ラストダンスに踊れ
「ぬぐぉ!?ッ危……ひおぁ!?」
「とぅあ!ぬおお!?絶対死んで堪るかぁ!!」
残像にリュカオーンの分身が殺到、僅かな時間ながらペッパーは地面にグランシャリオを刺し、携帯食糧を囓り食らってスタミナを回復。再びリュカオーンとの鬼ごっこに身を置く覚悟を決めて。
「御待たせ、しました!」
ウツロウミカガミ効果終了直後、サイガ-0がアポカリプスをリュカオーンの尻尾に叩き付け。切札発動に必要な『アポカリプスとカタストロフィーを同一対象に各々五回ずつヒットさせる』条件を達成したのである。
「条件達成……です!」
「サンラク、オイカッツォ!タイミングはそっちに任せた!其の時になったら誘導する!」
「OK!」
「任せろ!」
ペッパーが突き立てたグランシャリオを右手に再び握り、最後の踏ん張りとばかりに
「ペッパーが食べた携帯食糧の個数は3個、と幾つかのバフ………リュカオーンのスピードから………ペッパーは『2分』が限界か!」
「なら目安は大体『70秒』くらいだな………!レイ氏、切札の準備を!」
「はいっ……!『我は混沌を手繰る者━━━━━』」
単身でリュカオーンの波状攻撃を凌ぎ続けるペッパー、誘導タイミングを目算と観測で導き出したオイカッツォ、ジャストタイミングで誘導する為計測を始めたサンラク、そして本命をリュカオーンにぶつける為の『暗記した長い詠唱』を開始したサイガ-0。
しかし此所で、最悪な事態が起きる。
「皆!空が曇ってきた!!!」
「ッ!?」
「えっ!?」
「なぁ!?」
「『━━━━奈落に在りて深淵の底へ潜行す』……!?」
ペンシルゴンの声が響く。サンラクが、カッツォが、サイガ-0が見上げた夜空に、分厚い雲が掛かり月の光が遮られ、戦場に再び暗闇が満ち始めていく。
(透明分身が俺の所に来るのは良い……!だが俺が殺られて、其の後にサイガ-0さんを狙われたら意味が無い!)
(此所で牙を向くか
(こうなったら玉砕覚悟で俺が過剰黒衝をぶつける……!?)
(詠唱を止めて、全員で回避する……?)
足は止めず、動く事を止めず、スリーゲーマー達とサイガ-0は此の状況で、何が正解かを迫り来る時間の中で思考し。
「万里を越え、円環の門は開かれる……!潜り抜けし水よ激流へ…!潜り抜けし炎よ爆轟へ…!潜り抜けし土よ鳴動へ…!潜り抜けし風よ暴嵐へ…!雄々しき波動となりて困難を砕く導と成らん━━━━━!【
完全詠唱を終えて、天に
「っう……!此れに向かって、スキルや魔法の攻撃を放てば………!其のスキルや魔法の、威力とスピード、範囲を……広げられ、ます…!!」
MPを使い果たし、倦怠感に膝を着くレーザーカジキは何とか自身の魔法の能力を伝え。其の説明を聞いたペンシルゴンは、秋津茜・アイトゥイル・シークルゥを見て、指示を出した。
「秋津茜ちゃん!アイトゥイルちゃん!あの魔方陣目掛けて、持てる火力を撃ち込んで!!あとシークルゥちゃんも、何か燃やせる魔法とか無い!?」
「は、はいッ!」
「了解なのさ!」
「も、燃やせる魔法……!?…………あいや、有る!やってみるで御座る!!」
魔方陣が何れ程保つかは判らないが、レーザーカジキは『コレに火炎攻撃を叩き付けて上空の雲を払い飛ばせ』と、そう考えて完全詠唱による門魔法を使い。其の意図を読み取ったペンシルゴンは、直ぐにインベントリアから投擲玉:炸油を握り締めて、力の限り投擲し。
「行くで御座る!刮目せよ━━━【タケノミカヅチ】!!!」
シークルゥが己の得物たる刀を地面に突き刺すや、其処から無数のタケノコが生え出して急速成長、立派は竹林が産み出されて魔方陣の方へと延びて行き。
其処にペンシルゴンの投げた投擲玉が当たって、中に内封されていた可燃性の油が、盛大にぶちまけられて竹を濡らす。
「
「行くのさ!『
印を結び、息を吸い。酒を飲みて、魔力を混ぜ。油が付いた竹林に、灼熱の火焔と極太レーザーが直撃し。其の炎は油と竹の特性を受けて、更に巨大に増幅しながら、レーザーカジキが創り出した増乗幅響門に吸引され。
其処から出たのは、秋津茜が
「けほっ、こほっ…!や、やりましたぁ!雲を晴らしましたよーーーーー!」
「皆はーーーーん、頑張るのさーーーーー!」
「うわぁ…、すっごいなぁ……ハハハハ」
「ありがと、皆!」
透明分身を防ぎ、道を作ったレーザーカジキ・アイトゥイル・シークルゥの一人と二羽に、ペンシルゴンは礼を言う。
「やべぇな、オイ……!」
「超極太コロニーレーザーって、シャンフロで初めて見たんだけど……」
「ぷわぁぁぁぁぁ………」
(あんな攻撃、初めて見た……!でもお陰で、空が晴れました……!)
そして其れは、前線を張るプレイヤー達も横目に見える程で。とんでもない『奥の手』を隠していた秋津茜とレーザーカジキに、サンラクとオイカッツォは口角が引き吊り、エムルは呆けてしまい、サイガ-0は驚きつつも詠唱を続行。
「ペッパーは!」
「生きてるよ!!!ってか、空が晴れるや巨大な光の柱が出たり、とんでもない事起きまくってるし!今日一日で色々有るなぁうい!?!」
フィールドから暗闇が消え、月光が降り注ぎ、リュカオーンとペッパーを照らす。彼の右手に握るグランシャリオは月の光に照らされ、其の刀身から黒い靄を業火の如く放ち続けて、リュカオーンは其れを見ては歯軋りと喉を鳴らし、威嚇と攻撃の手を止めない。
「エムル、マナ・シェイカーの準備だ!加算はしなくて良い!カッツォは俺が合図したら、エムルを抱えて京ティメットの方に走れ!」
「ぷぅえ!?え、あ、はいなぁ!?」
「よし、解った任せとけ!」
サンラクが煌蠍の籠手を握り、エムルが肩に乗り、前へ前へと其の身は走る。
「3……2……1……ペッパー!!全速力で此方に来ぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!」
「了解ッ!」
此所からの『一分間』が、彼等彼女等の運命を決める。
切札達を執行せよ