サンラクとペッパーの切札
サンラクの合図を受けて、ペッパーが走り出す。リュカオーンがペッパーを見つめ、周りを見ずに追い掛ける。
「さぁ、此所からが勝負!
ペッパーが通り過ぎた刹那、サンラクが
地面を媒介に伝わった『振動』が、撃ち込んだ晶弾に伝わるや地面から水晶柱が飛び出し、走ってきたリュカオーンの左前足に直撃。『犬型』であり『狼』を形作るリュカオーンは、自身の転倒を阻止するべく、右前足を踏み込みバランスを取る。
「エムル、右前足にブチ当てろ!」
「はいな!マナ・シェイカー!」
兎の魔術師が霊体系モンスターに特効レベルで刺さる魔法を放ち、リュカオーンの右前足を攻撃。クリーンヒットした事によってクレーターの様な傷が刻み込まれ、幾ら夜の帝王でも其のダメージは、簡単に修復出来るものでは無いようだ。
「やりましたわぁ!」
「良いダメージだ!さぁ、全出力ぶつけに行けや━━━
『了解、ポイントマーキング。
残されたエネルギーを、ありったけの熱を。
其の一撃たるや、あと残り皮一枚といった所まで深い斬り傷を負わせたと同時に、朱雀のエネルギー残量が0となった事がサンラクに伝えられる。
「ナイスファイトだ、朱雀。ゆっくり休んでくれ」
フルフェイスヘルメットに隠し、サンラクは朱雀の健闘を讃え。エネルギーを失った赤い鋼の鳥は落ちて、地面を擦る。
「エムル!カッツォ!京ティメットの方に行け!」
「はいな!」
「了解!」
エムルがサンラクの肩から跳躍し、オイカッツォの手に収まるや、
「次は俺の切札の番だ……あの夜の借り、数百倍にして返してやる!」
ペッパーと入れ替わる形で前に出たサンラクの、煌蠍の籠手の右手側が金色の輝きを放ち、絶大な魔力で満たしていく。
煌蠍の籠手の超過機構は非常にシンプル……蓄積した魔力を全て消費し、其のエネルギー量に応じて対象の身体を『水晶へと変質させ爆砕する』というモノ。
使用すれば一週間の再使用時間と、装備者と装備には甚大な反動ダメージが返ってくるものの、其れを加味しても絶大窮まる其の一撃は、切札の二文字に陰り無し。
「オマエが月を避けるなら、俺が
小さき開拓者が持つ、神代の技術で甦った黄金の一撃が、立ち上がらんと歯軋る、夜の帝王の顎に突き刺さり。リュカオーンを、黒い狼を構成する闇が水晶に変わり━━━━盛大に
「「「「サンラク(サン)!!!」」」」
煌蠍の籠手が軋んで砕け、サンラクの身体が反動によってダメージを食らい。しかし『食い縛り』によって耐えて京極達の方向へと吹き飛んでいく中、オイカッツォはサンラクの言った言葉の意味を理解し、バフが切れた中で全力ダッシュ。エムルはマジックチェーンを放ち、吹っ飛んでいくサンラクの足に、魔力の鎖を巻き付けて。
京極も、アイトゥイルも、シークルゥも、秋津茜も、レーザーカジキも、ペンシルゴンも。威力を殺して落ちてきたサンラクを身構え受け止めるが、其れでも其のエネルギーは凄まじく、全員がドミノ倒しにされて漸く止まった程であった。
「お、おお……スマン助かった」
「とんっっっっっっっでもねぇな、サンラク!?何だ今の一撃!?」
「さっきのアレ、其の籠手の能力なのサンラク君?」
「いやぁ、アレはヤバいでしょ」
「サンラクさん、凄いですよ!」
「良い絵になりそうなのさ」
「凄い……です、サンラクさん……」
「取り敢えずお前等落ち着け!」
やんややんやと質問されたりしながらも、サンラクはペッパーとサイガ-0を見つめる。
「さぁ、ペッパー!しっかり最後まで頼むぞ!」
サンラクの切札はヤバい。リュカオーンの顎を粉砕し、動きを止める程の絶大な一撃を前に、思わず息を飲む。しかし止まってはいられないのと、サイガ-0が確実に切札を当てられるようにする為に。
ペッパーは聖盾イーディスを地面に突き刺し、空いた左手でインベントリアを操作………其の中から『あるアイテム』を取り出す。
「皆、自分に出来る事を最大限にやって来た。ならば俺も!今の俺が持てる『最大火力』を叩き付けてやる!リュカオーン!!!」
彼の左手に有るのは『一冊の書物』であり。しかし其の書物は只の物では無い。
名を『世界の真理書「墓守編」』。ユニークモンスター・墓守のウェザエモンを討伐した者に、報酬として与えられた
「ウェザエモン・
グランシャリオの剣身に真理書を翳した其の刹那、彼の手に在った書物は『空の蒼と桜の桃色の混じった宝玉』に変化し、七つ在る穴の『最も持ち手に近い場所』に納められる。
そうして彼は左手にグランシャリオの鞘を持ち、右手の聖剣を其の中に差し入れ、残り一回のレーアドライヴ・アクセラレートで、リュカオーンの右後足を『直線上とする位置』に瞬間移動した。
「ペッパー流━━━━━
目の前に居た筈のペッパーが突如として消え、リュカオーンがグランシャリオの気配を探り、振り向かんとした時。自身の身体がシャンフロの誇る物理エンジンに従って、右へ倒れていく感覚と自身の視界にペッパーが立っている事に気付く。
サンラクは、京極は。ペンシルゴンは、オイカッツォは。
直線上に在るリュカオーンの右前足……マナ・シェイカーと朱雀の一撃で傷付き、サンラクの一撃に顎を砕かれながらも、再生させていた最中に
星皇剣グランシャリオの能力………其れは『世界の真理書を剣に翳す事で宝玉となってセットされ』、ユニークモンスターの持つ『御業を行使する事が可能になる』というもの。そして『墓守編』は剣に納めた真理書の『数』と、セットした『位置』によって、ウェザエモン・天津気の使用した『絶技』を再現可能とする。
ペンシルゴンのバースデーサプライズの準備期間中に、ヴォーパルコロッセオでグランシャリオの秘められた力を探る中で、真理書を翳した事で遂に理解した『真の力』。再現されしは神速の抜刀居合、此の場合では神速の抜剣居合となるが、彼はグランシャリオの剣身を鞘に収めながら、残心と共に『其の名』を放つ。
「━━━━━━━『
キン……!と小さく剣は鳴り、リュカオーンの巨体がバランスを崩し、地面に再び倒れた。
「御願いします!サイガ-0さん!」
皆で繋ぎ止めた、此の戦い。
最後にして、真打ちたるプレイヤーへ。
シャングリラ・フロンティアの最強の攻撃力を誇る
帝王を討て