走り、前へ、ひたすらに
勇者が深淵都市を駆けている。マナの粒子で出来た天ノ川を描きながら、前へ前へと。南東エリアを目指して、其の両足で力強く進んで行く。
「俺が
ユニークモンスター・深淵のクターニッド。反転というシンプルながら反則級の能力を操り、ルルイアス全土を反転都市に変えた怪物。死せる者を生ける者に、生ける者を死せる者へ。空気の無い場所を空気の在る場所に。世界の理を掻き乱し、弄び、逆さに変える超常存在。
そんな存在を七日間で討伐するユニークシナリオに挑んでいた最中、ペッパーが見付けた物こそ緑の宝閠━━━━深淵のクターニッドと力を分けたなるユニーク
此のエネルギータンクの持つフレーバーテキストによって判明した、クターニッドが振るう何かによって対応した何かが反転…………『緑』の場合は『視界に関係する何かを反転』させる事が解ったのだ。
「ルルイアスは広いし、多分他の宝閠も誰かが見付けてると思った方が、気持ちは楽になる。最悪クラン共有にしておけば、先に取られていたとしてもダメージが少なく済む」
天将王装の存在がサイガ-0以外のメンバーに知られた以上、そう遠くない先々に蛸極王装の存在もバレるだろう。ルスト・モルドは
リュカオーン(影)、クターニッドの討伐に関わらせてしまった以上、確実に黒狼からは旅狼に対して何かしらのアクションを仕掛けてくるのは確実として、おそらくウェザエモン関連にも難癖やらを付けてくるだろう。万が一戦争が起きて負けた場合、最悪旅狼は黒狼に『吸収』される可能性も存在している。
「………………起きた事はもう仕方無い、問題は如何にリカバリーして穏便かつ、双方が納得の行く着地点を見付け出せるかだ」
ライブラリが付いては居ても、相手はシャンフロの最前線を引っ張ってきたトップクラン。簡単にはいかないだろうが、やるしかない事実だけがある。
「!アレは…………!」
そうして空中を走り続けた先、ペッパーの視界に『紫色の光』が見えて、彼は其の方向へ全力疾走。走り抜いて建物の屋根に降りた彼が見たのは、緑の宝閠と同じ形状の『意味深な女性の石像と、額にブリオレットカットが施された掌サイズのアメジストが埋め込まれた』物を発見した。
「間違いない。蛸極王装を動かす為に必要な、エネルギータンクの一つ………!」
周囲警戒及び付近に罠が無いかどうかを確認し、壁を伝って着地しつつ接近。此の石像に埋め込まれた宝石達は、特定の条件を満たさなくては其処から外せず、手に入れる事も出来ない。
(緑の宝閠は目を閉じながら、引っ張った事で外れて手に入ったが……。紫の場合は、一体何が条件になるんだろう?)
先ずは単純に引っ張ってみたり、押し込んでみたりと、石像を殴ったりして試すが、びくともせず。ならばと目を閉じながら押し引きに、アイテムの投擲で石像にぶつけたりもしたのだが、やはり変化はない。
ならばと緑の宝閠を取る時に試した、ポーションの振り掛けを行ってみた所、石像がジュワジュワと強酸液を掛けられた鉄が、錆び付き崩れ落ちるように溶けていき、埋め込まれたアメジストが地面に転がり落ちた。
「…………………マジか」
今回の謎解きによって判明した紫の力、其れは『回復』の反転。ダメージを与える事がダメージを回復させる事に、ダメージを回復させる事がダメージを与える事に変わる。
コレは正直言ってヤバい。ダメージを受ける事を是としているオイカッツォみたいな『軽戦士ビルド』や、仲間を護り抜く事を仕事にしている『壁タンクプレイヤー』が此の力を使った場合、其のプレイヤーへの攻撃は単純な回復になり、自傷スキルでのバフはリスク無しの回復&強化という、ヤバ過ぎる物へ変貌する。
「コレは伝えなきゃ駄目かぁ………」
クターニッド攻略の為にも、蛸極王装の情報は避けておきたいが、場合によっては開示する事も視野に入れつつ、ペッパーは手にした掌サイズのアメジストを拾い上げ、フレーバーテキストをチェックした。
クターニッドが振るう『━━━━』。其の紫光は生きとし生きる、全ての命の『━━』を反転させる。其の光からは、誰もが逃れる事は出来ない。
此のエネルギータンクは『八つ』在る………其等を全て揃え、正しき場所に納めて輪廻させし時に、深淵の盟主と力を分けた鎧は目覚めるだろう。
(此れで二つ目か…………。そして此処までの事から、俺の予想が正しければ、クターニッドは『性別反転』も出来る可能性が出て来た………。自分含めて、参加メンバーの性別反転した姿がどうなるかは気になるな………。
だが、少しずつ解ってきた事もある。おそらくクターニッドの撃破報酬には先ず間違い無く、『世界の真理書』と『八つの要素を反転可能にする何か』を、確定で入手出来る筈だ。そうであるなら、其の中から性別反転に関係する物を選択しよう。
ユニークモンスターの一式装備の、女性限定装備を付けられる様にするには、性別反転の力が絶対必須になる………!)
インベントリアに紫の宝閠を収納し、ペッパーは一路セーブポイントに設定した建物を目指して走り出すのだった………。
だが、彼は知らなかった。
此の反転都市に、更なる驚異が。己が倒した深海の王たる冥王鯱こと、アトランティクス・レプノルカ
紫の力
???『此処に居るんだね?フフフ♪』