VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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VS 夜襲のリュカオーン




夜天に星を、勇気に灯火を 其の四

「うぅおらァ!!」

「そして追撃ッ!!」

 

振り下ろされるリュカオーンの前足攻撃を弾い(パリィし)て、攻撃を往なすサンラクに続く形でペンシルゴンの持つ勇者武器(ウィッシュド.ウェポン)聖槍(せいそう)カレドヴルッフを用い、槍武器攻撃スキルの中でも最上位に位置する『日差しの穂先(スピアオブサンレイズ)』で、肉質貫通+熱による追加ダメージを叩き込む。

 

「ッ!?わああああ!?」

 

しかし其のダメージは微々たる物━━━というよりも『無傷』に近い物であり、リュカオーンの剛力なる後ろ足を振り回されて、カレドヴルッフの穂先は夜の帝王からすっぽ抜け、華奢な彼女の身体が夜空に吹っ飛び舞い踊る。

 

「ペンシルゴン!」

「ペンシルゴンはん!」

「あーくん、アイトゥイルちゃん!ゴメン助かった!」

 

地面に叩き付けられる直前、猛ダッシュでスライディングをしたペッパーが、地面に落ちてくる彼女を受け止めて戦線離脱を防ぎつつ、其の身を抱えながら周囲に指示を飛ばしていく。

 

「オイカッツォ!レーザーカジキ!常にフィールドにある『大きな瓦礫の影の位置』を把握するんだ!リュカオーンは其の影から『現れる』!京極(キョウアルティメット)は深追いし過ぎるな、アイツは攻撃にもディレイを絡めてくる!刀武器で受けるのはオススメしない!」

 

ペンシルゴンを戦線まで運んで下ろし、常にフィールドに有る『瓦礫の影』に目を光らせ、文字通りクラン:旅狼(ヴォルフガング)の目となって戦線を支える。

 

「って言った傍から『また』やってきた!」

「今回は俺狙いで来たね、『分身攻撃(ぶんしんこうげき)』!確かに速いけど、瓦礫から距離が離れてるなら━━━━充分に『躱わせる』!」

 

動体視力に優れたオイカッツォが、飛び掛かってきたリュカオーンの分身(・・)による攻撃を、紙一重で避けながらリュカオーンの本体(・・)を見据え、警戒を続ける。

 

時間は約三十分前、レーザーカジキの背後に在った瓦礫の影が蠢き、其の直後に攻撃を仕掛けてきた事で、ペッパーは『夜襲のリュカオーンは影から、様々なアクションを仕掛けてくる』と読み、パーティーメンバーにフィールドにある『影』に気を付けろと、注意喚起を促した。

 

結果として其の予想は見事に当たり、レーザーカジキや京極、ペッパー自身が当たりそうになったものの、此所までプレイヤー・NPC共に脱落者を出さず、ダメージを与えられている。

 

「エムル!」

「はいな!『マジックチェーン』!」

 

エムルの魔術書から魔力を帯びた『鎖』が、リュカオーンの左後ろ足に絡み付き、其の動きを一瞬だけ止める。しかし其の鎖も、夜の帝王相手では僅か一瞬で引き千切られてしまう。

 

「あぁっ!?千切れちゃいましたわぁ!?」

「エムルは秋津茜(アキツアカネ)の所へ退避!レイ氏、今だ!」

「わっかりましたわぁ!」

「行きます……『アポカリプス』!」

 

エムルとサイガ-0が役割を入れ換える(スイッチ)。サンラクの頭から魔術師兎が離れて、京極の頭を経由し、シークルゥが護衛する秋津茜の元に。

 

そしてサイガ-0の持つユニーク武器『神魔の大剣(アンチノミー)』が、リュカオーンの漆黒の毛並みにも劣らない深淵のブラックエフェクトを纏いながら、振り払いのモーションで一瞬生まれた後隙を、細い針の穴に更に細い糸を通すが如く、サイガ-0の持つ黒き刃がリュカオーンの脇腹に、渾身の力で叩き込まれる。

 

其の一撃は伊達ではなく、此方のパリィでも崩せなかった狼の巨体を揺らし、其の体勢を僅かだが崩す程の威力。シャンフロの最大火力(アタックホルダー)の名に陰り無しである。

 

「レイ氏、ナイスクリティカル!少なからず『効いてるぞ』!」

「でも、あんまり『効果』が無いようにも見えますね……」

「このまま押せ押せで行きましょう!」

 

サンラクが叫び、レーザーカジキは冷静に分析、秋津茜がムードを盛り上げる中、リュカオーンの注目(ヘイト)がサイガ-0に向けられる。

 

「アイトゥイルはペンシルゴンの元へ!サイガ-0さん、今度は俺がリュカオーンを引き付けます!そしたら一度作戦会議、全員ペンシルゴンの位置に集合!!!」

『了解!!!』

 

ペッパーが己が握る風竜骨の筋鞭(ストーム・ウィッパー)を振るい、リュカオーンの前足を『抜刀のように横薙ぎ払い』で叩いて注意を引き。

 

視線が移った瞬間にペッパーは鞭から、ビィラックに強化して貰った『クリスタルナイフ【改七】』へ切り替えつつ、嘗ての死闘で得た前足攻撃の適切距離に身を置き、改備(あらためぞなえ)に到達している致命秘奥(ヴォーパルひおう)【ウツロウミカガミ】を使用。

 

其の場に残像(デコイ)にリュカオーンの攻撃を受け持たせ、周囲警戒を行いながらも、全員をペンシルゴンの近くに集める。

 

「ペッパーさん、アレは……?」

「デコイみたいな物だね。まぁ、30秒程で消えちゃうけどな。……………率直に聞くが、皆はリュカオーンを『倒せると思うか』?」

「正直言うと、アレは相当な火力が無いと『ダメージ』が入らないな……」

「少なくとも拳気(けんき)で殴ったけど、効き目は薄い気がするね。最上級装備を繊維にして、束ねた物が毛皮を構成してる感じ」

「刀の通りがどうにも悪いと思ったけど、やっぱり『打撃』の方が効果は有るか」

「私は火力面では力になれませんが、サポートならエムルさんにアイトゥイルさん、そしてシークルゥさん達と協力して頑張ります!」

「私も万が一に備えて、秋津茜ちゃんとレーザーカジキ君と一緒にサポートに回るよ。いざとなったら前衛も張るから」

「敏捷系のバフは有るので、必要になったら言ってください!」

 

其の状況に応じ、フレキシブルに役割を変更する各員の『判断力』。自分達に出来る事を全力で探し、其れをやり抜かんとする『姿勢』。其れがクラン:旅狼(ヴォルフガング)の『強さ』なのだと、サイガ-0は知り。

 

そして彼女は、己の持つ『切札』を。彼等彼女等に開示する事に決めた。

 

「あの、サンラク、さん。そして、皆……さん。もしかしたら、ですが……。リュカオーンに『通用する攻撃』が、私には……有ります。私が『最大火力(アタックホルダー)』を獲るに至った、最高火力………其れを当てられたなら、十分に勝機は有るかと」

 

最大火力の切札の開示に、全員の視線が向き。ペッパーは耳を傾けつつも、リュカオーンの動向を見つめ続ける。

 

「要点を御願いします、サポートしますので」

「最大火力の由縁……!そんな切札が有るんすか、レイ氏!」

「其れは初耳だ。で?どうすれば其れを『発動』出来るんだい、レイちゃん?」

「そんな物があるなら、是非とも賭けてみたいね」

「分の悪い賭けは嫌いじゃないよ、僕は」

「お、お願いします!」

「其れまで、私達が支えますよ!サイガ-0さん!」

 

メンバー全員が興味津々の様子で、しかし勝利に繋げる為に耳を傾けている。サイガ-0は其の切札を発動する為の『面倒な行程』を皆に話していく。

 

「条件は『二つ』……有ります。鎧が今の白い状態時の『魔王天帝(サタナエル)』で使える、ユニークスキル………『アポカリプス』。そして鎧が黒い状態、つまり『天帝魔王(サタン)』の時、其の時だけ使える……ユニークスキル『カタストロフィー』。

此の二つを、各々『五回ずつ』………同一の敵対存在へ攻撃を当てて、初めて使用可能に……なります」

 

先程までのリュカオーンとの攻防の最中、サイガ-0は『アポカリプス』を一度ヒットさせている。詰まる所、アポカリプスは『四回』。カタストロフィーは『五回』、リュカオーンへと叩き込まなくてはならない。

 

「そして二つ目が、アポカリプスとカタストロフィーを、各々五回ずつ与えた後……『長い詠唱が必要』になり………。其れを唱えた『直後』に、与えなくては……いけないん、です」

 

更には攻撃を当てた後は、サイガ-0は『無防備』となる上に、其の攻撃を『確実に当てる』必要がある。無論外せば今までの苦労は水泡に帰す上、勝機も砂上の城のように崩壊するだろう。

 

何よりサイガ-0は、此のスキルを此迄『一度』たりとも、夜襲のリュカオーンを相手に『成功』させた事が無い。其れでも己の切札を開示したのは、サンラクの力になりたい。サンラクと彼の仲間達と共に、リュカオーンを倒したい………そう願ったからで。

 

「良いですね……其の賭け、乗ります!」

「………成程。最大火力由来の切札、そんな魅力的な誘い……其れに乗らない奴は居ないでしょう」

「ヨッシャア!んじゃ条件達成に向けて、此方も気合い入れてやるか!」

「期待してるよレイちゃん。其の切札に私達の命運を賭ける」

「切札発動まで、やるだけやってみよう」

「微力ながら、御力になりますよ!」

「ぼ、僕も頑張ります!」

 

満場一致で切札にベットしてきたメンバー達に、サイガ-0はホッとしながら。

 

「よし!もし切札が失敗したら、俺が全責任を持って皆の離脱を援護する!文句は有るか!?」

『異議無し!』

「其れじゃあ、やるかぁ!!!!」

 

ドンと胸を張って、責任を一身に背負う覚悟を決めたペッパーに、皆が答えて行動を開始するのを見ながら、サイガ-0も双貌の鎧を『天帝魔王(サタン)』状態たる漆黒の姿に染め上げ。

 

其の手に握る神魔の大剣もまた、漆黒から純白へと変えながら、リュカオーンへと攻撃を当てるべく、動き始めたのだった………。

 

 

 

 






勝機は最大火力の切札(ジョーカー)に有り


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