フィフティシアへ向かう狼達
一体何れ程の時間が経っただろうか。
一体幾つのモンスターと戦っただろうか。
エリア攻略開始から数時間、日を跨いだ此の状況に、口を開いたのはサンラクだった。
「あの、レイ氏?」
「えっと、確か此の辺りを右に曲がると…………折れた支柱が在りまして、其所を西に向かい………」
「ぶっちゃけますけど…………『迷ってますよね』?」
「イエ、ソンナコト………ナイデスヨ?」
(いや嘘付けェ!!?)
片言で話すサイガ-0に、此の場に居た
しかし悪い事ばかりでは無く、此のエリアでの戦闘回数は既に相当数に至り、モンスターの素材や経験値はかなり手に入った事で、秋津茜はレベル45・オイカッツォはレベル74まで上がっている。
「その………スイマセン、迷いました………」
「あ、いえいえ。誰にでも道に迷ったり、間違いをする事は有りますから」
「レベリングやドロップアイテムも一杯だし、感謝してるから大丈夫だよ」
とはいえ何時までも、此所で彷徨って居る訳にはいかないのは事実であり、早い所フィフティシアには到達したい。
「取り敢えず自分達が今居る場所が判れば、フィフティシアへのルートも割り出せるかも………。ちょっと空中走ってみる」
「え?」
サイガ-0が疑問を言うより早く、ペッパーは
「ヘルメスブートとも違う……?マナを集束させて、空を駆けてる……感じ、でしょうか?」
「まぁ、そんな所だね。私のあーくんは、アレを朝飯前に出来ちゃうんだから♪」
ジャンルこそ違えど、シャンフロにてホルダーを手にしたプレイヤーの実力。其の一端を目の当たりにしたサイガ-0は冷静に分析し、ペンシルゴンは自慢気に胸を張る。
「フィフティシアは……今居る場所から東側か。と言うか此所『エリアの端っこ』じゃん……最短ルート所か、滅茶苦茶離れた場所まで来てるし……」
「綺麗な夜空なのさ………あ、ペッパーはん。レーザーカジキはんが居るのさ」
そして一人、夜空を駆けたペッパーは遠くに見えるフィフティシアの灯りを観て。情報を伝えるべく、再び地上へ降りようとした時、旅人のマントに隠れていたアイトゥイルが、瓦礫の影からサンラク達や夜空に駆け上がった自分達を見ている、レーザーカジキの姿を目視した。
「何で此所に……?レベリングでもして━━━━━」
アイトゥイルの見つめる方向を見たペッパーは、疑問を抱き。
だが、次の瞬間━━━━彼は恐るべき
レーザーカジキの背後、何の変哲もない巨大な瓦礫━━━━━の
其の刹那、ペッパーは反射的に
そしてマーシフルチャージャーの進化スキルであり、使用したスキルの
「うぉ!?何だ今の!?」
「後ろからだ!」
サンラク・オイカッツォが反応した直後、レーアドライヴ・アクセラレートで瞬間移動をしたペッパーが現れて。彼の肩にはアイトゥイルが乗っかり、其の左脇にはレーザーカジキが居る。
「あーくん!アイトゥイルちゃん!どうしたの!?」
「皆、ヤバイ事になった………!」
苦虫を噛み潰した様な、険しい表情をするペッパー。
そして彼の見据える視線の先に、
瓦礫の山を踏みて、躍り出るは『漆黒の狼』。
「嘘、でしょ………!?」
「わぁ……!凄く大きなワンちゃん……ですかね!」
「な、何という事で御座る……!」
纏う覇気と殺意は、獲物たる者共に『注がれていて』。
「ねぇ、あーくん………コレは夢だったりするの?」
「いいや、ペンシルゴン。コレは現実だよ、とびっきり悪いが着くけども」
「見間違い……では、無いのさね………」
「えっ、えっ………!?」
其の右眼は、まるで『黒く塗り潰された』ように、其所には光が無く。唯其所には『黒の闇が在るのみ』で。
「あわわわわわわ!?サンラクざァん?!サンラクざんッ!?」
「エムル、ステイ!…………って言われても無理だよなァ………『アレ』を観ちゃあよぉ!」
「アレが………サンラクやペッパーの言ってた、ユニークモンスターか…………!」
「こんな時に、現れるなんて………!」
喉を鳴らし、
嘗て弱き身ながらに、己が片眼を切り裂いた者を。
嘗て独り身ながらに、己の体にクリティカルを刻み続けた者を。
そして黒い狼は、
『やっと遭えたね♪』━━━━━━と。
其れは何の因果か、はたまた運命か、もしくは乱数の女神の悪戯か。
ペッパーとサンラクにとって、そしてサイガ-0にとっても。因縁大有りのユニークモンスターとの、最悪の再会であった。
『タイミングが、あまりにも悪過ぎる』━━━━其れがペッパーとサンラクが、此の状況を一言で表した場合の言葉である。
ペッパーにとっては、夜襲のリュカオーンが『夜の時間帯』に『ランダムエンカウント』する特性上、フィフティシア夜間行軍中に『接敵し得る可能性』が少なからず存在する中で、『NPC』と共に行動をしていた事に対してで。
何より『シャンフロのNPC達』は、一度死ねば
一応、エンハンス商会にて『
(あの話を此所でするか?いや、レーザーカジキも居るし、サイガ-0さんの心が変わる可能性だってある………!)
サンラクが危惧しているのは、ウェザエモンと同じ『七つの最強種・夜襲のリュカオーン』と戦い。万が一にも倒した場合、案内役を買って出たサイガ-0と、ペッパーが救出したレーザーカジキに『ユニークシナリオEXの発生』という可能性が有る事。
何より
情報とは武器だ━━━━━━ペンシルゴンがよく言った言葉であり、クラン:
トランプで例えるならば、数字は強くても役の揃っていない『ブタ』、逆立ちしても『ロイヤルストレートフラッシュ』には勝てず。情報を元に攻略編成を整えた黒狼に、リュカオーンが討伐されようものなら、連盟のパワーバランスは一気に傾く事は避けられない。
早い話がサンラクは、空中での機動力に優れたペッパーに、ヴォーパルバニー達を押し付けて退避して貰い、残りのメンバーで『適当な時間稼ぎをして全滅からのエリア攻略やり直し』という、
(どうする……!?あまり時間はねぇ………!)
そんな時だった。
「あーくん」
「サンラク、さん━━━━」
思い悩む二人の戦士に、魔王と重騎士が各々の言葉を紡ぎ。其の言の葉が、彼等の迷いを断ち切った。
夜の帝王、再臨