各々の戦い
クライング・インスマン号にてサンラク・エムル・オイカッツォが先見隊としてカチコミを掛け、大暴れを繰り広げている頃。スカーレットホエール号では、残ったメンバーがNPC達と協力して、マーマンゾンビ達を倒し続けていた。
「たぁぁぁ!」
「高レベルじゃない私でも何とか行けますね!って、わわっ!?」
船上戦は常に波による揺れで、足場は不安定になる。ぐらついてバランスを崩した秋津茜に、マーマンゾンビが迫り来るが、其の身体はシークルゥとアイトゥイルの斬撃に切り裂かれ、脚と胴体と首の三分に分かたれる。
「秋津茜殿、油断なさるな」
「シー兄さんの言う通りなのさ」
「す、すいません!シークルゥさんにアイトゥイルさん!」
二羽の兎によるカバーを受けて、秋津茜は再びマーマンゾンビに突撃していく。
「かなり敵が減ってきた……」
「ペッパー、僕達も幽霊船の方に行っても良いかな!」
中距離弓使いとしてMP・筋力・技量を中心に、他のステータスをバランス良く振り分けたルストが、魔法弓を握りながら非物質のエネルギーで出来た弦を引いて魔法の矢を放ち。
MP・幸運を主体にテンプレートなステータスの魔術師のルストがバフ等を含めて援護しつつ、雨が降る夜空を駆けるペッパーにモルドが声を掛けた。
「サンラクとオイカッツォ、エムルさんの援護を頼む!ペンシルゴンはクライング・インスマン号への道を切り開いて、ルストとモルドを送り届けて!」
「オーケー、あーくん!ヘイ二人共、カマーン!」
「解った!ルスト!」
「聞いてる、行くよモルド」
「さぁさ、行っちゃって!御二人さん!」
パチンとウインクをして二人を船首まで送り届けたペンシルゴンは再び得物を振るい翳して、マーマンゾンビ達を相手に無双を続ける。
「ウインドランス!」
マストの見張り台、其の中間部分まで登った青の魔術師たるレーザーカジキは、
「くっ……また倒しきれない……!」
「其れ貰うよ」
周りを一掃し、サイガ-0と対峙していたマーマンゾンビを
「あ、ありがとうございます……其の『
「僕は『
知り合いか、御互いに現実の名前で呼び合い。京極は周辺のマーマンゾンビを斬り倒して、クライング・インスマン号の方へと向かって行った。
(今のままじゃ、神魔の大剣を使いこなせない……!皆さんの、サンラク君の足を、此れ以上引っ張る訳にはいかない……!)
サイガ-0はアイテムインベントリを開き、装備を防具を切り替えていく。
「大体は倒せた、か……」
空中を駆け抜け、スカーレットホエール号の船員達を守り抜いたペッパーは、船上の残りの敵を見ながら呟き。同時に『異様な違和感』を感じ取っていた。
(おかしい………余りにも『上手く行き過ぎている』)
大多数での攻略に加えて、ペンシルゴンや京極、サンラクと自分に加えて、弱体化しながらも立ち回れるサイガ-0の協力もあって、NPCの被害は少なく済んでいる。
(何か……何か俺達は、重大な『見落とし』をしてるんじゃないか?)
ゲーマーとしての予感と直感を共に、ペッパーはスキル・
揺れる船を転びながらも、クライング・インスマン号を決意の眼差しと共に見つめ、其の手に短剣を握り締めながら進む、自称大海賊を名乗った『スチューデ』の姿を発見した。
「………いや、まさか………!?」
嫌な予感を抱き、ペッパーはレディアント・ソルレイアを吹かして直行。荒れ狂う海から船体に叩き付けられた波で濡れそうになったスチューデを、
「お、お前……!」
「スチューデさん、何してるんですか!?船長ならドンと構えてて下さい!」
「嫌だ!僕様はパパの……親父の仇を取る為に、
「ッ、待ってください!」
ペッパーが止めようとするも、スチューデは其のまま進んでいく。此の瞬間に、ペッパーの
「皆!スチューデさんを護って!此のユニークシナリオは『護衛系ミッション』だ!クライング・インスマン号の敵を一体でも多く減らしてくれ!!!」
ユニークシナリオ【深淵の使徒を穿て】━━━━━其の本質は
そして恐らく、スチューデがクライング・インスマン号に乗り込んだ瞬間に、敵のヘイトがスチューデに持っていかれると、彼は考えたのだ。
「護衛系ミッション……そう来たか、ユニークシナリオ!」
「対象はスチューデさん……!」
「えっ、えぇっ!?す、スチューデさんを守る感じですか!?」
「承った、ペッパー殿!アイトゥイル、秋津茜殿!いざ参らん!」
「はいさ!」
「了解、です…!」
「ペンシルゴン、秋津茜、レーザーカジキ、サイガ-0さん、アイトゥイル、シークルゥさん!クライング・インスマン号に行ってください!彼が殺られたら、ユニークシナリオ『其の物』が水泡に帰します!」
ペッパーの声に、スカーレットホエール号に乗っていたプレイヤー達が一斉に動き出す。戦局は大きく動き始めた………。
護り抜け