スチューデの船
「嵐と共に現れる幽霊船クライング・インスマン号…………。ソイツと遭遇した親父はたった一人で船に乗り込んで、死んだ。………子分と船を、守る為に」
スチューデに案内されながら、夜闇の帳が降りるフィフティシア造船エリアを歩く一向は、彼から今回のクエストの経緯や色々な話を聞いた。
其の幽霊船クライング・インスマン号は嵐の海に現れては、迷える遭難者達を拐い、深海に潜むという『盟主』の元へ━━━━━『ユニークモンスター・深淵のクターニッド』に供物として捧げているのだという。
そして先程の話を加えると、スチューデの父親つまり前の船長は、クターニッドから部下と船を守らんと、幽霊船に単身で乗り込み、其の元へ誘われて帰らぬ人になったのだと言うらしい。
「成程な、つまりは『親父の仇討ち』って訳か」
「そうだ!親父に代わって、幽霊船を沈める!そして其れが出来た時、僕様は初めて赤鯨海賊団の船長として。そして親父が遺した『スカーレットホエール号』の船長になれるんだ!」
案内された先に在ったのは、赤い船体が堂々と聳え立つ一隻の中型帆船。まさに中世時代の海賊船と言わんばかりの立派な船であり、此れを造り上げた船大工や此れを操り海を駆けたスチューデの父親の凄さを、ペッパーは犇々と感じつつも何処か
「おぉ、随分立派な船じゃねぇの」
「さぁ!急いで積み荷を運べ!出航は一時間後だ、武器とバリスタの調整も忘れるな!」
『了解!!!』
船員が積み荷をスカーレットホエール号に載せていくのを見ながら、ペッパーはインベントリアの中に入れた回復薬やマナポーション、毒消し薬に目薬、活力剤や再誕の涙珠の総数を確認。
続けて武器の耐久値の確認をしようとした時、何処からともなく『おうおうおうおう!!!!』と、威勢の良い男達の声が響き、ドタドタと此方に走り寄ってくる。
「赤鯨海賊団名物『バレルデリバリー』だ!アンタ宛の荷物だぜ、配達完了!」
そう言って大男達が置いたのは、中型の樽と大型の樽の二つであり、何やらペッパー宛の荷物らしい。
「あーくん、何か頼んだの?」
「いや、身に覚えが無いんだが……。中身は何、が……」
意を決して中型の樽の蓋を開けてみると、其処には目を回した『レーザーカジキ』が入っていた。
「レーザーカジキ!?大丈夫か!?」
「きゅ~~~……はっ!あ、ペッパーさん!皆さん!遅れてすいません!……って、あれ?此処何処ですか?」
気絶から復活・横倒しにした樽の中から、よちよち歩きで外に出たレーザーカジキ。ならば此のデカい樽の中身は一体何なのかと、蓋に手を掛けんとした瞬間、バキバキバキバキッ!と外壁を圧し割りながら『サイガ-0』が現れたのだ。
「えぇ………?何でレイ氏が運ばれてきたんだ??」
「あ、サンラクさん……其れから
「此処はフィフティシアの造船エリアですが……何故サイガ-0さんが此処に?」
理由が解らない中、レーザーカジキ曰く『フィフティシアでマナポーションや武器の強化をしていた時に、ユニークシナリオ『深淵の使徒を穿て』という表示が出て来て、其れを受注した所に赤鯨海賊団なる大男の集団が店内に乗り込み、バレルデリバリーだとか言いながら詰め込み、気付いた時には此処に着いていた』と言うらしい。
そしてサイガ-0曰く『あの後、黒狼館へ帰ったは良いがパーティーを解散するか否かで右往左往し続けて、解消ボタンを押そうとしたら、シナリオ受注のYESボタンを叩き、何処からともなく現れた赤鯨海賊団名物・バレルデリバリーで、樽に詰め込まれて此処まで来た』との事。
「つまりどういう事だ………?」
イマイチ状況が掴めないペッパーだったが、幾度かパーティープレイをしてきたサイガ-0は、彼にある質問をしたのである。
「も、もしかしてですけど……ペッパーさん。フィフティシアに到着した後で、『パーティー解消』を忘れてたり、しませんでしたか?」
「パーティーの解消………ですか?」
「はい。シャンフロのパーティーでは……『リーダー』がクエストやシナリオを受注した場合、同じパーティーメンバーにも……同様の通知が行く、そんな『システム』が有ります」
サイガ-0の解説とメニュー画面を開いた事で、ペッパーは初めてパーティーを解消し忘れていた事に気付き。
「どうやら、やらかした馬鹿野郎は俺だったみたいだ……」
「ペッパーさん!?」
自分の凡ミスでサイガ-0にも、クターニッドのユニークシナリオが渡った事や、黒狼にまたデカ過ぎる『借り』を作ってしまった事実に頭を抱えて。
「えー………ルスト、モルド。此方が後で合流するとサンラクが言っていたレーザーカジキと、旅狼の連盟クランに所属しているサイガ-0さんです。サイガ-0さんに関しては万が一に備えて、援軍として来て貰いました」
過ぎてしまった事は仕方無いし、サイガ-0さんはユニークシナリオとは関係無いから帰って等、ペッパーは口が裂けても言えなかった。
「は、はぁ……」
「ロボが見れるなら、どーでも良い……」
了承してくれたモルドと、今更一人二人増えようとも目的は変わらないとブレないルスト。そしてペッパーは、サイガ-0と相対しながら聞いた。
「えっと……大丈夫、ですかね?サイガ-0さん。此のまま俺達、ユニークシナリオに行くのですけど………」
全身を鎧に隠したサイガ-0の表情は、ペッパー達には解らない。だがサイガ-0は力強く、そして『己の意思と己の願いの為』に答えたのだ。
「………いいえ。全力でサンラクさんに!旅狼の皆さんに御協力致します!」
「は、はぁ………ありがとうございます」
何はともあれ強力な助っ人に、旅狼全員集合でのユニークシナリオ挑戦という状況は、此処に出来上がった。
「目指すはクライング・インスマン号……!待っていろ、深淵のクターニッド!」
強き眼差しと炎を燃やし、ペッパー達一向は赤鯨海賊団の帆船・スカーレットホエール号に乗り込んで行くのだった……。
「サンラクさん、サンラクさん。もうそろそろ、お耳が辛いですわ」
「あ~……寧ろ此処まで良くやった。エムル、マフラー解除」
「マフラーが………!?」
「……喋った!?」
サンラクの首にマフラーとして擬態し続けたエムルが動いた事で、ルスト&モルドが驚きの声を上げたのは、言うまでも無い……。
助っ人を加え、いざ幽霊船退治