VS 夜襲のリュカオーン
「うぅおらァ!!」
「そして追撃ッ!!」
振り下ろされるリュカオーンの前足攻撃を
「ッ!?わああああ!?」
しかし其のダメージは微々たる物━━━というよりも『無傷』に近い物であり、リュカオーンの剛力なる後ろ足を振り回されて、カレドヴルッフの穂先は夜の帝王からすっぽ抜け、華奢な彼女の身体が夜空に吹っ飛び舞い踊る。
「ペンシルゴン!」
「ペンシルゴンはん!」
「あーくん、アイトゥイルちゃん!ゴメン助かった!」
地面に叩き付けられる直前、猛ダッシュでスライディングをしたペッパーが、地面に落ちてくる彼女を受け止めて戦線離脱を防ぎつつ、其の身を抱えながら周囲に指示を飛ばしていく。
「オイカッツォ!レーザーカジキ!常にフィールドにある『大きな瓦礫の影の位置』を把握するんだ!リュカオーンは其の影から『現れる』!
ペンシルゴンを戦線まで運んで下ろし、常にフィールドに有る『瓦礫の影』に目を光らせ、文字通りクラン:
「って言った傍から『また』やってきた!」
「今回は俺狙いで来たね、『
動体視力に優れたオイカッツォが、飛び掛かってきたリュカオーンの
時間は約三十分前、レーザーカジキの背後に在った瓦礫の影が蠢き、其の直後に攻撃を仕掛けてきた事で、ペッパーは『夜襲のリュカオーンは影から、様々なアクションを仕掛けてくる』と読み、パーティーメンバーにフィールドにある『影』に気を付けろと、注意喚起を促した。
結果として其の予想は見事に当たり、レーザーカジキや京極、ペッパー自身が当たりそうになったものの、此所までプレイヤー・NPC共に脱落者を出さず、ダメージを与えられている。
「エムル!」
「はいな!『マジックチェーン』!」
エムルの魔術書から魔力を帯びた『鎖』が、リュカオーンの左後ろ足に絡み付き、其の動きを一瞬だけ止める。しかし其の鎖も、夜の帝王相手では僅か一瞬で引き千切られてしまう。
「あぁっ!?千切れちゃいましたわぁ!?」
「エムルは
「わっかりましたわぁ!」
「行きます……『アポカリプス』!」
エムルとサイガ-0が役割を
そしてサイガ-0の持つユニーク武器『
其の一撃は伊達ではなく、此方のパリィでも崩せなかった狼の巨体を揺らし、其の体勢を僅かだが崩す程の威力。シャンフロの
「レイ氏、ナイスクリティカル!少なからず『効いてるぞ』!」
「でも、あんまり『効果』が無いようにも見えますね……」
「このまま押せ押せで行きましょう!」
サンラクが叫び、レーザーカジキは冷静に分析、秋津茜がムードを盛り上げる中、リュカオーンの
「アイトゥイルはペンシルゴンの元へ!サイガ-0さん、今度は俺がリュカオーンを引き付けます!そしたら一度作戦会議、全員ペンシルゴンの位置に集合!!!」
『了解!!!』
ペッパーが己が握る
視線が移った瞬間にペッパーは鞭から、ビィラックに強化して貰った『クリスタルナイフ【改七】』へ切り替えつつ、嘗ての死闘で得た前足攻撃の適切距離に身を置き、
其の場に
「ペッパーさん、アレは……?」
「デコイみたいな物だね。まぁ、30秒程で消えちゃうけどな。……………率直に聞くが、皆はリュカオーンを『倒せると思うか』?」
「正直言うと、アレは相当な火力が無いと『ダメージ』が入らないな……」
「少なくとも
「刀の通りがどうにも悪いと思ったけど、やっぱり『打撃』の方が効果は有るか」
「私は火力面では力になれませんが、サポートならエムルさんにアイトゥイルさん、そしてシークルゥさん達と協力して頑張ります!」
「私も万が一に備えて、秋津茜ちゃんとレーザーカジキ君と一緒にサポートに回るよ。いざとなったら前衛も張るから」
「敏捷系のバフは有るので、必要になったら言ってください!」
其の状況に応じ、フレキシブルに役割を変更する各員の『判断力』。自分達に出来る事を全力で探し、其れをやり抜かんとする『姿勢』。其れがクラン:
そして彼女は、己の持つ『切札』を。彼等彼女等に開示する事に決めた。
「あの、サンラク、さん。そして、皆……さん。もしかしたら、ですが……。リュカオーンに『通用する攻撃』が、私には……有ります。私が『
最大火力の切札の開示に、全員の視線が向き。ペッパーは耳を傾けつつも、リュカオーンの動向を見つめ続ける。
「要点を御願いします、サポートしますので」
「最大火力の由縁……!そんな切札が有るんすか、レイ氏!」
「其れは初耳だ。で?どうすれば其れを『発動』出来るんだい、レイちゃん?」
「そんな物があるなら、是非とも賭けてみたいね」
「分の悪い賭けは嫌いじゃないよ、僕は」
「お、お願いします!」
「其れまで、私達が支えますよ!サイガ-0さん!」
メンバー全員が興味津々の様子で、しかし勝利に繋げる為に耳を傾けている。サイガ-0は其の切札を発動する為の『面倒な行程』を皆に話していく。
「条件は『二つ』……有ります。鎧が今の白い状態時の『
此の二つを、各々『五回ずつ』………同一の敵対存在へ攻撃を当てて、初めて使用可能に……なります」
先程までのリュカオーンとの攻防の最中、サイガ-0は『アポカリプス』を一度ヒットさせている。詰まる所、アポカリプスは『四回』。カタストロフィーは『五回』、リュカオーンへと叩き込まなくてはならない。
「そして二つ目が、アポカリプスとカタストロフィーを、各々五回ずつ与えた後……『長い詠唱が必要』になり………。其れを唱えた『直後』に、与えなくては……いけないん、です」
更には攻撃を当てた後は、サイガ-0は『無防備』となる上に、其の攻撃を『確実に当てる』必要がある。無論外せば今までの苦労は水泡に帰す上、勝機も砂上の城のように崩壊するだろう。
何よりサイガ-0は、此のスキルを此迄『一度』たりとも、夜襲のリュカオーンを相手に『成功』させた事が無い。其れでも己の切札を開示したのは、サンラクの力になりたい。サンラクと彼の仲間達と共に、リュカオーンを倒したい………そう願ったからで。
「良いですね……其の賭け、乗ります!」
「………成程。最大火力由来の切札、そんな魅力的な誘い……其れに乗らない奴は居ないでしょう」
「ヨッシャア!んじゃ条件達成に向けて、此方も気合い入れてやるか!」
「期待してるよレイちゃん。其の切札に私達の命運を賭ける」
「切札発動まで、やるだけやってみよう」
「微力ながら、御力になりますよ!」
「ぼ、僕も頑張ります!」
満場一致で切札にベットしてきたメンバー達に、サイガ-0はホッとしながら。
「よし!もし切札が失敗したら、俺が全責任を持って皆の離脱を援護する!文句は有るか!?」
『異議無し!』
「其れじゃあ、やるかぁ!!!!」
ドンと胸を張って、責任を一身に背負う覚悟を決めたペッパーに、皆が答えて行動を開始するのを見ながら、サイガ-0も双貌の鎧を『
其の手に握る神魔の大剣もまた、漆黒から純白へと変えながら、リュカオーンへと攻撃を当てるべく、動き始めたのだった………。
勝機は最大火力の