各々の戦い
「なぁ、トワ。コレ罠の気配無い?大丈夫?」
ペンシルゴンから送られてきたメールを見て、ルルイアスの写真を参考にしたペッパーが青一色の都市を駆け抜け、指定場所たるルルイアス座礁船エリアに辿り着き。
彼女が待っていたガレオン船の一室に赴いた彼を、金銀財宝宝箱の山々が積み重なった、頭の悪い絵に描いた様なキンキラキンの光景が出迎えたのだ。
「調べたけど周りには導火線だとか、鳴子だとかは一切無かったね。あーくんさ、前に私の借金を肩代わりしてくれたでしょ?其の御礼も含めて、此処に在る御宝全部インベントリアにブチ込まない?」
確かにインベントリアがあれば、通常の重力限界を無視して全部持ち出せるだろう。だがペッパーは、コレを全部独占という考えは無かった。
「そうだなぁ………他のメンバーにも連絡して、貰っていくってのはどうかな?」
「むぅ……あーくんにだけ渡したいのに」
「多分ルルイアスを探索してたら、何れ誰かに見付かるよ。だったら他のメンバーにも連絡入れて、残ったのをインベントリア持ちの俺とペンシルゴンに、サンラク・オイカッツォ・
確かにインベントリアが有れば、理論上は全部持ち帰る事は可能だろうが、ペンシルゴンにとっては愛しの人が喜ぶ顔が見たいのだ。
「はぁ……あーくんのそういう優しい所、私も好きだけどさ。君はもっと、自分勝手や自分本意になっても良いんだよ?」
「どんなになろうと、俺は俺で居続けるさ」
ゲームをしている時の真剣な表情は変わらず、しかし其れは其れとして目の前に置かれた宝達を見ながら、ペッパー・ペンシルゴンは連絡が着くメンバーにEメールを送る。
「うわ、マジか………」
「まぁた、とんでもないと言うべきか……」
「何と言うか……フツーに凄い」
「絵に描いたって感じだね……」
「わぁ………!」
「キンキラキンですよ!」
そうして十数分後、連絡を受けたオイカッツォにログインしてきた京極・ルスト・モルド・レーザーカジキ・秋津茜は、目の前に在る宝の山脈を見ては言葉を漏らしていた。
「ペンシルゴンが発見したらしくてさ。独り占めは気が進まなかったし、皆でどうかなって」
「インベントリは少し空きが有るし、ちょっと貰って行こうかな?」
「宝箱一個でも、相当な値が付きそう」
ルスト&モルドは目に付いた宝箱をインベントリに収納、秋津茜とレーザーカジキは各々の気に入った宝物を選び、そうして残った財宝達をインベントリア持ちの四人が回収する。
「さて、と。時間的に深夜が迫ってるし、今日は此処までにしようかな?」
「一応サンラクにも廃船に宝物が在るって、伝えてある。あ、そうだ。皆のEメールアドレスを教えてくれないか?渡したいものがある」
そう言ったペッパーに秋津茜達は疑問符を浮かべるも、一斉送信された『其れ』を見て全員が目を丸くした。
「コレ………もしかして『ルルイアスの空中写真』…………!?」
「そうだよ。私のあーくん、こう見えて『
ドヤ顔で胸を張るペンシルゴンを見ながら、ペッパーは微笑み此の場の皆に対して言った。
「さて……俺はルルイアスをちょっと探索をしたいが、皆はどうする?」
「俺は明日仕事だし、そろそろログアウトするね」
「僕は明日、塔に居るっていう封将とやらの御尊顔を拝みに行ってくる」
「僕とルストもそろそろ寝るよ。明日は四つ在る塔を偵察しに行く」
「………遠距離攻撃で確かめる」
「ぼ、僕は明日はアラバさん達とお話をしたい………です!」
「私は昼間のルルイアスに出るっていう、半魚人さんが気になりますので、突撃してきます!」
「私は明日動けるし、もう少し廃船探索かなぁ」
「じゃあ、解散と行こう」
各々の予定を言い合い、ログアウト組は拠点とする建物へと帰り、ペンシルゴンは引き続き廃船捜索へ、ペッパーは
ギガリュウグウノツカイこと『アルクトゥス・レガレクス』との激闘を続けていたサンラクは、此の虹色に輝く竜王魚を相手にしながら、ずっと考えていた事が有った。
巨体による大質量の突進攻撃に、縦横無尽に畝る身体と其れを支える馬力、圧倒的な体力とスタミナお化け、更には一定以上の距離を離せばブレスを放つ等、お前もお前で深海の王様かユニークモンスターじゃねーの?と思って
「だがやっぱ、お前の其の強さは『
ウツロウミカガミ起動。建物にヘイトを残して突撃させつつ、ダーティソード・
『ギギギギギギギギギギ!?』
「お前の
『ギギギギギギギギギ!?』
「そしてお前の最大の不運は、俺が魚の捌き方を熟知してるって事なんだよなァ!?オルァ!!!」
蛇腹大剣の特性と重量を活かした、横回転連続斬撃を竜王魚の傷付きまくったエラに駄目押しで叩き付け、ダメージを積み重ねる。
『ギギギギギギギギギィィィィィィィ!!??!!』
「やっぱタフだなオイ……!俺は早く金銀財宝を回収してぇんだよ、良い加減に…………沈めェ!」
煌蠍の尾鞭剣に宿る能力を、音声認証による合言葉『
遂に竜王魚は力尽き、身体を構成していたポリゴンは爆発四散を遂げたのだった。
「シャア!ギガリュウグウノツカイ、
傭兵(二刀流)は大剣系スキルを覚えにくいが、夜の時間帯を主にプレイタイムにしている自分と、月が出ている時間での耐久回復可能な煌蠍の尾鞭剣は、相性自体は悪くない。確り使い潰して行けば、何れ他の大剣系スキル獲得に繋がる可能性は大いに有るだろう。
視線を変えれば、アルクトゥス・レガレクスを打ち倒し、積み重なったドロップアイテムの山々。あの巨大な体格と幸運値200越えなだけあり、ヒレ・鱗・白身・骨含めて山脈レベルの多さになっていた。
「ウヘ、ウヘヘヘへへへへへへへ…………」
臨時収入は愚か、埋蔵金を引き当てたレベルの品々を見ながら、サンラクは気持ち悪い笑顔を浮かべて頬を綻ばせた後、インベントリアにドロップアイテムを全回収。
そして彼は一路、ペッパーがメールで伝えたルルイアスの廃船エリアに存在する、金銀財宝と宝箱の山を求めて動き始めたのであった………。
手にする報酬、そして各々の戦い