VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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ラストダンスに踊れ




夜天に星を、勇気に灯火を 其の十

「ぬぐぉ!?ッ危……ひおぁ!?」

 

最大火力(アタックホルダー)・サイガ-0、其の由縁の切札発動まで、アポカリプス一発となった状態でも尚、リュカオーンはペッパーの持つ星皇剣(せいおうけん)グランシャリオの力によって、彼への攻撃を続けていた。

 

「とぅあ!ぬおお!?絶対死んで堪るかぁ!!」

 

星天秘技(スターアーツ)ミルキーウェイ起動。其処に致命秘奥(ヴォーパルひおう)ウツロウミカガミも絡めて、空中にマナ粒子の道を作り、己と剣と盾の残像を残し、彼は尚も其の両足でフィールドを駆け続ける。

 

残像にリュカオーンの分身が殺到、僅かな時間ながらペッパーは地面にグランシャリオを刺し、携帯食糧を囓り食らってスタミナを回復。再びリュカオーンとの鬼ごっこに身を置く覚悟を決めて。

 

「御待たせ、しました!」

 

ウツロウミカガミ効果終了直後、サイガ-0がアポカリプスをリュカオーンの尻尾に叩き付け。切札発動に必要な『アポカリプスとカタストロフィーを同一対象に各々五回ずつヒットさせる』条件を達成したのである。

 

「条件達成……です!」

「サンラク、オイカッツォ!タイミングはそっちに任せた!其の時になったら誘導する!」

「OK!」

「任せろ!」

 

ペッパーが突き立てたグランシャリオを右手に再び握り、最後の踏ん張りとばかりに戦帝王の煌炉心(オライオン・スピリッツ)四天無双(してんむそう)剣王武心(マスラオ・センス)を点火、そしてデコイからペッパーに再び狙いを定めたリュカオーンが動き出し、此所に最後攻防戦が幕を開けた。

 

「ペッパーが食べた携帯食糧の個数は3個、と幾つかのバフ………リュカオーンのスピードから………ペッパーは『2分』が限界か!」

「なら目安は大体『70秒』くらいだな………!レイ氏、切札の準備を!」

「はいっ……!『我は混沌を手繰る者━━━━━』」

 

単身でリュカオーンの波状攻撃を凌ぎ続けるペッパー、誘導タイミングを目算と観測で導き出したオイカッツォ、ジャストタイミングで誘導する為計測を始めたサンラク、そして本命をリュカオーンにぶつける為の『暗記した長い詠唱』を開始したサイガ-0。

 

しかし此所で、最悪な事態が起きる。

 

「皆!空が曇ってきた!!!」

「ッ!?」

「えっ!?」

「なぁ!?」

「『━━━━奈落に在りて深淵の底へ潜行す』……!?」

 

ペンシルゴンの声が響く。サンラクが、カッツォが、サイガ-0が見上げた夜空に、分厚い雲が掛かり月の光が遮られ、戦場に再び暗闇が満ち始めていく。

 

(透明分身が俺の所に来るのは良い……!だが俺が殺られて、其の後にサイガ-0さんを狙われたら意味が無い!)

(此所で牙を向くか乱数の女神(クソッタレ)!必殺技を放つしかないか……!?)

(こうなったら玉砕覚悟で俺が過剰黒衝をぶつける……!?)

(詠唱を止めて、全員で回避する……?)

 

足は止めず、動く事を止めず、スリーゲーマー達とサイガ-0は此の状況で、何が正解かを迫り来る時間の中で思考し。

 

「万里を越え、円環の門は開かれる……!潜り抜けし水よ激流へ…!潜り抜けし炎よ爆轟へ…!潜り抜けし土よ鳴動へ…!潜り抜けし風よ暴嵐へ…!雄々しき波動となりて困難を砕く導と成らん━━━━━!【増乗幅響門(パワーゲート)】!!!」

 

完全詠唱を終えて、天に致命の錫杖(ヴォーパル.ロッド)を掲げたレーザーカジキ。其の上空には赤・青・緑・黒の四色で構成された、巨大魔方陣が展開されていた。

 

「っう……!此れに向かって、スキルや魔法の攻撃を放てば………!其のスキルや魔法の、威力とスピード、範囲を……広げられ、ます…!!」

 

MPを使い果たし、倦怠感に膝を着くレーザーカジキは何とか自身の魔法の能力を伝え。其の説明を聞いたペンシルゴンは、秋津茜・アイトゥイル・シークルゥを見て、指示を出した。

 

「秋津茜ちゃん!アイトゥイルちゃん!あの魔方陣目掛けて、持てる火力を撃ち込んで!!あとシークルゥちゃんも、何か燃やせる魔法とか無い!?」

「は、はいッ!」

「了解なのさ!」

「も、燃やせる魔法……!?…………あいや、有る!やってみるで御座る!!」

 

魔方陣が何れ程保つかは判らないが、レーザーカジキは『コレに火炎攻撃を叩き付けて上空の雲を払い飛ばせ』と、そう考えて完全詠唱による門魔法を使い。其の意図を読み取ったペンシルゴンは、直ぐにインベントリアから投擲玉:炸油を握り締めて、力の限り投擲し。

 

「行くで御座る!刮目せよ━━━【タケノミカヅチ】!!!」

 

シークルゥが己の得物たる刀を地面に突き刺すや、其処から無数のタケノコが生え出して急速成長、立派は竹林が産み出されて魔方陣の方へと延びて行き。

 

其処にペンシルゴンの投げた投擲玉が当たって、中に内封されていた可燃性の油が、盛大にぶちまけられて竹を濡らす。

 

刃隠心得(はがくしこころえ)奥義(おうぎ)━━━━━【竜威吹(リュウイブキ)】!!!ワァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

「行くのさ!『酔伊吹(よいいぶき)』ィィィィィィィィッッッッッッッ!!!!」

 

印を結び、息を吸い。酒を飲みて、魔力を混ぜ。油が付いた竹林に、灼熱の火焔と極太レーザーが直撃し。其の炎は油と竹の特性を受けて、更に巨大に増幅しながら、レーザーカジキが創り出した増乗幅響門に吸引され。

 

其処から出たのは、秋津茜が呪い(マーキング)を受けるに至った『天覇』の息吹きに比肩し得る、大火力と言わんばかりの『コロニーレーザー』が解き放たれ。天に浮かぶ分厚い雲に風穴を穿ち、此の戦場に再び月光をもたらす一手が成された。

 

「けほっ、こほっ…!や、やりましたぁ!雲を晴らしましたよーーーーー!」

「皆はーーーーん、頑張るのさーーーーー!」

「うわぁ…、すっごいなぁ……ハハハハ」

「ありがと、皆!」

 

透明分身を防ぎ、道を作ったレーザーカジキ・アイトゥイル・シークルゥの一人と二羽に、ペンシルゴンは礼を言う。

 

「やべぇな、オイ……!」

「超極太コロニーレーザーって、シャンフロで初めて見たんだけど……」

「ぷわぁぁぁぁぁ………」

(あんな攻撃、初めて見た……!でもお陰で、空が晴れました……!)

 

そして其れは、前線を張るプレイヤー達も横目に見える程で。とんでもない『奥の手』を隠していた秋津茜とレーザーカジキに、サンラクとオイカッツォは口角が引き吊り、エムルは呆けてしまい、サイガ-0は驚きつつも詠唱を続行。

 

「ペッパーは!」

「生きてるよ!!!ってか、空が晴れるや巨大な光の柱が出たり、とんでもない事起きまくってるし!今日一日で色々有るなぁうい!?!」

 

フィールドから暗闇が消え、月光が降り注ぎ、リュカオーンとペッパーを照らす。彼の右手に握るグランシャリオは月の光に照らされ、其の刀身から黒い靄を業火の如く放ち続けて、リュカオーンは其れを見ては歯軋りと喉を鳴らし、威嚇と攻撃の手を止めない。

 

「エムル、マナ・シェイカーの準備だ!加算はしなくて良い!カッツォは俺が合図したら、エムルを抱えて京ティメットの方に走れ!」

「ぷぅえ!?え、あ、はいなぁ!?」

「よし、解った任せとけ!」

 

サンラクが煌蠍の籠手を握り、エムルが肩に乗り、前へ前へと其の身は走る。

 

「3……2……1……ペッパー!!全速力で此方に来ぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!」

「了解ッ!」

 

 

 

此所からの『一分間』が、彼等彼女等の運命を決める。

 

 

 

 






切札達を執行せよ


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