VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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勝利の為、道を作る




夜天に星を、勇気に灯火を 其の五

夜襲のリュカオーン。ペッパーとサンラクが出逢い、其の身に『呪い』と言う名のマーキングを刻み付け、何れ倒すと心に定めた敵。

 

黒狼(ヴォルフシュバルツ)の団長たるサイガ-100が、幾度も敗れても尚討伐への闘志が揺るがず、情熱を燃やし続ける七つの最強種であり、暗闇と共に顕れる『夜の帝王』。

 

夜の影より現れる黒い狼は『単純な近接戦闘能力』の凄まじさに加えて、自身と同じ大きさか其れ以上の『影』から、分身による『飛び掛かり攻撃』を仕掛けてくる。

 

「全く、常に『フィールドの影』に気を付けなきゃなんねぇって……!クッッッソ、面倒な事してくれやがる……!」

「おまけにっ…!分身攻撃の頻度がさっきより『上がって』来てるな、サンラク!ペンシルゴン!ペッパー!具体的に体感一分に三回程度!」

「本体を狙わなくちゃならないのに、分身が其れを『邪魔』してくるなんて……!相変わらず厄介極まりないよ!」

 

分身攻撃を回避しつつ、パリィを続けるサンラクとオイカッツォ。本体の前足薙ぎ払いから逃げ仰せつつも、新たに現れた分身による飛び掛かりを、何とか避けるペンシルゴン。

 

「でも、こうも分身攻撃を見せられれば『色々』と判ってきた事も有る!あの分身攻撃は、必ず『出現時に影が変形』するっていうモーションが『発生する』!反射神経が優れていないプレイヤーは、常に『影から10m以上離れる事』でギリギリになるけれど、回避は可能だ!

そしてフィールドに存在している『影の位置』を意識しながら、一人では対処出来ない『死角』を、他者の視界で補い合えば、攻撃に対処出来ない訳じゃない!」

 

ペッパーが状況を説明しながら、星天秘技(スターアーツ)・ミルキーウェイを使いつつ空中を駆け回り、フィールドにマナ粒子による残光を残し。左手に握るクリスタルナイフ【改七】から、手斧武器のミリア・アティオン【改三】を装備。

 

『上段唐竹割り』の如く、リュカオーンの身体に攻撃を叩き付けるが、其の毛並みは強靭であり頑強。斬撃による攻撃はやはり効果が薄いと認識し、直ぐにギルフィードブレイカーへと装備変更を行う。

 

「わぁ!?今度は此方にも来ました!?」

「いいいいいいいいいいいい!!!??」

「これヤバイですわぁああああ!?」

「シー兄さん、エムル!」

「何としても御守りするで御座る!」

 

レーザーカジキが自身に敏捷強化のバフを施し、秋津茜(アキツアカネ)・エムル・アイトゥイル・シークルゥと共に、分身攻撃から走って逃げ回り、戦線離脱しないように立ち回る。

 

「今だよ、サイガさん!」

「『カタストロフィー』………!」

 

京極(キョウアルティメット)の声が響き、純白のエフェクトを放つ大剣の一撃が、リュカオーンの顔面に叩き付けられ、其の巨体が後方へと押しやり。

 

「そして俺が、後を取るッ!」

「俺も居るんだよッ、リュカオーン!」

 

ノックバックの僅かな隙を、ペッパーが空中を駆けながらにギルフィードブレイカーを振るい、鎚武器系スキル:冥土神の裁き(ヘカーティエ・ジャッジメント)とフォートレスブレイカーによる打撃を。

 

サンラクが鞍馬天秘伝(くらまてんひでん)で跳躍しつつ、空中インベントリ操作からの煌蠍の籠手(ギルタ・ブリル)展開・装着と共に、格闘スキルのアガートラム・ハリケーン・ハルーケンで、強烈な格闘攻撃をリュカオーンの顔面へ迫撃。更に後方へ押し込んだ。

 

戦闘開始から五十分が迫る中、最大火力(アタックホルダー)の由縁にして切札たるスキル発動に向けて、『アポカリプス』一回と『カタストロフィー』が二回、リュカオーンにヒットしていた。だが当のリュカオーンは、未だに疲労の色を見せていない。

 

「レイ氏!アポカリプスの再使用時間(リキャストタイム)は!?」

「あと30秒、です!」

「サンラク、オイカッツォ!リュカオーンのヘイトは一旦、俺が受け持つ!万が一に備えて秋津茜とレーザーカジキの方へ援護を!」

「あーくん!其のヘイト受け持ちは、おねーさんも出来るから協力させなさぁーい!」

「解った!けど、涙珠は使えるようにしておこう!」

 

ミルキーウェイの効果終了と同時に、ギルフィードブレイカーを己の勇者武器(ウィッシュド.ウェポン)たる聖盾(せいじゅん)イーディスへ切り替え(スイッチ)。サブ職業(ジョブ)に勇者がセットされ、右手には再誕の涙珠が握られる。

 

其の時、リュカオーンがグルル……!と喉を鳴らして。ペッパーとペンシルゴンの目の前で前足を叩き付け、砂塵を発生させてきた。

 

「ぐっ……!?」

「目眩まし……!けど、距離は……えっ!?」

 

砂埃が晴れるも、リュカオーンの姿が無い。何処に居るのかと辺りを見渡せば、黒から白へ鎧の色が反転したサイガ-0の真後ろの影が蠢き、黒狼の形を作るのが見えて。

 

「レイ氏!後ろだ!」

「!」

 

逸早く気付いたサンラクの声によって、サイガ-0が飛び掛かり攻撃を回避する。だが、其の瞬間。ペッパーのゲーマーとしての直感が、高らかな警鐘(アラート)を鳴らし始め、其の身は我武者羅に走り出していた。

 

彼はずっと疑問を抱いていた。何故リュカオーンが影から出現するのか?何故巨大な影から其の姿を見せるのか?

 

そして━━━━━━

 

 

 

 

 

『リュカオーンの本体も、影移動が出来るのではないのか?』と

 

 

 

 

 

「サンラクさんのお陰で、何とか……避けられまし「もう一回避けろ!そいつは『本物のリュカオーン』だ!」

『!?』

 

ペッパーの声でバッと振り向いたサイガ-0に、リュカオーンは『してやったり』と口角を吊り上げ笑いながら、其の前足を振り翳して。

 

「さっっっっっっせ、るぅかあああああああ!!!!」

 

己の胸に琥珀を叩き付け、封雷の撃鉄(レビントリガー)を起動したサンラクが、黒雷を纏ってサイガ-0をお姫様抱っこから、数瞬速くかっ拐う事で何とか事無きを得て。

 

そしてリュカオーンとの狼達の連合軍の間に、ペッパーが割り込む形で盾を構えて守備に入りつつ、再び一同が合流する。

 

「あ、わわわわ!?ひゃああ………!?」

「ふぅ……あっぶね。間に合って良かった」

「てか、サンラク。其のバチバチしてる黒雷何なの!?めっちゃ速くなったよね!?」

「其れは後でな、カッツォ!全く『とんでもない事』してくれたな、リュカオーンの野郎……!」

「い、いやまさか……えと、本体も影移動出来るなんて……」

「あーくんが気付いてなかったら、レイちゃんが倒されてたかも知れないないね……」

「油断も隙も無いね、本当に……!」

「本当に機敏ですね、リュカ……リュカ……リュカローン!」

「リュカオーンですよ、秋津茜さん………」

「い、命が幾つ合っても足りないですわ……」

「エムル、気張るのさ。ヴォーパル魂を全開に燃やすのさ……!」

「アイトゥイルの言う通りで御座る!」

 

お姫様抱っこされた事でバグり掛けたサイガ-0を下ろしつつ、琥珀を胸に叩き付けて黒雷を散らし、解除したサンラクにオイカッツォが反応してきて。ペンシルゴンと京極、そして秋津茜とレーザーカジキに三羽の兎達も集い、此方の様子を伺い続けているリュカオーンを見る。

 

だが、サンラクはサイガ-0に。延いては此の戦いに関わる、全てのプレイヤーに向けてこう言った。

 

「いいや。リュカオーンの本体が『影移動出来る』ってのは、其処まで『重要な事』じゃない。一番の問題は………『其れ』を意図的に、此所まで『隠していた』って事だ」

「……………?………あ、もしかして『そういう事』……!?」

 

此所で事の重大さに気付いたペンシルゴンが声を出し、サンラクは答えを示す。

 

 

 

 

 

 

 

「俺達はリュカオーンの分身攻撃を見せられ、モーションを刷り込まれ続けた事で。リュカオーンの本体は、影移動が出来ないと━━━━━━━誤認させられていた(・・・・・・・・・)。そしてペッパーは、其の可能性と思考を捨てなかった(・・・・・・)からこそ、あの一瞬に回避の指示を出せたんだ」

 

 

 

 

 

 

明かされたリュカオーンの『狡猾さ』、そしてペッパーの『思考深度』に全員が息を飲む。

 

「…………確かに其れなら、リュカオーンが此所まで分身攻撃を『しつこく続けてきた理由』にも、説明が付くな」

「そうなると此所からは、影移動で『避けられる事』も考慮しないといけなくなるね。今まで以上に当てる事が難しくなる」

「責任重大……ですね」

「僕達で何とかするから、サイガさんは切札の為に準備を続けて」

「私も御手伝いしますよ!」

「その、僕も……!自分に出来る事、頑張ります!」

「や、やってやりますわ!」

「其の意気さ、エムル!」

「うむ!拙者もヴォーパル魂を燃やすで御座るよ!」

 

開示された情報を元に、攻略への道筋(ルート)目標(タスク)が定められた。リュカオーンと狼達の遭遇戦は、更なるヒートアップを遂げていく…………。

 

 

 






ユニークモンスターの本領


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