VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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サンラクとペッパーの切札




夜天に星を、勇気に灯火を 其の十一

サンラクの合図を受けて、ペッパーが走り出す。リュカオーンがペッパーを見つめ、周りを見ずに追い掛ける。

 

「さぁ、此所からが勝負!晶弾(クリスタルバレット)起動だ!【成長せよ(Growing up)】!!!」

 

ペッパーが通り過ぎた刹那、サンラクが煌蠍の籠手(ギルタ・ブリル)に宿る機能(ちから)を言霊に乗せて、左側で地面を叩く。

 

地面を媒介に伝わった『振動』が、撃ち込んだ晶弾に伝わるや地面から水晶柱が飛び出し、走ってきたリュカオーンの左前足に直撃。『犬型』であり『狼』を形作るリュカオーンは、自身の転倒を阻止するべく、右前足を踏み込みバランスを取る。

 

「エムル、右前足にブチ当てろ!」

「はいな!マナ・シェイカー!」

 

兎の魔術師が霊体系モンスターに特効レベルで刺さる魔法を放ち、リュカオーンの右前足を攻撃。クリーンヒットした事によってクレーターの様な傷が刻み込まれ、幾ら夜の帝王でも其のダメージは、簡単に修復出来るものでは無いようだ。

 

「やりましたわぁ!」

「良いダメージだ!さぁ、全出力ぶつけに行けや━━━朱雀(スザク)ゥ!!!」

『了解、ポイントマーキング。焼却対魔刃(インシレート・スラッシャー)、起動。攻撃ヲ仕掛ケマス』

 

残されたエネルギーを、ありったけの熱を。噴射口(ブースター)と紅の翼に乗せた朱雀が炎の翼刃を掲げて、夜闇が崩れた右前足を凄まじいスピードと共に焼き斬り裂く。

 

其の一撃たるや、あと残り皮一枚といった所まで深い斬り傷を負わせたと同時に、朱雀のエネルギー残量が0となった事がサンラクに伝えられる。

 

「ナイスファイトだ、朱雀。ゆっくり休んでくれ」

 

フルフェイスヘルメットに隠し、サンラクは朱雀の健闘を讃え。エネルギーを失った赤い鋼の鳥は落ちて、地面を擦る。

 

「エムル!カッツォ!京ティメットの方に行け!」

「はいな!」

「了解!」

 

エムルがサンラクの肩から跳躍し、オイカッツォの手に収まるや、彼女()京極(キョウアルティメット)の方へと走り出す。

 

「次は俺の切札の番だ……あの夜の借り、数百倍にして返してやる!」

 

甦機装(リ.レガシーウェポン):煌蠍の籠手(ギルタ・ブリル)━━━━━月光を右手側で受ける事により、魔力を蓄積・消費する事で左手側から晶弾を生成、発射可能な機能の他に、此の武器には遺機装(レガシーウェポン)同様【超過機構(イクシードチャージ)】と呼ばれる『必殺機構』を備える。

 

ペッパーと入れ替わる形で前に出たサンラクの、煌蠍の籠手の右手側が金色の輝きを放ち、絶大な魔力で満たしていく。

 

煌蠍の籠手の超過機構は非常にシンプル……蓄積した魔力を全て消費し、其のエネルギー量に応じて対象の身体を『水晶へと変質させ爆砕する』というモノ。

 

使用すれば一週間の再使用時間と、装備者と装備には甚大な反動ダメージが返ってくるものの、其れを加味しても絶大窮まる其の一撃は、切札の二文字に陰り無し。

 

「オマエが月を避けるなら、俺が月を叩き付けてやる(・・・・・・・・・)!【超排撃(リジェクト)】!!!!!」

 

小さき開拓者が持つ、神代の技術で甦った黄金の一撃が、立ち上がらんと歯軋る、夜の帝王の顎に突き刺さり。リュカオーンを、黒い狼を構成する闇が水晶に変わり━━━━盛大に()ぜた。

 

「「「「サンラク(サン)!!!」」」」

 

煌蠍の籠手が軋んで砕け、サンラクの身体が反動によってダメージを食らい。しかし『食い縛り』によって耐えて京極達の方向へと吹き飛んでいく中、オイカッツォはサンラクの言った言葉の意味を理解し、バフが切れた中で全力ダッシュ。エムルはマジックチェーンを放ち、吹っ飛んでいくサンラクの足に、魔力の鎖を巻き付けて。

 

京極も、アイトゥイルも、シークルゥも、秋津茜も、レーザーカジキも、ペンシルゴンも。威力を殺して落ちてきたサンラクを身構え受け止めるが、其れでも其のエネルギーは凄まじく、全員がドミノ倒しにされて漸く止まった程であった。

 

「お、おお……スマン助かった」

「とんっっっっっっっでもねぇな、サンラク!?何だ今の一撃!?」

「さっきのアレ、其の籠手の能力なのサンラク君?」

「いやぁ、アレはヤバいでしょ」

「サンラクさん、凄いですよ!」

「良い絵になりそうなのさ」

「凄い……です、サンラクさん……」

「取り敢えずお前等落ち着け!」

 

やんややんやと質問されたりしながらも、サンラクはペッパーとサイガ-0を見つめる。

 

「さぁ、ペッパー!しっかり最後まで頼むぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンラクの切札はヤバい。リュカオーンの顎を粉砕し、動きを止める程の絶大な一撃を前に、思わず息を飲む。しかし止まってはいられないのと、サイガ-0が確実に切札を当てられるようにする為に。

 

ペッパーは聖盾イーディスを地面に突き刺し、空いた左手でインベントリアを操作………其の中から『あるアイテム』を取り出す。

 

「皆、自分に出来る事を最大限にやって来た。ならば俺も!今の俺が持てる『最大火力』を叩き付けてやる!リュカオーン!!!」

 

彼の左手に有るのは『一冊の書物』であり。しかし其の書物は只の物では無い。

 

名を『世界の真理書「墓守編」』。ユニークモンスター・墓守のウェザエモンを討伐した者に、報酬として与えられた此の世界(シャングリラ.フロンティア)に、たった『五冊』しか存在しない貴重な本。

 

「ウェザエモン・天津気(アマツキ)さん!貴方の絶技━━━━使わせていただきます(・・・・・・・・・・)!」

 

グランシャリオの剣身に真理書を翳した其の刹那、彼の手に在った書物は『空の蒼と桜の桃色の混じった宝玉』に変化し、七つ在る穴の『最も持ち手に近い場所』に納められる。

 

そうして彼は左手にグランシャリオの鞘を持ち、右手の聖剣を其の中に差し入れ、残り一回のレーアドライヴ・アクセラレートで、リュカオーンの右後足を『直線上とする位置』に瞬間移動した。

 

「ペッパー流━━━━━()!」

 

 

 

 

 

晴天流(せいてんりゅう)(かぜ)奥義(おうぎ)

 

 

 

 

目の前に居た筈のペッパーが突如として消え、リュカオーンがグランシャリオの気配を探り、振り向かんとした時。自身の身体がシャンフロの誇る物理エンジンに従って、右へ倒れていく感覚と自身の視界にペッパーが立っている事に気付く。

 

サンラクは、京極は。ペンシルゴンは、オイカッツォは。其の技を知っている(・・・・・・・・・)。風を断つと意味を込められ、名付けられた、ウェザエモンの『絶技』が一つであるから。

 

直線上に在るリュカオーンの右前足……マナ・シェイカーと朱雀の一撃で傷付き、サンラクの一撃に顎を砕かれながらも、再生させていた最中に神謳万雷(しんおうばんらい)よる超加速+グランシャリオの武器に宿った能力による斬撃が、無防備となっていた右後足を断ち斬るに至らせた。

 

星皇剣グランシャリオの能力………其れは『世界の真理書を剣に翳す事で宝玉となってセットされ』、ユニークモンスターの持つ『御業を行使する事が可能になる』というもの。そして『墓守編』は剣に納めた真理書の『数』と、セットした『位置』によって、ウェザエモン・天津気の使用した『絶技』を再現可能とする。

 

ペンシルゴンのバースデーサプライズの準備期間中に、ヴォーパルコロッセオでグランシャリオの秘められた力を探る中で、真理書を翳した事で遂に理解した『真の力』。再現されしは神速の抜刀居合、此の場合では神速の抜剣居合となるが、彼はグランシャリオの剣身を鞘に収めながら、残心と共に『其の名』を放つ。

 

 

 

 

「━━━━━━━『断風(たちかぜ)』」

 

 

 

 

キン……!と小さく剣は鳴り、リュカオーンの巨体がバランスを崩し、地面に再び倒れた。

 

「御願いします!サイガ-0さん!」

 

皆で繋ぎ止めた、此の戦い。

 

最後にして、真打ちたるプレイヤーへ。

 

シャングリラ・フロンティアの最強の攻撃力を誇る最大火力(アタックホルダー)に、彼等彼女等の命運は託されたのだった………。

 

 

 

 






帝王を討て


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