VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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帝王をブチのめせ




殺意は秒速を越える、威光は音速をも凌駕する

アトランティクス・レプノルカ"覇頭衝角(プロモスピア)"。

 

コイツ相手には先ず、真正面から殺り合っても水晶群蠍(クリスタル.スコーピオン)同様に、逆立ちしても敵わないモンスターである━━━━━━其れが十数分近いチェイスの中で、サンラクが此の冥帝鯱(バケモノ)に対して出した『答え』だった。

 

水晶の胸鰭から常にウェザエモンの雷鐘(らいしょう)が如く『蒼雷を撒き散らして爆撃』し、上体後で燃やし続ける蒼炎によってフィールドを照らす事で狙った獲物を『決して逃さない』。

 

至近距離では素の馬力を活かした鰭や巨体による格闘戦に、自慢の角にエネルギーを集めて『突撃』を。距離を離し過ぎれば、角先や口に集めたエネルギーで『ビーム』を放つヤバさを持つ。

 

其の威容は正に『深海の帝王』、或いは『戦略級巨大戦艦』に相違無い。

 

「近過ぎず、そして遠過ぎず!適正距離を維持して『あの塔』まで走る!」

 

バフスキルで己を強化し、降り注ぐ雷の雨をルーパス・アサイラムで掻い潜り、半裸は単身で此処ルルイアスの四方に建つ、塔の内の一つを目指して駆ける。

 

神秘(アルカナム):愚者(フール)の能力によって、再使用時間(リキャストタイム)を終えたウツロウミカガミを点火。数秒とはいえスタミナを回復させる為に冥帝鯱のヘイトを残像(デコイ)に肩代わりさせつつ、おそらくペッパーが万が一に備えて購入・インベントリアに収納しただろう、簡易食糧を取り出し食す。

 

だが、今回も。其の回復は失敗(・・)してしまう。

 

「ちぃっ……回復成功が確率になるってのは(・・・・・・・・・)、地味に面倒だ……!もう一回………駄目!もう一度…………よし、今度は上手くいった!急いで移動だ!」

 

二度目は失敗、三度目は成功。スタミナを回復したサンラクは、再び冥帝鯱との適正距離を維持し、降り注ぐ雷を躱わしながら、塔を視界に進み続ける。

 

神秘:愚者は『スキルの再使用時間半減』という、凄まじいメリットを持つのに対して、其のデメリットもまた凄まじく。サンラクは今まで以上に、封雷の撃鉄(レビントリガー)(ハザード)の『使用タイミング』を注意しなくてはならなくなったのだ。

 

一つ目が『回復アイテムの使用によって発生する効果が確率』となる事。ポーションやマナポーション、回復効果を内封した魚の食事、スタミナ回復の簡易食糧や状態異常回復の各種薬、果ては再誕の涙珠による蘇生(・・)すらも『確率』となる。

 

二つ目が『スリップダメージの倍増』。毒・火傷・凍傷といった状態異常によって起こる、ありとあらゆるスリップダメージが倍となる其れは、サンラクにとっても無視出来ない代物だった。彼がアクセサリーとして装備する封雷の撃鉄・災は、使用者に絶大な力を与え、場合によっては(スペリオル)を凌駕する能力を秘める反面、過ぎた力は使用者にも牙を向く。

 

其のデメリットが『十秒毎に使用者の体力総量の半分のダメージを与える』という物。そして愚者のデメリットによって、封雷の撃鉄を十秒以上使用した場合のサンラクは、体力が『1』になる。つまり此の状態では転んでも死ぬし、攻撃が掠るだけでも死ぬという、セルフ『背水の陣状態』となるのだ。

 

「うおっと!?あっぶね!?」

 

冥帝鯱が加速し、蒼光に輝く一角を翳して突撃する。地上に建つ青の建築物を、砕氷船の如く粉砕して突き進む姿は、壁タンクでも受け切るのは不可能に近いと思いつつ、グラビティゼロで視線の先に在る建物の壁を蹴り、低空移動で深淵の都市を彼は行く。

 

だが冥帝鯱は此処までのサンラクの動きから、ルートを『予測し直して落雷の軌道を再構築』するや、彼の前に雷を置いて進行ルートを制限、同時平行で自身の上体部を燃やす蒼炎を静め、代わりに水晶鰭より蒼雷を迸らせながら全身のエネルギーを、アンテナたる頭角先端に一点集中。

 

角の先端から蒼いマナの光を煌々と輝かせ、集束された光が放たれる僅か数瞬速く、振り向いた事で其の異変に気付いたサンラクは、サキガケルミゴコロ起動と封雷の撃鉄を胸に叩き付け。同時に右手首を掲げながら叫ぶ。

 

「━━━━ッ!?【転送:格納空間(エンタートラベル)】!!!」

 

刹那、マナを含んだ轟音と爆風がサンラクの居る場所を襲い、地面と近辺の建物の全てが薙ぎ払われ。緊急回避したサンラクは発生した衝撃波によって、格納空間内でゴロゴロと転がった。

 

「ッ━━━はァ!?あぶねぇ、死亡予知スキルが無かったら超高速ビームに蒸発させられて死んでたわ!?!」

 

残り体力は3、このまま格納空間から出ても一角鯱に殺られるだけだと考え、全身に纏う黒雷を解除。サキガケルミゴコロの再使用時間終了+体力及びMP全快になるように、インベントリアに貯蓄された回復アイテムを使う。

 

愚者によって確率となりながらも、下手な鉄砲数撃ちゃ当たる戦法でゴリ押し、体力とMPをマックスに戻した半裸は『【転送:現実空間(イグジットトラベル)】』の合言葉で、格納空間から元の位置に戻る。

 

周囲を見渡せば、先程のビーム砲撃によって建物は崩壊しており、目標の塔は『一切傷が付かず』に威風堂々と聳え建っていた。

 

「やっぱあの塔、破壊不可オブジェクトなのか━━━━は!?」

 

あれだけの威力を受けて尚、無傷であるカラクリが解らないサンラクだったが、此処で彼が見たのは驚くべき光景であり。格納空間内に引き隠って十数分程隠れていたにも関わらず、冥帝鯱はサンラクを見付けるやシンボルの一角を振るい、真正面から刺突攻撃を行ってきた。

 

此の技は謂わば『待ち伏せ攻撃』……………彼にとって其れ(・・)を使う敵を知っている。

 

「おい、まさか……水晶群蠍(クリスタル.スコーピオン)と同じ『インベントリア対策済』モンスターか!?」

 

紙一重で回避するも、地面を掘り返しながら返す刃の如く、頭角が襲来。フリットフロートで更に跳躍し、フローティングレチュアで体勢を整え直すが、冥帝鯱は尚も速く巨大な口を開き、サンラクを丸呑みにせんと襲い掛かる。

 

「クぅ、うおっ!?!」

 

サンラクには(・・)此れ以上、空中を飛ぶ術は無い。

 

「良かった、間に合った!」

 

だが、蒼空を舞う勇者は彼を見捨てない。金と白の神代製の籠脚(レディアント・ソルレイア)を両脚に、全速力のブーストと共に、深淵の都市を舞い飛ぶペッパーが、間一髪速く冥帝鯱の攻撃からサンラクをかっ拐う事で事無きを得る。

 

「ペッパー!助かった!」

「サンラク、あのアトランティクス・レプノルカ何!?何かイッカククジラとノコギリザメのシンボルが、融合したみたいな頭角持ってんだけど!?」

「多分ソイツの変異体だとは思う!」

 

空中を舞い上がる乱入者たるペッパーに抱えられ、深淵の都市を飛ぶサンラクに、冥帝鯱は彼等を追跡・頭角にエネルギーを集束して突撃してくる。

 

「うおおお!?」

「ペッパー!あんまり高度と距離を放し過ぎるな!100m以上離れたら、超高速ビームをブッ放してくるぞ!」

「何じゃ其のヤベー攻撃!?食らいたくないし、下手したら死ぬぞ!?」

 

レディアント・ソルレイアの出力を全開に、突撃を往なして50m以上100m以内を目算で維持して、死地空間で勇者は飛び回る。

 

と、此処でペッパーに抱えられながら地上を見ていたサンラクは、真下に広がるルルイアスの光景から、此迄掴めなかった『ルルイアスの塔』の特性、そして其れを利用した『冥帝鯱攻略法』を閃いた。

 

「………お前のアシストのお陰で、一角鯱野郎の突破口が見えた………!」

「……………マジ?」

 

獰猛な笑みを浮かべ、サンラクは確信する。

 

此の戦い、俺達の勝ちだ━━━━━と。

 

 

 

 






勝利の道筋


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