始まりの街 ファステイア。シャンフロを始めたプレイヤーや、ビギナーエリアでモンスターにやられたプレイヤーが夢オチの形でリスポーンする街である。
「ファステイアとーちゃ~く……。ふぅ、疲れた……」
此処まで来るのに1時間半近く掛かったペッパーは、ゴブリンとの戦闘の緊張から解放されたこともあり、大きく息を吐き、地面に座った。
ファステイアは見たところ木材で出来た街のようで、街中に建っている建造物の殆どが木製、地面には切り出された石で舗装された道を他のプレイヤーとNPCが行き来している。
「始まりの街ってだけあって人も多いな。さてと、先ずはリスポーン地点を定めておこう」
シャンフロ内では街の宿屋を利用する事で、モンスターとの戦闘による死亡後の再出発地点を作ることが出来る。
暫くは此処を拠点に身支度を整えつつ、ペッパーは今後の目標を定める事にした。
「こんにちわー」
「いらっしゃい、宿を利用かい?」
宿屋の受付に居るNPCが、ごく自然な挨拶に反応してくれた。よく出来ていると心中感心しつつ、本題を切り出す。
「はい。空いてる部屋は有りますか?」
「ちょっと待ってな。……お、101~107号室まで空いてるが、どれ使う?」
「じゃあ101号室で、お願いします」
「あいよ、料金は100マーニだ」
シャンフロの通貨、マーニ。武器や防具、消耗品のアイテム等の購入やモンスターの素材を売ったり、一部換金アイテムを特定の場所で換金することで増やせる。
貴重な鉱物やアイテムは何かと利用するので、換金か素材かでの使い所にも注意したい所だ。
「よいしょっ…リスポーン地点更新完了っと」
宿屋1回で100マーニ消費し、現在の所持金が2900マーニとなったペッパーは、先を見据えたマーニの使い方を考える。
「先ずは体力回復と状態異常回復アイテムの購入と、現状の武器はゴブリンの手斧に護身用ナイフだけだから短剣を1本。仮に短剣が500マーニ掛かるとして、宿での回復を踏まえると100マーニは最低でも残すのが必須……か。
よし、情報収集始めよう!」
リスポーン地点更新に使用した宿屋を後にしたペッパーは、ファスティアの様々な施設を訪れ、情報収集を行った。其れにより幾つか解ったことがある。
先ずスキルは『
ただ、何から何まで合体出来るという訳ではなく、条件として『自然習得』かつ『熟練度』が上がるスキル同士の連結に限られている。
またスキルの中には使い続ける事で『発展』し『進化』するスキルもあるらしいが、プレイヤー…もとい開拓者各々の戦闘スタイルによって多少の変化が起きるそうだ。
他にも1つレベルアップする毎にステータスポイントを5ポイント獲得出来、其れを振り分ける事でステータスの能力を強化出来る。
そして武器には『耐久値』が存在し、使い続ければ何れ壊れて失われてしまう事。耐久値が尽きる前に、武器屋へ持っていけば耐久値を回復出来るそうだ。
曰く其の鍛冶師達は自分が作った武器を子供と同じと考え、其れを『強化』するではなく『育てる』と謂うのだとか。
「スキルの成長と連結合体、武器を育てる鍛冶師…色々タメになる情報だなぁ…。鉄のナイフの入手は出来たし、解毒薬に麻痺解除薬、スタミナ回復用の食糧と採掘用のツルハシも揃えられた。
暫くは金策がてら、経験値と鉱物を狙える『ファステイア坑道』で稼ぎましょっと」
ファステイアでの情報収集と物資の調達を終えたペッパーは、アイテムインベントリの確認し次なる目的地として、街近くの坑道にして初心者の金策並びに修行場となっている場所に狙いを定める。
「ただなぁ、他にもプレイヤーが居そうだから取り合いになりそうな予感しかしない」
採掘場所を巡って争いになる可能性が頭に浮かび、ペッパーは急ぎ足でファスティア坑道へと向かったのだった……。
「まぁ…うん。予想はしてたが、やっぱりこうなるか」
移動して20分、昔ながらの掘削技術と崩壊防止の木組みが成された、ファステイア坑道にやって来たペッパーは溜息を付く。
既に坑道には先に到着したプレイヤー達が我先にとツルハシを壁に叩き付け、ドロップしたアイテムに一喜一憂していたり、飛び回る蝙蝠やブヨブヨ動くスライムのモンスターと戦闘したりと盛況を呈していた。
「こりゃ、奥まで行かないと駄目かぁ」
他のプレイヤーが振り上げるツルハシに当たらぬように、ステップを交えながら坑道を進むペッパー。途中遭遇したスライム相手にゴブリンの手斧で応戦してレベルを1つ上げたり、メイズバットという蝙蝠のモンスターに絡まれたりするハプニングに見舞われたが、漸く鉱脈と思われる岩肌を見付けた。
「じゃ、始めます……か!」
インベントリからツルハシを取り出し、掘削作業を開始する。が、しかし…………
「ツルハシ1回でスタミナ減りすぎなんだが?」
開始から30分、直面したのは掘削1回消費されるスタミナによって発生した、非効率な時間浪費だった。
「考えられる可能性はツルハシが重い、筋力とスタミナが足らない、ツルハシの使い方が分かってない。……筋力が20でもこれって事はつまり……!」
ペッパーは自身の考えが正しいかを確かめるべく、ツルハシを一旦インベントリへと戻し、ステータス画面を開く。現状自分が持っているポイントは10、此れをスタミナと筋力に5ずつ振り分け、再びツルハシで鉱脈を叩く。
すると先程までなら1回振って回復するのを待たなくてはならなかった所を、2回振って暫く休めば良い状態に改善したのだ。
「やっぱり、重量のある武器はスタミナの消費もデカいんだな。となると重武器を用いたスキルも、クールタイムと合わせて調節する必要性も出てきたか…うーん奥が深い」
ステータスポイントの振り分け方、武器の重量とスタミナの消費の比例、新しく手に入れた情報を知識として頭に叩き込む。
暫くペッパーはツルハシを鉱脈に叩き込み続け、10分が経過した頃、彼はある事を思い付く。
(あれ?もしかしてこの方法、いけるんじゃないか?)
彼が考えたのは、自身の出身たる探検家の子による
(ただ、ゲーム開始から2時間経ちそう…1回休憩挟もうか)
一先ずはゲームを中断し、其の後に思い付いた策を実行に移すべく、ペッパーは採掘で出たアイテムを整理して、ファスティア坑道を後に一目散に始まりの街 ファステイアへと走り出した。
己が思い付いた、次なる作戦を実行に移すために。
思い付いたが吉報、トライアンドエラーはゲームの醍醐味