VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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目覚めた場所は




招かれし王に、深海の都市は騒ぎ立つ

「うぅっ…………」

 

ログインする時に感じる、自身の感覚が世界に溶け込む様な感触を抱いて、ペッパーが目を覚ます。耳に響くのは波の音であり、掌や頬に付いた砂のざらざらとした其れを感じつつ、彼は身体を起こした。

 

「此処は……?」

 

見渡してみれば幾多に漂着して、座礁船になった船達が連なる船の墓場………其の砂浜の丁度端っこ、砂が残されたエリアに居るようで、後ろからは波の音が聞こえてくる。

 

「やられた……まさかクターニッドに通じるユニークシナリオが、EXまで直通だったなんて……。だとしたら非常に不味い……!」

 

アイトゥイルにエムル、そしてシークルゥの三羽のヴォーパルバニー達にスチューデの存在。NPCのカテゴリーに居る彼等彼女等は、殺られてしまえば二度とリスポーンする事は無い。

 

「兎に角、スチューデさん・アイトゥイル・エムルさん・シークルゥさんとの合流を最優先に、トワ達とも一刻も早く合流して状況を整理しないと………ん?」

 

メニューを開こうとしたペッパーの横に、見慣れない『タイマー』が在り。其れには『特殊状態・深淵の刻限』と称して『167:10:58』とあり、今尚刻一刻と秒針を刻み続けているのだ。

 

「…………要するに『制限時間』って事か」

 

目減りしていくタイマーから逆算し、此処に滞在出来るリミットはおそらく『一週間』である。つまり此のフィールドで、一週間以内にクターニッドを討伐しなくては、自分達はフィフティシアには帰れないだろう。

 

「何にせよ、此のフィールドの情報が欲しい……!何か有れば良いん━━━は?」

 

そう言ってペッパーが見上げた時、彼は言葉を失う。其処に広がるのは、視界一面の黒い空に、瞬く無数の星々。そして━━━━━━━━━空中を泳ぐ選り取り見取りの魚達の姿(・・・・・・・・・・・・・・・・・)だった。

 

「………………………ナニコレ?」

 

普通ならば、魚達は水中でしか生きられない筈であるのに、空中を『泳いでいる』。仮に此処が水中だとするなら、自分達は『呼吸』が出来ている。まるでプレイヤーは『地上』と同じ判定が働き、魚達は『水中』と同じ判定が働いている様な、あまりにも『屁理屈な状態』だ。

 

「いや………いやいやいやいや、どーなってんだ此のフィールドは……???」

 

思考が混乱の坩堝に嵌まり掛け、ペッパーは両手で己の頬をペチンと叩く。じんわりとした痛みに多少体力が削られるが、おかげで正気を保つ事が出来た。

 

「何にせよだ、先ずは合流する事から始めないと話にならない………!」

 

此のフィールドの名前を含めた情報を得るべく、ペッパーは星天秘技(スターアーツ)・ミルキーウェイを起動する。スキルは無事発動出来た事から、此処でも昼と夜の概念は存在しており、昼間ならば空中を泳いでいる魚達にも変化が現れるのだろうか?

 

と、空中を駆け抜けている彼の視界に広がるのは『淡い青色一色の廃れた大都市』と『聳え立つ四つの塔』、其れ等の中心には『巨大な城が一つ』在った。

 

「まるでサードレマと同じ……いや、高低差を除くなら『サードレマ以上』の大都市だぞ………」

 

近くの建物の屋根に降り、周りを見ると至る所の家屋が窓や扉が『封鎖されている』。其れも今見た所の全ての家や、店らしき建物の全て(・・)が………である。

 

「一週間ぶっ通しで攻略………なんて真似は、流石に運営はやらないだろう……。となると『セーブポイント』が作れる筈。候補としては家や店、後は罠っぽい気配しかしない塔か城か…………」

 

空中を走った事で、思考が段々とスッキリしてきたペッパーは、仲間達との合流を目標として動き出そうとした、其の矢先。突如己の真上………………上空が水柱を上げるや(・・・・・・・・・・)、現れたのは『蒼い炎を上体部に纏った、胸鰭・背鰭・尾鰭の全てが水晶で出来た巨大な鯱』だった。

 

「はぁ?!何だあのモンスター!!??」

 

全長300mは下らないであろう泳ぐ飛行船の様な巨大鯱の登場に、此迄優雅に泳いでいた魚達が鯱を目撃した瞬間、一斉に逃げ惑う。

 

そして其の鯱はと言えば、胸鰭の水晶から『蒼い雷を帯びて』。其の30秒後に空気が震え━━━━━━蒼雷を徐にブッ放して『空中放電』を行ってきたのだ。

 

「うおぉ!?」

 

ペッパーは効果時間が残るミルキーウェイで回避する中、雷がフィールドを迸り続けて、逃げ遅れた魚達がウェルダン並の黒焦げになり。同時に其の鯱は、ペッパーを視界に捉えて凝視し、其の身に纏う蒼炎を燃やしてきた。

 

其れを見た瞬間、ペッパーは確信する。此のまま皆を探しに行っても、逆に被害が大きくなるだけだと。此処で奴を……………『蒼炎雷を纏う巨大鯱』を倒さなくては、被害が確実に出ると。

 

「やってやるしか……無さそうだ!」

 

あの巨大モンスターに対抗する為、ペッパーはレディアント・ソルレイアを解除し、インベントリアに移していた『一式装備』を速攻で取り出して、其の身に纏っていく。

 

ユニークモンスター・墓守のウェザエモンことウェザエモン・天津気が生前に纏い、今は自分が継承した、伝説の戦鎧たる『悠久を誓う天将王装(フォーエヴァー・ウェザリオ)』、そして対応武装『轟斬型(ゴウザンガタ)太刀(タチ)(シキ)武装(ブソウ):大天咫(オオテンタ)』を装備して抜刀。

 

更にインベントリから『星皇剣(せいおうけん)グランシャリオ』を取り出し、右手に鞘を当ててリュカオーンの愛呪の持つ『装備不可』の制約を一時的に取り除きながら、黒鞘より抜剣しつつ大天咫を構えて、呼び出す為の『合言葉』を唱える。

 

質量転送(エクスポート)及び展開(サモンコール)試作型戦術機獣(しさくがたせんじゅつきじゅう)天王(テンオウ)】!!!」

 

空色の魔法陣より飛び出し、家屋を重量によって押し潰して粉砕しながら、機械の騎馬が白い蒸気を放出し、青の都市に力強く降り立つ。

 

『ペッパー、御久シ振リデス』

「天王、こんな時間に呼び出して済まない。今、俺はアイツに狙われてな………。アレを倒さなきゃ、安心して皆と合流出来そうに無い」

 

グランシャリオの剣先で示せば、燃え盛る蒼炎を滾らせる巨大鯱の姿。

 

『成程、シカシ貴方トナラバ……勝テマス』

「頼もしいね………、じゃあやるか!」

 

そうして天王に跨がった侍の王鎧を纏う勇者と、蒼炎と蒼雷の巨大鯱………後に『ある者』によって判明する事になる、深海の王(・・・・)こと『アトランティクス・レプノルカ』の戦いが、幕を開けるのだった…………。

 

 

 

 






王よ、殺し奉る








???『其処に居るんだね?待ってて、今行くから』




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