇ………。定期的に叩いて吐き出させないと、私達も巻き込まれかねないからさ」

「僕もペンシルゴンに同意だね、ほんと叩けば叩く程に知らない情報ばっかり出てくるし」

「ホントそれな」

「俺達ゃ、縛られたくは無いがな」

「其れは同意」

「でも、ペッパーさんもサンラクさんも。サイガ-0さんも、皆さん凄いですよ!」

 

言いたい事を言い合いながら、フィフティシアへと向けて進んで行く。と、サイガ-0はサンラクにもう一つ、彼に質問をしてきた。

 

「あ、あの、サンラク……さん」

「ん?どうしました、レイ氏」

「明日迄に、フィフティシアへ……向かい、たい……と言っていた、そうですが……。ど、ドナカ……との、()()ワセ……シテマスカ?」

 

話の空気が変わる兆候を、ペッパーとペンシルゴン、そしてサンラクが感じ取る。警戒を厳としつつ、周囲の敵が此方に迫ってこないかを見定めながら、成り行きを見守る。

 

「えっ?あ、はい。別のゲームで知り合った『男女』二人組のプレイヤー何ですけど………。此方(シャンフロ)では『まだ会った事が無い』んですよ」

 

サンラクの答えに、果たしてどんな反応をサイガ-0は如何なる反応をするのか………。

 

「ソ、ソウナンデスカ…!………………良かった、まだフレンドじゃない

 

どうやらセーフだったらしく、空気が穏やかに成っていく。しかし同時にサイガ-0から放たれるは、並々ならぬ気迫であり。

 

(まだ、フレンドじゃない……つまり『チャンス』が有る……!此の無果落耀(むからくよう)古城骸(こじょうがい)の攻略で、陽務(ひづとめ)君との距離を、私は絶対に詰めてみせる……!)

 

漫画ならば背景の効果音で、ゴゴゴゴゴゴゴ………!と響く様な其れに、ペンシルゴン・京極・秋津茜以外のメンバーとヴォーパルバニーが、ビクリ!と反応。

 

「あ、皆さん!実は、此のエリアには『エリアボスまでの最短ルート』が在るんです。少し複雑では有るんですが、良ければ御案内致します!」

「えっ!?マジすか!?」

 

そんな中、サイガ-0からの提案にサンラクが反応する。此の危険地帯を、最短でエリアボスまで行ける道程は、武器の耐久値を減らさず済む上に、日を跨がすにフィフティシアに到着出来るなら、好都合な事は無い。

 

「皆、良いか?」

「最短でエリアボス到達なら悪くないね」

「私も賛成、道中の相手と戦わずに済むなら」

「僕も賛成」

「私もです!」

「サイガ-0さん、案内をよろしくお願い致します」

 

全員一致の賛成でサイガ-0が先頭を行き、クラン:旅狼(ヴォルフガング)のメンバーは純白の重騎士の後に続いて行く…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンラク・ペッパー・ペンシルゴン・オイカッツォ・京極・秋津茜は知らない。

 

サイガ-0が此の最短ルートを、虚覚えでいる事を。

 

 

 

 

サイガ-0は知らない。

 

サンラクと少しでも、一分一秒でも長く居たいという気持ちにより、旅狼からの要請を半分裏切っている事を。

 

 

 

 

「ペッパーさん達、エリアボスと違う方角(・・・・)に行ってる……?」

 

レーザーカジキは知らない。

 

今進んでいる其のルートは、本来到達出来る筈のエリアボスから、完全に『離れた方角』に向かっている理由を。

 

彼は、狼達が違う方向に進んでいると伝えるべく、其の脚で追い掛けて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして彼等彼女等は知らない。

 

 

 

 

 

 

此のエリアには既に、『夜の帝王』が来ている事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






夜が来る

夜が、来る

夜が━━━━━来る

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