VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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状況結実




賽は投げられ、盟主が深淵に誘う

ペッパーが此のユニークシナリオの本質が護衛系ミッションであり、スチューデを守り抜く事こそが本懐であると気付く数分前。

 

「オラオラァ!どうした、どうした!此のまま全滅させっぞゴラァ!!!」

「サンラクさん、ナンカ何時も以上に荒ぶり過ぎて怖いですわ!?びゃああああああああ!?」

「エムルちゃん、アイツ(サンラク)多分エナドリ飲んでると思うわ!ハイテンションなのは其れが理由!」

 

片手剣二刀流に切り替えて快刀乱麻し、片手鎚二刀流に切り替えて乱打で叩き潰し、ツーハンデット・ソードに切り替えては首を斬り飛ばす。

 

神秘(アルカナム):愚者(フール)が回転、スキルの再使用時間(リキャストタイム)半減によって、攻撃力・機動力が増大したサンラクが次々とマーマンゾンビ達を蹴散らし、荒ぶる彼の頭に乗ったエムルは悲鳴を上げ、其の光景にオイカッツォの表情は引き吊る。

 

と、豪雨と風の中で二人の耳に飛来する何かの音を感知。回避した所に荒々しく叩き付けられるは、所々が錆び付いた船の錨。其れを結ぶ錆びけた鎖の先には、左手首から先を失った状態のウツボのマーマンゾンビの姿が在り、此迄の敵とは明らかに違うボスモンスターの気配が漂っていた。

 

「どうやらボスの御出座しってヤツだな……。カッツォ!」

「えっ、ちょ、サンラクざぁぁぁぁぁ!?」

「うおっ!?サンラク、一人で殺る気か!?」

「エムルを頼んだ!オッシャ、行くぞォ!」

 

頭に乗せたエムルをカッツォにパスして、単身ボスへと突撃するサンラク。エムルを渡されたオイカッツォだったが、周りのマーマンゾンビ達に包囲されて、対処せざるを得なかった。

 

「ルスト、左に三体の右に二体!」

「了解した……!」

 

が、飛来した五発の矢が其の包囲を切り崩す。

 

「あ、ルストにモルド!」

「船の方は粗方片付いたから、此方に来ました!」

「直に他も来る」

「フレンドリーファイヤだけは勘弁してくれよ!」

 

ルスト&モルドの援軍到着により、フィールドは変わり出す。遠距離攻撃の支援を受けて、ボスとの一対一(タイマン)状態となったサンラクと、ある程度の多数対一のオイカッツォが戦い続ける。

 

「やぁ、オイカッツォ。僕も混ぜて貰って良いかい?」

「お、京極。そっちもか」

「京極さんですわー!」

 

其処へ更なる援軍として京極(キョウアルティメット)がクライング・インスマン号に乗り込んで来て、オイカッツォとエムルに加わってきた。

 

「…………というか、かなりサクサク過ぎるね。こんなんだっけ?ユニークシナリオの難易度ってさ」

「う~ん……奇跡的に難易度が低い奴だったりとか?其れは無いか」

(やっぱ妙だ、ユニークシナリオにしては『簡単過ぎる』だろ………まだ大物が控えてるって感じか?)

 

京極が此のシナリオに違和感を抱き、オイカッツォもまた其れに同意する。そしてボスと対峙しながら、大立回りを繰り広げるサンラクもまた、此の違和感を疑問視しており。

 

「サンラク君!カッツォ君!京極ちゃん!クライング・インスマン号のゾンビ達を早急に一掃して!此のユニークシナリオは『スチューデの護衛ミッション』だって、あーくんが言ってたッ!!」

 

秋津茜(アキツアカネ)・シークルゥ・アイトゥイルと共にクライング・インスマン号に乗り込んだペンシルゴンが、ペッパーからの伝言を伝えた事で皆の視線が彼女に向いた。

 

「そういう事か、此の違和感の正体は!んじゃあ、チンタラしちゃいらんねぇ!!!」

「護衛系ミッション……!言われてみれば、確かに納得出来る部分が多い!」

「成程……解った!」

 

二人と二羽が戦闘に入り、マーマンゾンビ達を減らしていく中、遂に恐れていた事態が起きた。

 

「こ、この化物めぇ!僕様がパパの仇を取ってやる!」

 

スチューデがクライング・インスマン号に乗り込んできた、まさに其の瞬間。サンラクと対峙していたボスモンスターが、他のプレイヤー達が戦っていたマーマンゾンビ達が、眼前のプレイヤーをガン無視してスチューデ目掛けて一斉に突撃を始めたのである。

 

「やっぱ、護衛系ミッションだった!」

「うおおおおお!させるかバカヤロー!スチューデはさっさと下がれ!」

「ぼ、僕様だって戦えるんだ!」

「アンタより、石投げた方が戦力になる」

「んな!?」

 

ルストのキレッキレの毒舌が襲うが、人手の多さがマーマンゾンビを食い止め、スチューデに近付かせない。

 

「皆さん、スチューデさんの……援護は、任せて下さい……!」

「其の声はレイ氏か、今まで何……を?」

 

サンラクが見た先に居たのは、東洋の意匠が込められた鎧甲冑、憤怒の鬼を其の身に宿して防具にした、般若の如き形相を模す兜を装着した鎧武者。

 

其の頭上にはサイガ-0と表示され、先程まで土錆び付いた重騎士からフォルムチェンジした姿と共に、其の手に握ったスレッジハンマーをブン回して仕留め損ねたマーマンゾンビ達を、弱体化が消えぬ身体で吹き飛ばしていく。

 

「弱体化は、如何ともし難いですが……此の装備なら、充分戦える……筈です!」

「お、おぉ……」

 

逞しい様な恐ろしい様な、そんな感情を抱きながらもサンラクはボスを惹き付けに行き。皆其々がスチューデを守り戦う中で、最後の歯車を動かしたのは━━━━━ペッパーとレーザーカジキだった。

 

「すまん、皆!レーザーカジキを連れてきた!」

「スカーレットホエール号の皆さんは無事です!」

 

レディアント・ソルレイアのブーストを調整し、クライング・インスマン号にペッパーとレーザーカジキが足を着けた、其の瞬間。まるで世界其の物の時が止まったような錯覚と共に、振り続ける豪雨の雨粒一つ一つの動きが止まる(・・・)

 

「な………」

「雨が、止まっ━━━━━」

 

が、其れも一瞬。プレイヤー達の目に飛び込んできたのは、想像を絶する更なる脅威と混乱。海を貫きて、黒雲に星と月の光遮られた夜空に現れるは、黒い巨大極まる『八つ首の龍』━━━━━否。

 

八本の巨大なる蛸の脚(・・・・・・・・・・)が現れた。

 

「…………は?は!?」

「コイツは………!」

 

プレイヤーが、NPCが、マーマンゾンビ達ですら、其の光景を見上げる中、エムルが恐れ戦き。しかし一番のヘタレであったからこそ、其の『正体』を叫ぶ事が出来たのだ。

 

「サンラクざん!ヤバいですわヤバいですわ!島をも掴む巨大なる御手━━━━━━アレクターニッド(・・・・・・)ですわぁぁぁぁぁぁ!!???」

「な………!?」

「クターニッド!!!???」

 

豪雨の中、走る雷光が照らした其れはリュカオーンの毛並みに匹敵する、漆黒の蛸足達。其れはクライング・インスマン号を絡めて掴み取り、蛸特有の力強い引力で海中に引き込んでいく。

 

「何でユニークシナリオ途中なのに、クターニッドが……!?」

「此のままユニークモンスターと戦闘になるの!?」

「おいおいおいおい!どーなってんだ!?まさか此のシナリオ、EXまで『直通運転』なのか!?そういうのは事前報告するもんだろうがぁあああああああ!!?!!!?」

 

引き込まれていく船にしがみ付くプレイヤー達を他所に、クターニッドは其の脚を更に力強く引き込む。深海へと引き込まれる者達の前に、答え合わせをするように其れは表示され。

 

 

そしてペッパーの前には、四つ(・・)の画面が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ユニークシナリオEX【(ヒト)深淵(ソラ)見仰(ミア)げ、世界(セカイ)反転(マワ)る】を開始します』

『ユニークシナリオEX【勇ましの試練:聖盾之型】を開始します』

『勇者武器を用いて、強敵を討ち果たせ』

『ユニーククエストEX【七星の皇鎧よ、我が元に集え】が進行しました』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして視界が、世界が、何もかもが。クターニッドによって引っくり返った(・・・・・・・)

 

 

 

 






ようこそ、深淵へ









???『彼の気配が………消えた?いや、引き摺り込まれてる?…………行かなくちゃ』



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