VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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戦いは続く




夜天に星を、勇気に灯火を 其の六

夜の帝王、ユニークモンスター・夜襲のリュカオーン。夜の時間帯にフィールドの影より現れて、自由気ままに様々なエリアへと飛び回る、暗闇が狼の貌を持った存在。

 

己の分身を作り出し、多方面からの飛び掛かり攻撃に加え、自らも其の分身に紛れ、攻撃を仕掛けてくるという確かな狡猾さをも、此のモンスターは持ち合わせている。

 

「わあああああ!?」

「ひぃぃぃぃぃ!?」

「レーザーカジキは炎魔法!アイトゥイルは酔息吹(よいいぶき)を頼む!!効かなくても良い、サイガ-0が攻撃出来る隙を作ってくれ!」

「解ったのさ、ペッパーはん!」

「は、はい!」

 

戦闘開始から一時間になる頃。分身攻撃を偽装した本体に、危うく捕まり噛み千切られそうになった、青い魔術師とパートナーのヴォーパルバニーを抱え逃げ、ペッパーが全力疾走で駆けて指示を出す。

 

「すぅぅぅぅぅ………ッ!酔息吹!」

「エンチャント・ヴォーパル!からの……フレイム・ジャベリン!」

 

口に含んだ酒の総量を参照する火炎放射と、兎の国ツアーを完遂して習得した致命魔法と共に打ち出される、火炎属性の魔法の槍がリュカオーン目掛けて飛来する。

 

だが一人と一羽の攻撃は、リュカオーン自身が正面に居た事もあってか、横ステップで躱わされてしまう。

 

「あぁ、外れちゃいました!」

「素早いのさ、夜の帝王は!」

「いや、其の攻撃で………三人の攻撃が届く!」

 

チラリと見つめた先、回避方向に走り込むオイカッツォとサンラク、そしてサイガ-0の姿が在り。

 

「オルゥア!!」

「赤と黄色………重ねて、橙!拳気【大橙衝(だいだいしょう)】!クロス・インパクト………ストレングス・スマッシャー!」

 

サンラクが左前足へ、アガートラムとハリケーン・ハルーケン、そしてテンカウンターの三種同一系統攻撃スキルを使い、〆に戦極武頼(せんごくぶらい)強化(バフ)とニトロテック・チャージの再使用時間(リキャストタイム)短縮、煌蠍の籠手(ギルタ・ブリル)の右型で殴り付け。

 

オイカッツォは左後ろ足に、クリティカル時の威力が上昇する拳気と左フック→右ストレートの連接攻撃、更に筋力を参照したノックバックスキルでぶん殴る。

 

とあるクソゲーをプレイした時にサンラクとカッツォ……其の時は『カッツォマール』が試した、獣型モンスター限定の禁断技『片側膝カックン』。巨大な敵を確定で転ばせ、代償に敵のヘイトを大特価で買い取る大技でリュカオーンの体勢を崩し、其の動きを止める。

 

「アポカリプス………!」

 

倒れて体勢を立て直さんとするリュカオーンの背中に、漆黒を放つ神魔の大剣(アンチノミー)の一振が直撃。リュカオーンは歯軋り立ち上がり、サイガ-0は直ぐに魔王天帝(サタナエル)から天帝魔王(サタン)となって、カタストロフィーをぶつける準備に入る。

 

「レイ氏!あと何発!?」

「アポカリプスが二回、カタストロフィーが三回……です!」

「オーケー!援護するよ!」

 

此所まで順調に条件達成に向けて動けている。だが相手は分身に本物を混ぜ込み、此方を欺いてきたユニークモンスター。そう簡単に崩せる相手かと言われれば、否と言うべきである。

 

そしてシャンフロの天気は、現実と同じように『変化していく』。風が吹き。ゆっくりと雲が流れ、此の『無果落耀(むからくよう)古城骸(こじょうがい)』の端に位置する戦場を、月光を遮る雲が訪れた時。

 

フィールドを『暗闇』が満たしたのを、膝カックンを喰らい起き上がったリュカオーンは見、其の姿が黒の闇の中へと━━━━━━━『消える』。

 

「えっ……!?」

「リュカオーンが……」

「消え、た?」

 

サンラクは知っている。最初の邂逅と戦闘で、リュカオーンが暗闇の中に消えたのを。其の後に背後や真横から『いきなり』現れて、此方を食い殺さんとしたのを。

 

「あーくん!」

「全員、フィールドを警戒!何を仕掛けてくるか解らない、気を付けろ!」

 

イーディスを構えながら、局極到六感(スート・イミュテーション)を起動し、全身の神経を研ぎ澄ませて、フィールドの『音』を聞いたペッパーと、攻略モードに入っていて、普段より五感が敏感になっているサンラク。

 

Animalia(自分の姉)に動物の音声が入ったデスクを受け取り、休みの日に聞いてきたレーザーカジキに、注意深く耳を澄ましている秋津茜の耳に聴こえたのは、僅かに『地面を擦る音』であり。

 

局極到六感によって強化された視覚により、本来なら『目に見えない物』や『耳に捉えて聞こえない音』をキャッチ可能になったペッパーと、其の方角に逸早く気付いた秋津茜の目には。

 

 

 

 

 

 

 

京極(キョウアルティメット)の真横から透明な状態で、大きな口を開き襲い掛かるリュカオーンの姿が、ハッキリと鮮明に見えた』。

 

 

 

 

 

 

 

「京極!前に飛べ!」

刃隠心得(はがくしこころえ)ッ!!!」

「えっ、な━━━━━ガッ!?」

 

ペッパーが渾身の力で駆け出し、秋津茜が忍者特有の指の構えを取った瞬間、京極はリュカオーンと目が合い。次の瞬間に彼女の胴体は噛み千切られて、下半身が其の場に残され、上半身はリュカオーンの剣山に等しい鋭い歯達に貫かれ。

 

「京極!」

「きょ、京極さん!?」

「京極ちゃん!」

京極(きょうごく)ちゃん!」

 

オイカッツォ・レーザーカジキ・ペンシルゴン・サイガ-0が叫び。シークルゥ・アイトゥイル・エムルが、夜の帝王の力を目の当たりにし、目を見開く中。

 

サンラクは一人、ユニークモンスター・夜襲のリュカオーンの持つ、夜襲の本当の意味(・・・・・)を知った。

 

「『夜に襲って来るから夜襲』なんじゃない………!

夜が襲って来るから夜襲(・・・・・・・・・・・)』なんだ━━━━アイツは!………そしてやっと、『オマエのカラクリ』が見えてきたぜ!」

 

上半身を噛み千切られ、出血のようにポリゴンを撒き散らす京極が、突如『丸太』に変わって転がり落ち。同時に雲が動き、フィールドに月光が射し込んだ事で、透明になっていたリュカオーンが姿を現す。

 

「………へ?」

「丸、太……?」

「だぁはっ!?し、死ぬかと思った!?」

「え、身代わり!?」

「間に合いました!【空蝉(ウツセミ)】です!!」

「凄い、忍者みたい……!」

 

ペッパーとペンシルゴンが声を上げ、レーザーカジキの真後ろに京極が現れた事に、オイカッツォが反応。秋津茜が種明かしで、レーザーカジキが目を輝かせる。

 

そんな中、サンラクが皆に宣言するかのように言い切った。

 

「皆、リュカオーンの『透明化攻撃』━━━そいつを『無効化する方法』を思い付いた。一分、時間をくれ」

「………何か策が有るんだな?サンラク」

「あぁ。頼めるか?」

「任せろ」

 

ペッパーが力強く答え、サンラクが頷いて。連合軍がフォーメーションを変える。ペッパーとペンシルゴンがサイガ-0のカタストロフィー直撃をサポートしに行き。

 

秋津茜は空蝉による緊急回避に、オイカッツォは秋津茜が対処出来ない速度の攻撃へ備え。

 

京極・シークルゥが遊撃、レーザーカジキ・アイトゥイル・エムルがサポートに付き。

 

そしてサンラクは『インベントリア』の中から、三つのアイテムを取り出し、装備していく。

 

「こんな真夜中に叩き起こして悪いが、お前の力が必要になる!さぁ、初仕事だ………『規格外戦術機鳥(きかくがいせんじゅつきちょう)朱雀(スザク)】』!」

 

サンラクがビィラックを育成し、規格外エーテルリアクターを直した後。所持者たるオイカッツォに頼み倒し、更には『便秘百連戦』で手を打ち、死闘を乗り越えた事で『一番乗りの権利』を得ていた。

 

彼はインベントリアから、鳥の頭の形を模した頭機殻(ヘルム)………規格外特殊強化装甲(きかくがいとくしゅきょうかそうこう)艷羽(アデバネ)】。其の頭装備(・・・)を装着し、同じく顕現させた『艶やかなる機械の赤い鳥』へ、修復された動力源を胸に在る挿入口に、力強く装填する。

 

規格外エーテルリアクターから莫大なエネルギーが送られ、四幻獣の一角の名を冠せし赤い機械の鳥が起動。遂にウェザエモンの遺産が永き時を越え、再び動き始めたのだった………。

 

 

 

 






夜襲の意味、状況打開の一手


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