ユニークシナリオを受注せよ
「成程……リュカオーンの顎を砕いたら、嫌がらせをされたと」
「リュカオーンって確か、ユニークモンスターだったような……凄いなぁ………」
サンラクが半裸になった経緯を説明し、波止場の酒場の一角に席を取った所で、サンラクが軽い自己紹介をしていく。
「あ~……ルストモルド、家のクラン:
「オイカッツォだよ、バカラク」
「
「おっしオマエラ並べや、顎粉砕してやっから」
「初めまして、秋津茜です!」
「サンラク、オイカッツォ、京極の三人ステイ。………コホン。初めまして、クラン:旅狼のリーダー・ペッパーです。本日はよろしく御願い致します」
「やぁやぁ、初めまして。私はアーサー・ペンシルゴン。サンラク君から話は聞いてるよ」
サンラクがオイカッツォと京極に食って掛かろうとしたのを、ペッパーとペンシルゴンが引き剥がし、京極は秋津茜が宥めるのを見ながら、ルストがこんな事を聞いてきた。
「ペッパー、だっけ………
「まぁね。でもワイワイしてて、此れぞクランみたいな感じで嫌いじゃないよ」
個性派で一癖処か三癖は有りそうな、曲者揃いの面々を纏め上げる青年は朗らかに笑う。そして其の目は真剣な物に切り替わり、ルストとモルドに向かって当初の目的………即ちユニークシナリオの交渉に入る。
「サンラクから話は聞きました。内容が俺達のクランが所有している『ロボットの情報』と、ユニークモンスター・深淵のクターニッドに関わる『ユニークシナリオ』で合っていますね」
「はい。えっと、ペッパー………さん?」
「あ、ペッパーで良いですよ。其の方が楽だと思いますし」
堅苦しい雰囲気で進めようとしていたモルドだったが、ペッパーの助け船で緊張が解れたのか「そうですね………」と一息付いて話を始めた。
「えっと、僕達が受注したユニークシナリオなんですが………最初はルストがNPCに睨まれた事にキレて『片っ端から殴り倒しちゃった』のが始まりだったんです」
シャンフロのカルマ値が上昇するのは雑魚モンスターを必要以上に痛め付ける以外にも、NPCやプレイヤーへの危害を加える事でも上昇。そしてカルマ値の上昇はPKerでないにしても、一部施設の機能制限や立入禁止に加え、場合によっては指名手配されたりとデメリットが追加される。
つまりは此のユニークシナリオ受注には、シャンフロの『常識』が在るからこそ、其の『盲点』をトリガーとする物であったらしい。
「ルストが何人か殴り飛ばした後、僕達の所に『大海賊の使い』と名乗るNPCがやって来て、其のNPCに連れられて、僕達二人は『大海賊スチューデ』の所へ案内されたんです」
「其のスチューデが、ユニークシナリオの」
「はい。でも………」
「何時までもロボットが見付からなかったから、ネフホロに戻った。………デマだったら、許さない」
鋭い目付きでサンラクを睨み、ドリンクを飲むルスト。無論デマでは無いし、思いっきり驚かせてやるとしよう。
「えっと、じゃあNPCを殴ってたのは……」
「前と同じ条件なら、来ると思った」
「数ヶ月前と同じ事をすれば、イベントが起きるんじゃないかなって、ルストが試したんだ」
「成程」と頷きつつも、ペッパーは如何なるタイミングで天将王装と天王を見せるかと、思考を巡らせていた時だった。
「はん!騒がしいと思ったら、やっぱりオマエ等だったか!暫く見ないから尻尾巻いて逃げたと思ったぞ!『チビ女』!」
店の出入口から聞こえてきた、ガキンチョと言わんばかりの声に、旅狼のメンバー全員とルスト&モルドの視線が向く。
其処に居たのは、動きやすさ重視の膝出し短パンと靴を履き、永遠の言葉を借りるなら『服に着られている』かのような、ダボダボの海賊衣裳を纏った小さな身体。
ファッションとしての考慮が一切されていない、切っただけのバサボサカットの金髪と、額には赤いバンダナをぐるりと巻き付け靡かせ、右頬には包帯かバンテージの切れ端をくっ付けた、齢十歳程の少年が居た。
「何このガキンチョ」
「まぁた何と言うか……典型的な子供だね。この子」
「コッテコテのクソガキだね、アレは」
「すっごい元気ですね!」
「オイオイ、まさかコイツが大海賊の使いじゃねぇだろうな?」
「もしかして御本人だったり?……いや違うか」
オイカッツォが、ペンシルゴンが、京極が、秋津茜が、サンラクが、そしてペッパーが。目の前の少年に思い思いの言葉を放つ中、其の少年は堂々と名乗りを挙げた。
「使い?いいや、違うね!僕様こそが!赤鯨海賊団の船長!!!其の名を………『大海賊スチューデ』様だ!はーっはっはっは!!」
まさかの依頼人自らがやって来るタイプだったらしい。
「あいっかわらず『ヒョロノッポ』はホッセーなぁ!肉を食え、肉を!」
「あ、あははは……僕は此れでも文系だから」
「あ?ブンケイ?」
「………
ルストの言う事に激しく同意する、オイカッツォ・ペンシルゴン・京極の三人は、コクコクと首を縦に振る。此のスチューデというNPC、典型的な絵に描いた様なクソガキである。まぁ、此れはコレで元気が有って大変よろしいが、あまり過激過ぎれば嫌われるタイプだろう。
「んだと、チビ女!」
「おっ。煽り耐性皆無なの、クソガキポイント高いな」
「あ?何だおま……!?お、お前、其れ……!お、おおおおおお、お前のなななななまえを、いちおう……聞いてやらんでも、ないぞぉ!」
サンラクの言葉に反応したスチューデだったが、やはり刻傷を見て言葉が詰まって、必死に絞り出しました感満載な台詞を放ってきた。
「俺の名はサンラクだ、此方に居るのはクラン……まぁ『仲良し集団』でな。訳有って其処の二人に協力する事になった。そっちの一見フツーそうなのが、クランリーダーの『ペッパー』っうんだ」
「初めまして、サンラクから紹介いただきましたペッパーです。スチューデさん、よろしく御願いします」
席を立ち、深々と御辞儀をしたペッパーに、何故かスチューデは更に震え上がって涙目になっている。
「…………スチューデさん?」
「ひょ、ひょひょひ、しょうか!け、ケンキョ、だなオマエ!?ぼ、ぼぼぼ、僕様の為に働いたなら………ししし、然るべき『ホーシュー』を支払って、やってもいいい、良いぞ!」
「成程……」
そんなスチューデだったが、ピシッとした表情に戻るや旅狼一向とルスト&モルドに向かってこう言ったのである。
「よ、よし、お前ら!早速船に案内してやるから付いてこい!」
「船?」
「そうだ!僕様の船で無ければ、パパの………ううん、親父を殺した幽霊船『クライング・インスマン号』を沈める事は出来ないからな!」
其の言葉をトリガーとして、パーティーリーダーのペッパーを始めとし、パーティーメンバーの目の前にも『ユニークシナリオ』の受注画面が表示される。
「行こう、皆……!」
そして狼達は迷う事も無く、YESのボタンに触れるのだった。
いざ行かん、蛸狩り
愛呪『あんまり調子に乗ってると、どうなるか解ってるかしら?ク・ソ・ガ・キ・ちゃん?』