影狼との戦いを越えて
倒した………自分達は夜の帝王、ユニークモンスター・夜襲のリュカオーンを倒したのだと、そんな達成感と後悔をしつつも、此の瞬間にペッパーは夜空を見上げて息を吐いた。
クラン:
「ユニークシナリオEX……コレがユニークモンスターを、倒すのに必要な………」
「…………そう。墓守のウェザエモンの時は【此岸より彼岸へ愛を込めて】ってクエストが、ウェザエモンに挑むユニークシナリオだった」
「わ、私にも、ユニークシナリオいーえっくす?ってものが出てきました!」
「ぼ、僕も……でも、良いんでしょうか……?助けて貰ったり、後方支援しか出来てなかったんですけど……」
ユニークシナリオEXを受けて良いのか悩むレーザーカジキに、サンラクとペンシルゴンはこう言った。
「大丈夫大丈夫、受けた方が絶対楽しいから。受けないで後悔するより、チャレンジした方がダメージ少ないぜ?」
「レーザーカジキ君はあの時、
「えっ……?」
「あぁ、支援攻撃や魔法も立派な戦いだ。レーザーカジキ、よく頑張ったな」
「…………!ありがとうございます!」
一戦力として認めて貰えていた事に、深々と頭を下げたレーザーカジキを見つつ、ペッパーとサンラクはリュカオーンとの戦いで獲られた称号や報酬を見て━━━━気付く。
「………そういう事か」
「あぁ、多分な……」
「えっ、どしたの?あーくん、サンラク君」
「称号の影狼………俺達がさっきまで『本物』だと思って戦ってたリュカオーン、アレも影………つまりは『分身』だったって事」
「マジ?」
「そ、そうなんですか?」
「やってくれるね、リュカオーンは」
皆思う所が有りつつも、苦労して倒したリュカオーンが分身だった事に、どっと疲れが襲い掛かる感覚を味わった。
「おそらく『本体』は、どっか遠く離れた場所から、分身を遠隔操作して楽しんでるんだろう………ガアアアアアア!!!チクショー!!!!嘗め腐りやがって、あの犬ッころがぁぁぁぁぁ!!!」
フルフェイスヘルメットを被ったまま、夜空に向かって怒号を上げたサンラクだったが、此所でリュカオーン戦のMVPというべき活躍を見せたサイガ-0が、彼を見て言葉を紡ぐ。
「良いじゃないですか。例え分身でも、偽物でも………誰にも倒せなかったリュカオーンを、サンラクさんと。そして皆さんと一緒に倒せた………私は其れだけでも凄く『楽しかった』ですよ!」
そう言ったサイガ-0の表情は、土錆びれた兜に隠されて見えなかったものの、サンラクには『ある女の子の顔』が重なって見えた。
「………………………」
「どうし、ましたか?」
「あ、いや………何かチラッと記憶に触れた様な気がしただけですね。…………まぁ、レイ氏の切札も見れたし!リュカオーンにリベンジを果たせたって事だ!」
「そうだな、俺としても大満足の結果だよ。報酬も有るみたいだし、一体ど『ジリッ……』ん?」
SEが鳴り、ペッパーの右手とサンラクの胴と脚に刻まれている、リュカオーンの
「ペッパーはんと、サンラクはんの呪いが何か『変』になってるのさ!?」
「何が起きてるの……?」
アイトゥイルと
「そうか、コレは……!俺とペッパーに呪いを着けたのは分身とはいえ、『あの
「えっ……あ、確かに……!リュカオーンの分身だが、呪いを刻んだ奴を討伐したから……!」
「つまり俺は、漸く半裸から卒業出来るって訳だ!聖女ちゃんとやらに頼むまでもねぇ!此の変態スタイルからもオサラバ出来るわ!!!」
忌々しい呪いと半裸スタイルからの脱却が出来ると歓喜に喜ぶサンラクは、フルフェイスヘルメットから馴染み深くなった凝視の鳥面に切り替える中、変態の自覚有ったのか(ですわ)とオイカッツォ・京極・エムルがポツリと呟く。
「さぁ、来い!そして此の忌々しい呪いを解くが良い!!!」
ババッと天に両手を広げるサンラクだが、ギュムムムムム!っと黒靄が凝縮されて、一同の前に『リュカオーンの頭』が出現する。
『えっ?』と全員が呆気に取られた直後、頭だけの某饅頭じみた姿のリュカオーンが、目の前に居たサンラクを両足の爪先のみ残して、口に含んだかと思えばモグモグと『咀嚼し始めた』。
「サンラクさぁぁぁぁぁぁん!!!???」
「えっ、此れ本当に解呪か!?」
「どう見ても解呪じゃないような……」
秋津茜・オイカッツォ・ペンシルゴンが見つめる中、ベッとチューインガムの残りカスを吐き捨てる様に、口に含んだサンラクを解放するリュカオーン。そして其の視線は、続けてペッパーの方に向けられていた。
「………リュカオーン、俺はお前にリベンジを果たした。だが、俺達は此れで一勝一敗の『イーブン』でもある。本体に伝えてくれ。『必ずお前を探し出して、倒しに行く』………ってさ」
突発的な『ロールプレイ』を求められた気がしたペッパーは、頭だけのリュカオーンに対してそう宣言する。果たしてリュカオーンが、自分に何を思ったかは解らなかったものの、ぴょいんぴょいんと地面を跳ねてペッパーに近付き。
右手を鼻先で押し上げた後、ペロリペロリと右手を『舐め回し始めた』のである。
「えぇ…………????」
「……甘えてる?のでしょうか、リュカオーンさん?」
「サンラク君と扱いに雲泥の差が有って草」
「………何か気に入られた?ペッパー」
「呪いの時点で気に入られてるんだがな………」
遠い目をしていると、リュカオーンが舐め回すのを止めて。
ペッパーが右手を見ると此迄は『引っ掻き傷に似た模様』を成していた呪いが、『引っ掻き傷こそ其のままに紅い色』に変色していき。
ではサンラクはと皆が視線を向ければ、其の呪いは『更に深く』。まるで産まれた時より身体に刻まれたかの様な、『漆黒の黒』へと変化を遂げた。
何が起きたのかと、サンラクとペッパーは自身のステータス画面を開き、状態異常をチェックする。
夜の帝王の分け身を打ち破りし者を、リュカオーンは『餌』として認識しない。其れは自らの手で仕留めるに相応しい『敵』の証明であり、最強種が認めた強者の『刻印』である。
魂に刻み込まれた呪いは、聖女の祈りでは解呪出来ず、黒狼の真なる姿を打ち破る他に解く術は無い。
・リュカオーンの刻傷を持つキャラ以上のレベルのモンスターが積極的に『戦闘』を選択します。
・リュカオーンの刻傷を持つキャラ以下のレベルのモンスターは、積極的に『逃走』を選択します。
・リュカオーンの刻傷を持つキャラは、あらゆる『呪い』を無効化します。
・リュカオーンの刻傷を持つキャラは、NPCとの会話に補正が掛かります。
・リュカオーンの刻傷を持つキャラは『
・リュカオーンの刻傷が付与された部位には、防具及び武器を装備する事が出来ます。ただし装備したアイテムは『一定時間』で破壊されます。
・リュカオーンの刻傷の効果は、『夜の帝王を模倣した神代の大いなる遺産』に限り、効果の対象外となります。
夜の帝王に誓い、自らの約束を違う事無く己が分け身を倒した者に、リュカオーンは『餌』という認識を改めた。其れは最強種が見定めし、『寵愛する存在』である。
其の身に刻まれた刻印は、聖女の祈りでは解呪出来ず、黒狼の真なる姿を『夜の帝王を模倣した神代の大いなる遺産』と共に打ち破る事でのみ、初めて解く事が出来る。
・リュカオーンの愛呪を持つキャラ未満のレベルを持つモンスターは、本能的に『逃走』を選択します。
・リュカオーンの愛呪を持つキャラと同じレベルを持つモンスターは、愛呪を受けたプレイヤーとの戦闘を本能的に『回避』を選択します。
・リュカオーンの愛呪を持つキャラは、あらゆる『呪い』を無効化します。此の効果は、愛呪が付与された部位以外にも発揮されます。
・リュカオーンの愛呪を持つキャラは、NPCとの会話に大きな補正が働きます。
・リュカオーンの愛呪を持つキャラは『
・リュカオーンの愛呪が付与された部位には武器・防具を装備出来ません。ただし『夜の帝王を模倣した神代の大いなる遺産』に限り、効果の対象外となります。
サンラクは思った。違う、そうじゃない━━━━━と。
ペッパーは思った。何故そこで愛ッ!?━━━━━━と。
与えられたのは、更なる困難への片道切符
刻傷と愛呪の違い
刻傷:コイツは私が認めるくらい強いよ
愛呪:私のモノだから、手ェ出したら殺す。もし手を出したら、何処に逃げようが、何処に隠れようが、絶対追い詰めて必ず死に晒す