VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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戦局変動


※クリスマスプレゼントの三話連続投稿です




夜天に星を、勇気に灯火を 其の八

オイカッツォ・サンラク・サイガ-0の連続攻撃を受けて、小さく鳴いたリュカオーン。確かに効いている『手応え』は有る、有るのだが…………

 

(………やっぱり変だな)

 

幾度も殴ってきたサンラクとオイカッツォ、フィールドを駆け回って分身攻撃からメンバーを守ったペッパーは、同時にそんな疑問を抱く。

 

(普通ダメージを受けたら、生物・オブジェクトには『ポリゴン』が出るはず何だ。だが此所まで、リュカオーンがポリゴンを溢した事は『一度』だってない)

(仕様なのか、もしくはリュカオーン自身の特性に起因してるのか………。だが、確かな事は『一つ』だけ………!)

(今目の前に居るリュカオーンの『正体』、其れを確かめないとサイガ-0さんの切札が、万が一にも効かなかった(・・・・・・)場合、此方が『詰む』って事だ!)

 

そんな思考を抱く中、リュカオーンがサイガ-0の方を見詰めて。踏ん張りの効かない空中に浮いた重騎士を、前足で裏拳でもするかのように後ろへと殴り飛ばす。

 

「ッ!!」

 

サイガ-0が神魔の大剣(アンチノミー)差し込み防御(インターセプト)するが、リュカオーンの一撃は重く。吹っ飛ばされて、瓦礫に叩き付けられてしまう。

 

「くっ………!」

「レイ氏!」

「サイガ-0!」

「此所は俺が、ヘイトを受け持つ!」

 

ペッパーがミルキーウェイで描いたマナの軌道から降り、シャイニング・アサルトで全力疾走しながら、聖盾(せいじゅん)イーディスを風雷皇の御手(サルダゲイル・アトゥヌ)へ変更。スキル『獄貫手(ごくかんしゅ)』点火で、リュカオーンの前足第二関節に貫手を打ち込む。

 

クリティカルの感触と風雷エネルギーの蓄積が指先を通じて伝わるものの、リュカオーンは気に止めもせず。視線をサイガ-0の方に向けるや、其の方角に走り出したのだ。

 

「なっ……俺を無視した!?」

「レイ氏!リュカオーンがそっちに!」

「ッ、はい!」

 

回避行動を始めるサイガ-0だが、リュカオーンは回復する隙も時間も与えんとばかりに、本体と分身を動員した波状攻撃を仕掛けてくる。

 

リュカオーンの突然の行動変更、たった一人のプレイヤーを集中攻撃する動き、其れを見たペッパー・サンラク・京極(キョウアルティメット)の三人は非常に強い『デジャブ』を覚えた。

 

そう、彼等二人と彼女は『コレ』を知っている。ユニークモンスター・墓守のウェザエモンとの戦いの最中、レディアント・ソルレイアで必殺技を二つ完封して、大立回りをしたペッパーに狙いを絞った時と同じだったが為に。

 

「エムル!ペッパーとペンシルゴンを経由して、此方に来い!んでもって『マナ・シェイカー』の準備だ!」

「は、はいなぁ!」

「マジか!マジかマジか!?サイガ-0一人に狙いを絞ってきた!!」

「ッ、此方の作戦が『バレた』………!?」

 

京極の答えは『正しい』。そしてシャンフロのAIは『凄まじい』。此所までの戦闘を通じて、リュカオーンを構成するAIは、『サイガ-0という白黒に変わる重騎士こそが奴等の砦』だと認識し、其れを切り崩せば瓦解させられると『結論』を出したのだ。

 

(サンラクがヘイトを奪取したとして、エムルさんが狙われたらどうする!?こうなったら『アレ』を使うか!?……いや迷うな!俺がちゃんと生き残れれば、皆を守りきれる!!!)

 

「ペッパーさぁん!」

「エムルさん、いっきます………よっ!」

 

奥歯を噛み絞り、万が一にもリュカオーンのヘイトがエムルに向いた場合に備えて、ペッパーは『鬼札中の鬼札』を切る事も視野に入れつつ、ペンシルゴンの肩を経由して跳躍してきたエムルをキャッチ。其れを砲丸投げの要領で、直ぐ様サンラクの肩目掛けて投げ飛ばした。

 

「ナイス、ペッパー!エムル、準備は良いか!」

「はいなっ!加算詠唱(アッド・スペル)済の……『加算出力(アッドブースト)マナ・シェイカー』!!」

 

通常時の数倍の大きさを誇る『円形波状のエフェクトを持つ白い焔の様な魔法』が、エムルが持つ魔術書から放たれる。

 

サンラクが此の魔法が込められた魔術書を買い、エムルに覚えさせたのは、オプションパーツとしての拡張性の増加が理由の一つでもあり、購入した魔術書の中でも『一風変わった能力』を宿していたからに他ならない。

 

此の魔法は『物理的破壊力は一切無いのが特徴』であり、プレイヤーにぶつけてもダメージを与えられない。何なら『ある特定のモンスター』以外だと、MPを消費しても何も起こらないという始末。

 

 

 

だが、だが。

 

 

 

此の魔法は『ゴースト』、或いは『ポルターガイスト』、或いは『魔力で身体を構成する存在』に。詰まる所『非物質系存在ながら物質に干渉可能なモンスター』に対して、特効レベルの破壊力(・・・・・・・・・)を発揮する。

 

即ち━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

『ガルァッ!?』

「シャア、『ビンゴ』!!分身を産み出し、同じように移動出来るなら、其の身体の構造は分身と『同じ』だよなァ、リュカオーン!!!」

 

そう。夜襲のリュカオーンの様な存在━━━━『闇を魔力で固めて形を作ったモンスター』には、目に見えてダメージが入るのである。

 

身体を構成する毛皮のような『闇』が揺らぎ、此迄如何にダメージを与えても崩れなかった毛並みが、ほんの僅かに。しかし大きな一歩である事を示すように、千切れて崩れ。だが其れも直ぐに再生されて、元に戻ってしまう。

 

(リュカオーンにダメージが入った!そして判ったのは、リュカオーンを相手取るなら『魔法職』の。エムルさんみたいに『霊体系へ干渉可能な魔法』持ちが居ると、ダメージを与えられる事。だがそうなると、判らない点が出てくる………)

 

そう、リュカオーンには『魔法系職種』なら効率良くダメージが通る反面、装備面の脆さと押し切られた場合に立て直しが困難になる事。

 

片や『物理系職種』は、リュカオーンにダメージがあまり通らないものの、装備や防具をガチガチに固められたり、スキルを用いて如何様にも立ち回れる利便性がある事。

 

魔法か物理か………どちらの攻略法を取るかによって、勝利した後の報酬に何かしらの『変化』が現れるのだろうか?

 

『グルルルルル………!!!!』

 

そしてリュカオーンはというと、エムルの加算出力マナ・シェイカーの一撃が、よっぽど腹に据えたらしく。サンラクの肩に乗っかっているエムルを見、歯軋りと喉を鳴らしてグワッ!!と言わんばかりに、飛び掛かりからの前足叩き付け攻撃を放ってきた。

 

「うぉおおおお!?流石だ、エムル!アイツはお前を、此の場で一番危険な兎だと判断したぞ!」

「ぴぃいいいいいいい!?おうち帰りたいでずばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

ヘイトがサイガ-0からエムルに移る。当初の狙い通り、サンラクは其のままエムルを乗せたまま、リュカオーンの注意を惹き付け、サイガ-0の切札発動の手助け(アシスト)をせんとして。

 

だがリュカオーンは此所で、驚くべき行動を取ってきた。

 

「ヘイトが移った………今の内に!」

「レイちゃん、分身攻撃!しかも沢山!」

「えっ!?くっ……こんな時に!」

 

サイガ-0が攻勢に転じようとした刹那、リュカオーンの分身攻撃がサイガ-0に襲い掛かり。ペンシルゴンが気付いた事で回避こそ出来たが、次から次に飛び掛かってくる其れにより、攻撃に移れない。

 

「ちょっ、俺達にも仕掛けてきた!?」

「邪魔はさせないって事か……!」

「わあああああ!?」

「レーザーカジキさん、危ない!【空蝉(ウツセミ)】!」

「ぬぅ……!手が出せぬ!」

「暴れ狂う、黒の波……!まるで闇の荒海の如し、なのさ………!」

 

其処かしこから分身攻撃に襲われて、一同が回避に精一杯になる中、ペッパーは此所が『分岐点』であると悟る。其れはパーティーを守り抜き、最大火力(アタックホルダー)の切札発動の援護が出来る事。そして黒狼(ヴォルフシュバルツ)旅狼(ヴォルフガング)の対立は、少なからず『避けられなくなる』という事。

 

だが此所で後悔するくらいならば、やるだけの事をやってから後悔するべきだ。

 

ペッパーは風雷皇の御手を装備解除し、インベントリから『武器』を。嘗てビィラックが自分に言った『約束』を破る覚悟と共に、彼は『星皇剣(せいおうけん)グランシャリオ』を取り出す。

 

「皆!此れから俺が!リュカオーンのヘイトを『全部』、貰ってくぞ!!!」

 

堂々たる宣言、リュカオーンを含めて皆の視線が集まり。剣身を納めた黒鞘へ彼が右手を当てるや、其処から黒い靄が吸い取られ。くるりと回し、柄を右手で握り締め━━━━━彼は力の限りに引き抜く。

 

銀と空色と僅かな黒が彩り、七つの穴が空いた異質極まる剣が戦場に現れ、其の刀身からは黒の炎に似た『オーラ』が溢れ出す。

 

「さぁリュカオーン…………『鬼ごっこ』しようぜ?」

 

堅い笑顔で、しかし自信が宿る眼と熱を宿し。勇者はあの日、夜の帝王の瞳を切り裂いた『得物』を。

 

其の『真化』した刃の切っ先を、振り翳したのだった。

 

 

 






星の剣を抜き、勇者は囮となる


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