探索者の視点。
ルルイアス・東エリア。
「よっ、ほっ、せいっ」
グラビティゼロを起動し、サンラクが青一色の街を跳ね駆ける。ルルイアス探索兼食糧調達の任を、ペンシルゴン・オイカッツォと共に受けた彼は、フリットフロートやフローティング・レチュア等を駆使して、魚を狩りつつ進んでいた。
「タイみたいなやつに、ブリとかサバ、カツオに……あとはウツボ含めて色々手に入ったが………。カサゴとかフグは毒有るし、生貝は当たる事の有る連中だしな……。ハリセンボン泳いでたり、普通にタコやらイカやら居たし、軟体含めて魚介天国かよ夜のルルイアスは………」
釣りキチの父親から嫌という程仕込まれた、魚の捌き方によって〆め、アイテムとなった魚達が突っ込まれたインベントリアを見つつ、サンラクは改めてルルイアスの空を見つめる。選り取り見取りの魚達の中でも、明らかに大きな魚――――――カジキやマグロが大群を成し、泳いでいるのを見た彼は、昔の嫌な事を思い出した。
「マグロ、トロ、油………ウッ頭が」
あの日の晩餐は人生史上、上位を争う地獄絵図だった。『ミナゴロシ大戦記』で乱数の女神に嫌われて、トラウマになった『桃』程では無いものの、しばらくマグロが赤身すら食べられなかった程だ。
「だがなぁ……。アレ捕まえて、ティークに卸して貰えりゃ、金になりそうじゃねぇか?」
嘗て金策としてペッパーも世話になった、ライブスタイドサーモン。サーモンだけであの値段なのだ、きっとマグロも良い値段になるに違いないと。善は急げ、サンラクは早速空中を泳ぐマグロとカツオの大群目掛け、捕まえる為の武器を取り出す。
「武器の練習兼スピードの有る相手に攻撃を当てる練習台、そして俺達の食糧と金になって貰うぜ………!」
彼が取り出すのは『大剣』、其れも只の大剣等では断じてない。ビィラックが造り出した
名を
「オッシャア、其の赤身を寄越しやがれァアアアアアアアア!!」
荒ぶる半裸の鳥頭、食糧確保と金策の為に金色の武器を振るいて、夜の都市を孤高に舞わんとした其の時。上空を破るように『全長500m越えの巨大な虹色のリュウグウノツカイ』が現れて、サンラクが狙っていた巨大カジキを横からかっ浚ったのだ。
「はぁ!?何だオモァ!?」
危うく交通事故になり掛けるも、
そして巨大リュウグウノツカイ――――――『アルクトゥス・レガレクス』は、次の獲物としてサンラクに狙いを定め、襲い掛かってきたのである。
「うおっと!?へっ、此方を食いたいってか?上等だ……鳥ってのは魚を捕まえて食っちまうんだぜ!」
巨体突撃を回避し、バフスキルを全開したサンラクは、金晶独蠍の武器と共に深海ピラミッドの上位に座す、竜王魚を迎え撃つ………。
ルルイアス・北西エリア
「其れにしても、青一色なのは気味悪いなぁ………」
拳気で敏捷と筋力にバフを掛け、手頃な魚を鷲掴みにして捕まえ、アイテムになった物をインベントリアに入れるオイカッツォは、改めて反転都市ルルイアスというフィールドを見つめ直していた。
淡い青で統一された不気味な街並みと、空を泳ぐ様々な魚達。アラバという鮫魚人によれば、ルルイアスの昼と夜とでは出現するモンスターや光景が、180度変わるという。
「昼間だと『生きてる魚が半魚人のゾンビ』に、逆に『死に掛けてる魚が生きる人魚』になるんだっけ?全く、規格外が過ぎるっての……」
盟主の力は死をも覆す――――――アラバが言っていた『ユニークモンスター・深淵のクターニッド』の持つ、恐るべき『反転』の能力。世の『理』を逆さにし、乱し、弄び、狂わせるという、屁理屈極まる力を宿し、行使する超越存在。
仮に戦うとして、一体どうやって反転の力を切り崩せば良いのだろうか?考えれば考える程に、思考が坩堝に引っ張られていく。
「駄目だな、どっかで割り切らないと」
気分転換に都市の合間を走り始めたオイカッツォ。現実と遜色無く動けるアバターでジョギングをしつつ、気の向くままに足を進める。
「シルヴィに勝つには、如何にしてアイツのスタミナを削るかだ……。ペッパーがよくやってる思考誘導を絡めれば、上手く行くだろ………ん?」
今年の夏に行われる『大会』、
「何あれ………もしかして宝か!?」
ウキウキしつつも、慎重に近付き。周りに罠が無いか確認したオイカッツォが、ブルーサファイアを引っ張るとスポン!と音が鳴ったように、呆気無く簡単に外れた。
「お、外れた外れた。コレ絶対良い値段で売れるだろ、さてどんな名前………は?」
誰かに取られてはいけないとインベントリに収納したオイカッツォは、サファイアのフレーバーテキストをチェックして……………………絶句する。
クターニッドが振るう『――――』。其の青光は生きとし生きる、全ての命の『――』を反転させる。其の光からは、誰もが逃れる事は出来ない。
此のエネルギータンクは『八つ』在る………其等を全て揃え、正しき場所に納めて輪廻させし時に、深淵の盟主と力を分けた鎧は目覚めるだろう。
「深淵を見定む蛸極王装………!?マジか、マジかマジかマジか!?ルルイアスにクターニッドの一式装備が在るのか!?コレ一式装備手にしたら、交渉に使えそうだなぁ………!」
明らかに重要なアイテムを手にしたオイカッツォは、自分が一式装備を優先して纏う為の交渉に、コイツを用いようかと考える。何せ八つあるエネルギータンクの内の一つを、自分は現時点で握っている為に、コレが無くては鎧は動かせないのも同義なのだから。
「って事は、ルルイアスには後七つ別色の宝閠が有るのか………とと、いけない。食糧確保しないと、サンラクとペンシルゴンに何言われて煽られるか、解ったもんじゃ無い……!」
ゲーマーとしてコレクトしてみたい気持ちは有るが、今は優先目標を達成しなくてはならない。オイカッツォは少し上機嫌に微笑みながらも、魚の鷲掴みの狩りに戻ったのだった…………。
ルルイアス・座礁船エリア……
「まぁた、頭悪いモノを見たねぇ」
槍投げで魚を狩り、街の探索を続けていたペンシルゴンは、ペッパーがルルイアスにて目覚め、スタートした砂浜を座礁船達が占拠するフィールドにやって来た。
魚採りにも飽きてきたので、打ち捨てられたガレオン船でも探索してみるかと、乗り込んだ彼女を待っていたのは、ペッパーがやっていた海賊物を題材にしたレトロRPGにあった、金銀財宝の山が部屋一杯に満たした部屋を発見するイベントだったのだが、今目の前に在るのは其の時と同じ物だった。
「コレはあーくんに教えてあげなきゃだね。私の借金肩代わりしてくれた御礼、ちゃんと返さなきゃ」
そうしてペンシルゴンは、ペッパーに向けてEメールを送る。題名は『凄いもの見付けた』、本文に『ルルイアスの廃船エリアにヤバい物があった』と一文を添えて送信したのである……………。
魚と竜王魚と金銀財宝