VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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其の頃、サンラクは




深海を跳ね舞う鳥頭、青の都市にて鮫人に出逢いて、此の世界を知る

「……………強制気絶とはな」

 

プレイヤーがゲームにログインする時の感覚と共に、目が覚めたサンラクは上体を起こして、今の状況を確認する。自分が目覚めたのは、先程までマーマンゾンビ達と戦っていたクライング・インスマン号に酷似した、傾いた船の甲板の上、見上げた空は漆黒と無数の星々の煌めきが在る。

 

「クソッ……!完全に想定外だ、此れじゃ護衛ミッションどころじゃない……!」

 

死亡率が極めて高いユニークシナリオ、其れがまさかEXまで直通だったのは、サンラクにとって完全な誤算であり。パートナーのエムルに、彼女の兄のシークルゥと姉のアイトゥイル、更には護衛対象のスチューデを含めて、他の参加メンバーともバラバラにされてしまった。

 

サンラクは『自分達が引き込まれたのは、クターニッドが住処としている、何処かの海底洞窟の中』なのかと考えたが、其の予想は大きく外れる事になる。

 

「兎に角、今居る場所が何処なのか解らねぇと話に………は…………?!?」

 

斜めに傾いた船をよじ登り、己の視界に映る景色を見て、サンラクは自身の目を疑った。彼を出迎えたのは淡い青色一色の廃れた大都市と、四方に聳え立つ四本の塔に中心に鎮座する一つの巨大な城。

 

そして空中を優雅に泳いでいる、選り取り見取りの様々な形をした大小異なる、多種多様な生態系を持つ魚達の姿が在り。目をゴシゴシと擦っても、空中を泳ぐ魚の様子は変わらず、夢かと頬を叩いても、やはり変化は起きなかった。

 

「ナンジャコリャ………」

 

自分は呼吸が出来て、魚は空を泳いでいる…………あまりにも摩訶不思議な光景に、サンラクは気が遠くなる様な目眩に見舞われ。しかしNPC達の存在や彼のゲーマーとしての直感が、一刻も早く合流行動とセーブポイントの確保を行えと、脳内に警鐘を鳴らした事で発狂せずに済む事となった。

 

「取り敢えず行動だ、急げ急げ……!」

 

甲板から飛び降り、地面スレスレでフローティング・レチュアを起動。三歩の空中歩行で落下ダメージを軽減した半裸は一人、青一色の街を走る。走っている中で解ったのは、此の街………否『都市』には人っこ一人とて居ない事と、家屋の扉や窓が封鎖されている事。まるで『此の都市の住人達を外に出さない事』を目的としているかのような雰囲気に、サンラクの警戒心は一掃高まった。

 

他にも、自分に付与されている『深淵の刻限』なる特殊状態。今尚も時間を刻一刻と刻み続けており、逆算から170時間……即ち『七日以内』でクターニッドの撃破をしなくてはならない、タイムリミットが付与されている事が判明した。セーブポイントの確保と、パーティーメンバーとの合流が最優先、そして此の都市の情報の入手が次点………やる事は多い。

 

「おーい!!誰か居ないのかー!!?」

 

声を張り上げるや都市に声を響かせ、己の瞳を閉じて聴覚を研ぎ澄ます。此れで何かしらの反応が有れば良いのだが━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

「…………………はーん………サンラクはーん!

 

 

 

 

 

 

「答えた!ありゃ『アイトゥイル』の声だ!」

 

ユニークシナリオに巻き込み参加した三羽のヴォーパルバニーの内の一羽、ペッパーの相棒の風来黒兎たるアイトゥイルの声がサンラクの耳に届き、半裸の鳥頭は青の都市を駆け走る。

 

グラビティゼロ・鞍馬天秘伝(くらまてんひでん)・ボルテックスムーヴ・ライオットアクセル・ニトロテック・チャージで強化した機動力により、街と家屋を跳ね飛び舞い、数秒足らずでアイトゥイルの声がした場所に辿り着いた。

 

「アイトゥイル!」

「サンラクはん!良かった、無事だったのさ!」

 

スタッと着地すれば、扉が無事であった少し大きな建物の窓から、アイトゥイルが姿を見せる。取り敢えずNPCの内の一羽が無事であった事に安心しつつ、彼女が居る建物の中に入る。

 

其処で彼を待っていたのは…………

 

「む………鳥人族(バーディアン)、か?いや、羽根は生えてないし………だが頭は鳥……?其れに其の身体の模様は、夜の帝王と戦った事が有るのか!?」

「いや、俺はこう見えて人間だが?」

 

鍛えられた身体に衣服を纏い、靴を履いた二足歩行と四本指の、一般男性よりも一回りか二回り大きな、鮫の魚人が驚きの声を上げたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「取り乱して済まない………俺は『アラバ』、誇り高き『魚人族(マーマーン)』の者だ」

 

アイトゥイルが避難していた二階建ての建物、其処に先客として居たのは、ボディービルダー並の体格と筋肉を誇る、アラバと名乗る魚人族の男。クライング・インスマン号に居た腐れ魚人達とは明らかに違う雰囲気に、サンラクは彼が『イベントNPC』である可能性を感じ取った。

 

「俺はサンラク、こんな見てくれだが人間族(ヒューマン)。此方の黒兎は、家の知り合いとコンビを組んでるアイトゥイル。俺達はクライング・インスマン号に乗り込んだが、途中で乱入したクターニッドに散り散りにさせられてな。今は休める場所と、仲間達の合流を目指してる」

「ヴォーパルバニーのアイトゥイルなのさ。よろしくなのさ、アラバはん」

 

即興のロールプレイを絡めて自己紹介と事情を説明した所、成程……とアラバは頷いている。どうやら成功したらしい。

 

「サンラクよ、一つ良いか?」

「ん、どーした?」

「実は此処に迷い込んだ時に、俺は武器(エモノ)を落としてしまってな。鉱人族(ドワーフ)の名工が造ってくれた業物で、此のくらいの大きさの片手剣なのだが……何処かで見掛けなかったか?」

 

質問と共に気になる単語が出て来て、アラバが両手を広げる。目算した所、刀身と柄合わせて1m以上の長さを持つ片手剣らしいが、生憎セーブポイントと仲間との合流を最優先していたので、探す暇が無かった。

 

「いや見てねぇな…………。じゃあよ、アラバ。此処は海底都市(・・・・)か何かなのか?空を魚が泳いでたし………」

 

兎にも角にも、此処での情報は絶対必須になる。そう思いながら問い掛けたサンラクに、アラバはとんでもない事実と共に答えを提示したのだ。

 

「海底都市?………嗚呼、成程。来たばかりでは解らないか………。此処は反転都市(・・・・)、名を『反転都市ルルイアス』。深淵の盟主の力が此の都市全域に影響を及ぼし、都市が海中で『引っくり返った』場所だぞ」

「…………………ん?」

 

あまりにもヤバい情報に、サンラクは一時フリーズ。からの再起動(リブート)で、彼は再びアラバに質問した。

 

「じゃあ、あの天井みたいなのは?」

「アレは『海底』だ、マリンスノーが落ちているじゃないか。更に言うと、此の都市は『重力』も反転している。他にも深淵の盟主は『空気の無い場所を空気が在るように』変えた。そして死せる魚を『生きる人魚』に、生きる魚を『死せる魚人』にも変え、眷属としても使役出来る。何せ━━━━━━」

 

 

 

 

 

 

 

深淵の盟主は、死という概念すらも覆すのだ

 

 

 

 

 

 

 

明かされたのは、ユニークモンスター・深淵のクターニッドが持つ『反転』の力。古今東西あらゆるゲームを含めた、マンガやアニメ等でも非常に人気(ポピュラー)にして、反則級のパワーを秘めた能力なのだから。

 

と、其の時。外でバリバリバリバリ!!!とけたたましい『雷音』が響き渡った。

 

「うぉ!?」

「わわわっ!?な、何なのさ!?」

「ま、まさか!?『王』か!?」

 

サンラク・アイトゥイル・アラバが急ぎ外に出てみると、遠く遠い場所に『蒼い光を放つ物体』が見えた。

 

「何じゃありゃ………!」

「な、何という事だ………!!アレは深海の王(・・・・)、『アトランティクス・レプノルカ』!!!狙った獲物を仕留めるまで、決して止まらない『闘争心の塊』のようなモンスターだぞ………!」

 

アラバの説明を受けたサンラクは、一瞬思考した後に肩に乗っていたアイトゥイルをアラバに手渡し、そして言った。

 

「アラバ!アイトゥイルを暫く頼んだ!」

「サ、サンラク!?君はどうするのだ!?………まさか!深海の王を倒す等と、言うんじゃないだろうな!?」

「家のヴォーパルバニーとクソガキが、其のアントカ・レプリカって奴に狙われてるかも知れねぇんだ!黙って隠れてられねぇよ!」

 

バフスキルを全開に、青の都市をサンラクは駆けて行く。目指すはアトランティクス・レプノルカ、其のターゲットを救出する為に………。

 

 

 

 

 






深淵に轟音は鳴り響く


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