VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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紅き翼よ、羽ばたき舞え




夜天に星を、勇気に灯火を 其の七

規格外戦術機鳥(きかくがいせんじゅつきちょう)朱雀(スザク)】。

 

其れは規格外特殊強化装甲(きかくがいとくしゅきょうかそうこう)艷羽(アデバネ)】と、動力源たる規格外(きかくがい)エーテルリアクターを用いる事によって始めて稼働する、神代の技術の粋を結集して産み出されたSFロボットの『一機』。

 

ユニークモンスター・墓守のウェザエモンの討伐報酬として、ペッパー・ペンシルゴン・サンラク・オイカッツォ・京極(キョウアルティメット)の五人が手に入れた共通報酬『格納鍵(かくのうかぎ)インベントリア』の中に在る、神代最強の英雄が残した『遺産』だ。

 

「アレがウェザエモンの遺産の一つか…!」

「ええっ!?えっ、大きな……赤い、鳥?いやロボット……!?」

「サ、サンラクさんの頭が、ガチガチの硬いヘルメットになっちゃったですわ!?」

「ほほぅ……。アレが墓守の御人の遺した、遺産なのさね……」

「頭だけというのは、些か奇っ怪な姿で御座るな……」

 

遊撃隊とサポート組が好き勝手に何か言っているが、半裸に成ったのも規格外特殊装甲を纏えないのも、全部引っ括めて彼処に居るリュカオーンが悪い。

 

責任転嫁をやっておこう。おのれリュカオーン!!!━━━━━━と、何時ものデイリーミッションを達成しつつ、サンラクは目の前に広がったデータに一通り目を通していく。

 

「リュカオーンには後で、俺の『必殺技』をぶちかますとして………シャンフロのロボット操作、楽しむとするかァ!」

 

規格外特殊装甲の頭装備たる頭機殻(ヘルム)に宿る能力の一つに、対応する戦術機獣への命令伝達機能を持つ。今回の場合、艷羽に対応している朱雀への指示出し(コントロール)を行えるようなるのだ。

 

『━━━待機(タイキ)命令(メイレイ)(モト)メマス』

「よし、朱雀。お前の武装関係は、大体把握してる。今から伝える事を、お前にやって欲しい。いいか?━━━」

 

サンラクが朱雀に指示を出す中、ペッパーとペンシルゴンは各々の勇者武器(ウィッシュド.ウェポン)を振るい翳し、夜の帝王の動きを制限。彼は自身が手にしたスキルの一つで、天空の心眼(ラトゥルスカ・アイザイン)の進化した事により、半径50m圏内を『上空から、かつ俯瞰の視点で観る』事が可能な『天空の帝王眼(ラトゥルスカ・インペリアイズ)』を起動しており、フィールドの状況を頭に入れつつも、自身の成すべき事を成していく。

 

「ペンシルゴン、其の位置だと分身攻撃が当たる!2m左側に移動して!」

「あーくん、サンキュ!」

 

ペンシルゴン・サイガ-0の動きにシンクロしつつ、ペッパーがリュカオーンに、前足攻撃を『誘発させる』位置取りを行い。

 

リュカオーンの前足がディレイを絡めて速く振るわれる中、ペッパーは其の攻撃に対し真界観測眼(クォンタムゲイズ)を発動。思考加速と攻撃の波、更には俯瞰の視点で見た事により、其の攻撃位置が『己の頭』を狙ってる事に気付く。

 

「うおりゃあ!」

 

反撃衝突(コリージョンカウンター)』起動。敵の攻撃に、自身の攻撃を当てる事でパリィを行うスキルであり、渾身衝撃(ストライク・アーデ)とコンパクト・イステルの合成で誕生した打撃スキル『渾魂注撃(ストライク・インストーラ)』も使いつつ、打撃によって発生する衝撃を『一点集中』させるスキルで、イーディスを夜の帝王の前足攻撃に、クリティカルのタイミングでぶつける。

 

「ぐぬお!?ッアアァ!!!」

 

イーディスを通して伝わる、リュカオーンの攻撃の『重さ』。よっぽどの筋力と耐久が無いなら、まともに受けずに回避した方が良いと確信しつつ、吹っ飛ばされて地面を転がる。

 

ダメージは受けれど、パリィ自体は成功。再誕の涙珠をインベントリアへ仕舞って、取り出した回復ポーションをガブ飲み、直ぐに立ち上がったペッパーの視界には、バックステップを取るペンシルゴンと、カタストロフィーを後ろ足に直撃させたサイガ-0の姿が映る。

 

「アポカリプスと、カタストロフィー……は、後二回ずつ。此れなら……!」

「あーくん、また『曇ってきた』!」

「っ………こんな時に!」

 

が、此所で夜空に雲が掛かり始め、フィールドには暗闇が満たしていく。再び襲い掛かるリュカオーンの、視認性最悪状態での透明分身攻撃に備え、ペッパーはサンラクの策が状況打開の一手になる事を祈り。

 

「さぁ、朱雀!リュカオーンに味方する『雲』を━━━━吹き飛ばせ!」

 

フルフェイスヘルメットを通じて、サンラクからオーダーを受けた朱雀は、翼と尾羽を模した噴射口(ブースター)から蒼い炎を吹きながら、戦場に暗闇の帳をもたらさんとする雲へと突貫。

 

出力を最大に、旋回軌道を開始した紅い鋼の鳥が、夜空の雲を取り払い、月光を再び戦場へともたらした。

 

「秘技・紅鳥扇風機(べにどりせんぷうき)!!!此れで暫くは透明分身は出せねーぜ!ハッハァー!!」

「ははは……!すっげぇ、雲を物理的に祓いやがった…!!ペンシルゴンとオイカッツォは役割をスイッチ!サイガ-0さんは今の内に切札への準備を!」

「………了解、です!」

「オッケー!」

「ウッシャア!」

 

ウェザエモンの遺産、四幻獣が一角を模したロボットバード朱雀の力を目の当たりしながら、ペッパーは此の機を逃すなと声を張り上げた。同時に、機動力が其処まで高くないオイカッツォが走り始めて、其れなりに有るペンシルゴンがバックステップで前衛後衛を切り替る。

 

ペッパーが持ち前の機動力とキャリースキルでオイカッツォを運びながら、サイガ-0と共に切り込み。途中で分身攻撃が三人に襲い掛かるが、危険なルートを視覚に提示するスキル『ルーパス・アサイラム』で、攻撃を交い潜ってオイカッツォを運搬。

 

「ペッパー!カッツォ!先行ってるぞ!!」

「うぉ!?また黒雷纏ってるな、サンラク!?」

「はっやいなぁ!負けてらんねぇ!」

 

おそらく同じようにルーパス・アサイラムを使い、其処に封雷の撃鉄(レビントリガー)のもたらす力を追加した事で、ペッパー以上の速度を出しながらサンラクが走ってリュカオーンへと肉薄して行き。

 

ペッパーも負けじと、ミルキーウェイと韋駄天顕現(いだてんけんげん)から進化し、15秒という僅かな時間ながら『更なる加速と空中での移動補正が極大化』したスキル『神威光臨進(かむいこうりんしん)』を使用。

 

空中に描いたマナ粒子の道を超スピードで駆け抜け、ペッパー・オイカッツォがリュカオーンの真上を。真正面を煌蠍の籠手(ギルタ・ブリル)を装着し、黒雷を纏うサンラクが取る。

 

「ペッパー!ぶん投げろ!」

「行って来いッ、オイカッツォ!」

 

投擲スキル『ブランチャイズ・スロー』で、リュカオーンの眉間に全力投球。人間砲弾に成ったオイカッツォが、己の掌を重ね合わせ『気』を混ぜる。

 

「拳気の赤と青、合わせて紫!拳気(けんき)紫崑衝(しこんしょう)】!そんでもって……大サービスの『ティルガ・ブレイク』!!」

 

モーションはベルセルク・オンライン・パッションの通常技・飛拳衝(ひけんしょう)。ナックル・ティーガから進化し、虎の(アギト)を想わせる気迫を纏った双拳を放つ格闘スキルで、リュカオーンの眉間をぶん殴り。

 

「顎貰ってくぞ、リュカオーン!!!」

 

サンラクの煌蠍の籠手が、アッパーモーションと共に黄金の軌跡を描きながら、アガートラム・テンカウンター・燐砕拳(りんさいけん)の格闘と拳撃スキルを戦極武頼(せんごくぶらい)で上乗せ、下顎をカチ上げる。

 

『グルァ……!』

「ちぃたぁ効いたか!今だ、レイ氏!」

「はいッ!」

 

頭部に連続で襲い掛かった格闘による衝撃と、アガートラムのクリティカルによる追加ダメージで、リュカオーンが歯軋りする中、サイガ-0は思う。

 

(正直、到底敵わないと……ずっと思っていた)

 

圧倒的な強さ、そして理不尽な力を持つ、夜襲のリュカオーン。サンラクと、そして旅狼(ヴォルフガング)のメンバー達と共に戦う前の自分だったなら、きっと途中で諦めていたかも知れない。

 

(でも、陽務君となら……!そして、旅狼の皆さんとなら……!どんな強敵だろうと、負ける気がしない!)

 

「アポカリプス!!!」

 

漆黒の一撃が、夜の帝王に叩き付けられる。押せ押せのムードが漂う中、リュカオーンは静かに。そしてサイガ-0を、片目でジッ………と『見詰めて』。

 

そして小さく『グルッ』っと鳴いたのだった……。

 

 

 

 






戦い続けろ、帝王を倒す其の時まで。


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